ビアンカ・オーバースタディ

あとがき

筒井康隆 Illustration/いとうのいぢ

わたしは知っている。わたしがこの高校でいちばん美しい、いちばん綺麗な女の子だということを――。筒井康隆×いとうのいぢ 文学界の巨人・筒井康隆の最新作は本気のライトノベル!文学史上の一大事件を読撃せよ。

あとがき

ながらくお待たせした。

この「ビアンカ・オーバースタディ」は最初「ファウスト」用に三分の一を渡してから二年も経ってからやっと出た。これは編集者の太田が悪い。

さらに次の三分の一を渡してから『ファウスト」が出るまでに二年かかった。太田が悪い。

最後の部分を渡してから、これはいとうのいぢの絵を待つために一年足らずの時間が経った。太田が悪い。

この本にはふたつの読みかたがある。通常のラノベとして読むエンタメの読みかた、そしてメタラノベとして読む文学的読みかたである。どちらでもお好みの読みかたで読んでもらってもよいが、できれば両方の読みかたで読んでいただければありがたい。太田が悪い。

別にエラソーに言っているわけではない。ラノベの読者は多いから、できればこの本を読んだ何分の一かの読者を、わが本来の作品に誘導したいだけなのである。

ところで、ラノベはよく売れるので、たいていは続篇が出る。この作品も続篇を書きたいところだが、あいにくわしはもう七十七歳でこれを喜寿というのだが、喜ばしくないことにはもう根気がなくなってきている。「ビアンカ・オーバーステップ」というタイトルのアイディアがあるから、誰か続篇を書いてはくれまいか。別のタイトルでもよく、大ネズミが出てこなくてもいいので、傑作を書いて大もうけしていただきたいものだ。

太田が悪い。

二〇一二・夏

筒井 康隆

第二章以降につきましては、書籍にてお楽しみください。

『最前線』では以下の内容をご覧いただけます。

・第一章 「哀しみのスペルマ」

・掲載中 「あとがき」

・掲載中 「担当編集者からひとこと」