編集部ブログ太田克史のセカイ雑話
2012年2月21日 02:35
竹さんとの出会い。そして『竹画廊画集』出版、ありがとうございます
思えば竹さんとは10年来のおつき合いになる。
僕が彼女の絵と最初に出会ったのは、たぶんどこかの誰かの「お絵かき掲示板」だったと思う。とは言っても、今10代の人は「お絵かき掲示板って何?」状態じゃないかな? 説明すると、「お絵かき掲示板」ってのは90年代半ばからゼロ年代にかけてウェブで盛り上がったイラスト文化で、要は電子掲示板のシステムにペイントツールがくっついたもの。PBBSとか絵板、オエビなんて呼ばれていたんだ。
今となっては編集者がウェブを通じて才能あるイラストレーターさんを見つけるということはきわめて当たり前のことだけれど、90年代の後半、そうやって実績を出していた編集者は業界でも数人いるかいないかだった。僕はその編集者の中のひとりだったというわけだ。上の世代の優秀なひとたちはウェブ文化に対応できていなかったので、(彼らは主にコミケの島中を丹念に歩いて新しい才能を見つけていた)ウェブの世界は若い世代の編集者の独壇場だった。
あのころの僕は暇を見つけては絵描きさんのサイトを丹念に回り、リンクを辿りに辿り、当時はたいていの絵描きさんのサイトに取り付けられていた「お絵かき掲示板」をチェックして、新しい才能を探していた。その繰り返しの中から、竹さんを見つけたわけだ。
竹さんのサイト「take+」は本当にすばらしかった。サイトにある、彼女が熱心に描いていたカプコン系のゲームの版権絵はもちろんすごく良いものだったんだけど、それよりも、そこにあった竹さんオリジナルのイラストは輪をかけてすばらしかった。独特の色彩と塗りの透明感と、ちょっと病的なくらいのセンス。まさに図抜けていた。
そて、その「お絵かき掲示板」を今の技術で再定義してみたのが星海社ウェブサイト『最前線』の「星海社 竹画廊」だ。この企画は僕が星海社を始めたときに、「ひとつくらい、「僕の僕による僕のためだけのコーナー」を『最前線』につくってみるかー!」っていう、わりと軽い気持ちで進めた企画だったんだけど、その後はなぜか(!?)順調に人気が出て、今では『最前線』のひとつの顔になっている。嬉しい限りだ。「星海社竹画廊」に更新のあった日は、そうでない日より、ちょっとハッピーな気分になる。読者のひとも、きっとそうなんじゃないかな。そして竹さんが絵を描く原動力は、まぎれもなくそういったあなたたちのハッピーな気分なのです。本当に、ありがとうございます。
このたび星海社から出版になった『竹画廊画集2010−2011』は、その「星海社竹画廊」で竹さんが描きに描いた一年ぶんのイラストを“すべて”収録した画集。デジタル発の企画をアナログの紙に落とし込んだものだけれど、紙ならではの良さって、やっぱりあるね。
この一冊を、手にした人がいつまでも大事にしてくれると嬉しい。