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テーマ この作品の「テクニック」に惚れた

レギュラーセレクター 曜日

こういう公共的な場で、何かを悪く言うのはすごく難しい、というか勇気がいります。なので、こういう誉めるという行為は気楽で助かります。では、いきましょう。

左巻キ式ラストリゾート海猫沢めろん

大学生三回生の時、コミケ二日目の列に並びながら、ずっと読んでいました。列が動きだした後も放さず、そのまま入場しました。そして企業ブースに向かいました。あの日、企業ブースで『左巻キ式ラストリゾート』を持っていたのは自分だけだったはずだ。コミケ二日目のことは何も思い出せませんが、この本を読んでいたことばかり記憶に残っています。本ってこんなに自由にやってもいいんだということを、佐藤友哉さんの本に続き、感じ取った一冊。

魔法陣グルグル衛藤ヒロユキ

顔だけアヒルになったり、腋でおにぎり握ったり、グルグルの全盛期のギャグのセンスはそうそう乗り越えられないと思います。おそらく、グルグルあたりが私が萌えというものに触れた瞬間でした。あの頃は自分もまだ純真だった……。これは誰か本気で論証するべきだと思うのですが、今の二十代後半ぐらいの世代だと、ガンガン、エニックスの諸作品が、最初に萌えに目覚めるきっかけだという人はすこぶる多いと思います。ためしにランダムで抽出した二十代後半の人間百人に電極みたいなのをつけて、「新山たかし先生」とかつぶやいたら、絶対反応を示す人間がいる。

ドグラ・マグラ夢野久作

有名どころすぎて、出すのが恥ずかしいのですが、ここまでアイデアをつぎこんでいる本って、ほとんどないのではないかと思います。これ、分解したら長編十五本ぐらい書けるのではないだろうか。ただ、本にパワーがありすぎて、やすやすとは再読できないのが、難点。しかし、なんでこんな古い本なのに、こうもスラスラと読めるのか。

森田季節さん

84年生まれ。作家。2008年、『ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート』(MF文庫J)でデビュー。他の作品に『ともだち同盟』(角川書店)、『不動カリンは一切動ぜず』(ハヤカワ文庫JA)、『お前のご奉仕はその程度か?』(GA文庫)などがある。今最も注目される新鋭の一人。書き下ろし新作『エトランゼのすべて』は星海社FICTIONSより好評発売中。

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