テーマ シビれた「装丁」、ヤラれた「ジャケット」
過去のレギュラーセレクター 安倍吉俊さん
2011.01.21
いろいろあるようで、思い出そうとするとなかなか出てきませんね。ジャケットは、CDの、という意味だと思うのですが、僕はほとんど音楽を聴かないし、最近はたまに買う音楽もiTunesなもので……。3DメガネつきのFlipper's Guitarの『ヘッド博士の世界塔』初回版……と思ったらAmazonにリンクがないし。必然的に本の、という事になるのですが、僕はブックカバーする派なので、意外と好きな本でも装丁の記憶がなかったりする事に改めて気づかされたりしました。透明なカバーを買おう。
FLAT村田蓮爾
自分も参加した本なのであれですが、ケースから本を取り出した時、ボツボツと穴の空いた表紙にまんまと驚かされました(笑)。製本なかなか大変だったようです。村田さんに「意味あるの?」と聞いたら「ないよ」との事でした。当時はひとつの作品に目一杯時間をかけられました。今はとにかく作品が消費されるサイクルが速くなってしまって、じっくり描くのが難しくなりました。
魔天天野喜孝
改めて見ると、カバーのこの一枚の絵にどれだけ影響を受けたんだと驚かされますね。迷路みたいな模様、流れる髪、蛇、この俯き加減、よく見るといろんな所に変なもの(人?)がいたり……。とにかく、何時間見ても『見終わらない』、圧倒的なエネルギーを感じました。製作中の写真で、描きかけの絵の上に何枚も継ぎ接ぎのように紙を貼って描き直していた(のかよく分かりませんが)のも印象的でした。
初代iPhone(AmazonはiPhone4)Apple
アメリカでの発売日に、テキサスの友人に頼み込んで買ってもらいました。いろいろあって7万円くらいかかりました。その苦労もあるのですが、開封したiPhoneは宝石のように輝いて見えました。ものすごく高価な箱ではないのですが、Appleは見せ方や演出がうまいです。Appleの製品が好きな理由のひとつに、この開封する瞬間の楽しさがあります。パッケージに過剰にお金をかける必要はありませんが、手間をかける事は大切だなと思います。開封の瞬間を楽しく演出できるメーカーの製品は自然に好きになりますし。
KATAN DOLL天野可淡
とにかく暇さえあれば本屋に入り浸っていた二十代の頃、風邪で高熱を出して寝込んでいた時、何故だか分からないけど『外に出なければ』と思い、ふらふらと雨の中を徘徊し、吸い寄せられるように本屋に入り手に取ったのがこの本。熱でぼうっとした頭で『そうか、この本に呼ばれたのか』と確信するくらい、大きな影響を受けました。これは復刻版? 僕が買ったのはもう少し小さな判型のもの。
遠い音楽ZABADAK
今考えると、一時期、自分が好んで使っていた色の原型はこのジャケットかもしれません。昼、文房具屋と漫画のアシスタントのバイトを掛け持ち、夜は美術系の予備校に通っていた頃、ポータブルCDプレイヤーはまだなかったので(高価で手が出なかっただけ?)カセットに録って、ウォークマンで聴いていました。アシスタント先の漫画家さんの家まで、真っ暗な寒い冬の道をとぼとぼ歩いたのを思い出します。
安倍吉俊さん
71年生まれ。漫画家。イラストレーター。東京芸術大学修士課程修了。代表作に『灰羽連盟』『ニアアンダーセブン』『リューシカ・リューシカ』などがある。自他共に認めるデジタルガジェットマニアだが、初期不良を引き当てる特異体質の持ち主でもある。
本文はここまでです。