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テーマ 熱烈「リメイク」歓迎

レギュラーセレクター 曜日

「世の中には二種類の人間がいる。リメイクを歓迎する人間と、しない人間だ」という言葉が、佐藤友哉先生の名言の一つなのはみなさんご存知の通りですけれども、それだけリメイクという作業には期待と、それより少しだけ多い不安がつきまとっています。「どーせオリジナルを超えられないって。だって、傑作で評判が良かったからリメイクすんだろ? 傑作を超えることは原理的に不可能」という大きな声が響く中でなお、果敢にリメイクに挑んだ作品を挙げます。

カジノ・ロワイヤルマーティン・キャンベル

『007』の1作目にして、1954年にテレビドラマ化され、67年に映画化されたものを、2006年にリメイクしました。冷戦という背景もなければ、色気というアイテムもない今回のボンドは、殺し屋としての任務に没頭し、リメイク以前との差異をひたすら見せつけます。偉大なるマンネリへの勇敢な冒険として。偉大なるシリーズへの無謀なキックとして。鑑賞後、ボンドガールの顔を思い出せないのが、本作最大の特徴ですね。

ヱヴァンゲリヲン新劇場版庵野秀明

70年代には『宇宙戦艦ヤマト』が、80年代には『機動戦士ガンダム』が、「僕たちのアニメ」として君臨し、90年代は『新世紀エヴァンゲリオン』がその地位に座していました。ゼロ年代は? 10年代は? このままでは今回も『エヴァンゲリオン』です。本作は監督自身によるリメイク(リビルド。再構成と云っていますが)として劇場公開され、まだ完結していません。佐藤が『エヴァ』のテレビ放映を観たのは14歳。30歳になっても追いかける羽目になるとは思いませんでしたよ。

Here’s To You

歴史的な冤罪事件、「サッコ・バンゼッティ事件」を描いた映画、『死刑台のメロディ』の主題歌をリメイク(音楽なので、カバーと云った方が良いでしょうか)したものです。『メタルギアソリッド4』のエンドロールとして流れ、最初は気づかず、「いい曲だなー」と呑気にうっとりしていました。単調なコードの中で延々とくり返される同じ歌詞。その構造によって浮かび上がる異様な迫力を体験されたし。

ドラゴンクエストVスクウェア・エニックス

ゲーム界におけるリメイクは、映画や音楽以上に厳しい目で見られることが多く、その理由はクオリティでも思い出補正でもなく、「体験するのに時間がかかる」からだと思っています。音楽なら数分、映画なら数時間で体験終了ですが、ゲームはそうもいきません。何十時間もプレイ(さらには大体において、リメイク前の商品で全クリしている)して、その結果が気に入らなければ、ノーを突きつけるのが人情です。本作はリメイク成功例と佐藤は認識していますが、いかがでしょう。そういや、一度もフローラを選んだことないや。

My Favorite Things

かの名作ミュージカル、『サウンド・オブ・ミュージック』がオリジナルというのを知らず、コルトレーンが作ったものだと勘違いしていました。マイルスのバンドを脱退した1960年にカバーされた本作は、ジャズのことはスペルしか知らない佐藤にも響き、「何かこう、ゆっくりしたいわー。深夜にラウンジチェア(持ってないけど)に座って、ラフロイグをちびちび飲みつつゆっくりしたいわー」というとき、決まってかけています。つまりは、「私のお気に入り」。

佐藤友哉さん

1980年生まれ。作家。『フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人』でメフィスト賞を受賞し、「戦慄の19歳」としてデビュー。2005年、『1000の小説とバックベアード』で第20回三島由紀夫賞を受賞。本年『デンデラ』が映画化され、6月より公開される。愛称は「ユヤタン」。

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