テーマ ザ・岩波書店
レギュラーセレクター 火曜日 釣巻 和さん
2011.10.11
こんな選出ができるほど、わたし本を読んでないのです。…うーーーん、難しい。背伸びをしても、しょうがないから、わたしらしく選びます。心をえぐるような感動とは違う、でも、はるか昔から、みんながずっと守りつづけた明かりのようなナニカが、今わたしの手の中で灯る。少年少女の手で灯る。その明かりがわたしにとって、ザ・岩波書店。かな?
絵のない絵本アンデルセン
これは、月が、世界各所で見た出来事を、とある誰かに話して聞かせた話を綴った短編集。この本を読んでから、月が見てるなって、思うようになりました。もしも、わたしが、なんもないとこで自分の足にけつまづいて転げても、一週間かけて作ったネームが全部ボツっても、失恋とかをしても、月が見てたら、救いです。だって、その月がその話を、おもしろおかしくどこかの誰かに夜中お話ししてくれて、それがネタになってひとつの絵本ができあがるなら、本望だからです。漫画家として悔いなし!! 人生ネタならすべて良し! 強く生きろよ老いも若きも!
モモ―時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語ミヒャエル・エンデ
小学生の頃、クラスで一番字のきれいな子がこの本を読んでいました。…わたしも真似して読んだのが、はじまり。ミヒャエル・エンデの本は、どれも表紙がすごくすきで、何度も手にとったことがあって、だけどはじめの数ページを読むだに眠くなっちゃって、わたしには、どーも読み進められなかったのです。でも、モモだけは…読めた。学校でエンデの本を「おもしろかったよね」って言えた時ちょっと嬉しかったのです。わたしにとってそういう本でも、あるんです。毎日毎日時間がない、と思ってませんか?時間どろぼうの仕業…かも。
森は生きているサムイル・マルシャーク
まず申し訳ない。何故なら、わたしはこの本を読んだ事が無いのです。じゃあなぜここに選ぶのかっていうと、わたしが今一番読みたいからです。…保育園のころ、はじめての学芸会で"にがつのせい"を演じたんです。そう、"二月の精"…。何故かこの役がお気に入りで、今でも歌だけ、覚えてるの。でも、演目がずうっとずうっと思い出せず、つい先日ツイッターでそれをつぶやいたら「それは"森は生きている"では?」と教えていただいたのでした。それで、この本があることを知りました。真冬に、春に咲くマツユキ草を探し、吹雪の森に入ったところで、少女は十二月の精たちに出会うんです。みなさんは、マツユキ草を知っていますか? 和名では、あまりなじみが無いかもしれないけれど、"スノードロップ"といえばわかるでしょうか。花言葉は「希望」なんだって。希望はいつだって絶望の後にあるのだから、この可憐な花は強い花だと、わたしは勝手に思ってます。
釣巻 和さん
87年生まれ。漫画家。代表作に『童話迷宮』『くおんの森』『水面座高校文化祭』などがある。2010年11月に坂本真綾の満月朗読館・第三夜『ベッドタイム・ストーリー』(著・乙一)にイラストを寄せ、その繊細な絵筆によって多くの視聴者を魅了した。
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