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カテゴリ: 編集部より

記事カテゴリ:太田克史のセカイ雑話

サークル「超水道」について。あるいは、90年代生まれは表現をどう変えず、そしてどう変えていくか。

iPhoneアプリのノベルゲームの傑作、『森川空のルール』iTunesへのリンク)に出会ったのは今年になってすぐのことだったと思う。『月姫』『Fate/stay night』の奈須きのこさんに始まって、僕はノベルゲームの世界の才能を続々と小説界に引き入れてきたけれど、iPhoneアプリでオリジナルのノベルゲームに出会ったのはこの『森川空のルール』が初めてだった。そして、才能を感じた。

 

『森川空のルール』は、バレンタインデーをテーマに据えたストーリーで、みずみずしい青春小説のフォーマットが見事にノベルゲームの枠内に落とし込まれている。フレーバーとしてのおたく性を感じさせながらも、あくまでもどこまでも一般よりのスタンス。昔のテレビで流れていた、深夜の青春ドラマみたいな感じ。

この『森川空のルール』をつくったサークルの名前は「超水道」http://sww.fool.jp/)。ミタヒツヒト@hitsuhito)と山本すずめ@yamamotosuzume)、佐々木ケイ@33ki_K)の三人が中心メンバーの大学生サークルだ。全員が、90年代生まれ。若い。

 

思えば一昨年の暮れ、僕はあの大塚英志さんから強烈な檄を飛ばされた。

曰く、「星海社を起ち上げた今こそ20歳の才能と付き合え、作家の年齢層を下げろ。もう一度『ファウスト』のころに戻れ」

 

いまや伝説となった文芸雑誌『ファウスト』の企画を起ち上げた“あのころ”、僕はまだ30歳で、付き合っている作家やイラストレーターの多くは皆20歳そこそこだった。佐藤友哉、西尾維新、竹、乙一、北山猛邦、滝本竜彦……。彼らは若く、幼く……それでも結局は、彼らがゼロ年代の表現を引っ張っていった。

僕はブレーキが壊れた編集者なので、“あの”ゼロ年代にあぐらをかいていたという思いはまったくないけれど、来るべき10年代と闘うために、僕はもう一度、編集者としてのすべてをゼロに戻すときがきていたのだと思う。そして、大塚さんはそのことを僕に先の言葉で的確に指摘してくれたのだと思う。

 

そして、念ずれば意通ず、なのか、あるいは引き寄せの法則が発動したのか、それからの一年は、毎月のように20歳前後の表現者と出会う一年だった。ざいん、原くくる、しまどりる、小泉陽一朗、ヤマダ……そして、「超水道」である。

 

「超水道」のミタヒツヒトと山本すずめは中学校からの友人で、そういった関係性はちょっとTYPE-MOONの奈須きのこと武内崇を思わせる。彼らも同じく中学時代からの友人どうしだ。「超水道」の場合、ミタは演劇、山本は絵画畑の人間で、そういった異分野の20歳前後の人間がクロスしてAppStoreを舞台にしてiPhoneアプリとしてのノベルゲームをつくる、とういうのがいかにも「10年代」を感じさせる。ステージは進んでいる。

 

そして、そんな彼らの新作が、『最前線』で発表される。ミタによる小説作品で、イラストは山本が担当する。

公開の日時は3/14。

そう、この新作はホワイトデーを舞台にしたカレンダー小説だ。

日付からもわかるように、この作品はバレンタインデーを舞台にした『森川空のルール』の姉妹編となる作品になっている。

もしあなたがiPhoneを持っていて、まだ『森川空のルール』を遊んでいないのならば、ぜひ3/14までに試してみてほしい。きっと最高のホワイトデーを楽しめるはずだ。

(written by 太田克史



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