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テーマ 日本人として驚いた「海外作品」

レギュラーセレクター 曜日

あえて、すべてをアメリカ資本発の作品から選んでみました。きっと多くの日本人がそうであるように、僕もアメリカには強い愛憎がある。まさに愛しているし、憎んでいる。それでも憎みきれないのは、きっと彼らの文化の力によるところが大きいと思う。彼らのつくる作品は、やっぱりすごい。

バイオショックスパイク

僕のアメリカ再評価のきっかけをつくったゲーム。オススメしてさしあげた乙一さんもすごく気に入ってくれたみたいで嬉しかった。さて、このゲームは、まずその設定がすごい。超科学で70年代に開発された海底都市、の廃虚、なのだ。まずそこからして二重、三重の仕掛けにあふれている。国家や文化としての「アメリカ」の嘘くささ、恐ろしさ、どうしようもなさ……を一流のエンタテインメント作品として昇華している。悲しいことだが、日本人は、まだこんなゲームを一本もつくっていない。

The Elder ScrollsIV:オブリビオンスパイク

人生が狂うゲーム、ナンバーワン。このゲームさえあればネットワークRPGなんていらないんじゃないの? と思うくらい多岐に亙るシナリオ、イベント、キャラクターの山、また山。もし学生時代にこのゲームを体験していたらきっといわゆる「廃人」になるまでプレイしていたと思う。まさに封印指定必至のゲームだ。ああ、この圧倒的なまでの物量の洪水に、僕たちの祖父の世代は敗れていったんだなあ……。

Fallout 3(フォールアウト3)ベセスダ・ソフトワークス

僕が講談社BOXの部長を退いた冬に絶望的なまでに嵌まったゲーム。あの頃は、この僕にも時間がありあまるほどあった。米中で核戦争が起こった未来の、そのまた二百年後の未来のワシントンDC……という、ねじれまくった設定。なにしろ核戦争後の世界なので、見渡す限り一面が廃虚、廃虚、また廃虚……という廃虚フェチにはたまらないゲームだ。核兵器を唯一実戦使用した国であるアメリカが、核戦争後の世界をテーマにエンタテインメント作品を成立させてしまう、この矛盾。日本人は核を絶対的なタブーにするか、極度に情緒的に扱うばかりで、こんなゲームは一本もつくれていない。どうにもならん。

WATCHMEN ウォッチメンアラン・ムーア

映画『ウォッチメン』はすばらしい作品だった。僕はもちろん大好きだ。いずれ出る、と言われ続けている完全版ことディレクターズカット版の公開を待ちに待っているファンは僕の他にも多いことと思う。しかし、原作となったこのコミックは映画よりもはるかにすばらしい作品である、と断言したい。これだけ高いレベルのコミックの存在を知らずして、何が「クール・ジャパン」か。島国根性に染まりきっていたかつての自分を全力で叩きたくなるような、そんなすごい作品。まだ読んでいないのならば、とにかく読むべき。僕たち日本人はアメコミ世界の豊饒さについて無知すぎるのだ。

キック・アスマーク・ミラー (著)/ジョン・ロミータJr. (イラスト)

『キック・アス』は映画を見損ねてしまったので、コミックから入ることにした。どのページを開いてみてもすばらしい漫画表現で、ただただ圧倒される。さて、ここでひとつ問題提起をしてみることにする。この『キック・アス』という作品は、我が日本が誇る漫画、『殺し屋1』の強い影響下でつくられたコミックなのではないだろうか。ラバースーツの主人公を筆頭に、プロットやキャラクターにシンクロする点があまりにも多すぎる。もし僕の読みどおりに日米の漫画⇔コミック交流から生まれた傑作、だとするならば、日本人読者にとってはまた味わい深い作品だと思うのだが、いかがか。

太田克史さん

72年生まれ。編集者。95年講談社入社。03年に闘うイラストーリー・ノベルスマガジン『ファウスト』を創刊。舞城王太郎、佐藤友哉、西尾維新らをデビュー当時から担当する。10年、未来の出版社を目指し星海社を設立。代表取締役副社長に就任する。

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