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カテゴリ: 編集部より

記事カテゴリ:朝の最前線

「本作」という日本語はない?

おはようございます。アシスタントエディターの石川です。


前回に引き続き、このブログの第一声が「おはようございます」なのは、これが「朝の最前線」だからです。

更新時間はともかく、起き抜けに書くようにしたらまだ「朝」だと言い張れるでしょうか……。




ところで、「本作」という言葉があります。
いや、そのような言葉は辞書的には存在しないのでは、というのが今日の趣旨なのですが。


「本作」は、そもそも「この作品」の意味で用いられる場合がほとんどだと思います。
「本作は、文学史に燦然と輝く金字塔だ」といったように。

しかし、ためしに「本作」をパーソナライズなしで検索してみると、トップに表示されるのはヤフー知恵袋の記事〈主立った辞書で「本作」という言葉を調べても出てきません〉です。Web上の日本語辞書に載っている様子は見受けられません。
『JMdict』と『WebSaru』という和英辞典のみ、「本作」を「this piece / this work」として掲載しています。

もう少し検索を進めると、『歴史民俗用語辞典』が、「本作」を「大高持の百姓で末作(小作)に対する語。」と解説していました。「モトサク」と読むようです。探していたのと違う……。

と、ここで『実用日本語表現辞典』の「今作」の項に、「今回の作品、今回のバージョン、などという意味合いで使われる俗語的な表現。「前作」に対して今回の作品というのを対比的に言う場合に「今作」などという風に書かれる。本作。」とあるのを見つけました。
なるほど、実用日本語。
(「今作」が載っている辞書も、ざっと見た限り『実用日本語表現辞典』だけであるようです。)

精度を上げるために、続いて『広辞苑』を引いてみることにします(編集部にあったのが昭和五十年発行の第二版で若干古めですが)。

 

…………ありません。

それでは、「本書」や「本稿」のような意味合いの近い言葉はどうなのかと調べてみると、「本書」は広辞苑にあり、「本稿」は広辞苑にはありませんが『デジタル大辞泉』等に収録されていることがわかります。


どうして「本作」はこのようなことになっているのでしょう。
「本」が「この」の意味をもつ接頭語として様々な語に付くようになり、「作」の上にも例によって付いたものの、まだ語として歴史が浅く、辞書に収録されるには至っていない、ということでしょうか。


しかし、「本作」を使わないとなると、言葉の選択が一気に苦しくなる気もします。
いちいち「この作品」と言うのではまどろっこしいし、作品名を連呼もしたくない。「本書」では、「一冊の本全体」を示すのではない場合にはズレが生じる……。

いまのところ、自分の中ではできる限り使わないようにするのがルールになっていますが、正直「本作」の通りが一番いいよなあと思うことがしばしばです。「正しい日本語」を過剰に言い立てたいわけでもなし。どうしたものでしょう。
みなさま、なにか参考資料やご見解がございましたら、ぜひ僕のツイッターまでお寄せください……!

(written by 石川 詩悠



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