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テーマ なぜこれが売れないのか分からない!

レギュラーセレクター 曜日

基本的……念のため強調しておきましょう、「基本的」に……佐藤は売れていないものは摂取しません。というか、できません。マイナーな電化製品は買いませんし、服だって知られたブランドのものばかり。コーラもアイスもシリアルも有名品だけ。本ですら、歴史に残った名著か、誰かがすすめたものしか読まないし知らない。なぜだ。なぜそのように貧しいのだ。理由は明白で、なぜなら世界は、「メジャーなもの」だけで構成されているから。自分の周囲に転がるものを、ちょっと確認してみるといいでしょう。あなたの周りには、そこそこの人であれば普通に知っているものしかありません。あるいは、誰も知らないものしかありません。

茶碗

例えばこの商品、Amazonのホーム&キッチン部門では現在第119338位で、レビューすらありません。誰がどう観測しても、「売れていない」というカテゴリーに分類されます。しかし、佐藤は本品を使っていますし、そのとき「なぜ売れないんだ?」と憤慨したり不思議がったりもしません(つづく)。

タワーファン

(つづき)一方こちらが、ホーム&キッチン部門で現在第1位の商品です。佐藤にはまったく解らないのですが、このタワーファンと先ほどの茶碗のあいだに、どのような差があるのでしょう。本機を使っていたら「普通だねー」という言葉を、件の茶碗を持っていたら「マイナーだねー」という言葉を浴びるのですか? そんな馬鹿な(つづく)。

しろくまのきもちビッグウィング

(つづき)順位も分類も有名無名も意味はない。とは思いませんし、ランキングにおけるバトルや優劣は、男の子として実に楽しく、好戦的に背筋が伸びるものです。しかし、このような場で、このような序列を、このような面々がつけるのは、趣味のいいものではありません。もちろん佐藤は、「汚い質問」だと読者に思わせようと誘導していますし、質問の本質が、「自分は好きだが世間が認めぬ歯がゆき商品」なのも承知しています。でもここで、本や映画のタイトルを挙げられますか? 作者が死んでいればいいという話じゃないんだよ。

佐藤友哉さん

1980年生まれ。作家。『フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人』でメフィスト賞を受賞し、「戦慄の19歳」としてデビュー。2005年、『1000の小説とバックベアード』で第20回三島由紀夫賞を受賞。本年『デンデラ』が映画化され、6月より公開される。愛称は「ユヤタン」。

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