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テーマ おらが里「自慢」

レギュラーセレクター 曜日

「人類の進歩と調和」、EXPO'70、大阪で日本初の万博が開催された頃。万博会場に近い大阪北部の千里丘陵には真新しい大きな街が生まれていました。千里ニュータウン。元は竹薮だった土地には白い四角いモダンな団地が幾棟も建てられ、入居者たちが暮らしを始め、街の歴史が刻まれだしました。僕は千里ニュータウンで十代前半まで育ちました。団地の子でした。「鉄筋コンクリート」という言葉に未来的な響がありました。僕の故郷ははっきりと人の手で作られたものです。

太陽の塔:「1/350スケール 太陽の塔 ソフトビニール製塗装済み完成モデル」海洋堂

ヌッ!と建っています。映像や写真になったものを見るのと、あの巨大な現物と向かい合うのとでは、体験の大きさはまったく違うものがあります。結構、怖い感じもします。青空に大きく両腕(?)を広げたアレの姿はものすごい違和感です。イッパツで世界をヘンなものに変えてしまいます。「今日の芸術は、うまくあってはならない。 きれいであってはならない。ここちよくあってはならない」

手塚治虫:「手塚治虫漫画全集全400巻セット」手塚治虫

マンガ家の端くれとしては、最大の地元自慢ですね。手塚治虫先生は豊中市のご出身で、大学も大阪大学。手塚治虫記念館は宝塚にあります。この全集、僕は全巻を持ってはいません。いえ、全手塚作品の10分の1すら僕は読むことも出来ていないと思います。マンガ原稿を1枚描くのにどれだけのエネルギーが必要かを身をもって知っている者としては、手塚先生の遺された仕事の、その恐ろしい量にまず沈黙してしまいます。

阪急電車:「Nゲージ 車両セット 阪急6300系 基本 (4両) #10-050」カトー

創始者の小林一三氏は、阪急電車の始点の梅田に百貨店を興し、終点の宝塚に宝塚歌劇団と大劇場を作り、沿線に街を作りました。多くの人たちの生活が変わりました。『起動戦士ガンダム』のオープニングナレーションのごとく「人々はそこで子を産み、育て、そして死んでいった」のです。阪急電車の車窓から街並みを眺めていると、すべての道路も電車も街も、いつの間にか自然にそこにあったものでなく、誰かが想い描き汗を流して実行した結果なのだなあと想ったりします。人の歴史の連続の上に僕たちは暮らしています。

田中ユタカさん

66年生まれ。マンガ家。主な作品に『愛人[AI-REN]』、『ミミア姫』、『愛しのかな』、『もと子先生の恋人』。『初夜』などの純愛系作品、多数。“恋愛漫画の哲人”、“永遠の初体験作家”、“愛の作家”と呼ばれる。携帯コミックでも新作を意欲的に発表。

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