編集部ブログ作品
2018年1月29日 16:14
アドヴェントカレンダー
- 作品 | 白倉由美の「死ぬ話」
12月にはいる前、子ども達に配られるアドヴェントカレンダーはちょっとしたお楽しみだ。
なにしろ毎朝、日付の扉をあけると、そこにはサンタクロースの訪れる標でもあるように、チョコレートがひとつずつ顔を出すのだから。
寒さも気にならない。マフラーと手袋があればいい。雪はクリスマスまでとっておく。
裏庭にちょうどよさげな樅の樹をみつけ、自分のものだ、というかわりにそれぞれのカラーのリボンを巻いておく。気のはやい子はもう天辺に金の星を光らせている。
アドヴェントカレンダーは毎日あけられる。そして子ども達にクリスマスの到来がどんどんと近づいていくことを報せる。アドヴェントカレンダーは祝福の予言だ。心を躍らせる。
そして最後の日がくる。
チョコレートはすべてなくなる。
子ども達は樅の樹を飾り、靴下を吊して眠りにつく。
雪が降り、クリスマスがやってくる。
色とりどりのプティングやパイ、ケーキ、まるごとの七面鳥。
クリスマスは年に一度のお祝いの日だ。
夢のような一日。
祝祭の音楽が奏でられる。子ども達の歓び、歌う声が夜遅くまで響く。
そして沈黙の夜がすべてを闇に沈ませる。
クリスマスが過ぎた翌日の朝、アドヴェントカレンダーは思うのだ。
私達はもうただの紙切れに過ぎないのだな、と。