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テーマ 今したくてしょうがない「贅沢」

レギュラーセレクター 曜日

「200兆円貯めずに、なぁにが人間か!」(あぶらだこ)

密閉教室法月綸太郎

30歳になった佐藤にとって、「青春」の蜜を味わうのは、贅沢以外の何ものでもありません。30歳でも青春できますが、そこには学校も、教室も、初恋の女の子も、謎に満ちた殺人事件もないのです。いくつもの事件とその顛末を体験する本書の主人公は、まごうことなき青春状態の只中にありまして、佐藤にはもう、眩しくて眩しくて読めませんよ。これを書いているときの作者もまた、青春状態に突入していたでしょうね。これほどの青春を屠ることを許された者への羨みは果てしがありません。

助六所縁江戸桜

モテる。強い。カッコいい。ヒーローの条件をすべて備えた助六は、いつの世にあっても男の理想です。贅沢に与えられた空間を舞うように跳ぶように動き回る助六は、リア充などという陳腐な表現を跨ぎ、時空すら飛び越え、今もその雄々しい姿を我々に見せてくれます。そんな助六を演じることを許された市川家こそ贅沢です。僕、海老蔵好きなんだよなあ。シンパシー感じるんだよ。

曾根崎心中近松門左衛門

心中。この共同作業を通して死に至った2人は、かなりの贅沢ではないでしょうか。心中こそが恋愛の最終状態である。ってことは青春を終えた佐藤には云えませんが、恋路の果てにある一つの結末として、心中は常に存在しています。そういえば太宰さんは心中未遂を幾度も起こしていますね。狂おしいほどの贅沢に、佐藤はつい羨みを持ってしまいますが、もちろん正しく生きるので安心して下さい(関係者各位)。

ENGINE新潮社

この雑誌に書かれていること。高級車。高級時計。理想の生活。希望の計画。以上です。体は1つしかないのに外車を何台も乗り回し、腕は2本しかないのに時計を何本も嵌める。新潮社が出しているとは思えぬ主張に卒倒寸前ですが、これが男の成功例なのも事実です。そりゃ佐藤も30歳だし、銀座に行ったり歌舞伎を見たりするけどさ、むー、まだ難しいねこれは。とりあえず40歳になってから考えます。

レスポールギブソン社

なんてことを書き連ねましたが、やりたい贅沢ありました。ギブソン社が作り上げたこの名品、傷がつくのも厭わずジャカジャカと掻き鳴らしてみたいのです。ここでレスポールの話をすると、某アニメに影響を受けたと思われそうですが、佐藤は根っからのフェンダー派なのでそれはありません。佐藤が所持するテレキャスは弦の張り替えが難しく、それゆえ5年くらい同じ弦ですが、今もなお正しい音を聞かせてくれます。ここまで書いて解りました。ロックスターになることが、佐藤にとって最高の贅沢です。

佐藤友哉さん

1980年生まれ。作家。『フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人』でメフィスト賞を受賞し、「戦慄の19歳」としてデビュー。2005年、『1000の小説とバックベアード』で第20回三島由紀夫賞を受賞。本年『デンデラ』が映画化され、6月より公開される。愛称は「ユヤタン」。

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