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テーマ 死ぬまでにチャレンジしてみたい三つのこと

レギュラーセレクター 曜日

30代ぐらいまでなら「死ぬまでに」は漠然とした「いつかは」ですが、40代になるとかなり実感のあるリアルなスケジュールになってきます。僕は今年45歳です。気分は、「いつの間にか8月になりお盆も間近となった夏休み」に似ています。随分遣り残した宿題があるような、ないような。

それから夏目漱石

人が何故、恋をするのかと言えば、それは、それまでの人生を破壊するためです。人生にもヴァージョン更新が必要ですが、それは自分ひとりでは決して出来ません。他人の手が必要です。今までずっとこうして生きてきたけれど、もう、どうしてもこれまで通りでは生きられなくなった時、人は運命の恋人に出会います。「これからもそのままで問題ない」時に人は恋なんかしません。恋は平和も安全も約束も与えてはくれません。それでも、切実で真っ当な、人の営みです。

手塚治虫〜創作の秘密〜手塚治虫

昨年の大河ドラマ『龍馬伝』のセリフじゃないですが、ちゃんと自分の命を使い切りたいと願います。「死ぬまで」にどれだけ働けるのかはわかりませんが、使い切ってしまいたいです。人生が期間限定のものだと感じ出すと仕事に対する考え方を再設定する必要に迫られます。若い頃、漠然と想い描いていた「成功者になる」とか「勝ち負け」とか「お金」等は、所詮、実際にやってみる前に頭で描いた空想的な「仕事の果実」だったんだと、叩きのめされます。いま、ちょうどそういう年頃です。

うらやましい死にかた五木寛之

老い、病、死の準備、臨終。事故や災害、戦争や犯罪でなければ、数年から数十年以内に、僕は確実にこれら一連のイベントに臨むことになります。人生最大の強制イベントです。自分はそれなりにちゃんとクリアできるかな。大丈夫かな。やっぱり怖いかな。その場になってみないとわからないです。文明の歴史が始まる以前から、全ての人がちゃんとやってきたことです。自分もまた生きものの一員として、きちんとその義務を果たしたいです。

田中ユタカさん

66年生まれ。マンガ家。主な作品に『愛人[AI-REN]』、『ミミア姫』、『愛しのかな』、『もと子先生の恋人』。『初夜』などの純愛系作品、多数。“恋愛漫画の哲人”、“永遠の初体験作家”、“愛の作家”と呼ばれる。携帯コミックでも新作を意欲的に発表。

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