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テーマ ベストオブ「ゼロ年代」

過去のレギュラーセレクター

僕にとってのゼロ年代は16歳から25歳。今の星海社の読者にもっとも身近な年齢の間にゼロ年代を駆け抜けました。まさか自分が次の10年代を作り手の側として挑戦することになるとは思っていませんでしたが、僕のゼロ年代を作り上げた作品を振り返り、次の10年代へ、その遺伝子をつなげられたら最高です。というわけで、僕のゼロ年代に影響を与えた小説、漫画、音楽、ゲーム、アニメをひとつずつセレクトしました。

フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人佐藤友哉/笹井一個(イラスト)

閃光のようなスピード感と、鈍い鉛を想起させる暴力描写。リズミカルに流れる重層的な物語と、そんなのってあり? と思ってしまうようなアイロニックな結末。文学とライトノベルの狭間を描く笹井一個さんの流麗なイラスト。フリッカー。ご存じ、ゼロ年代の初めに産声をあげた佐藤友哉さんの戦慄のデビュー作。美少女ゲームとライトノベルが席巻したとされるゼロ年代のなかで、まさに象徴のように輝きを放っています。

ハチミツとクローバー羽海野チカ

僕のゼロ年代をもっとも混沌とさせた作品のひとつ、『ハチミツとクローバー』。というのも大学時代、留年時に暇すぎて、あと竹本くんに色々影響されすぎて、自転車で千葉から北海道宗谷岬まで走りきったことがありまして……。「道の駅やまだ」とか松島のすかし橋とか、聖地巡礼をクソまじめに自転車でやったの、おそらく僕とCONTINUE編集部ぐらいだと思いますよ……。徳の高い「ハチクロ信者」ということで、どうかひとつ……。

Dot Matrix MelodiatorUSK

ゼロ年代、もっとも衝撃を受けた音楽のジャンルがchiptuneでした。LSDjやnanoloopといった専用のソフトでゲームボーイのフルスペックを無理矢理引き出し、2つのPULSEチャンネルと1つのWAVEチャンネルと1つのNOISEチャンネル――たった4つの音を響かせることでこれだけ太く鮮明な音楽を奏でられるのかと吃驚します。そしてchiptuneはライブが最高に楽しい! 高まったパフォーマンスによりゲームボーイの電池が飛び出して音が止まることもしばしば。あとBPMをあげすぎてゲームボーイがフリーズしたり。カオスです。選んだアルバムは日本人アーティストでもっとも好きなひとり、USKさんの一枚。全曲ゲームボーイ一台での演奏。かっこよすぎます。

斑鳩トレジャー

僕にゲームと物事を突き詰めることの面白さを再認識させてくれた『斑鳩』を。浪人生のときに1日1コインだけ遊ぶことを半年以上継続して、ついにノーコンティニュークリアを達成したのですが、単純な僕は「これだけ難しいゲームでも毎日やってればクリアできるのだし、受験も余裕だろう」と思い込むことに成功。その後志望していた大学より一個上の大学に滑り込めたのだから人生は分かりません。ゼロ年代に産声を上げたゲームのなかで、僕が知る限りもっとも研ぎ澄まされ、もっとも完成度の高かったゲームのひとつです。そして僕が一生挑戦を続け、一生ハイスコアを更新し続けたい、唯一無二のゲームでもあります。

劇場版 空の境界

全七章完全劇場アニメ化――未だにこのくだりを音に聞くと肌が粟立つものがあります。実はその存在を知ったのは第三章公開のころ。気になって調べたところ、テアトル梅田で再放映をやっていることを知り、第一章、第二章を観るに至りました。全七章劇場アニメ化なんてどうかしている、と思いながら、全ての章を劇場で観て、全ての章のパンフレットを買いました。間違いなく、ゼロ年代の最後をもっとも力強く彩った作品でしょう。スタッフロールに綴られた「スーパーバイザー:太田克史」の一文にひっそりと嫉妬し、また慄然としております。編集者として越えなければならない高い壁を振り返り、今日はここまで。さー頑張ろう!

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