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テーマ 熱烈「リメイク」歓迎

過去のレギュラーセレクター

例えばいくつものディレクターズ・カットが存在する『ブレードランナー』や、リマスターを繰り返す名盤たち。リメイクというのはハマると抜け出せない永遠の編集作業のような気がします。作り手にかかる呪い? 西島もできるだけその罠にハマらないように心がけてますが、そういえば連載の単行本化のときにはかなり手を入れてるし、『ディエンビエンフー』なんて作品まるごとリメイクでは……? はい、完全に呪われてます。

26 Mixes for CashAphex Twin

「金のための26のリミックス」というタイトルが挑発的。Aphex Twinが依頼され手がけた有名無名アーティストのリメイク=リミックス音源集は、金のためと割り切ったせいか破壊性と快楽に満ちています。本人のオリジナルアルバムよりも雄弁にその個性を物語っているような。BUCK-TICKやタケムラノブカズ、ナーヴ・カッツェなど日本人の音源が多いのも、テクノバブル期のジャパンマネーのなせる業。タイトル通りキャッシュのにおいです。BECKのリミックスも入れて欲しかった!

国際版AKIRA大友克洋

北米市場に合わせて、アメコミとしてリメイクされた輸出版AKIRA。オペレーターによる彩色は実は極めて原始的なCGですが、しかし原画の圧倒的POPセンスもあって、アンディ・ウォーホール的な既製品としての完成度を見せています。他の絵描きでは絶対こうならない。西島の国際版が出るとしたら、こういうふうにリメイクされたいな。

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破

最新技術による旧作のヴァージョンアップが新劇場版。しかし、使徒のリデザインなどリメイクとしての形を保っていた「序」を経て、「破」ではリメイクという概念を内側から食い破る超展開を見せてくれます。震えました。厳密には庵野秀明によるセルフ・リメイクのような、鶴巻和哉による『トップをねらえ2!』と同様のトリビュート・リメイクのような。どっちだろ? とにかく僕はぶっ飛ばされました。

SIGNBrown Eyed Girls

2010年音楽シーンを席巻したK-POP。少女時代、KARAが日本ファンの心を掴む中、日本で定着しなかったのがBrown Eyed Girlsです。日本語ヴァージョンというリメイクの失敗。ミリョのクールな韓国語ラップがカタコト日本語ラップに差し替えられた瞬間、「あ、ラップってカッコ悪いんだ」と、喩えるなら「DA.YO.NE」を初めて聴いた時の感覚に。BEG大ファンなんですけど、リメイクって難しいですね。

ディエンビエンフー西島大介

角川書店「Comic 新現実」休刊に伴い未完のままたった一冊刊行された作品を、小学館「IKKI」で一から新連載で描き直したセルフ・リメイク作品。リメイクという名の魔物に取り付かれたのか、登場人物は増え、ページも増加の一途をたどり、現在長期連載化かつ休載中。8集を刊行してもなお物語は終わる気配がなく戦争同様に泥沼化。本物のベトナム戦争と同じくらい時間がかかってしまいそう。誰かついて来て! やっぱりリメイクって呪いだと思います。

西島大介さん

74年生まれ。漫画家。イラストレータ。映像作家。2004年に『凹村戦争』で漫画家として衝撃的なデビューを果たす。現在は月刊IKKIにて『ディエンビエンフー』を連載中。他、講談社BOXでさやわかと共に「西島大介のひらめき☆マンガ学校」を開校し、未来の漫画家を輩出している。

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