ここから本文です。

カテゴリ: 編集部より

記事カテゴリ:作品

曹操スペシャル対談 ②

新たなる「曹操」のために——土林さんに聞く、キャラクター創作秘話。(後半)

 

曹操ってどんな男!?

太田:現在、『三国志』の二巻までお仕事を進められてきて、土林さんからみて曹操ってどんな男だと理解されてますでしょうか?

土林:正直、まだ分かりにくいですね。幼少の頃のこともまだよく分からないですし。彼の言動が、今の自分から見てまだ掴みきれていないといえば、掴みきれていないですね。掴むのが難しい人物だと思います。

太田:僕も今回『三国志』を改めて読み返して、吉川英治の曹操はすごいエキセントリックな部分がある人なんだなって感じました。すごい情に厚いかと思ったら、異常に酷薄なところもあるじゃないですか。二巻の徐州攻めでは、親父を殺されて怒ってる半面、「これで攻める口実が出来た……!」くらいに考えているところとか。やっぱり、天下取る人間は違う!!

土林:戦乱の時代ならでは発想というか、ふだん僕たちが生活しているところからの発想ではないような気がしますね。

太田:今の土林さんの言葉ってまさに曹操を表した「治世の能臣(のうしん)、乱世の奸雄(かんゆう)」だってところがあって、そういう意味だと、治世の後漢時代から乱世の三国時代に至る動乱そのものが彼のキャラクターをよりエキセントリックな方向に振ったということも考えられますよね。

土林:そうかもしれないですね。

太田:そもそも乱世でなければ父親があんな形で死ぬことないですからね。本人も人を殺したりしなくてすんだでしょうし。もとからの人格だったのではなくて、乱世の事件のひとつひとつが彼の心の奥底から新しい性格を引き出していったのかもしれませんね。劉備(りゅうび)だって乱世じゃなかったらそのまま静かに暮らしていたかもしれない。そう思うとこの2人、好対照なんだけど実は似ているのかもしれないですね。

土林:ですねえ。

  

太田:二巻までの時点だと、曹操の魅力的を感じたところはどこですか? ちょっとついていけない所とか……(笑)。

土林:彼にはもちろん国をまとめたいという志があるとは思うんですけど、そこに至るまでの経緯を考えると、曹操がどういう存在なのかっていうのは今の時点ではまだ僕には分かりにくい部分がありますね。

太田:曹操に部下になれって言われたどうします?

土林:……難しいですねえ(苦笑)。

太田:今まで属していたゲームを作るチームや組織の中だと曹操っぽい人だれでした(笑)?

土林:うーん、ちょっと答えられない……(苦笑)。そうだ、太田さんのスタッフの岡村さんからみて太田さんは『三国志』だと誰だと思いますか?

岡村:曹操ですね!

太田:うーん、ぼくは劉備だと思うし劉備になりたいんですけどねえ〜。

岡村:明らかにそれはない。僕、たまにこの人本当におかしいなって思うときありますからね。

(一同 笑)

岡村:だけどすごく合理的だなと思うところもあるので……しかし、絶対に劉備ではないです。これだけは言えます!!

太田:曹操って本人もすごく才能あるんだけど、それ以上に他人の才能を使うのが巧い人なので、そういう所は編集者に近い気はします。その点、劉備は人の使い方が下手なんですよ。

土林:劉備の場合、いわゆる人徳などで人が集まってくるイメージがあるんですけど、曹操にも有能な人が集まるじゃないですか。だけど、集まり方に違いはありますよね。

太田:曹操には張飛(ちょうひ)のように偉くなっても「兄貴ー!」と慕ってくれる部下はいませんよね。そこは劉備と明確に違う点ですね。

土林:曹操は「この人が欲しい!」という表現で人を集めてこさせるわけですけど、そういった個人的な欲望以外の角度からも才能のある人が集まってくるような引力を持っている。不思議な人です。

太田:曹操は人材コレクターですから。逆にそれが嫌だって人も出てきちゃうんだけですけどね。さきほどからお話を聞いていて、土林さんらしいなと思ったのが、曹操と劉備がまだ分からないって仰るところがおもしろいですよね。ふつうは、まずこの二人に明確なイメージを持って『三国志』の世界を描き始めると思うんですよ。

土林:劉備の場合、彼が人徳で人を集めるような印象は、まだある程度イメージできたりするんですけど。ただ曹操の分からなさは……、彼のすごいエピソードを見るたびにどうしてそんなことができるのか、彼が何を考えていたのかが分からなくて……挿絵で登場しているシーンのイメージは描けるんですけど、曹操というひとりの人物像をこれからどう描かせていただければいいのかなぁと。

太田:悩みながら、描きながら、その答えを見つけてらっしゃるんですね。土林さんは一枚の挿絵に対して、4,50枚のデッサンをお描きになるじゃないですか。すべての人物に身長や体重を設定されていたり、小説に著されている年齢と身長以外にも身長や年齢を想像して設定しています。今どきこんなに非効率に仕事していいのかってくらいな丁寧な仕事だと思います。本当に感心します。土林さんは『戦国BASARA』や個人で創作されている新選組など、割と歴史ものを数多く手掛けられていますが、どれも今回みたいに綿密にデッサンをお描きになるんですか?

※絵・右側に小さな文字で数字で身長を記しています。

土林:基本的にはそうですね。ただ、綿密とはいっても、その時代の町や風景を考え出すとすごい幅が広くて、こうしたほうがいいんじゃないかって思うとどうしても描く絵の枚数が増えていく方向に……。

太田:ふふふ。他のイラストレーターの皆さんももちろん調べてお描きになっていますが、ここまでのノートを作る方というのはなかなかいないですよ! すごいです。僕も今回、土林さんとお仕事させて頂いて、歴史ものをやるならこれくらい気合い入れないといけないんだって学ばせていただきました。

土林:好きな三国志キャラが既にいるかと思いますが、イラストとして気に入ったキャラクターは誰ですか?

太田:僕はやっぱり曹操ですね。あとは関羽と張飛。張飛はとくに、皆が張飛に抱いているイメージを下敷きにしつつ、土林さんの解釈が新しく入ってきているのが新しい。張飛かわいいよ張飛。

土林:ふふふ。例えば、関羽のお髭はすごく長くて有名ですが、年とともに伸びていくような感じで、小説のイメージをふまえつつ少し違う表現かもしれませんが、自分なりにイメージして描かせてもらっています。

太田:関羽は固定イメージが強すぎるんですよ。でも張飛も同じくらいイメージが強かったはずなんですけど、土林さんの絵は彼の「末っ子キャラ」が伝わってくるのがいいです。そして、先委も述べましたが、「曹操は赤」っていうのが、イメージを裏切りつつかっこいい! あと、今回の二巻で僕がすごく気に入っているのは、典韋(てんい)が死ぬところ! 見開きの挿絵を二回連続で使いましょうと土林さんから提案してくださって……絵描きさんから先にそのアイデアを言われたのは初めてだったので嬉しかったです。

岡村:「毛虫のように」と小説では表現されているところですね。曹操があまりにも典韋を可愛がっていたからか、その曹操の乗りうつった様に土林さんから典韋のラフが送られてきていましたね。

太田:あのラフからの完成にいたる流れはすごかったですね……。と、こんな感じでこれからも折りをみて土林さんを囲んで『三国志』のお話しをすることができればと思っております。皆さん、ぜひ土林『三国志』を応援してください!!

(了)

 


 

 

 

星海社文庫 三国志(二)


(written by 土林誠



本文はここまでです。