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テーマ この「本」を読んでいなければ、絶対に今の自分じゃなかった!

過去のレギュラーセレクター

過去のお題で似たようなものがあったので、普通に挙げて、かぶらないようにするのはとても難しい。しかも、「本」と限定されてしまっているし。という理由で、「この10年」に限定してみた。この10年で読んだ本の中で、僕の現在の位置に影響を与えている本たちを挙げた。だから、どれもかなりオススメです。本というのは不思議なもので、人生の読むべきタイミングに、読むべき本が現れる。それによって、人生が少し動かされ、その動いた先でまた別の本と出会う。これからの10年、どういう本と出会うことができるのだろう。

迷惑な進化シャロン・モアレム ジョナサン・プリンス

この5年で読んだ本の中で最も面白かった。例えば「糖尿病」という病気がある。人に深刻なダメージを与える、そんな遺伝病をなぜ、わざわざ僕らは抱えているのか、考えたことがあるだろうか。話は大昔に遡る。氷河期の時代は、糖分が多い血液を持った人々のほうが長生きすることができたからだ。その時代に適者生存して生き残った人々=現代人は、その機能を病気として抱えてしまっているわけだ。ただ、幾つも指摘されているように、解釈に行き過ぎている部分もあるようなので注意が必要。だけど、その視点がなにより面白かったのだ。

ブランド・マインドセットデューン・E・ナップ

約10年前、ちょうど僕がブランドの仕事を始めるときに出会って衝撃を受けた本。いまでも僕の大切なバイブル。それまでの僕のブランドに対する考え方に大きく修正が加わった。タイトル通り「マインドセット」が重要なのだ。そして、「論じる」ことと「創造する」ことの、大きな差を気づかせてくれた本でもある。ブランド創りにおいて、なにが大切かを教えてくれる本ではあるが、ブランドの仕事に関係なく、多くの人に役立つ本だと思うので、ぜひ読んでいただきたい。きっとなにかの役に立つと思います。仕事をしている人は特にオススメ。

ヤバい経済学スティーヴン・D・レヴィット スティーヴン・J・ダブナー

大相撲の八百長問題のときにも取り上げられたが、シカゴ大学の経済学者とジャーナリストが、社会の表や裏を鋭く深く分析してみた本。かなり面白い。例えば、アメリカの犯罪が減少した最大の要因はなんだろう。それは70年代に人工中絶が合法化されたことである、と、作者はデータを元に分析する。子どもを育てるのが難しい環境の中で、無理に親になることで、罪を犯してしまう子どもが育っていく。そういった子どもたちが「生まれなかった」ことが最大の犯罪減少の要因である、というわけだ。ちなみに続編の「超ヤバい経済学」も面白い。

ビッグバン宇宙論サイモン・シン

宇宙論の本は好きで山ほど読んでいるし、サイモン・シンのノンフィクション本も他にもいくつも読んでいるが、この本は傑作だと思う。よくある宇宙本とはまったく異なる。それらの本は、たとえて言えば、まるで「教科書」だが、この本は「ストーリー」である。子どもの頃の歴史の年号暗記はまったくつまらなかったが、大人になって読む歴史小説が面白いように、人物を軸にした「ストーリー」は面白い。「断片」ではなく「体系」が重要である。そして、現在の宇宙論が、信じられないような奇跡の積み重ねで成り立っていることに感動する。

ノーベル賞受賞者にきく子どものなぜ?なに?ベッティーナ・シュティーケル

「空はなぜ青いのだろう」「戦争はどうして起こるのだろう」「1+1はなぜ2なのだろう」という質問を、ノーベル賞受賞者(に限らないのだが)が答えていく、という本。「なぜ?」という「問い」は、生きていく上でとても大切なスタート地点だ。子どもの頃は、世の中の様々なことに対して「なぜ?」と思ったものだが、大人になるうちに「なぜ?」は少なくなっていく。子ども向けに作った本ではあるが、大人が読んでも面白い。というか、大人が読んで「問い続ける」ことの重要さを再認識するための本であるとも言える。ぜひ。

飯野賢治さん

70年生まれ。クリエイター。95年、ゲーム制作会社ワープを率い『Dの食卓』を発表、ゲーム界の風雲児となる。その後、『エネミー・ゼロ』『風のリグレット』などを発表。現在に続くクリエイターオリエンテッドなゲーム製作者の先駆けとなった。

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