テーマ 夏の終わりに聴きたい音楽
レギュラーセレクター 火曜日 釣巻 和さん
2011.09.20
一年で一番すきな季節は夏です。遠くで鳴る風鈴も、放課後の麦茶も、夏祭りの浴衣も、あと冷房のきいた図書室とね…ぜんぶすき。でもわたし、トロくさいので、いつも夏の終わりに気がつけないんです。眠っていて、目を覚ましたら、もう秋になってるみたいな。だから、「あ、夏が終わる」って、その終わりのしっぽを今年こそ掴もうって、毎年思ってる。
夏の光キリンジ
渦中にいるとき、終わりを感じる事が難しいなら、せめて、いま、夏の真ん中に立ってるって、自覚が欲しいです。日々は移ろって、この夏が終わっても、蝉のように朽ちたりもせず、8月31日の後は新学期で夏の宿題が終わらなくても学校は始まるし、秋は来るし、私たちは秋を生きる。今がいつか過ぎるって、わかっても尚、夏を夏らしく生きるのが好き。そういうの、人間で良かったなって思えます。だからわたしは、夏の終わりにこれを聴きたいです。それに夏の終わりは、あくまで、まだ夏だもんね。
ふるさと
わたしの住んでる地域にて、夏は6時、町内に響き渡りますのは「故郷」。…これが鳴ったら、帰らなくっちゃ。じゃあね、ばいばい、また明日。子供の頃から聴いて来た故郷は、わたしにとって、「さよならの合図」になりました。もし、これを鳴らしてくれるなら、わたし言えると思うんですよね。夏に、「じゃあね、ばいばい、またらいねん!」って。
ラジオ体操体操
はじめは、スタンプを集めたくって。ご褒美のおやつが欲しかったから、つい通ったのです。夏休みの朝5時だったかな? だから、わたしにとってラジオ体操は夏の思い出です。夏の終わりに聴くならこれなの。音楽って言われると、ちょっぴり違うけど、これを聴くと今でも目の前に見えてくるのは、ともだちのきっちりしたおさげの後ろ頭とか、寝間着のままのおばあちゃんの緩んだおしりとか、老いも若きも後ろ姿、あー、いっぱい。わたしは夏が大好きだから、もう少しだけ、夏を思い出していたいから、最後に聴くなら…やっぱりこれかな。
釣巻 和さん
87年生まれ。漫画家。代表作に『童話迷宮』『くおんの森』『水面座高校文化祭』などがある。2010年11月に坂本真綾の満月朗読館・第三夜『ベッドタイム・ストーリー』(著・乙一)にイラストを寄せ、その繊細な絵筆によって多くの視聴者を魅了した。
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