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再会は東京で

連休中の午後のことだ。夕刊が休みだったので黙々とパソコンを打鍵していると、携帯が突然着信した。

携帯画面には懐かしい名前が表示されていた。

 

「いま、渋谷にいるから飯でも食いにいかない?」

北海道で大学に通っていた頃の、数少ない友達からだった。

 

 

彼は大学時代から、僕が小説家であることを知っていた数少ない一人だ。『くうそうノンフィク日和』も自腹で購入している。

僕が昨年の12月末に上京したことについても把握していた。メールアドレスを数年前から変更していなかったので、あっさり連絡がついたということだ。

 

北海道にいた頃の知人と渋谷で再会するだなんて、想像の範囲外だった。

そもそも彼は北海道で就職したはずだが、話を聞くと、どうやら東京へ出向してきたようだった。

 

僕がそうであるのと同じように、彼もオタクだった。多少趣向の方向性の違いはありはすれど(具体的にいうとスパロボ系とリアルロボット系の違い)根本的なところでは同好の士だった。

教養レベルとしては、『Fate/Zero』を同人版で全巻そろえているレベルだ。

 

そんな彼との会話は弾んだ。

配達所にもオタク的趣向を持つ人は少なくないが、あくまで配達の空き時間に話す程度なので、腰を下ろしてどっぷりオタ話をする機会は数えるほどしかなかった。

彼は某アニメの某展開について某持論を展開していた。僕も某アニメの某展開についていかに某展開であれば某納得できたのか、熱弁した。

普段使用頻度が低いせいもあると思う。話し終えたあとは、少しだけ喉が枯れ気味だった。

 

 

GW期間とはいえ、特別なことはしなかった。GW序盤では異常な降水量の雨が降り出して精神的にのされてしまった。GW終盤では貞子が渋谷を闊歩していたらしいが、まじめな時代の貞子を好んでいた身としては、微妙な顔をしてニヤニヤするくらいだった。

そんなGWに、北海道時代の友達と再会した。

 

 

僕らは当時大学生だった。それから3年4年近くが経過している。

彼は容姿的な意味では、当時とさほど変わっていなかった。特別痩せたわけでもなく、太ったわけでもない。話し方が大人びたわけでも、偉そうになったわけでもない。

それは僕自身にもいえることだろう。多少の体重の変動があったとしても、数年が経過した程度では、印象が格別に変わるような年齢ではないのだ。

 

 

でも、彼の話す言葉の中に、明確な変化があった。

それを簡単にいうならこういうことだ。

 

とっくに大人になっている、社会人なんだ。

 

旧友と再会して思うことは、僕らはとっくにそういう年齢であるということ。

だからといって、僕がそちら側へ行くことは、もはやないということ。そんな意思はすでにないということ。そういう能力だって有りはしないということ。

事実として知っておくべきこと、だと思った。

 

 

飯屋をおごってもらったあと、ファミレスでゆっくり話をしてから別れた。

飯を食ったあとだったので、デザートを食べることにした。特に意味もなくパフェにした。男二人でパフェを食べることにした。オタク男子二人でパフェを食べることにした。

いや、普通に美味しかったですが、なにか。

 

帰り際に、

「そういえば結局飲みにいったりしなかったな」

「お前が空気を読まないでそういうところ案内すればよかったのに」

「禁酒中だろ」

そんな会話をした。

 

「お酒、ダメゼッタイ!」は僕以外の世界の意思によって完遂されるかもしれない。

そんな確信を抱いたGWの夜半でした。

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