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テーマ 最高に“怖い”話

レギュラーセレクター 曜日

店に置いてある薬味をすべて試してみようとしてしまう……。どもども、森田です。さて、怖い話ということですが、シーズンとしてはちょっとずれてますよね。あ、これは普通の一般名詞のシーズンです。ペンネームの問題から、季節という言葉を普通に使う場合はシーズンという語で代用していたのですが、仁木英之さんがシーズンという呼び方を一部で定着させたせいで、こっちも使いづらくなってきて、地味に困ってます。全然怖い話と関係ないな……、では、本編行きましょう。

展翅少女人形館瑞智士記

作中にも人の解体シーンのようなところもあって、それはそれで怖いのですが、もっと根本的な次元で怖い。つまり、どうしてこんな猟奇的な要素をちりばめつつも、美しさを追求するような作品を書こうとしたのか、その心情を想像するのが怖いのです。この本の背後には、少女の美しさを守るには死ぬしかない、とでも言うような信念じみたものが感じられて、気分が悪くなります。ゼロ年代の次を仮にジュウ年代とでも呼ぶとすれば、その時代の奇書と呼んでも問題ないような作品。

座敷女望月 峯太郎

二度と読み返せない……。この作品の怖さは、「自分にそれが起こりえないとは言い切れない」というところにあります。どんなに堅実に無難に生きていこうと努力したところで、異常な人間が偶然自分に目をつけてきたら、人間はほとんどどうすることもできない。とんでもない大金持ちになれたなら、ボディガードなりを配置できるでしょうが、そうじゃなかったら、どうしようもない。人間は運が悪いと、もう助かりようがない、その事実をこの本で突きつけられた時、森田は本当に青ざめていました。

1984年ジョージ・オーウェル

ちょっと有名どころすぎるかと思いましたが、最後まで、ずっと薄ら寒い気持ちになる本といえばこれだろうということでチョイス。自分の考えていることが、政治体制と完全にずれてしまっている、それは想像するだけでもかなりストレスフルなことだと思います。この話が書かれた時代背景と現代はあまりにも違いすぎますが、同じ人間が国を作っている以上、同じようなリスクは常にあるわけで、そういう意味でこの本はいつまでもみずみずしさというか、生々しさを失わないだろうなと思います。

森田季節さん

84年生まれ。作家。2008年、『ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート』(MF文庫J)でデビュー。他の作品に『ともだち同盟』(角川書店)、『不動カリンは一切動ぜず』(ハヤカワ文庫JA)、『お前のご奉仕はその程度か?』(GA文庫)などがある。今最も注目される新鋭の一人。書き下ろし新作『エトランゼのすべて』は星海社FICTIONSより好評発売中。

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