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テーマ 人生を変えた「教科書」

過去のレギュラーセレクター

実際に僕は1冊の本や1枚の音盤に人生を変えられた経験があるので、もちろん信じています、人生を変えた教科書という考え方。ひっくりかえせば、作品には受け手の人生に介入しそれを変えてしまう力があるわけです。そう考えると作品は巨大な力を持っていて、あらゆる状況や規則を超えて人を動かせる。怖いですね、教科書って……。しかし西島の作品もかくありたいと思います。がんばります。

理科系の文学誌荒俣宏

理科系の文学とはSFを指します。個別の作品から学んだことは多いですが、SFというジャンルの途方もない可能性を学んだのはこの本。セレクションは独自。狂気に満ちたSF作品をぶっ飛んだ思考で読み解き、結果そこで取り上げた作品以上の壮大なヴィジョンを感じさせてくれる本。単なるブックガイドではなく思想と奇想が詰まっています。荒俣宏にここまで妄想させるSFってどれだけすごいんだと震えました。

リバーズ・エッジ岡崎京子

暇つぶしや気分転換など作品には優しい側面もありますが、「リバーズ・エッジ」は場合によっては目の前の読者を否定してもいいということを教えてくれた一冊。「ざまーみろ」という台詞を読むとき、読者としての僕は「ざまーみろ」と作品に問われている。わかりやすく喩えると、旧エヴァの「きもちわるい」と同じ。そこまで踏み込んで来ることは覚悟であり、つまり覚悟して作品を描けよと僕に言っているんだと勝手に学びました。

バトル・オブ・ブラジル

映画「未来世紀ブラジル」のファイナルカット権を巡る、監督vsプロデューサーの戦いを描くドキュメント。商業映画がどんな条件によって成り立っているのかを、揉め事の面倒くささとともに教えてくれます。この本から揉め事の大変さを学んだ西島は、一切揉めることなく原稿紛失のトラブルを解決。「バトル・オブ・ブラジル」を参考にしてドキュメント本「魔法なんか信じない。でも君は信じる。」を刊行したのでした。(Amazonは『未来世紀ブラジル』です)

破滅に向かってX

2008年にまさかの復活を果たしたX JAPANのX時代の二枚組ライブ盤。バンドの演奏も凄まじい気合いに満ちていますが、より耳を澄ますべきは無音の部分。静寂の中に聴こえる観客の悲鳴や絶叫。映像がない分、何が起こっているのかと心配になります。「てめーら気合い入れろオラァ」の言葉通り、張りつめたテンションで破滅に向かって突き進む衝撃のライブ音源から、何ごとも気合いだなと学びました。

「トップをねらえ!絵コンテ集」

「このやたら気合い入ってる作品は、誰がどうやって作ってるのか?」を知りたくて知りたくて通販で購入した絵コンテ集。今のように図書館行けばジブリの絵コンテ集が読める状態ではないころ、作品を成すものの正体を突き止めたくて繰り返し読みました。「ズドドドドドドォォォォー」と縦に踊る庵野秀明のかき文字にこそ魂は宿ると知り、強く影響を受けています。一番くり返し読んだ絵コンテ集。(Amazonは『トップをねらえ2!』のものです)

西島大介さん

74年生まれ。漫画家。イラストレータ。映像作家。2004年に『凹村戦争』で漫画家として衝撃的なデビューを果たす。現在は月刊IKKIにて『ディエンビエンフー』を連載中。他、講談社BOXでさやわかと共に「西島大介のひらめき☆マンガ学校」を開校し、未来の漫画家を輩出している。

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