テーマ おらが里「自慢」
レギュラーセレクター 水曜日 太田克史さん
2011.10.05
僕は岡山県倉敷市出身。とはいえ岡山や倉敷にはもう何年も戻っていないから、「自慢」するも何もないのだが、さて……。
八つ墓村横溝正史
日本ミステリ史上に燦然と輝くこの傑作『八つ墓村』のせいで、岡山県北のイメージは地に落ちてしまった。だが、著者である横溝正史が岡山を「第二のふるさと」とまで呼び、深く愛した事実を知る人はコアなミステリファン以外にはほとんどいない。実は正史の大戦中の疎開先は岡山で、彼はその当時の疎開生活がきっかけで、岡山を深く愛するようになったってわけ。だからこの『八つ墓村』のそもそものコンセプトは、「こんなにものどかですばらしい岡山で、陰惨な事件が起こるというコントラスト」だったわけです。しかしそのコントラストがあまりにも強烈に成功しすぎてしまったせいで、今や岡山の県北といえば、「陰惨な事件」が起こりそうな場所ナンバーワンに。なんたる皮肉! 才能って、傑作って、怖い!!
日曜日よりの使者の詩−甲本ヒロト全詞集甲本ヒロト
辰吉丈一郎のDVDとどちらにしようかすっごく悩んだけれど、こちらをリコメンド! 甲本ヒロトは、辰吉丈一郎とならんで、僕の出身地である岡山出身の代表的人物なのだ。青春と書いて、きっとブルーハーツと読むんだぜ。いつかみんなで「終わらない歌」を歌おう!
世間雑話 人世の知恵野間清治
まさかこの僕が同じ組織に十数年もいつくだなんて、想像だにしなかった。編集者としての僕の「おらが里」である「講談社」って出版社は、無類の懐の深さを持っているのです。そしてこの『世間雑話 人世の知恵』は、講談社の初代社主・野間清治の著作から「いいとこどり」したベスト版の一冊。野間清治はとにかく破格の人物で、調べれば調べるほどおもしろい人物。本宮ひろ志の漫画の登場人物がリアルに生きていたらまさに野間清治、ってくらいヤバい人なのです。出版社志望者は、必ず読め。「雨の日、風の日、訪問日和」!!
太田克史さん
72年生まれ。編集者。95年講談社入社。03年に闘うイラストーリー・ノベルスマガジン『ファウスト』を創刊。舞城王太郎、佐藤友哉、西尾維新らをデビュー当時から担当する。10年、未来の出版社を目指し星海社を設立。代表取締役副社長に就任する。
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