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テーマ なぜこれが売れないのか分からない!

レギュラーセレクター 曜日

ある作品が「売れる」という商売の結果は、実に様々な要素が複雑に絡み合って出てきます。コントロールや事前の予想が不可能な要素も多いです。作品それ自体、作品の内容はその中のほんの一要素にしかすぎません。また、作品の評価は固定化されたものでなく、時と共にプラスにもマイナスにも大きく変化します。ゴッホの絵やビーチ・ボーイズの『ペット・サウンズ』の例を持ち出すまでもなく、それを見通すことは誰にも出来ません。結局「売れる・売れない」は“わからないもの”です。人の命と同じです。その一生に価値があるかないかは、考えてみても仕方のないものです。だから、マンガ家の僕は、自らの良心にのみ従って全力で描けばそれでいい。そう考えることにしています。

天空の城ラピュタ宮崎駿

もはや国民的映画の1本となっている『ルパン三世 カリオストロの城』が公開当時は興行的に不成功だったというのは既に伝説ですが、『風の谷のナウシカ』後の『ラピュタ』もまた不入りだったそうです。『ラピュタ』がですよ! あんな凄まじいばかりの面白さなのに! にわかには信じがたい気持ちになります。「今頃になって『ラピュタ』が一番好きだなんて言う人に出会うとね『遅い!』って怒るんだけど(笑)」(宮崎駿『ロッキング・オン・ジャパン』増刊1月号サイト 平成14年)

ソナチネ北野武

とんでもなく美しい映画。だけど、映画館には観客は僕を含めて10人もいませんでした。見事にガラガラ。現在になってみると、それはそれで却って贅沢な体験と言うことも出来ます。興行的には大失敗だったと言われるこの作品こそが「世界のキタノ」へのきっかけになったそうです。そういえば、「世界のクロサワ」のきっかけになった黒澤明監督の『羅生門』もまた、不入りで、批評も芳しくなく、失敗作扱いだったそうです。ものの本当の価値というのはすぐにはわからないものです。多分、人生のすべての大事な物事がそうです。

カバーズRC SUCCESSION

「上記の作品は素晴らしすぎて発売できません」1988年のレコード会社からの発売中止の新聞広告です。まるで性質の悪い冗談広告です。これがどんなに恐ろしく、底の深い問題だったか、怒らなければいけないことだったか、その本当のところは23年後のこの夏になるまで、僕はちっとも解っていませんでした。忌野清志郎さんは今いません。今さら、今さら、涙が出ます。笑われても、茶化されても、なだめられても、誇り高く本気で怒り続けたあなたは正しかった!! 全面的に正しかった!!

田中ユタカさん

66年生まれ。マンガ家。主な作品に『愛人[AI-REN]』、『ミミア姫』、『愛しのかな』、『もと子先生の恋人』。『初夜』などの純愛系作品、多数。“恋愛漫画の哲人”、“永遠の初体験作家”、“愛の作家”と呼ばれる。携帯コミックでも新作を意欲的に発表。

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