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テーマ 僕が選ぶ、僕の「代表作」

過去のレギュラーセレクター

この質問に回答するため、自分の著作をAmazonで検索しているうちに、臓腑をえぐられるような気持ちになりました。Amazonのレビュー、星の数で評判がわかるようになってるじゃないですか。あれが視界に入ると、嫌な汗がにじんできて、胃液がこみあげてくるんです。それはさておき、せっかくだからマニアックなものを二つ入れておきました。書き終えてからおもいだしたけど、『とるこ日記』とか入れれば良かったかも。いや、やっぱり入れなくて正解か。読者に不毛な時間をあたえるだけなので。

「きみにしか聞こえない」ドラマCDスニーカーCDコレクション

これは貴重なものだとおもいますよ。実家にあったものを回収して大切に保管しましたもの。脚本、自分で書きました。小説版よりも出来がいいかもしれないです。大満足のドラマCDです。小説で読むくらいだったら、こっちを聴いてもらったほうがうれしいです。先日、星海社の企画で満月朗読館という仕事に参加しました。坂本真綾さんに朗読してもらう小説を書いたのです。あの仕事を引き受けたのも、このCDの出来に大満足だったからです。また、このCD制作で学んだことを『ベッドタイム・ストーリー』にも生かすことができました。このCDがなければ『ベッドタイム・ストーリー』はなかったはずです。

GOTH モリノヨル乙一 新津保建秀

これも貴重なものだとおもいますよ。これは写真集なんですが、僕の書き下ろし短編がおまけで掲載されてるんです。Amazonのレビュー、低っ! おそらく重版もかからないだろうから、僕はこの本を手元に大切に保存しています。ドラマCDとおなじく、実家にあまってたものを回収しておきました。『GOTH』という短編集をずっと前に書いたことがあったのですが、それを原作とした映画の公開にあわせて、ヒロインを演じてくださった高梨臨さんの写真集を出すことになったのです。そこに僕は『GOTH』の番外編を書いたのです。ヒロインが殺人事件の現場におもむいて記念写真を撮るという話なんです。物語の展開はともかく、風景描写はおきにいりです!

銃とチョコレート乙一

ミステリーランドというシリーズのために書き下ろした本です。小学校の図書室に置いてあるような、子どもむけの冒険活劇をやってみたかったんです。名探偵とか、怪盗とか出てきますよ。はずかしくてもう読み返せないのですが、書いて良かった、とおもえた作品です。海外を舞台にした話とか、ほとんどはじめてですよ。二度目です。ちなみに一度目は、デビュー前に某ライトノベルの新人賞で一次選考落ちした異世界ファンタジーの痛い小説でした。

なみだめネズミ イグナートの冒険乙一

五年くらい前に某アニメ会社に出入りしていたとき「アニメの企画をかんがえてください」とプロデューサーに言われてかんがえたのがこれです。結局アニメにならなかったので、宙ぶらりんの状態で放置されていたのです。ところで僕は、ジェイブックス編集部という場所で作家デビューしたのですが、そこでつい先日、「わくわくキッズブック」という児童むけのシリーズをつくりはじめたのです。じゃあ、そこで宙ぶらりんだったアニメ企画を本にして世に出そうってことになり、これが完成したというわけです。あと『The Book』という本もぜひよろしくおねがいします。

失はれる物語乙一

いろいろまよった結果、ひとまずこれをセレクトしておきましょうか。もう恥ずかしくて絶対にページを開けないですけども。大学時代にノイローゼ気味の状態で書いたものなので、いろんな意味で感情がこもってるとおもいます。当時、角川書店の雑誌「ザ・スニーカー」でよく仕事をしていたのですが、そこで発表した短編のベストセレクションみたいな本です。わりとやさしい話が収録されているので、名刺がわりに人へあげるときはこれにしています。自分をすこしでも善人に見せようとする工作です。

乙一さん

78年生まれ。小説家。96年、栗本薫らの推挙を受けた『夏と花火と私の死体』で鮮烈なデビューを飾り、03年の『GOTHリストカット事件』で本格ミステリ大賞を受賞、人気を不動のものとする。

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