2013年春 星海社FICTIONS新人賞 編集者座談会
2013年1月22日@星海社会議室
“着火寸前”の作品数点並ぶも、受賞者なし! 白熱の座談会公開中!
星海社は新人だらけ
今井 さて、待望の座談会を開始してやるぜーーーーーーーーーーッツ!! どうですか皆さん! 気合い入ってますかーーーーーーーーーッツ!?
平林 今井くんが太田さんみたいなこと言ってる……。
今井 気合い入れて天下とりにいきましょう! 天下を!
太田 いやー、今井さんもようやく編集者の何たるかがわかってきたみたいだね。俺はうれしいよ!
山中 (流れを切って) それはそうと、今回の作品、皆さんどうでした?
岡村 いくつかいいのがあったと思います。
平林 そういえば賞金がすごいことになってますよね、キャリーオーバー続きで……。
竹村 今、160万ですからね。
山中 すごいな(笑)。
柿内 リア充今井くんの、年間のご祝儀額ぐらいはあるね。
今井 確かに、ギリギリ足りるぐらいです。
太田 ところで、座談会って今回で7回目だっけ?
山中 もう7回目なんだ。けっこう本数、読んだよなぁ。
太田 いやいや、まだまだ全然だよ。僕はこういう生活を文三時代から15年続けているからね。
山中 メフィスト賞は当時、どのくらいの応募数でしたっけ?
太田 だいたい60から100本ぐらいだったと思うなあ。後半は120本くらい。
山中 じゃあ、今回は歴代でもわりとミニマムに近い感じですね……。
今井 (正気に戻って)今回の応募数は67本です。
太田 まあ、受賞者がしばらく出てないから、「アレ? やる気ないんじゃねえのこの会社?」って思われてるんじゃない?
柿内 我々の気合いに応える作品が来てないから、受賞作が出ないだけなんですけどね!
太田 さすがカッキー! ……いやでも、正直なことを言うと、投稿作は60本ぐらいが一番いいんだよね。
岡村 有望な作品には全員が目を通せますしね。
太田 そうそう。あとさ……星海社って、ものすごく少ないお金で始めた会社なのよ。○○さんなんかが聞いたらびっくりすると思うんだよね、確実に。
柿内 ○○さん(笑)。
太田 だから、潰れるときはあっという間です! そんときは、護国寺の境内に全員集合して、杉原社長が、「星海社、解散ッツ!」って……。
山中 そのネタ、好きですよね(笑)。
太田 まあ、そうならないように頑張っていきましょう。そして、そんなふうに少ないお金で始めた星海社が、「新人賞」という博打に会社が始まったのと同時にまとまった額を見せ金じゃなくて投資しているというのは、もうこれは本気以外のなにものでもないわけですよ。それはわかってほしいな。
岡村 本気というより狂気かも知れませんが……。
太田 狂気上等だよ! とにかく、僕たちは真剣に新人賞をやっているし、既に2人の新人を世に送り出しているわけだよ。『六本木少女地獄』の原くくるさんを入れれば3人じゃん。我がことながら立派なもんですよ。座談会を誰もが読めるウェブで公開することや、すべての原稿を編集者が直接読むことはその証左だから、皆さんもそれを踏まえて、気合いの入った原稿を送ってきて下さい!
限りなく超不遜
太田 では、始めますか。『或いはちょっとしたトラブル』、平林さん。
平林 (やたら元気良く)一行!
太田 次! 『インナーワールド・ワンルーム』、また平林さん。
平林 (張りのある声で)一行!
太田 次! 『オーバーロード・マンホール』、今井さん!
今井 (淡々と)一行です。
太田 次! 『可憐少女と狼少年』、岡村さん!
岡村 (疲れた声で)一行っすねえ……。
竹村 今回も出だし低調ですね……。どうしよう。
山中 いや、僕の次の作品は笑えますよ。
太田 これか? 『ぼくとロリコンと空海ちゃんと』……これ、笑えるとは言っても「失笑」のほうじゃないの?
山中 ……これは、「超不遜」な作品です(笑)。
岡村 これ、タイトルだけで高野山激怒でしょ。ちょうど投資で7億弱ぐらい溶かしたところだし、彼らも気が立ってると思うんだよね……。
太田 山中氏、あらすじを話したまえ。
山中 主人公のお父さんがロリコンで、それが原因で離婚されちゃうんです。で、主人公はお母さんから、「絶対にロリコンにならないでくれ」ってすごい懇願されるんですね。でもね……ロリコンになっちゃうんですよ。
平林 言われたら意識するだろうからなぁ。
太田 「絶対に青いゾウのことだけは考えるな」と言われたら考えちゃうからなあ……。
山中 で、それで世をはかなんでしまって、「俺はもうこのままだと確実に犯罪者になってしまうから、自殺するしかない」と、風呂場で手首を切って死のうとしたら、突然、幼女の空海と最澄が、なぜかタイムワープして出てくる。
一同 (爆笑)
今井 意味がわからない!
岡村 比叡山も大激怒ですね……。
平林 ていうか、空海も最澄も男性なんで。
山中 その後は、空海と最澄と一緒になって主人公がロリコンを治そうとするんだけれども、結局は「俺はロリコンのままでいいんだ!」みたいな感じで自己肯定してました。
太田 いや、そこは肯定したらダメだろ!(笑)
柿内 まあ、タイトルはインパクトあるかな。星海社新書でもこんな感じのタイトルを試してみようかな。
竹村 ちょ、それはやめて下さい!
シリーズ化は、新人賞を獲ってから
太田 はい、次! 『神話のつづき 第一夜〜Ventus〜』、今井さんだね。
今井 これはねえ……今回僕が読んだ中では、一番タイトルが残念な作品でした。「えーっ。完結しねえのかよ」と。
岡村 投稿作なのに「第一夜」とかやめて欲しいよね。読む前から萎えるよ。
今井 きちんとオチを付けることから逃げちゃってるんですよね。
山中 そうそう。「伏線は次巻で回収します」みたいな。
平林 (怒りもあらわに)そんなもんが受賞するわけねーだろ! アホか!
太田 今回の場合は論外だけど、やっぱり、「シリーズものにしましょうよ」っていうのは、編集者のほうから言い出すかたちがいいよね。で、作者はしれっと「いやあ、シリーズものになるだなんて投稿したときには全然考えてなかったですよ」っていうのが一番美しい。それがお約束だよ!
山中 それぐらいの膨らみが投稿作にあるってことですもんね。
太田 その膨らみをそっと編集者が見つけちゃうっていうのが様式美として美しいんだよ。実は、佐藤友哉さんの〈鏡家サーガ〉がこの世にあるのは、僕のひとことが発端なんですよ。「佐藤さん、この一家を1人ずつ書いていけば壮大なシリーズになるじゃないですか!」って言ったのは編集者のこの僕なんです。
山中 えっ!
太田 佐藤さん本人にはまったくそのつもりはなかったんだよね。「シリーズものにしましょう」って言い出した僕に対して「だって主人公死んでるじゃないですか!?」って反論してきた佐藤さんに、「問題ない……まだ生きている家族の話を1人ずつやっていけば大丈夫。時系列を過去の話にすればいいんです!」って。フッ、あんときの俺はアカギなみに冴えていたぜ……。
常連投稿者たち、今回も討ち死に!
太田 次は柿内さんの担当、『キング・オブ・プロフェッショナル』。
柿内 この人はもう4回目だから、読んだことある人も多いと思う。
平林 僕は1回読んだことありますね。
柿内 ギネスワールドレコーズ社がキング・オブ・プロフェッショナルの認定を開始した時代、ってとこから始まるんですけど……。
太田 どういうこと?(笑)
岡村 その時代に興味が持てないんですけど……。
柿内 俺に文句言わないでよ! ──まあ、そういう設定で、ワールドレコーズ社ってのが主催して、寿司代表とかこういろんな職業のプロフェッショナルがいて、要はそいつらが戦うっていう話。
平林 道場六三郎と川越シェフが戦うんだ。
柿内 それならちょっと読みたいんだけど、これの酷いのは、バトルもいまいちだし、勝ったけど最後は、「心にポッカリ空白が……」みたいな感じで終わるんだよ!
今井 うわぁ。
柿内 ラストがヤバくて、「俺は社会の中にいる、だが社会の中に俺はいない」。
太田 どういうこと? どっちなのよ? どっちなんだよーーーーー!!!
岡村 はっきりしろって感じですね。
平林 4回目でこれはだいぶ厳しいですね。
柿内 すごくオナニーをやってる感じがする。子供の遊戯を文章にしてるみたいな感じもするし。もうこの人のは読みたくないよ。
太田 ブレイクスルーもなさそうかなぁ……うーん。では、次も常連の人。竹村さん担当の『二代目の災厄』。
竹村 この人、7回目なんですよ。
山中 うわ、皆勤賞!
平林 箸にも棒にもかからず7回ってことですね。
柿内 あっ、この人か。名前は見覚えあるかも。僕も過去に読んだことあるね。
竹村 頑張ってトリックを考えて、ミステリーっぽいものを送ってくる人です。今回はAKBをモチーフにして……。
一同 笑
竹村 「やぎもとあつし」っていうプロデューサーのもとに、アイドルが22人いて、少しずつ死んでいって、誰が犯人か、みたいな話。
山中 AKB48殺人事件……。
平林 そのネタ、だいぶ前にあったよね……。
竹村 そのへんのあざとさが空回りしてるのと、とにかく長くて、400枚以上ある。一応彼なりのどんでん返しというか、双子のアイドルの入れ替わりトリックやその後の展開もあるんですけど……。
岡村 竹村さんが淡々とキツいことを言ってますけど、まあそうだよなって感じですね。
平林 この人は、ずっとミステリーを書こうとしてるんだけど、根本的にミステリーを書く力はないですよね。
竹村 読ませる何かがないっていうか……。
太田 しかし、何回も送ってくるのに全然進歩というか変化がない人は、この座談会をちゃんと読んでくれているのかなあ。さみしいなあ。
プロ作家、討ち死に
太田 次は『武俠鉄鋼バッカイオー』、岡村さんだね。
岡村 これは、プロからの応募です。軍事関係のライター兼架空戦記作家の方ですね。ぶっちゃけた話をしますが、流石にプロだけあって、文章はしっかりしてる。編集者がその気になれば商品にはできるレベルなんですけど、まず、僕が好きじゃないんですね……。
太田 編集部にこの人のテイストを好きそうな人は誰かいる?
岡村 いや、いないと思います。
山中 これ、軍事ものなの?
岡村 いや、スーパーロボットものです。
平林 まずタイトルがキツいよね。
岡村 ですよね。あと、こういうものを出すとしたら、僕みたいなさしてロボットに興味がない人間でもおもしろいかもと思えるようなものじゃないとダメだと思うんですよね。読んでいて思ったのは、好きな人には刺さるものかもしれないけど、僕にとってはもう一回読もうとは思わないなあというレベルのものだったんですよね。
平林 ジャンルの中でしか通用しないもの、ってことね。
岡村 そう。なので、僕としては正直回し読みするまでもないかな、と。
山中 歴史好きじゃなくてもおもしろい歴史ものってあるし、スーパーロボットものでもそうだと思うんだよね。おもしろければジャンルを飛び越えられるはず。
今井 突き抜けないと勝てないだろう、と。
太田 その通り。そこで迎合しちゃってもしょうがないからね。職業的作家だったら、「スーパーロボットものを書いてください」って言ったらさらっと書いてくれると思うよ、きっと。でも、うちが新人さんに求めてるのはそういうものではないから、スーパーロボットものならスーパーロボットもので、突き抜けたものじゃないとダメだよね。
放送作家、討ち死に
太田 次も岡村さん、『弁財天の犬とクロガネ遣い』。
岡村 これ、またプロの方なんです。ホント申し訳ないんですけど……この作品はおもしろくなくって……。
太田 (プロフィールを見ながら)放送作家なんだ。
岡村 内容を言うと、主人公はテレビ局の新人AD。ADの世界ってすごくキツい世界で、まあいろいろ無理難題とか言われるんですけど、なぜか弁財天がヒロインとして現れて、弁天具というものを託されるんですよ。これがすごい道具で、他人の財布から金を奪えたりする。
今井 「涙が出るほどお金が好き」な僕としては聴き捨てならない話ですね。
岡村 突飛ですけど、ここまではフィクションとしてはギリギリありかなと思うんです。ただ、設定の活かし方が下手なんですよ。と言うのが、主人公が飲み会の幹事を任されるんですが、みんなから集めたお金が盗まれるという事件が起こるんです。その小さな事件が起こるまでに、物語の実に4分の1の紙幅を使ってるんですよ。
柿内 もうほとんど苦行でしょ、それ読むの。
岡村 そこから大事件に展開するわけでもないし、必要のないシーンですよ。舞台をテレビ局に設定するメリットって、事件を劇場型にできるってことだと思うんです。要は『コードギアス』であったり、『大日本サムライガール』も言ってしまえばそう。ああいうふうに、事件をテレビというメディアを通すことによって一気に日本中に伝わってセンセーションを巻き起こす、みたいなことができるはずなのに、なぜか飲み会のお金が盗まれる……という話になっている。
太田 まあ、どうでもいいよね。
岡村 ほんと、どうでもいいですよ。放送作家だから、テレビ局の描写は当然リアリティがあるんです。でも、それをうまく物語として活かせてない。小説を書くのには向いてない人なんじゃないかと思いました。
平林 テレビ局の内部とかもさ、もうそんなに読みたくないよね。テレビそのものが、局の中身について色んな方法で見せてるし、映像を作って流す会社の内部を映像で見せてるわけだから、文字でそれらと拮抗するものを作るためには、何か工夫がないとムリだと思うんだよね。
タイトルはいまいちだけど……
太田 うーん、気を取り直して次行くか! 『世界の闇、正義の光』、平林さん。
平林 これ、タイトルはつまらなそうなんで、期待してなかったんですが、意外に良かったんです。
太田 いいね、詳しく聞こうじゃないか!
平林 主人公は社会人で、保険の営業マンなんですよ。あくどい手段を使って、一人暮らしのお婆さんに大きな保険をかけさせるっていうところから話が始まるんですけど、そのあと、よりにもよって自分の実家が連帯保証人になったせいですごい借金を背負って、大変なことになる。
岡村 なんか、金融マンガみたいな展開ですね。
平林 この冒頭の展開もおもしろいんだけど、そのあとガラッと雰囲気が変わるのもいいんだよね。借金を背負った主人公は、謎の島に行って働かなきゃいけなくなるんだけど、仕事の内容がすごく興味深いんです。
山中 と言うと?
平林 謎の島にはプラントがあるんですが、その中心には女の子の形をした、人工的に作られた「ある存在」が組み込まれているんです。
今井 あ、なんか良さそう。
平林 その子はなんと無限に髪が伸び続ける女の子なんですよね。で、その髪が、世界中の服をはじめ繊維を使うような製品の原料になっているっていう設定で、主人公は女の子にストレスなく髪を伸ばしてもらうためになんとしてもうまく女の子とコミュニケーションをとらないといけない。主人公は保険営業マンとして培った対人スキルをもって、女の子と接していく。
山中 ああ、ちゃんと冒頭で大きな保険をかけさせるってところが伏線になってるんだ。
柿内 いいじゃん、今回俺のとこにはそのレベルが1本もなかったよ!
平林 更にいいのが、女の子と関係がベッタリになるとまたダメなんですよ。うまく距離を置きながら、相手にこちらに興味を持たせて……という状態が、一番女の子の髪の生産量が多くなる。そこで主人公は好成績を上げるんだけれども、結局その女の子は、一定の量の髪を生産してしまうと、ダメになってしまうんです。要するに消耗品なんだっていう話で、結局自分の貯めたカネとかを使って、死にそうになってる女の子と一緒に島から脱出する……というラストです。
太田 なかなかいいんじゃないの?
平林 スピード感もあるし、すっごいリーダビリティが高い。ああいいな、と思ったんですけど、根本的な問題があるんですよ。
太田 そうなの? どのへんが?
平林 謎の島にプラントがあるのは何故なのかとか、髪の伸びる彼女たちはどうやって産み出されたのかとか、そこらへんの設定に何一つ説明がないんですよ。保険営業のリアルでシビアな話から、急転直下で変な島に行く、そこはいいんですけど、設定的な落差が解消されてないんですよ。いきなり足元が抜けて、セカイ系になったみたいな。
山中 スキマを埋めるとおもしろそうなんですか?
平林 最初に考えてなさそうだから、埋めるのは難しいんじゃないかな? あと、タイトルとか固有名詞がいまいち。
太田 たしかに良くないよね、この人、ネーミングセンスがあまりないのかな。
平林 かもしれないですね。
太田 でも、なかなか有望そうな人だし、ぜひぜひ次回も期待したいね!
平林 そうですね、次回も投稿待ってます! よろしくお願いします!!
本格的な中世ヨーロッパもの登場!
太田 次も平林さんか、『ルナティック』。
平林 これも、タイトルはいまいちだけど、読むと意外と良かった、というパターンです。
太田 またそのパターンかよ! 逆よりずっといいけどさあ(笑)。
平林 この人、某大学の博士課程に在籍中です。専攻は政治学だそうですが、作品は中世ヨーロッパもので、史料をよく調べています。舞台は西暦1288年、南仏。
山中 おお、なんかすごそう。
平林 ある小さな町の、騎士見習いが主人公です。町には領主とその2人の息子がいて、長男は出来が良くて性格が良く、次男は出来が悪くて性格も悪い。で、主人公は、出来の悪い次男のほうの従者をやってるんですよ。
山中 中世ヨーロッパものっぽい(笑)。
平林 主人公はある罪を犯してしまって、城から放逐されます。で、「人間とは扱われない刑」にされて、そこから話が展開していくんですけど、キリスト教異端のカタリ派も出てくるし、異端はどうやったら改宗できるのか、という問題が出てきたりとか、あとは錬金術や、当時のイギリスとかフランスとか周辺諸国の情勢もうまく組み込まれてて、最後までちゃんと読めるんですよ。
岡村 よく調べている感じがしますね。構成もうまそう。
平林 ただ、全体的にいかんせん地味なんだよね。南フランスの片隅の話である、というだけのスケールのお話で。13世紀終わりぐらいのヨーロッパがどういう世界なのか、一般的な日本人の読者の間には共通のイメージがないと思うんだよね。そうすると、何かとっかかりがないと、読みづらいと思うんですよね。
太田 その通りだね、誰でも知ってる人が1人は出てくるとか、そういう理解を助ける仕掛けを入れないと、エンタテインメントとしてはなかなか入っていけないだろうね。
平林 キャラの立ったヒロインも2人出てくるし、実は自分をいじめる領主の次男坊がいい奴だったとか、血にまつわる因縁がうまくクライマックスで明かされたりとか、話としてまとまりがあって、ちゃんと興味を持って最後まで読めるんだけれども、やっぱり地味さがネックになる。
太田 キャラクターは、すごく尖っていたりするの?
平林 いや、そこまでではないです。
太田 時代背景が海外でもマイナーでもいいんだけど、そうしたらキャラクターが尖ってないとデビュー作としては難しいよね。……まあとにかく、力のある人だけに、次は考えて欲しいよね。
山中 勝つための戦略が必要になってくる?
太田 そうなんですよ。この人はきっと、星海社からデビューしたいって気持ちがあるんだと思うんだけど。
山中 歴史ものが苦手な俺とかがおもしろいと思わないとキツいと思いますよ。こういうのって。
太田 『タイムライン』っていう映画があるんだけど、これなんかはたんなるフランスの局地戦の話なんですよ。歴史の大局には影響を与えない小競り合いをしているようなちっちゃな「いち」城のお話なわけ。でもね、それがなんでちゃんとおもしろく観られるのかっていうと、タイムマシンでワープして現代の人間がその時空に乗り込むっていうキャッチーなストーリーラインと、誰もが胸をときめかせるような歴史ラブロマンスの二軸がしっかり映画にあるからなんです。そういうフックが、とくにデビュー作ならばやっぱり必要じゃない? 司馬遼太郎だってデビュー作は「忍者」ものだったりするしね。それでもあくまでもちっちゃい話を書きたいんだったらギミックに尋常じゃないくらい凝るとかね。
平林 酒見賢一さんの『墨攻』はそうですよ。
太田 そう、そういうこと。あとは前回の座談会の歴史小説についてのくだりを読んでくださいって感じかな。とにかく、次が本当の勝負になると思うので、より気合いを入れつつ、デビューに向けて戦略的なことも考えて送ってきて下さい!
ヤバい人たち
太田 次、『大きな物語の下で』。
平林 これ、キャッチコピーにすでに脱字があるんですよ。「読者」と書いて「あなた」って読ませるんですけど、「あなたもすでに巻きまれている」。
山中 「こ」が抜けてる!
岡村 推敲とかしてるのかな? 出だしでこれはありえない。勘弁してくれよって思うんですけどね。
平林 なんか字下げとかもおかしいしね。
太田 そして、今回もとんでもないタイトルのものが来てるな……今井さん担当の、『レジェンド・オブ・テラ「プリンセス・レイヤ物語」ベテルギウスの使途』。
柿内 長い! 長いにもほどがある!
平林 完全に自分の世界に入ってる……。
今井 あの、一つ皆さんにご報告したいのは、プロフィールの年齢の書き方が……スゴイヤバイ。
一同 (沈黙)
太田 (何事もなかったかのように)さ、次行くか。
今井 僕、平林さん担当の『俺の彼女はインベーダー』ってのも気になるんですけど。
太田 この人は年齢的にインベーダー世代っぽいよね。俺より全然年上だし。
山中 ど、どんな話なんだ……。
平林 (メモを見ながら)あのねえ……「古臭い!」って書いてある(笑)。どんな話だったかな……。
今井 この人、ペンネームもすごい。――「不知詠人」。
山中 よみびとしらず(笑)。
竹村 本になっても印税はいらないってことかな?
一同 (爆笑)
平林 でもこの人、大手新聞社に勤めてたみたい。あと、内容はマンガ・アニメ・特撮の名作パロディ満載のSFコメディ……ってあったんだけど……。
山中 わかんないやつとかありそうですよね、年代的に。
平林 そう、そんなにパロディ満載に思えなかったんだよね……。
柿内 わかったら逆に良くないよね。
太田 あとはこのタイトルもすごいな。『クズは止まらない。デコピン☆ボンバー!』。
一同 (爆笑)
岡村 まあ、内容はクズです。ホントに。
山中 あと、竹村さんの担当にもヤバいのが……『Such a beautiful world』。
柿内 センスあるな……。「such」ってなかなか使わないもんな。
平林 これはスゴイですよ。
今井 侮れないものを感じますね。
柿内 「such」をタイトルで使ってる例は初めて遭遇したかもしれない。
竹村 あの〜、僕たち大丈夫ですか? 「such」だけでそんな盛り上がって……。
岡村 (冷静に)で、おもしろいんですか?
竹村 サイボーグに支配された未来世界での冒険活劇みたいな感じで、既視感があるというか、新鮮味がなかったので、あんまりおもしろくはなかったかな……。
太田 ありがちだねえ。
竹村 少女を送り届けるためにサイボーグに邪魔されながらも戦って、最後その少女と恋愛関係で終わって、「あ、こんなに世界は美しかったんだ」みたいな感じで…………“Such a beautiful world”……。
柿内 (頭を搔きむしりながら)あーもう、むかつく!
平林 アホか! アホか!
岡村 今、怒りが込み上げましたよ……。イラっとくる。
竹村 ただそれだけというか、皆様の時間を頂くようなものでは……。すみません……。
何も考えずに楽しく読めるんだけど……
太田 『姉妹と幼馴染の下着事情。』、これは岡村さん。
岡村 これ、結構おもしろかったです。前回も話題にした人なんですけど。
太田 (プロフィールを見て)ああ、あれか!
岡村 『Decorate Kiss@偏愛』っていうやつですね。主人公が唇フェチで、かつメイクの仕事を母親から学んでいる高校生っていう。既存の作品で言うと、MF文庫Jの『変態王子と笑わない猫。』にちょっと似たテイストがある。ただ、突き抜けるようなおもしろさというのではなかった。
山中 うんうん、そうだった。
岡村 で、今回も順調におもしろかったんですけど、……骨子がまったく変わってないんですよね。今回の主人公はおっぱいフェチで、服飾スキルを持ってるって設定なんです。全体的に、主人公の設定を入れ替えて、あとはキャッチーなものをツギハギしたみたいな感じなんですね。
平林 発展性はないのかぁ。
岡村 そうなんですよ。前回と同じですが、率直に申し上げてラブコメが得意な他社レーベルに送るか、もしくはまったく違ったものを書いてきたほうがいいんじゃないかな、と。
太田 この人は、気持ちをきっちり切り替えてまったく別のものを書くか、このままの直球路線で、自信を持って他社に行くのがいいんじゃないかな。で、他社で無事にデビューしたらウチに本を送って報告してほしいね。おめでとうと言いたいし、順調にいけば人気作家にだってなれると思うよ。
岡村 休日とかに難しいことは何も考えず、気軽に読むんだったらいいと思うんですよ。僕だってもちろんそういう本も買って楽しく読んでますし。
太田 そういう感じのただただ楽しい本を星海社から出すことだって将来はあるかもしれないと思いはするけれど、やっぱり新人のデビュー作に選びたくはないんだよね。
独自のスタイルのオナニーを確立している
太田 次は柿内さん担当、『いくつの夜を寝覚めて』。ちょっと日本語がよくわかんないですね。
柿内 タイトルにすべて現れてて、要するに、この人は文章がずっと完全な自己満足なんですよ。
竹村 (原稿を覗き込んで)うーん、つらい……。
柿内 正直、俺にとっては、この人が何を書こうが知ったこっちゃないわけですよ。この人の人生なんてどうでもいいし。ただ、書いたものを通じて、こっちの人生を、刺激して、好転させてほしいわけですよ。なのに、この人は自分のことしか考えていない! こっちの人生に、ある意味で殴り込みをかけてきてほしいのに、1行目からしてなんかもう、自分の世界に引きこもっちゃってる。
平林 (パラパラめくりながら)こう……ポエミィな感じの、詩的な、完成されたオナニーが展開されている……。
今井 独自のオナニースタイルを確立してるんですね。
柿内 そう。風景描写が1ページにわたってあるんだけど、完全なオナニー。小説書いたつもりになってるような……。こんなのでよく書いたつもりになれるよなと思うんだけど。
平林 この人に言えるのは、「とりあえず働け」ってことですかね。
竹村 世の中との乖離を何とかしないといけない。
柿内 自分が小説読んだときの体験とかどう考えているのかな。もういい歳の男なのに、ペンネームもなんか必要以上に女性っぽくして、大丈夫かなこの人……。
平林 紀貫之でも目指してんのか!
一同 笑
柿内 世界から逃げてる感じがすごくする。今回この人が一番ひどかった。
太田 自分に対する慰みっていうか、手慰みでものを書くことってあると思うんだけど、それはそれでいいと思うの。ただ、そういう閉じた営みであることを自覚できずに、こういう開かれたところに送ってくるっていうのはちょっと勘弁してほしいよね。それはひとりでやってほしい。
潜水艇でM資金を探せ!
太田 さて、気持ちを切り替えよう。ここからは、各担当が挙げた有望作だね。まず、岡村さんからいこうか、『ゴールデン・リリー』。
岡村 主人公は、房総の民宿の女の子。その子が遠洋に釣りに行きます。そこで深海魚を釣るんですね。そうしたら、その深海魚の腹の中から金のインゴットが見つかるんです。そのことが地元紙のニュースになって、世間に広まっていくんですけど、目をつけたトレジャーハンターなる者がやって来るんですね。「金塊を積んだ船が沈んでいる可能性があるんだ」とか言って。それで、「発見できる可能性が非常に高いから一緒に探索しましょう」って話になるんですけど、それでいろいろ経緯があって、探索するために、潜水艇をつくりましょうって話になる。潜水艇ってわかります? 皆さん、ダイオウイカを撮影したっていうNHKスペシャル観ましたよね? まさにあの潜水艇をつくるんです。
平林 「しんかい6500」みたいなやつね。
岡村 そう、そんなやつを建造することになって、潜水艇をつくるために、すごい大企業の、スポンサーのおばあちゃんみたいな人がお金を出してくれるんですけど、実はお金を出した目的が、金塊よりもすごい宝がその沈没船に載っていると。で、すごい宝ってのが本当にこれはすごすぎる宝で……、三種の神器! っていう話なんです。
平林 岡村君、重要なところの説明が抜けてますよ。その金塊ってのは「M資金」なんですよ。
岡村 あ、それは後から説明しようと思ってたんですよ。あと、この作者は前情報としては、第2回で『エクスカリバー』を書いた人です。
太田 あの人か! セルゲイか!
柿内 いや、展開が似てるなあって思ったんだよね。
岡村 前々回くらいは柿内さんがあたって、僕と柿内さんだけ読んだんですけどね。そのときは異能・超能力をからめちゃって、全然ダメだったんですよ。
柿内 上空に悪魔がいるっていうやつね。でも、発想が似てるじゃん。海底になっただけじゃない?(笑)
岡村 これ『エクスカリバー』と話のつくりかたがまったく一緒で、ワンパターンなんですよ。最初に金塊を釣るところと、『エクスカリバー』で、偶然盗んだら設計図が入ってたところとか。
太田 うん、おんなじだね。
岡村 型があるんですよ。今回は現実路線に則って書いてくださって、『エクスカリバー』に比べて、ページ数も圧縮されてるんですけど、どうかなあと思ったのが、M資金とか、三種の神器とかっていうところですよね。ここ、胡散くさいんです。リアリティがないって言うか。
柿内 M資金は完全に詐欺だもんね。
岡村 そうですね。別にいいと思うんですよ。フィクションでも、リアリティを持たせるような描写とか、根拠とか、説明とかっていうのがあれば。ただ、この人はやっぱりできてないんですよね。相変わらず潜水艇をつくるところは、リアリティがあっていいんですが。
柿内 潜水艇つくるとことかはスゲェ楽しかった。あと、個人的には『エクスカリバー』よりおもしろかった。
岡村 この人は、長所と欠点があまりにはっきりしすぎてて、ちょっとこの欠点を直さないと、出版するにはちょっとキツいかなあと。
平林 僕もわりとおもしろく読んだんだけど、M資金をソ連侵攻の可能性が高い北海道に運ぶというのはないだろうと。そこはキツいよね。運ぶとしたら松代の大本営とか、もしくはもっと、日本の占領地で支配が強固だった場所に運ぶんじゃないかと。ただ、僕はM資金自体を悪いと思わないかな。
柿内 うん、あってもいいかな。でも、三種の神器がなんか胡散くさいんだよね。
岡村 やり過ぎと言うか、描写が足りていないと言うか。
太田 唐突なのかなあ?
岡村 確かに唐突なところはあります。あと、野尻抱介さんの作品とか読んだほうがいいと思うんですよね。『ふわふわの泉』とか。野尻さんは現実のテクノロジーを使ったSFとかメチャクチャうまいですから。
平林 あとは小川一水さんの作品も読んでほしい。
岡村 そうなんですよ。
太田 またウチに送ってきてくれたし、応援はしたいんだよね。ただ、岡村くんが言うように、まだ一味だけ足りないと思う。
岡村 注文は満たしつつあるんですけどね。ページも圧縮されてますし。
平林 ページを圧縮したのは大いなる進歩だと思うけどね。他の投稿者は全然できてないことだし。それに、展開が似てるって言ったけど、展開がおんなじでこれだけ圧縮できてれば十分だと思うけどね。
太田 なるほどね、そういうふうな考え方もできるね。でもさ、やっぱり、「これだ、これでデビューだ!」って感じはしないんだよなあ。岡村さん、どうしましょう?
岡村 いや、まだいいです。まだ足りない。
太田 厳しい! しかしわかった! 期待の表れゆえの「足りない」だよね。少しずつではあるけど着実に点数が上がってはいるわけだから、僕も引き続き期待しています。どうかこれにめげずさらなる気合いで頑張っていただければ!
冒頭は抜群にいいのに!
太田 次は久々に平林さんのやつだね。『月曜日と灰』。
平林 この人、何とかしたほうがいいんじゃないか、と思って挙げました。
太田 この人は何回か送ってきてるんだっけ?
平林 そうですね。僕が読むのは3回目かな。『テケテケさん』の人。そのときはすごい良かったんですけど、次読んだときが全然ダメで、今回多少マシになってたんですけど……どうもかなり袋小路に入っている感じがします。
太田 僕もさっきね、八割方読んだ。うん、袋小路。平林さんと同じ感想ですね。
平林 今回、出だしは悪くなかったと思うんですよ。高校生の主人公が、電車の中で謎の男に尻を揉まれ、そいつにコインロッカーの鍵を託されるんですが、ロッカーの中には、女子高生の喋る生首が入っている、と。
山中 そこまではすごくおもしろいんだけど……。
平林 そうなんだよね。出だしも設定もいいのに、全体としてはダメ。で、それはなぜだろうと思ったんですが、そう言えば『テケテケさん』は短編連作だったんですよね。
太田 そう言えばそうだったね。
平林 だから、この人は単純に長編が書けないタイプの著者なんですよね、きっと。行き当たりばったりで書いているから、途中から破綻してくる。
山中 幹が弱い気はしますね。一本の小説を通して、こっからここまで行こうっていう意志が、見えてこないんですよ。
平林 そうだよね、着地点が見えてないからダラダラ長くなっちゃって、500枚の長きにわたって書いているんだけど、とくにおもしろくもない、という……。
柿内 この作品はとくに、途中から全然おもしろくなくなるよね。
平林 そうなんですよ。出だしの30枚くらいはすごくおもしろいのに。
太田 男に尻を揉まれるところとか良かったよね。
柿内 女の子がバラバラなのに普通に喋ってるところとかはめちゃくちゃいいんだよ。なんか俺『魍魎戦記MADARA』とか思い出したなぁ。
太田 思うんだけどさ、この人は本当に書きたいものを書いてないんじゃない?
平林 ああ、なるほど。
太田 本当に書きたいものを書いてないから、平林さんが言ったような、突き詰め方が足りないものになってるんじゃないかな? でも、小説を書く技量がそれなりにある人だから、それでも書けちゃうんですよ。それが余計良くない結果を招いている。「これを書かないと俺は人としてやっていけない!」みたいな、「デビュー作を書きたい!」って切実な感じはひょっとするともうなくなってきてるんじゃないかな。
平林 本当にそれがないんだったら、別に書かなくていいんですよね。
太田 そう。それに、書きたいものはないけど小説家になりたいっていうんだったら、そういうところはあるじゃん。そこに行けばいいんだよね。職業作家としての「いい仕事」っていうのは確実にあるし、それはそれで読者を十分以上に楽しませられるし、僕はまったく馬鹿にしているわけじゃないのよ。
岡村 居場所としてそこを選ぶ生き方もあっていい、と。
太田 うん、それだったらそういうところに行けばいいと思うんだよね。でも、この人は、自分が本当に書きたいものは何なんだろうって今こそ突き詰めて考えてほしいなあって気がするよ。だから、今のこんな感じではちょっと応援できないね。そこそこ書けてるってところがまたね。ただ、本当に書きたいものを書けば、ガラッと変わる可能性はあると思います。故に、奮起を望みます!
複雑すぎてついて行けない!
山中 次は僕の挙げた『レムナント・メモリーズ』なんですが……すいません、長いのを挙げてしまって。
太田 うん、長い。
柿内 長いね。
山中 ざっと説明しますと、何らかの災害が起こって、幕張だけ隔離された世界が舞台。幕張ナイトメアってまあセンスのない名前なんですけど。
平林 「メガテン」のパクリじゃねえか!(怒)
山中 そうそう。そういう感じですよね。その幕張ナイトメアには人が簡単には入れなくなっていて、時間の流れも遅くなっている。中に入るためにはいろいろ無茶をしないといけなくて、特殊な兵士が2人だけ、なんとか入ることができたと、いう設定。
今井 まず、それを理解するまでが複雑すぎるんですよ。
山中 だよね。兵士たちは、幕張ナイトメアの中で神様みたいなのが能力を発現することになっているからそれを手助けするのが任務、という。
太田 わかんねえよ!
山中 しかも、今まで話した設定は、実は遺体の中から読み取られた記憶なんですよ。映画『インセプション』みたいな話で、複雑に階層化されている。第一層が現実で、第二層が物語の本当の冒頭の部分に入るんですね。で、遺体の記憶を読み取りますっていうところ、ここからスタートして、その次の第三層の、遺体の記憶になるんです。さらに、第三層の中で主人公が夢を見ると、昔の記憶を思い出そうとするから、第四層の部分がでてくる。そして、ずっと第三層と第四層を行ったり来たりしながら物語が進んでいく。
岡村 すごい整理して話してくれましたけど、これ、普通に読んでわかるんですか?
山中 まったくわからない!
太田 僕もちょっと読んだけど、これはわかりにくすぎるよ。書いた本人以外は読めないよ。
柿内 『神狩り』くらいにシンプルにできないのかな。
平林 ああ、確かに。『神狩り』は誰でも読める。テーマは高度だけどおもしろいし。
山中 夢の中で女の子の介護をするっていう話はすごい良くて、そこの部分だけはすごい良かった。
太田 とにかくさ、小説は読者に読んでもらってナンボなわけで、これじゃあちょっと読めないよね。ネタを全部放り込むんじゃなくて、もっと削って、本当に読ませたい部分を、読者に届くように書いてほしいね。
王道! 孤島&天才もの
岡村 次は僕の挙げた『不偏水底フィクティシャス〜fictitious blue〜』です。
太田 うん、これは最後まで読みました。
平林 ペンネームが「むしたろう」の人ね。
山中 なんでこんなペンネームにしちゃったんだ!
平林 いいんじゃない? これ小栗虫太郎から取ってるんでしょ?
山中 でも平仮名じゃないですか?
太田 もしかして、「でじたろう(※)」さんへのリスペクトじゃないのかな?
※ゲーム会社ニトロプラス社長・小坂崇氣氏のニックネーム。
岡村 それはちょっとハイレベルな……推測じゃないですか? ともあれ、某大学の宇宙物理学専攻で、まあエリートですねえ。△△△高校って有名なんですか?
山中 メチャメチャ有名ですよ。学区のトップクラスの公立高校だと。
岡村 孤島で起こる殺人事件に男女タッグの主人公。男の方が大学の博士課程の研究者。ヒロインが探偵役として謎に挑むっていう感じで。メインの登場人物は、特殊とは言わないですけれどまあ、みんな才能を持っていて、一癖も二癖もあるキャラクターがたくさんいると。
太田 うん、あるね。
岡村 細かく言うと、大学で有名人のヒロインのもとに、同じ大学に所属する財閥のお嬢様が依頼に来る。依頼の内容は、予知能力者から「お前一週間後には殺されるぞ」と宣告されたのでどうにかして欲しいってことなんですね。そのお嬢様が演劇サークルに所属してるんですけど、まあ演劇サークルの合宿をそのお嬢様の別荘の孤島でやることが決まってて、という。
太田 テンプレなんだよね。
岡村 まさにテンプレなんですよ。孤島天才もの。悪く言えばテンプレで、良く言えば王道なんですよ。
太田 おっ、いいねえ! 俺は王道、ハッピーエンド、大好きだよ(真顔)。
岡村 そこはいいんですが、長い。この人に言いたいのは、続編が作れるような豊富な設定を盛り込むくらいなら、まず一冊としてまとめて欲しい。
太田 さっきも言ったように、続編が猛烈に読みたければ、続けられそうにないものでも編集者がアイデアも含めてオファーするわけで、これはちょっと先走った感があったね。
岡村 あともうひとつ弱点があって、やっぱりオーバーラップするんですよね。既存作品と。
平林 ああ、新レーベルね。
岡村 違う違う。そんな細かいツッコミはいいですから!
山中 不覚にもちょっとおもしろかった(笑)。
岡村 いいですよ、向こうのサイトにリンク貼っても。話題になると思うんで。
平林 「星海社がオーバーラップをディスる」って。
山中 ディスってないけど、絶対言われそう……。
岡村 それはおいといて、どうでしたか、皆さん。
太田 この人、1作目でこれを書けるのは立派だなって思う反面、長いんだよね。最後のオチの10枚だけ読んだら、だいたい全体像がわかる話だしね。
岡村 ああ、わかります。
太田 これだと良くないですね。
平林 あと、あんまり理系っぽくないんですよね。
柿内 研究室のリアリティが全然ないんだよ。登場人物一覧見たときにみんな理学部とか薬学部とか工学部で、そういうのおもしろいなあと思ったのに……。
平林 なんかすごい文学部的な作品だった。
山中 まずね、主人公の理系っぽさのなさがすごい。なんで理系なのかってことがいまいちよくわかんない。背景が全然見えてこなくて。
岡村 そうですよ! これだけの枚数を書いてるのに、背景が全然見えてこないんですよ。
山中 森博嗣さんの犀川先生って、もちろんファンタジー的な存在なんだけど、でもちゃんと理系の先生になってるんですよ。この小説では「理系です」って言ってるだけ。
太田 登場人物が多いし、ちょっと書き散らしちゃってるよね。でも、1作目でここまで書けるのは僕はすごいと思う。
岡村 有望なんじゃないかな、とは思います。
太田 うん、何か持ってるとは思う。どうしましょう、会いますか?
岡村 いや、もう一回送ってもらったほうがいいかもしんない。
太田 よし、では敢えて会わずに奮起を促すということで、次作に期待しましょう!
ガンの特効薬と魔法
太田 よし、では今井さんが挙げたものにいこうか。
今井 『僕と、僕と魔法』です。ご説明しますと、CE薬というキャンサーイレイザー、要するにガンの特効薬が作られた世界のお話です。CE薬はガンを治してくれるんですけど、同時に魔法の力を目覚めさせてしまうっていう設定で、CE薬をガンの治療じゃなくて魔法の力をつけるために使う人もたくさん出てきたと。
山中 その設定はおもしろいよね。
今井 そういう人たちのために「魔法斡旋業」という仕事が新たに認可されて、この薬は定期的に投与しないと魔法の力を維持できないんで、メンテの意味も含めて、そういうお店とかも出来ている。魔法使いには3つのランクがあって、一番レベルが低いのが「魔法使い」、2つ目が「魔法被り」、最後が「魔法まわし」。魔法まわしは数千人とか数万人に1人しかいないと言われている、すごい能力です。
平林 そこは若干テンプレ的かな、と思った。
今井 CE薬というのは、コーラみたいに成分が発表されていないものなんですけど、そのレシピが流出、というか公表されちゃいそうみたいなところから物語が始まって、結局主人公とヒロインの子は公表しようとするんですけれど、そこには利権とかもあって、どうなんでしょう、みたいなとこで物語が進んでいく。なかなかいいんですけど、450ページもあって非常に長い。
太田 うん、長かったね。
今井 でも、僕はこれがすごい好きでして、何が好きって、ガンの特効薬が開発されてそれが魔法の力を授けるっていう設定が地に足がついている。決定的な変化が世界にひとつ起きたときに、世界がどう変わるかみたいなところを丹念に描いて、物語を駆動させている。一方で、キャラクターやセリフにそんなに目新しいものがなかったりするのは弱点。あとはさっきも言ったように物語全体が長すぎるのが課題だと思っております。皆さんいかがでしたでしょうか?
柿内 やっぱり長いね。
岡村 設定がおもしろいよね。『ゴールデン・リリー』と逆で、あれは実際にありそうな話を使ってるんだけど、なんかうそ臭いんだよ。これは逆に、リアリティがあってすごくおもしろいし、能力はテンプレだけど、ランク付けされてて、ギャンブル的に発生するっていう使い古された設定だけどおもしろく書けている。今回読んだ中では、一番設定は好きでした。キャラクターも、今井くんは「新味がない」みたいな感じだったけど、僕はちゃんとキャラが立ってるなと思ってたんで。
平林 タイトルはいいなぁと思った。話は確かに長いんだけど、光るところもあると思うし。
太田 なるほどね。だいたいみんな、同じような指摘だね。僕も、この人は才能があると思う。ただ、今回でデビューって感じではないよね、やっぱり。どうしよう、この人?
今井 会ってはみたいなと思います。
太田 どこに住んでんだっけ?
今井 山梨です。
太田 この人はさ、もり立ててあげようよ。次回もウチに出したいなって感じが作品から伝わってくるよ。いいじゃない!
今井 この作品で新人賞じゃないなとは思ってるんですけど、お会いして、お話しして、ぜひウチに次も。
太田 編集者がすぐには会わないほうがいいんじゃないかっていう説もあるんだけどね。
山中 正確に言うと、編集部で会うのは良くないんじゃないかっていう。
平林 『月曜日と灰』の彼もそうなんだよね。良くないほうに作用しちゃった。
太田 そこでゴールしちゃうんだよね。だから、外で会ったほうがいい。今井さんが1人で会ったほうがいいような気はする。何かのついでに山梨まで行ってあげなよ。
今井 じゃあ一回行ってきます。どこでどう会うかはちょっと考えます。
山中 中途半端なところで会うのが一番いいような気がする。
柿内 八王子だったら屈辱だよね。
一同 笑
平林 受賞したら東京駅。
太田 本が出たらやっと編集部に来られる、みたいな(笑)。
岡村 ホント酷いなこの会社!
太田 会うっていうのは、才能を認められているってことでもあるんだけど、そこからデビューまではまだ距離がある。そんな感じかな。邁進して下さい!
爆発寸前の原石登場!
太田 で、ラストは僕が読んだ『自殺者が死ぬほど望む何か』、なのだが……!
柿内 なんか、すごく良かったみたいじゃないですか。
太田 あのね、文章は抜群にうまい。天才と言ってもいいね。
岡村 ちょっと読んだんですけど、すごかったですよ。
山中 確かに文章が全然違う。10行読んだだけで違います。
太田 もう全然違いますよ。いやね、この人は年齢が17歳だったのでふと読んでみようかと思ったんだけど、文章が抜群にうまいんですよ。繰り返すけれど、天才と言ってもいいね。ただ、文章としてではなくて、小説として考えると、ストーリーとキャラクターがやっぱりどうしても弱いんだよね。だからと言って、この人の作品にキャッチーな、ライトノベル的なフレーバーを混ぜていけば良くなるのかと言うと、たぶんそういうことではないと思うから難しいんだけど、ともかくキャラクター。小説で稼いでいこうとするときに、この人の場合はキャラクターのこともうちょっと考えてやったほうが、もっともっと良くなるっていうのは確実にある。
岡村 確かにそうかもしれない。
太田 あとは、お話のほうもちょっと詩的に過ぎるんですよ。おそらく、もうちょっとだけ意識的にレベルを下げたほうが、広く受け入れられる話になると思う。
今井 ストーリー的にはどんな話なんですか?
太田 ちょっと追いづらいんだけど、高橋という名前の少年がいて、ふと気づくと、教室に自分の机がないんだよね。学校の中から自分のものだけがなくなってて、周りの人も自分を認知できないんですよ。それに加えて、物を触れなくなっちゃう。
今井 生霊みたいになっちゃってる?
太田 そうそう。でも、同姓の高橋さんっていう女の子がいて、その子だけは自分のことを認識できるんだよね。
岡村 その子は普通に暮らしてるんですか?
太田 それが普通じゃないのよ。彼女は、自分が自殺したんだって言うのね。で、主人公の男の子は、その女の子の高橋さんが死ぬ瞬間の夢の中に取り込まれたんじゃないかって仮説でずっと話が続いていく。最後に一応どんでん返しがあって、それは×××××××××××××。
山中 ああ、だからか!
太田 そう。でも、やっぱりちょっと、キャラクターやストーリーが弱いよね。
山中 読んでいて「おもしろい!」って感じはなさそうですね。
太田 ただ、本当に文章はいいんだよ。
柿内 そんなにすごいんですか? 比喩の使い方がうまいとか?
太田 比喩もすごい。ただ、繰り返しになるけれども、一般の人が読んでおもしろがるようなところがあったほうがいい。職業として、小説家をやっていきたいんだったら、そこはマストだと思うんだよね。こういった若い才能がわざわざ星海社に応募してくれたんだから、僕もこれはカテゴリーエラーですみたいなこと言ってもしょうがないし、だからこれから具体的に誰の作品を読めばいいのかって思ったときに、2人パッと浮かんで、1人は朝井リョウさん。
岡村 おお、なるほど。
太田 もう一人は、『池袋ウエストゲートパーク』の石田衣良さん。この人は石田さんや朝井さんを読んだほうがいいんじゃないのかというのが僕のアドバイスです。
岡村 わかる気がします。やっぱり、もう少しキャラクター小説的な方向を考えたほうがいいってことですね。
太田 そう。あと実は、このお2人というのはただ才能だけで人気作家になった人たちではないと思うんだよね。しっかりした戦略があるんです。朝井さんは、持って生まれた才能に加えて基本のところをバッチリ押さえたベタさがあるじゃないですか。石田さんはもうプロ中のプロと言ってもいい作家で、自分が人気作家になるにはどうすればいいかを考えに考えて、それを完璧にやれている人なんですよ。だからまずその2人の作品を読んでみるべきだと思うんだよね。この子みたいな天才が、人気作家になるための努力をしたら……もう無敵じゃないですか!
岡村 17歳に相当高いハードルを課してますね。
太田 世の中ってやっぱり大半は凡庸な成分でできているわけだから、世の中でちゃんとやっていこうとすると凡庸な成分を受け入れないといけないんですよ、どんな天才でも。そうじゃないと詩人のランボオみたいに、砂漠の果てに消えていくことになっちゃうんですよ。それはそれで美しいんだけど、僕は別にヴェルレーヌじゃないから、そうなる前に「ちょっとウケる仕掛けをしとこうよー」って余計なことを言いたくなるんだよね。僕がもし『群像』の編集長とかだったら、そういうことを一切考えなくていいんですけどね。
山中 でも、星海社はそうではないですからね。
太田 そうだよね。それにしても、本当に17歳とは思えない文章なんだよ。ちょっと読んでみるね。男の子と女の子の会話の部分。
「空っぽだね、高橋くん」
「虚ろさを埋めるために、歩いているのかもね」
「万歩計じゃないんだから」
「同じようなものだよ。人間が一生に打てる心臓の鼓動の数は決まっているらしいんだから」
「だから、逆じゃない。万歩計は貯めて、私たちは減らすの。貯金を積み立てて生きていくか、貯金を崩して生きていくかって話じゃない」
それっきり、彼女は黙った。赤い信号はルビーになんて変わらないで、石の下にびっしりと隠れているてんとう虫みたいに、ぼぉっと赤く光っている。
太田 これ天才でしょ!
山中 句読点の位置がすごくいい。
柿内 (原稿を見ながら)どこを取り出してもリズムがいいですね。天性の詩人ですよ、やっぱり。
平林 なかなか、訓練だけでは書けないものを持ってますね。
柿内 ライターさんからこういう原稿が来てほしいなあって思いますね。詩的じゃなくていいんですけど、リズムがすごく良くて、情景がちゃんと浮かぶ文章で……うーん。
岡村 この人ほんと、比喩の表現がすごいですよね。パターンも多くて読ませる。
柿内 (まだ原稿を読みながら)いや、でもこの人は文章が本当にいいですよ。個人的には、比喩を使ってない文章のほうがむしろいい感じですね。詩的なリズムをうまく活かしてる。改行の場所とかも抜群ですね。
太田 カッキーが言うんなら本当に間違いないと思う。まあ、この子は天才だから、真面目な話、このまま一言一句変更せずに出版をしてもいいんですよ。ただやっぱり、敢えてこの聖なるものを俗の中に突き落としてみて、そこからどうやって帰ってくるのかを僕は見てみたい。
柿内 いや、これを読めば当然そのくらいの期待をかけたくなりますよ。
太田 敢えて待ちたい。この子は、狭い文学のほうに行ってはいけないと思うし、敢えて自分でこちら側の道を選び取るようなものを書いて欲ほしい。
柿内 星海社に送ってきたわけですから、こっちに来たいとは思ってるんじゃないですかね。
山中 まったくオタクっぽくないのになんでウチなんだろうって、不思議ですよね。何を見て応募してきたんだろう。
太田 なぜ星海社に投稿したのかはぜひ聞きたいね。うーん、セイバー萌えだから? まさかそんなわけないよね(笑)。
平林 原くくるさんの『六本木少女地獄』だったりして。
太田 ああ、そうかも! そうだったら嬉しいね。あれはこういう子に届けばいいなって思って出した本だから。
岡村 もしそうだとしたら、出版の根源に関わるような素晴らしい話じゃないですか。
太田 そうだよね……。ともあれ、この人はすごい才能だよ。次回以降も待っているから、受験が終わった後でも構わないので必ずもう一度送ってください! 全身全霊で書いてくれよ! 頼んだ!!
座談会を終えて
太田 というわけで、今回は「あと一歩!」という感じの原稿が何本かあったんだけど……結局、賞金の160万は積み残しだよ!
岡村 でも、才能もかなり溜まってきたんじゃないですか。
太田 あと一歩のところまで来てる人が、3、4人、いや5、6人はいるからね。まあ、最後の人なんかは敢えて待ったわけだし。
柿内 しかし、賞金は次回までにまた増えてるんじゃないですか?
平林 最近FICTIONSは刊行点数も安定してますし、人気シリーズも増えてきましたからね。
太田 きっと200万円は超えちゃうだろうね。
山中 次あたりで、3人くらい同時に受賞とかになるといいですね。
太田 いや、その可能性は大いにあるよ。
岡村 そうですね、前回有望だった人たちも今回応募してきてないですし。
竹村 その人たちは、既に書いてるんじゃないですか、次回作を。
今井 いいですね、次回は激戦の予感……。
太田 いいねいいね! 我々が自信を持っておすすめできる受賞作を三度四度送り出す日も近いでしょう。引き続き、頑張っていきましょう!
今井 応募要項はこちらで!
太田 では本日は、お疲れ様でした!
一同 お疲れ様でした!!
一行コメント
『或いはちょっとしたトラブル』
不自然な設定が次から次へと出てきて、お話に入っていけない。(平林)
『インナーワールド・ワンルーム』
読みにくい。読む人の身になって考えて下さい。(平林)
『可憐少女と狼少年』
最後まで読んでも何を伝えたいのかわかりませんでした。(岡村)
『無頼探偵ドラキュラ/竜殺しの魔剣』
最後まで読むことができませんでした。(今井)
『いるかのぼり-Diosa Mio!!』
冒頭のシーンはじんとくるものがあったので、あれを30枚以内にまとめられるようになると良いのでは。流石にイントロとしては全体の4分の1は使いすぎでしょう。(山中)
『キング・オブ・プロフェッショナル』
タイトル、ペンネーム、書き出しの3行……すべてにキング・オブ・センスのなさがつまっている。残念。(柿内)
『オーバーロード・マンホール』
全体的に、既視感がありすぎます。(今井)
『レジェンド・オブ・テラ「プリンセス・レイヤ物語」ベテルギウスの使途』
タイトル、キャッチコピー、あらすじ……。それぞれがそれぞれに、読書欲を奪っていきました。(今井)
『結殺師』
地の文がいくらなんでも説明的すぎて読みづらい。敢えて説明的にする必要も感じなかった。(岡村)
『誰がために謎を解く』
キャラクターに魅力がないと成り立たない設定かと思うのですが、そのキャラに魅力がありませんでした。(今井)
『バケモノ寓話集』
うーん、長い。そして平板。ワクワク感がない。(平林)
『二代目の災厄』
頑張って書いてくださっているが狙いすぎか。既視感もあり。(竹村)
『EQUALLY POSSIBLE ROYER』
まとまってはいるが、いかにも小粒。オリジナリティが欲しい。(平林)
『僕たちの悲劇的な喜劇』
日本語の文法的な誤りや呼称の不統一などが非常に多く、読むのが辛い。推敲して下さい。(平林)
『かいそう日記』
あらゆる点で冗長で、テンポが犠牲になっています。読者に対して負担を強いすぎている。(山中)
『2WAY TALES〜Shade of Electric Bohemian〜』
問題の解決と物語の締め方が、それまでの展開と無関係すぎる。(岡村)
『闇天狗』
良く書けているんだけど、良く書けている、ということだけで収まってしまっています。オリジナリティが希薄でパンチが足りない。(山中)
『メルヘンチックは似合わない!』
作品の設定は好きですが、それがうまく活かされていない。あと長すぎます。(岡村)
『バッド・スニーカーズ』
“能力者”の設定は悪くなかったと思います。ただ、タイトル、セリフまわり等全体に古さを感じました。(今井)
『ダイヤモンド硬度:〔零〕』
書きたいことが多すぎるのか、視点がはっきりと定まっていない印象。(山中)
『悠久の少年たち』
『リトルバスターズ!』が好きということだけはわかりました。すべての面で力不足です。(岡村)
『俺、僕、私には友達がいなかった(仮)』
(仮)の原稿は二度と送ってこなくていいです。つまらない。(柿内)
『転換再出発地点』
学芸会レベル。(柿内)
『デイドリームトリッパー』
ネーミングセンスから何から、既視感がありすぎます。(今井)
『先輩と僕』
中味の話をすると、破綻はないけど小粒でした。あと、目指す雰囲気に文章力が追いついていない感じです。(平林)
『ダレカ〜The Black Flame〜』
どこかで聞いたことあるお話でした。(今井)
『神的暴力の代理人』
不快感の強い内容にする以上、それでも読みたくなるようなエンタテインメントをきっちり組み込んで読者をひきつけなければいけないのではないでしょうか。ただ書きたいままに書いてしまったのかな、というイメージが強い。(山中)
『I,you,any.〜lovelovelove〜』
スラスラと読むことができましたが、お話がおもしろくありませんでした。(今井)
『フランベルク』
自分の想像力と長編を一本書き切れるだけの根気のみで書いている印象。物語的な起伏に乏しい。(山中)
『愛と野獣』
幼稚すぎるでしょう。(山中)
『天上裏の銀河少年』
設定が飛んでいるのは別にいいと思うのですが、その中で動くキャラクター達にリアリティがなさすぎます。人間に人間らしさを感じませんでした。(今井)
『あらぶる終戦日』
無駄な勢いは嫌いではないですが、何が書きたかったのかまったく伝わってこなかったです。イントロの掴みをしっかり考えてみて下さい。(山中)
『走れ! 公務員』
ベースの設定が力業すぎる気がします。いくらなんでもその選択肢はとらないでしょう。(山中)
『指宿佳那嶺の完全犯罪』
悪くないバカミスですが、あくまでも「悪くない」で止まってしまったのが残念。(平林)
『少女たちの夢想戦争』
稚拙でした。(岡村)
『オレがユウシャで、コイツがヨメで』
こういうのはしんどいです。(平林)
『魔法少女 ウルテ/りお』
読むのがしんどかったです。この題材・タイトルは、相当の筆力がないと難しいと思います。(今井)
『Such a beautiful world』
読みやすいですが特に面白くはなかった。(竹村)
『黒魔女の見聞 スプリング・エフェメラル』
破綻はなくそこそこ読めるのですが、それ故に退屈でした。(平林)
『ねぇ、正義。』
読者は物語を読みたいのであって教科書を読みたいわけではないでしょう。密度の低い物語を教科書的な知識で水増ししても仕方がないのでは。(山中)
『LOVESONGに眠る子どもたち(改題前:distorted)』
こういう世界観の作品を書くならば、違和感なくその世界に読者を引き込むように書いていくことが前提条件ですが、それができていません。(岡村)
『虎と三日月』
既視感が強く、また最後の大盛り上がりをたったの6Pで流していたりと構成的にも楽しみようがない作りになっている。ミスリードを誘おうとしている箇所も前述で失敗していたり、提出前に推敲はして欲しいですね。(山中)
『探偵世界MMO』
設定、事件、キャラクター……。どれも詰め込みすぎな感じがしました。もう少しテーマを絞ってもよいのでは?(今井)
『クズは止まらない。デコピン☆ボンバー!』
小説として、あまりにもいろいろな要素が足りていないです。(岡村)
『四角形なら傷つかない』
全体的に作りが粗っぽく、ボリューム的にも中編程度の内容で、長編一本分には足りていない内容。ただ、文体の持つ雰囲気が良かったので、次があれば期待しています。(山中)
『パープルブラヴァーダ』
架空の社会とはいえ、“世論は犯人に味方した”の箇所が余りに非現実的。ありえないです。(今井)
『油にあかりを灯す』
ベースのアイデアは今回の担当分では一番良かったです。ただ、その設定を活かすための「学生運動」などの物語設計が稚拙で、リアリティに欠ける印象でした。(山中)
『カヤメブキ』
募集要項を満たしていません。データをつけてください。登場人物の名前を読めない箇所がありました。ふりがなをつけてください。(今井)
『あなたの生きるその世界へ』
設定は悪くないと思いましたが、プロローグのみを投稿されても……という感じです。「エイリを主人公に据えた本編まで我慢して頂きたい」と言われても、それは書き手のエゴだと思います。(今井)
『大きな物語の下で』
もっと定義を細やかにしないと読むには辛い。(平林)
『大体自分と他人』
全体的に、もう少し起伏が欲しい。読めなくはないですが、やはり平坦すぎると思います。(平林)
『延長線上のメークリヒカイト』
異能に対しての説得力がやや強引だったかな、という印象です。前半と後半で物語が有機的に繫がっていなくて、寸断されているように見えたので、全体設計をしっかり見直してみては。(山中)