編集部ブログ昼の最前線
毎週更新でお届けしてきました森田季節さん『エトランゼのすべて』、今週の更新で最終話まで公開されております。
しかし、『エトランゼのすべて』のすべてが読めるのは今月29日まで、どうぞお気をつけ下さい。
そして、お気に召した方には、庭さんの美麗イラスト満載の星海社FICTIONS版をぜひともおすすめ致したく!
さて、打って変わって土曜日の話である。
なぜ金曜更新のはずのブログに、土曜日のことが書かれているのか不審に思ってはならない。
そのようなことを詮索するものは豚に食われるであろう。
ともあれ、土曜日である。
ツイッターでも少し呟いたが、過日、ある友人が自ら命を絶った。
報せを受けた時は実感が涌かなかったが、徐々にボディーブローのように効いて来て、その週は大変つらかった。
それは兎も角、葬儀に出席できなかった友人も多く(僕もそのひとり)、一度皆で実家を訪ねようということになった。
最大の目的は、ハードディスクを物理的に破壊して、彼が安らかに眠れるようにするためである。
いったい、男子たるもの、ハードディスクの中にそれなりに秘密を隠し持たねばならぬのである
しかし、それが公にされることはあってはならない。つまり、その秘密が明らかになった途端に男子の権威は失意するのである。
かくのごとき理由で、我々は彼の実家に向かい、その部屋に足を踏み入れた。
彼の部屋はものすごいことになっていた。メインのデスクトップ以外にも、10台を超えるPCが部屋の中に散らばっていた。
その他にも数台のノートPCが本棚に並べられていた。まるで「ちょっと分厚いけど本みたいなもんですよ」といった面持ちで、漫画の隣に並んでいた
ケータイも10台くらいあった。6ドルのパーツを23ドルかけて個人輸入したりしていた。
イーモバイルの箱が何故か三つあった。面妖な形をした光学マウスも5つばかり転がっていた。
本当にデジタルガジェットが好きだったんだなぁと、我々は呆れつつも感心しながら故人を偲んだ。
そして我々は、この分であれば彼が自分の秘密を、さぞかしハードディスクの奥深くに厳重なパスワードをかけて隠しているであろうと想像した。
しかし、我々の想像に反して、メインPCにはパスワードがかかっておらず、中には大したデータは入っていなかった。消した形跡も全くない。
ノートPCも同様である。
さては……と部屋を見回すと、家庭用サーバーが目に入った。
さてはこいつか、とそこに入ろうとするも、どのPCからもアクセスできない。
もはや本命はこいつと決まったも同然だ。
さあかかってこいとばかりに取り囲み、まあどうせパスワードかかってるんだろうけどね……と思いつつLANケーブルをぶっ差すと──普通にアクセスできてしまう。
そして、中味もいたって普通、自分で撮った写真と、これだけは好きだったらしい某画像BBSのログくらいしか入っていない。
ここに至って、我々は自らの不明を恥じ、滂沱の涙を流した。
彼は、本物の聖人君子だったのだ──。
なお、部屋にはMacBook ProとMac miniがあったが二台ともWindowsがインストールされていた。
今頃彼は、あの世でジョブズから殴られているかもしれない。