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テーマ 「次世代」を感じさせてくれた作品

レギュラーセレクター 曜日

この質問、なんて難しいの!もしわたしが生きて来た過程での次世代を感じる瞬間なのだとしたら、わたしはその世代を、ひいては次の世代の到来さえ認識するだけの客観性を持っていたってことになるでしょう。……そんなことって、あったかなあ。いつだって時代にもまれて渦の中にいるようで、次世代を感じるより前に巻き込まれて来た気がしています。だから、これはわたしが生きてきた中を振り返って、出会ったときに「こんなのって…はじめて!」と思ったものたちです。

マルセルデュシャン (ニューベーシック)ジャニス・ミンク

これをあげておいて、「むずかしいことはわかんないんだけど」って言ったら殴られるかな?いやでも、わたしはよくわからないんです。ただ、芸術ってなんなの?一体なんなの?とチッサイ頭で真剣に悩む時期があったのは確かで、結局ひとつも答えが出なかったから、わたしは漫画家になろうと思ったんです。芸術は理解するもの?それとも感じるもの?両方?最終的には好き嫌い?エンターテイメントと芸術は別のもの?決して共生はできないもの?…あげていったらきりがないのです。難しいけど、少なくともこの作品は、感じるだけでは駄目なのでしょう。わたしが真理を得られたかどうかはわからないままだけど、そういったものに意味を見いだすのは、まるで、人間の新しい可能性を見つけることと同じ作業だと思ったのです。

ブギーポップは笑わない上遠野 浩平

これがわたしの所謂「ラノベ」デビューでした。中学二年の秋頃、友人が「知ってる?」と言って貸してくれたのがこれ。まあ、ハマりましたよネ…。それまで、こういったジャンルの本を読んだことがなかったわたしは、今までにない魅力に、すっかりとまいっちゃいました。大抵、一日の終わり、夜に読み出すので朝方になり、眠い目で学校に行くこともしばしば。ブギーポップは自動的なんだ…なんつって、意味深な台詞まわし、アニメのようにキャラクターの立ったストーリーに小説ならではの入り組んだ構成、巻を追うごとに前後する時間軸に胸ときめかせました。今も続刊を楽しみに買ってる数少ないシリーズ、ほんと、おいらはただのブギーポップファンです。

魔法騎士レイアースCLAMP

はっきり言います。この単行本は、小学生には高かった。わたしはおこづかいを小学四年までもらえなかったので、単行本を買えませんでした。運良く買ってもらえたおともだちの家に行ってはうらやましく思ってました。おこづかいのかわりに毎月買ってもらっていた「なかよし」を心から楽しみに読んで…制服、戦う女の子、異世界、今まで読んでた漫画と違う!全部が新しくって、憧れでした。これで学園恋愛漫画よりもファンタジー漫画が好きだと気づいたわたしは、その後も「ケロケロちゃいむ」「チム・チム・チェリー!」とかに大ハマリするのでした。どうやらこのあたりから、好みが今と変わってません。

童話迷宮釣巻 和

手前味噌ですみません…けれどこれはわたしの漫画が次世代ということではないんです。この漫画は、初めての連載漫画だったのですが、それと同時に初めてのweb連載だったのです。描いた漫画をコマごとにトリミングされて携帯電話の画面で見られるだなんて、驚きでした。はじめは、「読みづらくないのかな」って、思ったのも事実です。けれど、実際それを見たら…携帯電話でいかに見やすい表示ができるか、どうしたら伝わりやすく読みやすいのか、最大限考えて手間暇かけてくださる人がいることがわかりました。結果的に、わたしには、漫画というよりもそれはまるで映画のように思えました。とても不思議な気持ちになったのを、覚えています。今、時代の境目にいるって、そんな気がしてなりませんでした。

初音ミク クリプトン・フューチャー・メディア

わたしがニコニコ動画を観始めたきっかけは、これでした。友達が「器械が歌うんだ!」といよいよ変な事を言い出した…と思ったら、観てみてビックリほんとに歌ってた。音楽を作っている投稿者の方は一般の方で、さらにPVまでついていたりして、それらがすべて自主制作なんだーってことが、すごく衝撃でした。すぐに夢中になってしまって、たくさん聴いて、たくさん観ました。お気に入りがたくさんあります。ちくしょー音楽って、アニメで動かせるって、すっげえ…!と、今も見るたびギリギリとします。才能のある人たちがこんなにもいらして、自由にモノ作りをして発表できるというミラクルが刺激的です。心の底から、カツが入ります。

釣巻 和さん

87年生まれ。漫画家。代表作に『童話迷宮』『くおんの森』『水面座高校文化祭』などがある。2010年11月に坂本真綾の満月朗読館・第三夜『ベッドタイム・ストーリー』(著・乙一)にイラストを寄せ、その繊細な絵筆によって多くの視聴者を魅了した。

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