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テーマ 他人には理解されにくいが、自分は最高だと思うもの

ゲストセレクター 2011年02月

自分で言うのもなんですが、娯楽作品は広く浅く楽しむタイプなのでマニアでディープな作品を紹介できないのがアレなのですが、「これはもうちょい売れてもよかったんじゃないかなあ」と惜しまれてならない、埋もれてしまった作品を中心に選んでみました。

ハワード・ザ・ダック 暗黒魔王の陰謀ウィラード・ハイク

十代の頃、この映画を映画館で観て「映画ってなんて面白いんだろう!」とひっくり返った作品。始まりから終わりまで息を呑んで見入って、リー・トンプソンのかわいらしさに胸を高鳴らせ、怒濤の展開に泣いて笑ってハラハラして、終わったあとは心から笑顔が浮かんで元気が出た。わたしのなかでは現在でもトップクラスの娯楽映画なのですがなぜか! ラジー賞4冠作品なのです。なんで???

日本海大海戦 海ゆかば舛田利雄

日本戦争映画史上最高傑作といえば誰もが口をそろえて「二百三高地」を推すに違いないのですが(私見)、同じ舛田利雄監督が「大日本帝国」につづいて手がけた「東映戦争三部作」最終作が当作。しかし前2作の完成度には遥かに及ばず、とってつけたようなメロドラマとぶつ切りエンディングが酷評されて現在では埋もれてしまっています。が、当作品の海戦シーンは圧巻。敵前大回頭という世界海戦史に残る大博打は、先頭艦三笠の「約15分間、その場に静止して敵の集中砲火に耐えうるか」が成否をわけるのですが、まさに日本の運命がかかった15分間を耐えしのぐ三笠艦内の極限状況がすさまじい迫力で描かれています。ここだけでも見る価値あり。最後の変なトランペットシーンは微笑みながら見守るのが大人。

みつめてナイトコナミ

わたしがゲームセンターの店員だった十数年前。メーカー系列の店に勤めていたため「ときメモ」関連のプライズ(クレーンゲーム等の景品)を扱っていて、ちょうど発売直後だったこのタイトルも「プライズになるならプレイしておかなきゃ」くらいの感覚で購入したところ、死ぬほどハマってしまいました。よく練られた世界設定、魅力的なイラスト、ひとりひとりのヒロインの深みのある造形……。しかし発売当時は「ときメモ」ブームもあって、他社からも多くの類似タイトルが出されており、その波に呑まれて大きな話題を起こすこともなく埋もれてしまいました。ですがあくまで主観ですが、「ときメモ」「ラブプラス」に比肩する、いや、もしかすると凌駕しているかもしれない、そのくらい完成度の高いゲームです。PSPで復刻してくれんかなあ。

美しい日本の秘湯 秘湯ロマン傑作選春馬ゆかり(出演)

春馬ゆかりさんという方が隔週(最近は月1になってる?)で全国の温泉に入ってくださる、テレ朝の「秘湯ロマン」総集編DVD。仕事しながら後ろで流しっぱなしにしているのですが、癒し系の音楽と美しい日本全国の秘湯風景、そして浮世絵のごとき春馬さんの入浴シーンが相まって和ませてくださいます。DVDでは恐ろしいことに春馬さんがバスタオル無しで入浴する特典映像が入っておりまして、湯面に乱反射する太陽光線を巧みに使って肝心のところを覆い隠すカメラマンのテクニックに「ちくしょーばかやろー」と叫んでしまったりして大変楽しませていただいております。ありがとうございます。

パニッシュメント江波光則

実はこの作品、今月19日に読んだばかりなのですが、腰を抜かすほどものすごかったので急遽、この記事にねじこむことにしました。直前まで別の作品を薦めていたのですが、それを取り消してこの記事を新たに書き足すほどの熱の入れようです。いまを生きる少年少女の心理と行動と言葉遣いを非常に精密に鮮明に描き出しつつ、人間にとって永遠のテーマへこれでもかと踏み込み、さらに読み始めたら止まらないほど面白い。「現代性」と「深み」と「面白さ」をこのレベルで実現してしまっている小説はそうそうない。これほどの完成度がありながら、現状それに見合う評価を受けているとは思えず、僭越ながら猛烈にお薦めしたい。ラノベの枠を越えて、小説を愛する全ての人に読んでほしい傑作です!

犬村小六さん

71年生まれ。作家。2008年に発表した『とある飛空士への追憶』で、高い評価と圧倒的な支持を得る。他の作品に『レヴィアタンの恋人』『とある飛空士への恋歌』などがある。書き下ろし新作『サクラコ・アトミカ』は今春星海社FICTIONSより刊行予定。アニメ版『とある飛空士への追憶』は今秋より全国公開予定。

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