編集部ブログ夜の最前線
恋愛とは人を狂わせる病気だ。
この世で最もたちの悪い呪いだ。
虚言癖をもち、自分勝手で、我が儘。
「私、スリーエフのハムのサンドイッチと、ミートスパゲティ。ドッグ棒、それに飲み物はウーロン茶ね。憶えた? 繰り返してみて」
ピザ屋に電話注文するかの如く、本作のヒロイン遥香は元彼(主人公)をパシリ扱い。
でも主人公は、嫌って言えない。
だって自分と遥香を繋ぎ止める唯一のものだから……。
——喝ッ!!! (日曜朝の某報道番組風に)
人の善意を利用する奴を甘やかしたらアカンのや! ばしっと言ったらんかいや!
と内心ムラムラしていたのですが、
カバーの遥香ちゃんのイラストがあまりにも可愛すぎて、 そりゃなんでも言うこと聞いちゃうよね〜と納得してしまいました。
横槍メンゴさんの描く女の子は可愛いだけじゃなくて、女の子特有のズルさを兼ね備えているように感じます。
その“可愛いくてズルい”横槍さんのイラストが、遥香というキャラクターにこの上なくハマっているだけに、主人公のヘタレっぷりに自然と共感してしまうのかもしれません。
文庫版で追加された後書きで泉さんが「化膿した傷口を無理にこじ開けるような物語です」と振り返るほど、本作は「もう恋なんてするか!」とトラウマ必死のエピソードが満載です。
男女が恋に落ちて、お互いを知れば知るほど、相手を失う恐怖心は大きくなるもの。
いつかこの最良のパートナーはいなくなってしまうのではないか?
大切な人だからこそ疑ってしまうし、依存してしまう。
西野カナもEXILEも歌ってくれない“恋愛のめんどくささ”を高らかに語りかけてくれるのが泉さんの『spica』なのです。
傷だらけで、かっこわるくて、残酷だけど、どこか優しくあたたかい“自伝的恋愛小説” 『spica』。是非手にとってみてください。