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テーマ たった今、Amazonで「予約中」

レギュラーセレクター 曜日

「予約とは未来への架け橋である」という言葉が、佐藤友哉先生の名言の一つなのは皆さんご存知の通りですけれども、それだけ「予約」なる言葉は我々を魅了してくれます。この世に「予約」があるかぎり、地球人類が絶滅することはないでしょう。我々は「予約」という名の不確定なチケットを持つがゆえに先の人生を期待し、とりあえず生きて行けるのです。ゲームでも映画でも小説でも、「予約の受付きた!」というだけで、今がどんなに苦しくても生き存えることができるのです。「いつ発売されるのかは解らないが、発売されることは決定している」多くの作品を待ちながら、この退屈と云われて久しいしみったれた今現在を、ともに生きようではありませんか。Amazonはいつだって「予約受付中」なんだから!

ドラゴンクエストX(仮称)スクウェア・エニックス

何という神々しい響きだろう。『ドラゴンクエスト』の新作は、いつだって僕たちを眠気から呼び覚まし、新たな寝不足の日々をもたらしてくれる。予定調和な、それでいて新鮮な革命の鐘が鳴り渡り、次なる進化/深化へと導いてくれる……って、何だか『ロッキング・オン』の書評みたいな文体になってしまいましたが、このように肥大したマンネリを抱えつつ、毎度「爆発」を見せてくれる日本文化を、佐藤はサザンオールスターズのほかには知りません。ありがとうドランゴクエスト。永遠にドラゴンクエスト。 

真・女神転生(仮称)アトラス

この野暮ったくも物騒な、表舞台に立つ気などハナからなさそうな名称のゲームに、多くの人間が囚われています。それは一つの宗教のように。否、宗教そのものとして。時の流れやゲーム業界の流れを、あるときは嘲笑し、あるときは取りこんで、女神転生という一個の巨大なジャンルは、今も孤高の位置に座しているのです。すべての殺人、すべての神様、すべての男子を内包する唯一無二のゲームでしょう。人を殺せないのだから『女神転生』をやればいいじゃない。

アーマード・コアV(仮称)フロム・ソフトウェア

日本男児たるもの、己がロボットに乗ることを常に想定するわけですが、同時にロボットに乗る現実がやってこないのも、仮にやってきたら自分が仲間外れに遭うことも理解していまして、そのようなジレンマを解消する仮想現実として、『アーマード・コア』以上に最適なものはないでしょう。改造。操縦。物語。あらゆる妄想を取り揃えるこのゲームは、今日も青春状態にある男の子たちを、安心で安全な戦場へと導いてくれるのです。

ニンテンドー3DS任天堂

時代遅れを自慢するつもりはありませんが、佐藤は3Dという文化を未だに体験していません(そういや3DOも未体験だ。某ハイパーメディアクリエイターの番組は毎週観ていたけども)。そんな人間すら3D空間に転送してくれるこの機械ですが、ええ勿論まだ買えていませんよ。「東京だし予約しなくても買えるだろ」という、都内在住者が良く陥る罠に、今回も引っかかったわけです(追伸・後日、一台いただきました。まさか結婚祝いで3DSが届くなんて……)。

Roland JC-120ローランド

ゲームに偏りすぎたので、音楽の話で締めましょう。これは「予約注文」なのでカテゴリーからは外れますが、特例の美学として目を瞑って下さい。ジャズ・コーラスという、音楽に魅せられた者なら誰もが通過する名機へ思いを馳せるたび、佐藤は架空のバンド編成をつい夢想します。「ギターボーカルは俺で、テレキャスにジャズ・コーラス直結。リードギターはストラト。ドラムはあえてのTAMAで、ベースはプレベで女の子希望。方向性はシューゲイザー」。そんなバンドを一度でもやっていたら、作家にならずに済んだのにね。

佐藤友哉さん

1980年生まれ。作家。『フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人』でメフィスト賞を受賞し、「戦慄の19歳」としてデビュー。2005年、『1000の小説とバックベアード』で第20回三島由紀夫賞を受賞。本年『デンデラ』が映画化され、6月より公開される。愛称は「ユヤタン」。

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