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テーマ これが「わかる」人ならば、すぐに友達になれると思うもの

過去のレギュラーセレクター

「好きな映画は?」などと、雑誌やウェブの企画で過去に多く訊かれたが、ここに挙げたもののうち「テクノデリック」を除いて、どれも挙げるのは初めてだと思う。例えば、誰かと仲良くなったとしても、会って数回では言わないような作品たち。ある意味、どれもが僕の核であり、どれもが僕の一部である。音楽、映画、画集、写真、漫画と5つ挙げたが、そのすべてが同じ、という人がいるなら、本当に仲良くなりたいと思う。

テクノデリックイエロー・マジック・オーケストラ

「イエロー・マジック・オーケストラの最も好きなアルバムは?」という質問には答えないようにしているが、最も聴いた回数が多いのは「テクノデリック」だろう。そして、この10年で最も聴いたイエロー・マジック・オーケストラのアルバムもきっと同作だ。このアルバムは1つの「世界」を持っている。このアルバムを聴いたときから、その世界は創られ、聴くたびに拡大され、この世界とは別の世界として存在している。そして、いまでも、ふとそこへ遊びにいきたくなるのだ。この先もずっと聴き続けるだろう。

宇宙戦争スティーブン・スピルバーグ

僕はとにかく、「地球ピンチもの」の映画が好きだ。地球がピンチになる作品なら、最初からプラス50点である。だから、この映画は100点以上の得点となってしまった。物語は原作があるので置いておいて、映像や演出が素晴らしいのだ。キャッチボールで親子の関係を描き、炎に包まれた列車のシーンでは不安と疲れを描く。川に流れる数多くの死体は、「僕の、映画・名場面トップテン」に死ぬまでランクインするだろう。そして、なにより、すべてが主人公視点で描かれているところが素晴らしい。超サディスティック映画。大好き。

MARK ROTHKODiane Waldman

マーク・ロスコの画集であればなんでもよいが、僕が最もよく見るロスコの本としてこれを挙げた。20世紀初頭に生まれ、僕が生まれる直前に亡くなってしまったアメリカの画家。僕の最も好きな画家は、マルク・シャガールとマーク・ロスコだが、「これがわかる人ならば」ということで、マーク・ロスコを選んだ。ロスコのなにがよいかなんて、僕に説明できるわけがないから、ぜひ作品を見てほしい。最初はグーグルのイメージ検索でもよいから。そして、ぜひ本物を。少ないだろうが、少なくとも1パーセントの人の人生を動かすと思う。

Mind's Eye稲越功一

恥ずかしながら自分の作品に使わせていただくまで、彼の写真にそこまで興味はなかったのだが、彼の作品と出会って、そして、彼と出会って、写真というものの見方が変わった。彼の写真は、すべてが平等である。人も川も、花も落ち葉もすべてが対等に存在する。その温かく繊細な視点が好きだ。この世界が、彼の思い描く世界だったら、どんなにステキだろうと思う。彼とは仕事を通して仲良くさせていただき、何度か食事をしたり会話をさせていただいたが、その心の成り立ちが不思議で仕方なかった。亡くなってしまったことが本当に残念だ。

大使閣下の料理人西村ミツル かわすみひろし

「好きな漫画ベスト5」とかそういう企画には、何度も回答したことがあるが、挙げるのはいつも「漂流教室」とか「アドルフに告ぐ」などである。しかし思えば、今日まで最も読んだ漫画は「大使閣下の料理人」なのではないだろうか。僕のベッドの引き出しには、寝る前に読む漫画本のコーナーがあり、いくつかの漫画が全巻入っているのだが、「大使閣下の料理人」が最も読んでいる漫画だと思う。何度も何度も。あの世界が好きなのだ。幸せな気分になる。幸せな気分のまま眠ることができる。ちなみに「BARレモン・ハート」と、かなり迷った。

飯野賢治さん

70年生まれ。クリエイター。95年、ゲーム制作会社ワープを率い『Dの食卓』を発表、ゲーム界の風雲児となる。その後、『エネミー・ゼロ』『風のリグレット』などを発表。現在に続くクリエイターオリエンテッドなゲーム製作者の先駆けとなった。

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