編集部ブログ作品
2017年5月 8日 16:21
世界の終わりとサンタクロースの贈り物
- 作品 | 白倉由美の「死ぬ話」
世界の終わりを過ごすためにふさわしい場所を探して、と僕が菓子に依頼されたのは、明日サンタクロースが来るというラジオのニュースを聞いた日のことだった。。
サンタクロース?
僕は壊れかけのちいさなラジオをつかみ、右手で振った。ラジオはそれきり沈黙した。
いまはもう二月。クリスマスは過ぎている。
私立探偵の僕は煙草を咥え、マッチで火をつける。古いビルは建て付けが悪く、エアコンもろくに働かない。ホットカーペットでも欲しいところだが、私立探偵としてそれはクールじゃない。フィリップ・マーロウがヒートテックを着ているなんて誰が信じる?
身体を温めるために僕はシングルモルトをグラスに注ぐ。繰り返すがいまは二月。窓の外は雪だって散らつきそうな程凍えている。僕は机に両足をのせ、依頼人を待っている。僕はたいていひまを持てあましている。ミステリー小説を読みながら、こんなクールな事件があればいいのに、といつも思う。あんまり妄想しすぎて小説家になろうかな、なんてことさえ思う。でも僕は理科系の人間なので、文才はまったくなかった。ラジオも壊れたし、野球はまだシーズンじゃない。僕は琥珀色の液体をすすって時間を潰していた。
シングルモルトのせいで僕はうたたねをしたらしい。夢の中で神経症のキツツキが鋭いくちばしで僕のこめかみを執拗につついていた。その音が大きくなり、僕ははっと目をあけた。その瞬間、「探偵事務所」と看板のつけられた磨りガラスのドアが開いた。ドアからは眼鏡を書けた高校生くらいの女の子が顔を出した。
「あの、世界って明後日で終わりって、知ってます? あなた探偵さんなんでしょ?」
いつもの家出猫さがしや不倫の精算の相談なんかじゃない。これは飛びっ切りの依頼かもしれない。僕はにっこりと彼女をみた。
「もしかしたら明日サンタクロースがくるからかな? サンタクロースは世界の終わりをプレゼントの袋に詰め込んでトナカイと一緒に僕らのもとにくるのかもしれないね」
「は? サンタクロース?」
眼鏡の奥の一重の目が疑り深そうに細くなった。僕は慌てて立ち上がり、椅子を勧めた。
「さて、君のソースはなに?」
「UFOです」
彼女は僕のテーブルの前に置かれた椅子にちょこんと座った。小柄な子だった。椅子から足をぶらぶらさせている。彼女は悩ましげにミントの匂いのする吐息をついた。
「私、UFOにさらわれたんです。アブダクションですよ! わかります? Abductionです!」
Abduction,と僕は思う。その言葉に夢中になった日が僕にもあった。宇宙人は地球に入植し、誰もしらないうちに宇宙人の遺伝子を受け継いだ子どもで地球をいっぱいにする計画をたてている......。
「勿論わかるよ。実をいうと僕はXファイルが大好きなんだ」
僕は後ろの壁を指さす。そこには「I want to believe」と書かれたポスターが貼ってある。
「ああ......。昔の海外ドラマね......」
彼女は褪めた眼差しを僕に向ける。それは彼女をほんのすこし大人っぽくみせた。
「最近新シリーズも発表されたよ。モルダーもスカリーも、シガレットスモークマンもローンガンメンさえも健在だった」
勢いこんで話す僕を無視するように、彼女は黙ったまま僕の机の上に置いてあった煙草を細い指で取り出し、化粧っ気のない桃色のふっくらしたくちびるに咥えた。そして上目遣いにじっと僕をみた。僕は片手をあげた。はい、わかりました、という代わりに。
「それで君はUFOにアブダクションされて、世界の終わりを報されたんだね? 宇宙人はきっとどうにかして地球を滅ぼすんだね? そしてそれはもう決まったことなんだね?」
「みっつの質問の答えはどれもイエスよ。わかってくれたみたいね。そうね、もしかしてあなたって見た目より有能な探偵さんのかもね」
「そりゃあもう」
僕の半分くらいの年齢の女の子にほめられただけなのに僕はうれしい。私立探偵はクールでハードボイルドな仕事だけど、繊細でセンシティヴなハートの持ち主なのだ。
「で、君の依頼は?」
「世界が終わるときに一緒にいてほしいんです」
僕は改めて女の子をみる。長い髪をおさげに結って頬にはそばかすが星のように散っている。それからボストン型の眼鏡の奥の丸い、左右の大きさの違う瞳。背は低く、たぶん僕の肩くらいまでしかないだろう。グレイのセーターにスキニーデニム、そして紺のダッフルコートを羽織っている。おしゃれとは言い難いけれど、左手に数冊の本とMacBook airを抱えている姿はなんだかかわいらしい。
「探偵さん」と彼女は煙草をくちびるから抜き取るとにっこりと微笑む。
「勿論ただで、とはいいません。だってここは探偵事務所で、あなたはホンモノの私立探偵さんなんですものね。ちゃんと規定の料金をお支払いします。私、こうみえてもお金持っているんです。これ、秘密ですよ」
「秘密は大歓迎だよ。でも僕にはそのわけをきかせてほしいな」
女の子はそっと左右をみまわした。窓を風が叩く音しかしないのを確かめてから、彼女はささやくような小さな声でいった。
「あのぉ、小説書いてるんですよね、私。いわゆるライトノベルって奴を。自分でいっちゃうけどアニメ化とかもされちゃって、アキバではキャラクターのフィギュアとかも売ってるんです。つまり結構売れっ子なんですヨ」
「へえ。君まだ若いのにね」
そういえばまだお互い名前も年齢も知らないことに気づいた。
「僕は七宮柾嗣(ななみや まさつぐ)。君の名前は?」
「菓子(かこ)」
「え?」
「お菓子の菓子と書いて、かこ、と読むの。姓は砂糖です。砂糖菓子(さとう かこ)」
「ずいぶんと甘そうな名前だね」
「私は甘くないですよ。注意してください」
「ああ、はい」思わず背筋を伸ばして僕はいった。
「じゃあ、本題にはいりましょうね、探偵さん。さあ、明日までに世界の終わりにふさわしい場所をみつけてください」
僕は彼女の言葉を気持ちにしっかり記憶する。これは心のノートに書くように、私立探偵にとっては大切なことだ。そして私立探偵は素行調査も忘れてはいけない。
「ところで、君、年は幾つだっけ」何げなさを装って尋ねると、菓子はまた煙草をくちびるに差し入れた。
「14よ」
「え? じゃあ、中学生?」
「学校はいってないの」
椅子の上でゆっくり足を組み替えながら菓子はいった。
「どうして? お父さんやお母さんはなにもいわないの?」
「もともとお父さんはいない。二年前にお母さんは男と逃げたの。だから私は一人で暮らしているの。学校はきらいだったから、お母さんがいなくなった日から、いかなくなった。でも誰も困ってないし、私は割と頭がいいの。勉強は独りでもできる。だからこれでいいんだと思う」
「だめだよ。それは。君のためにならない。今からでも学校にいくべきだよ」
「ばかね。明後日で世界は終わるのよ」
菓子はちいさな掌をひらひらと振った。連絡先を書いたメモを残し、立ち上がると、ばたんとドアを閉めた。灰皿には半分消えた煙草がまだ火の点いたまま残されていた。そして彼女は持ってきた本も忘れていった。僕は手に取った。トーマス・マンの「魔の山」だった。
時計が回り、今にも雪が降りそうな、暗く幾重にも雲が連なる午後が静かに訪れる。僕は銀座のアップルストアの前で、喧噪にかき消されそうな指先で菓子の残したメモの番号をiPhoneでタップする。サンタクロースは今日、両手いっぱいのプレゼントを抱え、何処の街に来るのだろう、と思いながら。
「シマエナガをみにいかない?」
「シマエナガ?」
電話の向こうで甘い声がする。まだ幼いとけるようなウィスパー・ヴォイス。
「北海道にしかいない、すずめよりもちいさな、真っ白い鳥だよ。雪の妖精って呼ばれているんだ。白い雪のなかに足跡をつける妖精をみながら世界の終わりを迎えるプランはどうかな」
電話の向こうに沈黙が星のささやきのように響いた。
「飛行機はとれる?」
「すぐに」と僕は答えた。
飛行機に乗り、その後レンタカーを借りて二時間程アイスバーンを走る。車を降りるとそこは北海道の地平線のみえる場所だった。二月の北海道は白く清らかで果てもなく冷たい。煙草を吸おうにも手がかじかんで、指が震えてしまうので、僕はあきらめてポケットに両手をぐいっと押し込んだ。マフラーを口元まであげて、自分の吐息でせめてもの暖をとる。地平線というものを僕は初めてみた。それは思っていたよりも強く僕を揺り動かした。自然というものをひとはすっかり忘れて生活している。ビルが建ち並ぶ都会は明るく、温かく、人工的に清潔で、ひととひとが肩をふれあう程近くでも、その存在感は希薄で、淡い。けれど北海道の原野は何処までも白く、空は低く、空気のなかの酸素の粒が照り返す地面は強く光り、風は頬を切るほど厳しく、ちらちらと降る湿気のない雪は髪や肩に落ちても水滴にさえならない。地平線の遙か向こうに一本の木が静かに立っていた。激しい風に吹かれ、枝には葉の代わりに雪がしがみつき、今にも折れそうに、でもしっかりと幹を落ち着けている、生命の木。それは世界の終わりにふさわしい。
「サンタクロースは来たの?」
ダッフルコートにマフラーをぐるぐる巻いた菓子はがたがた震えながら僕に訊いた。
「たぶん、よい子のところには」
「あなたがもう大人だから?」
「うん。そうだね」
「幾つまでサンタクロースを信じていた?」
地平線の端から端までを覆うような空からは厚い雲を射るように雪が舞う。空気の中は水のように澄んでいて、風がまるで自分に向かって吹いてくるみたいに感じる。サンタクロースを信じていた子どものころの自分が舞い戻った。僕はセーターにピーコートという軽装でこの世界の果てに来てしまったことにほんのすこし後悔しながら、遠くの木をみつめた。記憶を再生する。それは温かいものだった。
「僕は両親にずいぶん大事にしてもらっていたんだ。ふたりとも、子どもみたいに無邪気な人たちでね。12月に入った頃からアドヴェントカレンダーを毎日めくってチョコレートを食べたり、本物の樅の木を買ったり、料理の本を読んでクリスマスプティングを作ったり、トルーマン・カポーティの短編集を朗読したり......。いろいろと手を尽くして子どもの僕の気持ちを盛り上げてくれた。勿論、いつも僕にサンタクロースへの手紙も書かせたよ。サンタさんがプレゼントを間違えないようにっててね。それでもさすがに小学校の高学年になると、僕だって薄々現実がわかってきて、でもそんなかわいいことに夢中になっている両親にサンタクロースなんかいない、とはいえなくて、もうどうやってサンタを信じているふりをしていいのかがたいへんだったくらい」
「クリスマスは異教信仰として、サンタクロースは火あぶりにされたって話をしっている?」
吐息が白い霧の形になる。雪の舞う原野のなかで表情がはっきりみえない。彼女は赤い手袋で顔を覆っていた。
「本来クリスマスはイエスキリストの聖誕祭でしょ? どうして子どもが贈り物を受け取る権利のある日に変わったの? クリスマスは死者と生者の交わる『交通』のための祝祭じゃないの?」
「本を書いているだけに君は頭がいいんだね。つまりクリスマスは本来は祈りの日であって、お祭りではないってことか」
「まあ、本の受け売りであって自分で考えた訳ではないけどね」
「でも君はサンタクロースの滅亡を望んでいるの? 20世紀になってアメリカがあの赤い服を着て贈り物を抱えて橇に乗ったサンタクロースをシンボルに掲げてから、クリスマスは喜びの日に変わったよね。冬至が来て、夜の世界が終わる。生が勝利する。子ども達はみんなサンタクロースを信じている」
「幸福な子ども達、はね」
君はそうではないの、と言いかけたとき、菓子の携帯電話が鳴った。それはまるで潮騒のような風の音に紛れて、寂しい小鳥のように響いた。ダッフルコートのポケットで、鳴き声のような呼び出し音がずっと響いていた。いったん、途切れては、また鳴った。寄せては返す、波のように。僕たちはただ白い世界をみつめたまま、シマエナガが来るのを待つ。菓子は両手で顔を覆ったままだ。それはまるで祈っているようにみえた。僕は鳴り続ける携帯電話の呼び出し音のことを口に出そうかどうかすこし悩むが思い切って菓子に声をかける。
「詮索するようで悪いけど」
その声を縫うようにまた着信音がまだ現れないシマエナガのように舞い降りる。
「どうして電話にでないの」
「悪いニュースだとわかっているから」
「たとえば? サンタクロースの虐殺が始まったとか?」
「そうね。母が死んだとか、そういうことかな」
北風が強く吹く。真冬の北海道はシベリアからの頼りが届く程の清らかさで、僕たちから体温を奪い取る。菓子の涙は落ちることなく、ちいさな氷の粒になる。
「楽しかったクリスマスの思い出なんかひとつもない」
誰でも去って行く。僕の両親も去って行った。でもその時もう僕は大人だった。寂しさにもなれていた。ひとは去るとき、善きものを残してゆく。思い出という柔らかさ。ふとした時にみつける遺物の温かさ。僕は失うことの甘さも識っていた。けれど僕のとなりで寒さに凍えるまだ十四歳の少女は氷原に漂う渡り鳥だった。蜜も木の実も遠く果てなく、ひっそりと孤独だった。去られることに慣れていなかった。
「君はまだ十四歳だ。これから楽しいクリスマスが......」
自分でもくだらないことをいっているのはわかっていた。だから菓子が振り返って僕の頬を思い切り叩いても、僕はただうつむいただけだった。菓子の長い前髪も、眼鏡の奥の瞳にも雪の結晶がきらきらと光っていた。
「ばかね」と菓子はいった。「今日で世界が終わるんだから、もう私にクリスマスが来ることなんかない。両親がサンタの格好をしてプレゼントをくれるなんて日はもうぜったいにこない。私は今日、お母さんの子どもじゃなくなったんだから。それに私はよい子じゃなかったもの。お母さんの幸せよりも、ただ私のお母さんでいてほしかった、そんなわがままな子どもだったもの......」
吐き出すように彼女はいった。僕は自分の言葉に欺瞞の色が交じっていないとは思っていなかった。確かに今日はクリスマスだ。「冬の祭り」だ。生者が死者に贈り物をする日だ。でもそれはきっと彼女にとって世界の終わりの日でもあったのだ。
「ごめん」といったのは彼女だった。顔を真っ赤に染めて、菓子は手袋をぬいだちいさなかじかんだ指で涙を拭った。
「私、いやな子でしょう? わかってるの。私だってこんなひとがいたらいやだって思う。まだ子どもなのになんでもしってるみたいな口をきいたり、お金を稼いで自立したり、誰かがなにかいっても無視することができたり......。でも、まだ私、本当はただの子どもなんだ......」
「うん」
僕は彼女の肩をそっと抱き寄せる。まだ華奢で幼い子どもの身体を、抱きしめる。
「だめだよ」と菓子はいう。
「やさしくされたら、私、もっと泣いちゃうよ......」
「君はまだ子どもなんだ。僕がサンタクロースになってあげる。君が幸せになるように祈ってあげる。泣いていいんだ。好きなひとがいなくなったときに泣かなかったら、いつ泣けばいい? 涙を閉じ込めちゃだめだ。君は壊れてしまう」
「うん......」
菓子は僕の身体のなかで力を抜く。柔らかな重みが僕の腕に伝わる。
「私、いま、壊れる......」
彼女は僕の身体にその細い腕をまわす。僕はしっかりと彼女を抱きしめる。彼女は静かに、僕の胸に顔を埋め、声を出さないように、泣き続ける。
「お母さん」と彼女はいう。
「お母さん......」
「今日は君の誕生日なんじゃない?」と僕はいう。
「君の誕生日まで、お母さんは生きていてくれたんじゃない?」
「どうして私の誕生日を知っているの?」
「僕は私立探偵だもの」
菓子はふっと微笑む。
「意外と腕がいいのね、探偵さん」
「ハッピーバースディ」
僕は菓子を力一杯抱きしめる。壊れてほどけることのないように。
「君の生まれた日、おめでとう」
その時、空の向こうから白い鳥の群れが現れる。天使の羽ばたきのように白く、ちいさな翼を持った聖なる小鳥たちが、青い空に白い軌跡を描く。
「みてごらん」と僕はいう。
「サンタクロースの贈り物だ」
菓子はぼんやりと顔をあげる。まだ幼さの残る瞳に白くちいさな小鳥が映る。これから彼女の瞳に映るすべてのことが祝福されますように、と僕は願う。
だって彼女はまだ十五になったばかりなのだから。子どもに明るい未来が待ち受けていない世界なんてどんな意味があるんだろう?
彼女はなんでも選び取ることができるし、捨て去ることもできる。彼女は自由だ。世界中の子どもたちと同じように。それは大人に課せられた約束であり、メッセージなのだ。
彼女の、子ども達の人生はまだ目覚めたばかりなのだから。
僕たちは抱きあったまま、過ぎてゆく鳥と冬の終わりをじっとみつめていた。
春になり、木々の枝のさきには淡い色の花が咲き始める。僕はいつもの探偵事務所で野球を観ている。オープン戦も始まり、これから半年、僕は野球の結果次第で一喜一憂する日々が待っている。開幕投手は誰になるのか、誰がタイトルを獲るのか、楽しみはつきない。探偵事務所はいつも暇で、僕の手元にはシングルモルトがあり、電話は鳴ることもない。
ある日、僕はテレビの画面のなか、試合前の始球式に菓子が出ているのを発見する。テレビのアナウンサーがなめらかに喋っている。
「新進気鋭の作家の砂糖菓子さんがユニフォームを身にまとい、----投手から......」
歓声と太鼓とトランペットの音のなか、菓子の投げたボールは弧を描き、キャッチャーは大きく手をのばし、捕球する。バッターは空振りをして、菓子は盛大な拍手を浴びる。
「ノーバウンドでしたね」
「いやあ、見事でした」
「かわいらしいですねえ」
アナウンサーと解説者の声が交互に聞こえ、菓子はモニターの中で笑っている。その笑顔に僕も微笑む。球場のスクリーンにたぶん菓子の書いた小説のキャラクターが浮かび上がる。なにかのタイアップなのだろう、と僕は推測する。
「砂糖さんはまだ高校生だそうですよ」
「じゃあ、甲子園も楽しみですね」
解説者の声に僕は安堵する。
菓子はもう僕の前には現れないけれど、でも高校には通っているみたいだ。
世界が終わりそうになったら、またここにおいで、と僕はモニターに映る菓子に話しかける。
白い鳥と真冬の北風。それから聖なるクリスマスの旅にでよう。サンタクロースは贈り物を抱えて、君の許にやってくる。世界が終わっても、僕は君の涙を抱きしめて、みかえりのないやさしさという子どもにしか許されない夢をあげるから。
いつだって、いつだって、サンタクロースのように僕は君のそばにいることを、忘れないでね。