編集部ブログ夜の最前線
丸茂です。
昨日は樋口直哉さんの『アクアノートとクラゲの涙』を読みました。
夏休み、死んだ父のふるさとにある〈海月館〉を訪ねた17歳の「ぼく」は、どこか現実離れした雰囲気を漂わせる少女「水無瀬」と出会います。
「アクアノート」とは水中基地で生活する海底調査人のこと。
「アクアノートってこんな気分なのかな」と「ぼく」が呟くように、〈海月館〉の時間はまるで海の底のように静かに、幻想のように流れていきます。
やがて「水無瀬」の秘密を知る「ぼく」......時々にはさまれるアンデルセン「人魚姫」の挿話が、ふたりが辿る結末の意味を捉えがたいものとし、それが余韻として心地よく響く、儚いファンタジー作品でした。
さて、今日は劇場アニメ『夜は短し歩けよ乙女』の公開日でしたね。
その原作者である森見登美彦さんと、『ランボー怒りの改新』の書き手である前野ひろみちさんとの特別対談をこちらで公開しているので、ぜひお読みください。
対談は森見さんと前野さんの出身地であり、『ランボー怒りの改新』で描かれるところの奈良で行われたものですが、ぼくは森見さんというと、やはり『夜は短し歩けよ乙女』の舞台である京都のイメージが強いです。
というところで、今日はちょっと気持ち悪い話をします。
どのくらい気持ち悪いかというと、「マジでキモいわ!」と太田さんが本気で顔を引き攣らせるくらい気持ち悪い話です(ここで読むのをやめていただいたほうがいいかもしれません)。
森見さんの小説を読むと京都での大学生活に憧れがつのりますが、とくに京都大学推理小説研究会への憧憬から、ぼくは京都の大学を目指しておりました。
結局は東京の大学に通うことになったわけですが、大学進学してから長期休暇があれば京都に行くくらいには京都のことが好きです。
しかし、そんなぼくをよそに望まずも京都で暮らしているひとがおりまして、ぼくが京都と聞いて思い浮かべるのは彼......弟のことです(ここから気持ち悪くなります)。
ぼくには弟がいます。
そして弟のことを、ぼくは非常にかわいく思っております。
「歳が離れてたり、生き別れの弟とかならわかるけどさ! 弟さんハタチなんでしょ? マジでキモいわ!」
と太田さんに言われましたが、その通り。
弟は京都の大学に通う大学生。
ぼくとさして年齢が変わらないわけです。
ひとが話を聞くぶんには気持ち悪いだろうな......とは思うのですが、それでも友だちが少ない兄を気づかってくれる優しい弟でして、今日もふとラインを見ると、「自転車買った」というメッセージと写真が届いておりました。
......という流れで、京都を舞台とする兄弟小説『手のひらの露』をご紹介しようと考えていたのですが、こんなにも気持ちの悪い流れでご紹介するのはあんまりだと思いましたので、来週に持ち越そうと思います。