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テーマ 日本人として驚いた「海外作品」

過去のレギュラーセレクター

海外の作品で驚くのは、内容よりも大人数をうまくまとめ上げるチーム体勢作りのうまさです。漫画のように少人数でできるものは日本人向きで、大人数で作る規模の大きなものは海外の方が向いているのかな、と思う事が多いです。映像作品でもゲームでも、作業をブロック分けし、人を割り当て、できあがった各要素を繋ぎ合わせて大きな作品を作ってゆく、という事が海外、とくにアメリカはうまい気がします。日本人は、大人数で作るとどこか味付けが平均化されてしまうところがあるのですが、海外作品は、大規模で、かつ特定の個人の個性が強く出るようなものが多い気がします。リーダーシップ能力の差でしょうか。

The X-Files

1997年にこのドラマを観るまで、僕は日本の物も海外の物も、TVドラマをほぼ一本も観た事がありませんでした。TVドラマは画が平板でどうにも安っぽく、全く世界に入っていけませんでした。まあ、いわゆる食わず嫌いというやつです。The X-Filesを観て、そういう認識は吹き飛びました。もちろん海外ドラマが全ての点で優れているわけではなく、The X-Filesも人気が出たせいで終わらせる事ができず、設定に無理が生じ、役者のテンションも下がり、後半はひどい部分もあるのですが、少なくとも僕の食わず嫌いを直すくらいには優れていました。その後海外ドラマを観まくり、最近は日本のドラマも時々観ます。日本のドラマは相変わらず何故背景をぼかさないのか、影をしっかり入れないのか不思議でなりません。予算の規模の問題かなあ……。

iPhoneApple

非常にステレオタイプな偏見といえばそれまでですが、それでも、多くの点でアメリカ人は豪快で大雑把、日本人は細かい事に気を配るのが得意、という印象を多くの人が持っているのではないかと思います。一連のApple製品、特にiPhoneに初めて触れ、その細やかな気配り、ソフトウェアとハードウェアの融合の巧みさに驚き、同時にそれまで愛用してきた日本のガラケーが完全に色褪せて見えた事に愕然としました。何年も携帯を作り続けてきた日本のトップメーカーが、初めて携帯を作ったAppleの足元にも及ばない、というのはApple好きの僕にとっても悔しい事で、iPhoneを愛用しつつ、心のどこかでは日本の逆襲を期待しています(望み薄ですけど……)。

CALL OF DUTY2コナミ

こういうゲームに全く免疫がなくて、初めてやった時はあまりのリアルさ(もちろん実際の戦場を見た事などないですが)にちょっと頭が痺れるくらい驚きました。大型テレビと5.1chのスピーカーを揃えた直後だったというのもあると思いますが。小学生の頃、学校で戦争について学んだ時、漠然と『人殺しになるのは嫌だから戦争は嫌だ』という考えが真っ先に浮かび、以後とそんな考えを持っていました。しかしこのゲームを起動した途端、オマハビーチに上陸、被弾、血だるま、仲間に担がれる、仲間被弾、死、リプレイ、被弾、死、リプレイ、崖に辿り着く、上から狙撃され為す術もなく死…という、史実通りのゲームバランスを体験し『あ、人殺しになる心配なんて無意味だ。自分が先に死ぬ』という当たり前の結論に辿り着きました。

CRIMINAL MINDS

海外ドラマ。小説が候補に挙がりませんが、小説に関しては母国語で書かれたものに強く影響されたので海外小説に『日本人として』驚いた経験はあまりない気がします。映像作品はだいたい、予算やセットの規模や、初めから世界で売る事を考えたつくりなど、日本の常識だと驚かされる事が多いのですが、この作品は派手な要素はあまりなく、コツコツ捜査し、分析し、推理し、犯人と対峙するものすごく正統派のドラマです。といっても、しっかりお金のかかっていそうなつくりですが。驚いたのは、どこか一点ではなく、全体の完成度と作品の格、のようなものです。主人公達が犯罪者の心理を覗き込みすぎて心を壊していったり、人生を空虚にしてしまう姿を、誇張せず静かに描くところが好きです。

安倍吉俊さん

71年生まれ。漫画家。イラストレーター。東京芸術大学修士課程修了。代表作に『灰羽連盟』『ニアアンダーセブン』『リューシカ・リューシカ』などがある。自他共に認めるデジタルガジェットマニアだが、初期不良を引き当てる特異体質の持ち主でもある。

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