テーマ My Best Soundtrack
レギュラーセレクター 月曜日 田中ユタカさん
2011.11.28
巨大な閃光の中に眩く蒸発してゆく都市、そこにかぶさる物悲しい女声コーラス。突き刺さりました。OPの重厚な歌声。EDの意味深い歌詞の世界観。ヤマト発進の力強い音楽の熱い熱い高揚。すべてがこれまで馴染んできた子ども向けの「TVまんが」とは違っていました。夢中になりました。『宇宙戦艦ヤマト』で僕ははじめて映像作品の音楽を強く意識しました。ああ、そして、艦首波動砲発射までの一連のクルーたちのセリフとせり上がってくるようなSEは最早一編の詩であり、歌です。「エネルギー充填120%!!」
未知との遭遇スティーブン・スピルバーグ
スピルバーグ映画なら『ジョーズ』や『E.T.』も印象的ですが、やはりコレ! 「レミドドソ」、この5つの音、本当に異星人とコミュニケーション出来てしまいそうな、不思議で素敵な音階です。空を覆う巨大なマザーシップがついに、周囲のガラスが割れるほどのバカでかい音で返答した時の、腹から笑いがこみ上げるような感動! 「こんにちは」「はじめまして」「友だちになりましょう」「わたしたちは孤独ではない」少しの音と手話だけの“はじめての出会い”。ファンタスティック!!
台風クラブ相米慎二
荒れ狂う豪雨に打たれながら、子どもたちは声を張り上げて『もしも明日が…。』を歌います。わずかに身に着けていた下着も脱ぎ捨てて、男の子も女の子も素っ裸になって歌います。相米慎二監督の映画の子どもたちは、よく突然歌い出します。その瞬間、耳慣れた巷の流行歌は、野蛮で凶暴な、若々しい産声に変わります。生が、性が、死が、生命が溢れ出します。
道フェデリコ・フェリーニ
夜の海辺で男が泣き崩れる。波に濡れた身体を震わせ、砂浜に突っ伏してひとり泣く。それまでずっと自分勝手で、乱暴で、女の心がとうとう壊れてしまうまで散々悲しませた男です。何だって今さら泣く? 僕は一瞬、この男、突然笑い出しでもしたのかと思いました。それが尋常でない号泣だったことがはっきりするとともに映画は終わります。男の心情を説明するセリフなどは一言もありません。そこに善悪はありません。剥き出しになった「男」がいます。この恐るべきラストシーンに接するといつも、男の一人である僕もまた黙るしかなくなります。
田中ユタカさん
66年生まれ。マンガ家。主な作品に『愛人[AI-REN]』、『ミミア姫』、『愛しのかな』、『もと子先生の恋人』。『初夜』などの純愛系作品、多数。“恋愛漫画の哲人”、“永遠の初体験作家”、“愛の作家”と呼ばれる。携帯コミックでも新作を意欲的に発表。
本文はここまでです。