テーマ 心に「名言」を刻んだ作品
レギュラーセレクター 木曜日 佐藤友哉さん
2011.07.28
「ひとを批判したいような気持が起きた場合にはだな」と、父は言うのである「この世の中の人がみんなおまえと同じように恵まれているわけではないということを、ちょっと思いだしてみるのだ」(華麗なるギャツビー/フィツジェラルド)
ライ麦畑でつかまえてJ.D.サリンジャー
映画の野郎の影響さ。映画ってのはひとをだめにする。決して嘘じゃないよ。
コネティカットのひょこひょこおじさん(『ナイン・ストーリーズ』収録)J.D.サリンジャー
「ジミーの何を話すの?」「そんなにぐにゃぐにゃしないで、ちゃんとお立ちなさい。……ジミーがどんな顔か話してあげて」「目はグリーンで、髪は黒いの」「それから?」「ママもパパもいない」「それから?」「雀斑なんかないの」「それから?」「剣を持ってる」
ゾーイー(『フラニーとゾーイー』収録)J.D.サリンジャー
クリーネックスをいくつにも畳んでいたフラニーは、ふとゾーイーを見ると「あら、ごめんなさい」と、言った「鼻をかんじゃいけないの?」「きみの話はすんだのか?」「ええ、すんだわ! ああ、なんていう家なんだろ。鼻をかむにも命がけだ」
ハプワース16 一九二四J.D.サリンジャー
ぼくはあなたもその他のどんな歴史的な大作家も、明けても暮れても低俗な皮肉によって売れている人間は信用してないんだ! ぼくのどうしようもない敵意はあなたと同様、偉大な皮肉屋アナトール・フランスにも遠慮なく及んでいるんだ! 弟とぼくも無数の読者もあなたたちに絶対の信頼をおいて会いに行くと、あなたたちはぼくらに平手打ちを喰わせるんだ! あなたたちがせいぜいそんな程度のことしかできないんなら、自殺するか、その素晴らしいペンを折る配慮をするくらいの基本的な礼儀はわきまえてもらいたいもんだ!
シーモア 序章(『大工よ、屋根の梁を高く上げよ シーモア 序章』収録)J.D.サリンジャー
さあ、ほんとうに寝なければなるまい。女子学生部長――とてもやさしい人だ――は夜が明けるとすぐ電気掃除機をかけに来るから。
佐藤友哉さん
1980年生まれ。作家。『フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人』でメフィスト賞を受賞し、「戦慄の19歳」としてデビュー。2005年、『1000の小説とバックベアード』で第20回三島由紀夫賞を受賞。本年『デンデラ』が映画化され、6月より公開される。愛称は「ユヤタン」。
本文はここまでです。