魂だけは、合っていたからこそ、
2012.05.09
心が折れそうになったときに手にとる漫画、小説、映画というものを決めている。
今、この瞬間とにかくどうあがいてもどうにもなりそうもないとき、それでも今すぐなんとかして、しおれかけた心に火を吹き込むために、別の作品に目を通す。
小説なら佐藤友哉。
映画なら押井守、今敏。
漫画なら、創作に関するもの、勝負に向かう男子の話が多い。
北海道にいたとき、持っていたそういう漫画を、上京してから何冊か買いなおした。
瞬間的に心を立て直してくれるそれを求めて。
そのうちの一冊が、「大東京トイボックス」
僕の目の前には、「大東京トイボックス」の作者であるうめ先生(@ume_nanminchamp @ume_asako)のサインが書かれた「東京トイボックス」がある。
身震いが起こる。
学生時代、10代の頃。
当たり前のように毎日書店に通っていて、気になった漫画があった。
東京という単語が使われたタイトル、特徴的な表紙の文字フォント、変身ポーズを決めている主人公、ゲーム業界の話。
前情報がなにもない漫画だった。
週刊少年系ばかり読んでいた当時の僕にとっては、青年コミックサイズのトイボックスは、多少敷居が高かった。
ちょっとググってみた。
「大」東京とついていることからも、想像できたけど、やっぱり続編だった。
「東京トイボックス」の続編だった。
こっちのほうから読もうと思った。
アマゾンでポチった。
数日して届いた。
そこにあったのは、モノを作る人達の漫画だった。
大人の顔をした子供がいて、子供のような大人がいる世界。
ゲームという世界を通して、天川太陽という男を通して、それが物語られていた。
僕がこの本に触れたのは、学生時代。10代の終わりの頃だ。
まだ小説家ではない、落選原稿をひたすら書きなぐっていた時期。
心に火が灯りやすい時期だった。
魂が違ったものは、作らない。
そういうことを思いながら、小説を書くようになったことは、さほどおかしなことではない、
と思う。
それから数年して僕は小説家になった。三冊、出版した。
そして売れはしなかった。魂が違ったものだけは、幸いにも作っていない。・・・さほどは。
ただ、売れなかった。届けたい人に届いているという実感は、まだない。次作が出来なくなったりも、した。
売れたい。届けたい人のもとまで、届けたい。次作が出来なくなったりも、したくない。
いまは、そういうことも思う。
4月の後半に、
山中さん(@seikaisha_ymnk)がちゃぶ台を持ってきてくれたとき、僕が東京トイボックスのファンであるこという話になった。
それから5月のイベントで山中さんがうめ先生と会ったとき、「二十四歳の地図」の話をしてくださり、
その後、うめ先生からサイン本が届いた、ということだ。
天川太陽が描かれたサイン本を見つめながら、思います。
彼の魂に、焦がれた一人として、
すべてのまだがんばっている人たちへ向けて、
僕自身の魂へ向けて、
今日も小説を書こう、と。
うめ先生、本当にありがとうございました。
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