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テーマ 仕事場にずっと置いてある「座右のモノ」

過去のレギュラーセレクター

仕事場には、かなり多くの本があるが、いつも近くに置いてあるものばかりを挙げた。「座右のモノ」ということで、ニールズヤードのアロマや、MARKS & WEBのキャンドルなどを考えたが、残念ながら、どれもAmazonでは売ってないので、今回は思い切ってぜんぶ書籍にしてみた。自分の「なにか」を確認するのに使う本たち。迷ったときに見る「羅針盤」のようなものですね。

ビートルズ全詩集内田久美子・訳

これは付き合いが長い本だ。買ってもう20年くらいになると思うが、ずっと読んでいる。「仕事場にずっと置いてある」というのがお題だが、僕の机から手の届く範囲に、20年置いてある本はこれだけだと思う。ビートルズの英語の歌詞は、訳すのが難しいというか、人によっていろいろな解釈もあるわけだし、そもそも英語を完全に日本語に置き換えるは無理だし、正直、「僕だったらこう訳すなあ」という歌詞もあるのだが、装丁の写真から書体や紙質までが気に入っている。たぶん、この本は一生、僕の側にいると思う。その音楽と共に。

坂本龍一の音楽山下邦彦

まあこれはすごい本です。膨大な資料。自筆の楽譜から、スケッチや発言まで。ありとあらゆる坂本龍一が詰まっている。本当に膨大。なにより楽譜と解説が素晴らしい。この本と鍵盤楽器があれば、僕は無人島で数ヵ月、暮らすことができると思う。良い本に出会うたびに「生まれてきてくれてありがとう」とよく思うが、この本と出会ったときは、デスノートに出会った魅上のように、跪いて神を感じた。音楽を作ることが好きな人は、この本を買うとよいと思う。学ぶことが多すぎる。学んで唸ってため息が出る本。よくこんな本、作ったなあ。

The Complete Encyclopedia of IllustrationJ.G. Heck

これはぜひ手にしてほしい。圧巻。圧倒。唖然。呆然。マーケットプレイスにもないかもしれないけれど、これだけは譲れないお薦め本。世の中のあらゆるもの(というわけではないけれど)が載っている百科事典。それらが、すべてイラストレーションで描かれる。例えば、頭になにかを思い浮かべよう……「ピラミッド」「カモノハシ」「玄武岩」「上腕三頭筋」……といったすべてがこの本にはイラストで掲載されている。僕が本を開いて、最もびっくりした本がこの本だと思う。イラストは全部で12000点。なんと初版は1851年(その復刻版)。

OrbitNational Geographic

美しい「地球」の本。僕は宇宙が大好きで、地球を外から見たような本は多く持っているが、この本が圧倒的に素晴らしい。あらゆる「宇宙からの地球写真本」の中でも群を抜いている。地球というのは、僕らの母だ。しかし、母の姿は、あまり僕らは見ることができない。いつも母の一部しか見ていないのだ。しかし、その姿は本当に美しい。その身体のあらゆるところが美しいのだ。母の肖像画としてぜひ1冊。環境問題ついて、難しい本を読むより、この1冊が与える影響のほうが大きいと思う。僕らは、僕らを生んでくれた母を汚してはいけない。

THE BEST OF DISNEYNeil Sinyard

ディズニーの本であればなんでもよいと思うが、いつも近くに置いてあるこの本を挙げた。「ディズニーの心」というものを、僕は忘れないように心がけている。放っておけば、僕はそこから、どんどんと離れていってしまうからだ。アーティスティックでありながら、マスの心を捉える作風、そしてキャラクター。どれもがステキで楽しい。それを「忘れないように」と、いつも手の届くところに置いてある。ちなみに、これは初めて言うんだけど、僕のデスクトップって、同じ理由でミッキーマウスなんです……。ああ恥ずかしい。きゃっ。

飯野賢治さん

70年生まれ。クリエイター。95年、ゲーム制作会社ワープを率い『Dの食卓』を発表、ゲーム界の風雲児となる。その後、『エネミー・ゼロ』『風のリグレット』などを発表。現在に続くクリエイターオリエンテッドなゲーム製作者の先駆けとなった。

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