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もう一度デビュー作を書くということ

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書いている小説の進行に合わせて、今どういったことを書こうとしているのか、現在の執筆状況はどうなっているのか、をここでは書いていきたい。

 

 

書いている小説、では座りが悪いので仮タイトルでもいいから示しておきたいが、えてして仮にでもタイトルをつけてしまうと、そのタイトルに引っ張られ続けてしまうことがよくある。

今回の小説はいくつかの章に分かれており、この小章の章タイトルは決めてあるので、ここではそれをまず明かしておきたい。

 

僕が君の敵になった理由
恋愛青春日和

 

この二本の小章の物語を内包する形で、別にもう一本メインストーリーがある構成になっている。

もう少し分かりやすい言い方をすると、時間軸が三つあると考えてくださると、すっきりするかもしれない。

現状は視点キャラも固定されているので、三つの物語、三人の視点から、今回の小説は物語られることになる。

 

 

なぜ三つの視点が必要なのか、ということだが、三つは以下の言葉に象徴される。

届きようがない世界への自意識、青春時代、新しい世界。

 

名無しの役者、主役たち、彼らの現在、と言い換えることもできる。

 

主役たちにとっては風景でしかない名無しの彼が、名無しから脱却できないことを自覚しながらも、それでももがいていく様を書きたかった。

 

名無しの思い、名無しの存在の希薄さ、名無しと主役の類似と差異。

それらを浮き彫りにしつつ、名無しが名無しでありながら、名無しが思いを遂げる物語のため、こういった構成になった。

 

 

名無しの現状、名無しの選択、名無しの立ち上がりは、上京以前から出来ていた。

この名無しを小説として落とし込む際、名無しの声としての文体まで行き届けることができず、4月を過ぎても上手く書き出すことが出来ていなかった。

 

 

「僕が君の敵になった理由」「恋愛青春日和」の人称は、それぞれ名無しと主役の一人称を選択した。

このキャラクターの人物描写そのものを組み込みながらの一人称文体が書けるようになったときが、ひとつのゴールになる。

 

 

現状は、この小章の執筆はひとまず手をつけず、メインストーリーの方の執筆を進めている。書ける部分から書いていく、という書き方に変更した。そうしないと、いつまで経っても立ち止まったままだと、ようやく理解したからだ。

 

 

やろうとしていることは、デビュー作の『くうそうノンフィク日和』に近しい。

結局僕は、シリーズ三作通して、あの主人公を、立ち上がらせることはしなかった。

それは正解なのだ。彼は何者でもないし、けして立ち上がることの出来ない男だった。

ただ目の前で起こっていることをすべて受け入れることの出来るだけ、の男だった。

 

当時やったことが間違っていたとも、面白くなかったとも思ってはいない。

ただ足りないものがあった。今ならそれを補うことができる。

 

『くうそうノンフィク日和』よりも、物語として強靭に、なおかつ生涯名無しとしてしか生きられないことを自覚した彼が、名無しでありながら立ち上がる方法を示したい。

 

『くうそうノンフィク日和』には、僕のやりたかったことがすべて詰まっている。

だから『くうそうノンフィク日和』を、別の視点、別の角度から書いていき、当時は出せなかった答えを出してみたい。

だからもう一度、デビュー作を書く、という心境で書くのだ。

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