2015年春 星海社FICTIONS新人賞 編集者座談会
2015年5月19日@星海社会議室
またも受賞者現れず、賞金キャリーオーバーは続く。このチャンスをモノにするのは誰だ!?
新人2名が合流!
太田 座談会も14回目! 思えば遠くまで来たものです。さあ、バリバリ始めていきましょう!!!
林 ……とその前に、星海社に加わった新しいメンバーを紹介しないと!
平林 イカれたメンバーを紹介するぜ!
林 デケデン!
石川 3月末より合流しました石川詩悠です。えーと……。
平林 (非情に)面白い話とかして、早く。今すぐに!!
石川 ……あの……。
平林 準備してこないとダメだよ。過去の座談会読めばわかるでしょ!
石川 すみません! えー、サッカー要素と静岡要素のある作品は僕に振っていただければと。
岡村 静岡県! 静岡県民はダメですね。
林 これが星海社新人賞座談会の洗礼……さっそく山梨県民・岡村さんの静岡disが!
岡村 静岡県民が富士山の話とかしたら、口を塞ぎたくなりますね。まあそれはさておき、石川くんは今までどんなことをしてきたの?
石川 3月に大学を卒業したばかりです。大学では文学をやったり文芸批評をやったりしてました。
岡村 文芸批評! じゃあ今回はさぞ素晴らしい批評を聞かせてくれるんでしょうねえ!
石川 (山梨県民怖い)えーっと、ライトノベルも純文学も海外文学も読んできました。いろんなジャンルを踏まえて自分なりの読み筋を提示できればなと思います。よろしくお願いします!
林 そして!
大里 僕は5月から合流しました大里耕平です。学生時代は建築を学んでいて、卒業後2年間Web制作会社で映像関係の仕事をしていました。
林 ……地獄の2年間。星海社より××だったなんて言えない!
大里 あんまり口外できないんですけどね……。
太田 何言ってんの! 最初が肝心なんだよ!! 大里さんは今が一番読者に興味を持ってもらえる瞬間かもしれないんだよ!? 打ち出していかなきゃ!
大里 すみません!
今井 仕事が一番ヤバかったのっていつです?
大里 一番ヤバいとき……それはつい最近、星海社への合流直前ですね。辞めるって言った3月末から4月にかけて××連勤があったんですが、会社に××泊しつつ出張に××日行ったので、月の半分くらいは家にいなかったです……。
一同 (沈黙)
林 面接のときもかなりすごかったんですよね?
大里 そうですね……始発まで仕事して帰宅して着替え詰めて星海社に来て面接を受けて、それからまた会社に戻って、という感じでした(遠い目)。
平林 〝ブラックエディター〟の二つ名は伊達じゃないな……。
大里 合流が5月からだったので僕は今回下読みには参加してないんですが、理系ならではの意見も出していきたいです。よろしくお願いします!
一同 よろしくお願いします!
不穏な一行ラッシュ
太田 さあ、バリバリ選考していこうぜ! トップバッターは岡村さん、『メイ』。
岡村 一行です。
林 次は平林さん、『魔法少女も愚痴りたい』。
平林 愚痴りたいのはこっちですね。一行です。
林 岡村さん、『ストラディヴァリの背中』。
岡村 一行です。
太田 おいおい、のっけから一行ばっかりじゃん! ……ていうか、どうしたの今井さん! そんなにじーっと麦茶ばかり見つめて! なんか目が死んでるよ!!
今井 大丈夫です、ゴホゲホッ!(かなりヤバそうな咳をしている)
林 次はそんな今井さんの担当作です。『僕と君のインビジブル・デスペアー』。
今井 これは体調が万全でも一行です。
林 私、『心霊文芸部員・葛城椿』。あーこれ一行ですね。
太田 ペース速いなみんな! このペースだと、座談会すぐに終わっちゃうよ! もっとゆっくりいこうよ!!
今回の最年長&最年少
林 次は私の読んだ『神の学園』ですね。
岡村 『神の学園』……!
平林 61歳、今回の最年長だね。
太田 ペンネームの「西田幾」って西田幾多郎からとってるのかな、やっぱり。
岡村 あー、そうですね。
平林 哲学的だった?
林 哲学要素はないです。お話もよっっっくある学園異能バトルものでした。
太田 しかし、「きたろう」って言っても「ゲゲゲの」しか知らない人に当たるなんて、この人は不運だな……。
林 『墓場の鬼太郎』も知ってますよ!
太田 ハッハッハ!(爆笑) 今ちょっと面白かったよ林さん!!
林 笑いの沸点、超低くなってません?
平林 (不機嫌な顔で)真面目な話、林さんは西田幾多郎を知ってるの?
林 ごめんなさい! 知りません!
岡村 いや、ウチも西田幾多郎の作品、新書で出してるから。
平林 『世界一退屈な授業』っていう本があってね……。
岡村 あれ、名著だから読んだほうがいいよ。
林 勉強不足ですみません……。
平林 日本でもっとも世界的に知られてる哲学者じゃない? 西田幾多郎は。
太田 あ、今、林さんの左耳から右耳にシュッと抜けていったよ! 幾多郎が!
平林 「勉強不足」とかじゃなくてさ、西田幾多郎の名前も知らないってことは、編集者の世界では人間じゃないってことだからね!
太田 エディターは厳しいなあ〜(ニヤニヤ)。
林 早く人間になりたいです。
太田 まあここまで言われても林さんはきっと幾多郎、読まないんだよね。その積み重ねで今がある、と。悲しいなあ。
今井 ゲホゲホッ……ちょっといいですか。僕が読んだ『いつも通りの記憶』の著者が、16歳で今回最年少なんですよ。前回応募してきてくれた、電車が好きすぎる高校生なんですけど。
太田 あったあった!
今井 今回もね、冒頭は電車の話からです(笑)。
平林 あー、それはいいと思う!
今井 いいと思うんですよ。ちょっとだけ読みましょうか。クラスメイト同士の会話なんですけど。
「どうだったかな…、多分、普通だったと思うぞ」
「209か?」
「どうだろ…。でも、六ドアの車両があったな」
「じゃあ、231の0番台か209の950番台だ」
(…)
「その、珍しい電車ってなんだっけ?」
「E231系500番台だよ。元山手線の車両。中間の一両を抜いて、東トウから八ミツに転属してきたんだ」
平林 それいいんじゃない? そういう出だしはいい。
林 冒頭に持ってきたのはかなり正解ですね。「なんだろう?」って気になります!
今井 彼はこのまま電車を武器にしたらいいと思うんですよ。「電車はじまり」はトレードマークにして。ただ肝心の、話のほうはいろいろ大変で……。
太田 あれ? 前回の投稿はちょっと見所があったんじゃなかったっけ?
林 たしか、震災時に車を乗り捨てることで緊急車両が通れなくなって二次被害が起こってしまった……だから国が車の使用を一切禁止して、電車しか交通手段がないってお話でしたよね。
今井 そうそう。その結果電車の運転手が足りなくなったから、中学の義務教育に「電車」が入る世界。パワープレーすぎるんだけど、逆に面白かった。結果から言うと今回もダメなんですけど、でもこの投稿ペースは素晴らしいなと思う。書きたいことを絞ってまた応募してほしいですね。
林 逆に、こういう電車ものが読みたいっていうのはあります?
岡村 電車と何を掛け合わせるか、だよね。
平林 有川浩さんの『阪急電車』みたいに、みんなが読みたい最大公約数の話に電車を絡ませるってのができると支持を得られると思うけど、この人の「電車が好き」って少し違いますよね。
太田 たしかにそうなんだよね。
石川 『RAIL WARS!』方面に行っちゃうんですかね。
平林 鉄道もので過去に売れた作品、今でもスタンダードになってる作品はそれなりに数があるわけじゃん。そういうものの研究をしっかりしてほしい。たとえば、内田百閒の『阿房列車』とか宮脇俊三の『時刻表2万キロ』、それから阿川弘之。このあたりはもう鉄道文学のスタンダードと言っていいものがある。
岡村 西村京太郎大先生もいますしね。
平林 あれは鉄道〝文学〟なのか?
岡村 いやいやいや、なに言ってんですか! トラベル・ミステリーですよ。
平林 でもあれはさ、旅先の風物だったり、十津川警部がどこに降り立つのかっていう話でもあるわけじゃん。そういう取材はさすがにこの歳じゃあできないんじゃないかなと思うけど。
今井 『文豪ストレイドッグス』みたいなのは?
平林 この人は擬人化した鉄道を愛せないと思うなあ。擬人化した車両とか。でも、鉄道会社を擬人化しちゃうっていうのはアリかもしれないね。
岡村 そういうのあるの?
平林 わからないけど、鉄道会社を擬人化してBLにしちゃえばいいんじゃないかな。
岡村 ありきたりですけど、美少女が4人いて、それぞれ鉄道の趣味嗜好が違う、みたいなのはどうです?
平林 あ、「鉄道部」にすればいいんだ。
今井 『ばくおん!!』は「バイク部」で近いことをやってますよね。
岡村 そうそう。まあそのネタは絵で見せられるぶん、マンガのほうが映えるとは思うんだけど。
今井 あるいは運転士を目指す話とかね。
平林 『電車でGO!』ってすごくいいゲームだと思うんだけどさ。僕が『アイカツ!』をやりにいく秋葉原のセガがあるじゃない?
今井 初耳ですけど。
林 当然のように言いましたね。
岡村 33歳既婚男性が……。
平林 (構わず)『アイカツ!』、僕はゴールデンウィーク明けに始めて、なかなか楽しいんだけど。そこ、『電車でGO!』がまだ稼働してるんだよ。
一同 へえ〜。
平林 『電車でGO!』をやれば、自分が好きになるかはともかくとして、「あ、鉄道好きな人たちはこれを楽しんでるんだな」っていうのがわかるわけ。だから、何を楽しんでるのかを突き詰めて、楽しんでるキャラクターを楽しそうに書いてもらえれば、それは門外漢にも楽しめるものになると思う。
岡村 ひとつの趣味をクローズアップした作品を読んで、参考にしてみたらいいのでは。
今井 今のままだと、スゲーなお前らっていう感想しか思い浮かばない。いい青春だなとは思いますけどね。
太田 結局、書き手にとって楽しいものをただ書くのは楽しいことなんだけど、読み手が楽しく読めるように書くっていうのは難しいんだよ。でも、ある作品が大ヒットするときって、書き手のマニアックな趣味がそのままに読者に響くときな気もするんだけどね。『鉄子の旅』もそう。ただ、あれはたぶん、カメラ役の作者が鉄道のことを心底どうでもいいと思ってたのがよかったんだと思う。結果的に、マニアらしいところは残りつつも、一般人にも伝わる客観性があったからね。そのあたり、ぜひ参考にしてください!
題材の掛け合わせ
岡村 いま、題材の掛け合わせって話が出ましたので、その観点から『グロリア』と『虚月に嗤うもの〜幕末陰聞』っていう2作にセットでコメントさせてください。
林 お願いします!
岡村 前者は戦国時代にタイムスリップする話。後者は幕末ものなんですね。こちらのキャッチコピーが「これぞハイブリッド幕末伝奇アクション」。
平林 あー、よくある感じだ……。
岡村 このふたつを読んで思ったのは、まず掛け合わせのところを全身全霊で考えてほしい。幕末と戦国を選ぶこと自体は全く間違ってないと思うんですね。大河ドラマも幕末と戦国を毎年交互でやるくらいみんな大好きですし、需要は相当高い。けどそのぶん似たような作品も多いから、「この手があったか!」って驚くくらいの新しい掛け合わせを考えないと厳しい。『戦国自衛隊』とか『JIN-仁-』とか。どっちも掛け合わせが上手いし、しっかり調べた上で書かれてるから、フィクションでもリアリティがある。すれっからしの読者にも今まで知らなかったことがわかったりするんですけど、今回のこの人たちは掛け合わせの段階で興味を引き込まれないし、勉強してないってこともわかっちゃうんですよね。
平林 時代に限らないんだけど、何か実在のものについて書くときはちゃんと調べて真面目に書けよ、と。で、非実在のものについて書くときも、より綿密に構想した上で書けよ、と。
岡村 そうじゃないと、書くほうにとっても読むほうにとっても無駄になっちゃいますからね。
面白い、しかしあと一歩!
太田 次は『レゴリスの降る夜に』、平林さん。
平林 これは余裕があったら読んでおいてくださいって言ったやつですね。誰か他に読んだ人いる?
太田 読んだ読んだ。
林石川読みました。
平林 これ、かなり『LAST EXILE』の影響が強いですね。
太田 なるほどね!
岡村 緑萌さん、『LAST EXILE』好きでしょ?
平林 うん、大好き。
一同 (笑)
平林 簡単に設定を説明しますが、地球に円盤が飛来して、円盤から定期的に「レゴリス」という物質が降ってくる世界が舞台です。基本的にそこだけがファンタジーで、国家なんかはそのまんま。で、この「レゴリス」は謎の浮遊エネルギーを宿していて、動力源になるんですね。この世界ではすごい資源になっていて、国家間のバランスや産業構造を変えてしまった……という。小説は、その「レゴリス」を動力源にした飛行機を操る少年が主人公で、後半はレースにも出たりして『LAST EXILE』っぽいところがあります。あと、ファーストコンタクトものの要素もある。
岡村 この作品の後半が『LAST EXILE』の序盤っぽいですよね。
平林 そうそう。で、設定的には大きな瑕疵がひとつあって、この「レゴリス」は数ヶ月で突然使えなくなってしまうんですよ。そんなものを動力源として積んだ機械に命を預けられるのか、と。さすがに、どのぐらい保つかはちゃんと計測できるようになってないと厳しいんじゃないか。
太田 あのね、そこがすごく「すごくない」感じがするんですよね。
平林 そう。
太田 これどうやって使うの? って感じするもんね。
平林 エネルギーとして不完全すぎて、なんの公害とかもない代わりに大して役に立たなそうなんですよ。そんなものが文明にここまで大きな影響を与えるかしら、と。
岡村 リアリティをもたせるためにそうしたのかもしれないですけどね。やりすぎてよくわからなくなってるのかも。
平林 話自体はまとまってるし、文章も悪くないんですよ。この人、今まで何人も読んでるよね?
今井 6回目ですね。
太田 わりとちゃんと書ける人だと思ったんだけどね。
今井 タイトルもペンネームもいいなと思いましたね。でも、強く推したい何かがないんですよ。
太田 そう、飛び抜けた「何か」はないんだよね。
平林 安定はしてるんだけど、この原稿のためなら、これを書いた人のためなら編集部のメンバーと戦うぞ……とまではならなかった。
太田 はっちゃけてないんだよね。文体も、ちょっとポエムな感じがあって語り口は悪くないんだけど、そこがマイナスにもなってるよね、叙情性の部分に逃げ込んじゃうっていうのか。そこが残念だったよね。
平林 期待できる書き手だとは思うので、次回は是非、勝負作をお願いします!
タイトルは我が子の名前のように考えよ
林 『終わりの都市のクロニクル』、これ一行です。
岡村 そのまま出したら訴えられそう。勉強不足ですね、このタイトルをつける時点で。
太田 タイトルの被りは良くない。ネタの被りはもうしょうがないっていうか、指摘してるほうが頭悪いと思うんだけどね。
岡村 しょうがないですよね。
太田 しょうがない。「真にオリジナルのものを書けてる自信があなたあるんですか?」って問いたいよね。あるって即答できる人は、まあその前に己の正気を疑ったほうがいいね。
岡村 それを言ったらジャンル小説なんて生まれないですよね。だから別にそこはいいと思うんですよ。
太田 SFとかミステリーのいわゆる「ジャンル小説」は、いかにお約束のコードを上手く使って新しいものを作るかってフェイズにとっくの昔に入ってるわけです。何も知らないやつほど言いたくなるんですよ、「似てる」って。そういう人はもう二度と「密室」ものや「タイムパラドックス」ものを書いたり読んだりするなって言いたい。
岡村 でもこのタイトルはないですよね……。
太田 タイトルはね、別! 好きな歌のタイトルをそのままパクって持ってきました、とかならまだ全然いいんだよね。タイトルには著作権もないし。でも、そのジャンルで流行ってるものをパクるのはねぇ。なんていうのかなあ、本歌取りとかそういうのじゃないからね、次元がね。その後の発展性がないから。
岡村 そうですね。
太田 昔話で、これはペンネームの話なんだけど、村上春樹さんもデビューしたとき編集者から名前を変えろって言われたらしいんだよ。村上龍と角川春樹を足して2で割ったような名前だから、って。それで大成功したんだからまあいいような気もするんだけど、やっぱりタイトルの被りは気になるね。デビュー作のタイトルはいわば最初の作品。書き手のセンスが一番はじめに表れるところだから、その人なりのものを見せてほしい!
林 我が子の名前のように、ちゃんと考えてつけてくださいってことですね。
太田 そうだね。
出だしがダメだと萎える
太田 岡村さん、『辺境魔法学校』。
岡村 『辺境魔法学校』! きましたね。僕がこの編集部の中で一番ライトノベルが好きだから太田さんが振ってくれたのかなと思い、タイトルを見たときは結構ワクワクしました。辺境で魔法で学校、もうベタな感じで。
太田 テンプレだねー!
岡村 テンプレなんですけど、設定は面白いだろうと思ってワクワクしながら読んだんですよ。で、声を大にして言いたいんですが、お前ら最初だけでもいいからもっと丁寧に書けよ!!!(怒声) あらすじをちょっと読みますね。
年齢不問・学歴不問・犯罪歴不問・入学金及び授業料無料で、習得に十年掛る魔法を三ヶ月で教え、魔道師にしてくれる辺境魔法学校。
岡村 ここはまだいいんですけど、舞台が北海道なんですね。で、次。
神宮寺誠は死亡率八割と言われる入学試験を受けに向うが、トラブルによりバスに乗り遅れる。
岡村 そもそも、この法治国家日本でね、「死亡率八割と言われる入学試験」が許されるのか、と。これが裏世界とか裏財閥とかの話ならわかりますよ。
林 『カイジ』的な。
太田 「お兄様」の財閥って名前、なんだったっけ?
岡村 お兄様は「十師族」です。
太田 あー「十師族」ね! いいねえ〜!! しびれるぜ。
岡村 そういうのだったらいいんですよ別に。この「辺境魔法学校」はそういった「裏」じゃなくて、公に募集してるんですね。その時点でこの人は何も考えてないんだと思ってしまう。内容はよくあるサバイバルで面白みもないし、主人公の最初のセリフもげんなりくるんですよ。
「高校中退して、家の金を盗んで、命を張る覚悟で、飛び出してきたんだ。今さら、鹿ごときのせいで、試験を諦められるか。俺は絶対に魔道師になるんだ」
岡村 セリフが説明的すぎるよ……書くならせめて、「鹿ごときのせいで」以下だろうと思うんですね。もう最初の1ページでげんなりきてしまう。当たり前ですけど、最初がダメすぎるものってその後読まないじゃないですか。
太田 まあねえ。
岡村 1巻がダメだったマンガの2巻を買うって人は、そうそういないと思うので。とくに異世界を舞台にする場合、世界観にスムーズに入り込めるかってところが重要になってくるので、冒頭は本当に細心の注意を払って、全身全霊をかけて書いてほしい……ってもうこの座談会で何回も言ってるんですけど、こういうのが来ちゃうと。気分が萎えますね。
太田 魔法ってどんな魔法なの?
岡村 それが読んでもよくわからない。要は魔法の定義がないんですよね、
太田 うーん、なるほどね。
岡村 たとえば奈須きのこさんは「魔術」と「魔法」の違いをしっかり線引きされてますよね。「魔術」はその時代の文明・技術で再現できるもの、「魔法」はそれを超える奇跡、というように。この作品の場合、なんかすごい異能能力、くらいの設定でしかない。
林 今後投稿を考えている人は、岡村さんの指摘をよーーく心に刻んでほしいです。新人賞の一行作品は、たいがいこの問題に陥っているので。
岡村 僕はタイトルが好きだったぶん、落差で残念でした。
太田 タイトルも大事だけど、冒頭の1行目から5行目くらいが一番大事だよね。
新人が斬る!
太田 『アヴェンジャー!』、石川さん。
林 アメコミ好きとしてはこれめっちゃ気になる!
石川 僭越ながら一行です。
林 キャプテン・アメリカとか出てこないの?
石川 全然そういうのじゃないです。ファンタジー要素強めの……。
林 (食い気味に)SFもの!?
今井 林さん、無理やり『アベンジャーズ』に近づけるのやめなさい。
石川 そもそも『アヴェンジャー!』ってタイトルがおかしいんですよ。異世界のはずなのに英単語がバンバン出てくる。しかも「英語」っていう言語として。
一同 あー。
石川 魔法も出てくるんですけど、作中で使われている単位が「キロ」だったりするんですよ。そういうところで読む気が失せる。
林 でもそういう投稿作品多いよ……異世界だけど「マジ」とか「ウケる」とか喋るエルフとかさ。
石川 作中の人々にとっての異国語を、読者は英語として読んでいる、って話ならわかるんですけど。ただこれの場合、「英語の分かる人間もいるのだが」みたいな感じで書かれてるんですよね。
岡村 異世界に英国があるかもしれない……並行世界的な設定で、そこでは僕たちの世界でいう「英語」が使われている、とか?
石川 そういうのではなかったです。マーベル的なものでもなかった。
林 残念です。
石川 次も僕ですね。『そして少女は微笑んだ』。何も残らなかったって意味ではこれが一番でしたね……。もちろん一行レベルなんですけど、表紙にすごい意気込みを書いてて。
平林 あー、いるいる。
太田 もうねー、それやめたほうがいい本当に。
林 (のぞき込んで)どれどれ……。
林 ハハハハハ……(乾いた笑い)。
平林 最大の利益を追求した結果、ダメ(冷たい目で)。
太田 えっと、どんなお話なの?
石川 異世界に幼なじみの男女が召喚されて、無双してハッピーエンドです。
太田 よくある話じゃん。
平林 (原稿をめくりながら)ビビるくらいつまんないね! よろしくない。
石川 僕、これ最後まで読みましたよ。
平林 マジで? 修行だったね、それは……。
石川 や、今回はすべてが修行なので。でもこれ、あらゆる要素がキツかったですね。
「障害」を書く必然性とは
林 『繭の中、花のクオリア』。これ、ダメなんですけどちょっと話したい。有名なカトリック女学校が舞台の百合ものです。
岡村 ほう。
林 この学校は特殊な文化がありまして、3人の聖徒と呼ばれる学園を代表する女生徒がいる。聖徒たちは学園のカリスマとして崇められていて、自分の後継者として後輩をひとり「妹」として選出するんです!
平林 おやおや! この話、岡村くんよく知ってるんじゃない?
岡村 ほら、設定は被ることもあるし、それを言ったら物語は出なくなっちゃう。
林 主人公はこの妹システムを知らないまま入学したんですけど、ある日突然綺麗なお姉様に「あなた、私の妹になりなさい」って言われる。
平林 うーん、どこかで読んだことある気がするなあ(笑)。
林 ただ、このお話の新味は、主人公の女の子は耳が聞こえないことなんです。
岡村 おー、なるほど!
林 聖徒であるお姉様には聖歌を歌う使命があって、将来はその使命を継がないといけないんですが、聴覚障害のある主人公にそれができるのか!? というお話です。
太田 宝塚っぽいね。
林 お姉様との楽しいいちゃいちゃもありつつ、ラストはお姉様の代わりに主人公がみんなの前で歌って、ふたりが本当に愛しあうと。
岡村 それは耳が聞こえない子が歌うの?
林 そうです。主人公は先天的に耳が聞こえないから、上手く発音できない。それでも逃げずに歌う、ってのがクライマックスの展開なんですけど。正直、このクライマックスのためだけに聴覚障害という役割が与えられている気がするんですよね。
岡村 なるほど。
林 障害者を広く受け入れている学校ではないので、現実世界だったらもっといろんなトラブルが起こると思うんですよ。主人公は口読術を体得しているので、さらっとクラスに溶け込んじゃうんだけど、絶対もっと不便なことがあるはず。
平林 口読ってすごい集中力がいるから、授業の間ずっと唇を読むのは無理らしいよ。普通は板書を増やして対応するんだよね。
林 私が知らない聴覚障害の不便さとか、逆に昔と比べて便利になってることが絶対にあるはずなんです。だけどそういう驚きはこの作品にはなかった。ほかにも、クラスメイトにたまたま手話が上手な子がいるとか……ご都合主義的な部分も気になりました。
岡村 たまたま。
今井 ギリギリOKでは?
林 お姉様も手話ができるのもたまたまですか?
今井 うーん。
林 無条件に主人公に優しい世界って、狡いと思いません?
岡村 林さん、そういうの嫌いそうだよね。
林 すごい嫌い(満面の笑み)!
太田 いいじゃん別に!
林 でもこの違和感って、設定ひとつで解消できるわけじゃないですか。たとえば、主人公に悟られないように裏ですごい練習してたんだよ、とか。
平林 普通の百合書けばいいんじゃないの? っていう気がするよね。
林 そうなんですよ! わざわざ障害の要素入れなくていいですよ。「百合を書きたい」って思いがまず先にあって、新しい要素を加えていった印象です。
岡村 いや、書きたいシーンがあるから書くっていうのもアリだよ。でも、それを読者に悟らせちゃダメなんだよね。
林 そうですね。あと、障害を描くのは難しい。もちろん、書くなとは言わないですけど。
石川 障害というと、僕の担当作のうち『灰色の女神様』と『Love machinegun』という2作が「ALS」を扱ってたんですね。筋萎縮性側索硬化症っていう、少し前に「アイスバケツチャレンジ」で話題になった病気です。で、どっちもALSを出す意味がまったくない。
太田 影響されたんだろうね。
石川 そう思います。しかも、『灰色の女神様』のほうはALSの知識が杜撰すぎる。主人公の妹が発症してる設定なんですけど、生来のものだって書かれてるんですね。ALSって、ホーキング博士は特殊な例で長生きされてますけど、普通は発症したら数年で死に至る。だから、この記述はあまりにもおかしい。
林 キャラ付けのために障害を使うのは本っ当によくないです。
太田 そうだね。いや、キャラ付けのために使ってもいいんだけど、じゃあせめてそこはちゃんと調べて使ってくれよって感じだよね。
岡村 本気で向き合ってください。
太田 まあね、もう無条件にかっこいいじゃん、隻眼とかさ! だからそれはそれでいいんですよ、スカーフェイスや隻腕がクールだとかさ。ただ、扱う以上は真剣になってほしいよね。
恒例、「タイトルで選んだでしょ」
太田 来たねー今井さん。『サークル・クラッシャー』。
今井 これ太田さん、タイトルで僕に振ったでしょ(笑)。
太田 もちろんだよ!
林 今回もやってきました! 「タイトルで選んだでしょ」シリーズ!
今井 いわゆる「サークラ」の女の子で、1年生男子はみんな彼女が好き……みたいな1年生が映画研究会にいて、みんなで合宿に行くんです。
林 映画研究会? なかなか潰しがいがありますね……(指ポキ)。
今井 そこで殺人事件が起きるっていう。
岡村 ほうほう。
今井 物理的なクラッシャーなんですよ。でもみんなその子が好きだから、明らかに怪しいのに庇ったりする。で、それを主人公がどう解決するかって話なんですけど。まあね、会話がサムいっすわ(原稿を乱暴にめくる)。
岡村 リア充から見て。
今井 ちょっと読めないですね。「おつかれい」とか。
太田 サークラってどのくらいいるんだろうね? まあ会ったことはあるけどね! クラッシュされたことがある人っている?
今井 ないですね。
岡村 僕もないですね。
平林 ひとりの女の子を巡って先輩たちが殴り合いの喧嘩をした……というサークルの話なら聞いたことがありますね(笑)。
太田 それは紛うことなきサークラだね。
大里 「オタサーの姫」ならいました。
太田 オタサーの姫はありがちだよね。ただ、その子がサークラに発展するかはまた別問題だよね。
今井 まあでも、このタイトルはいいんじゃないですかね? タイトルと、「サークラ」をミステリーに転用したのはいいと思うんですけど、ちょっと出落ち感ありますね。中身が伴っていなかったと思います。
理系文学?
太田 今井さん、『幽霊少女と理系の拝み屋 ―25による〈はじまり〉の物語―』。
今井 これねえ、キャッチコピー言いましょうか? 「疾風怒濤、寄らば斬る! カミソリ〈理系〉文学、爆誕!」ですよ……。
太田 俺さあ、そもそも「理系文学」とかどういうこと? って思うんだよね。「理系」「文系」がどうこう言う人は頭が悪いんじゃないかって気がするんですよ。まったく、血液型占いより質が悪いぜ。
今井 これは完全に仮定なんですけど、ちょっとネトウヨに似てるかもしれないですね。自分を証明するものがどんどんなくなっていって、「理系」しか拠り所がない。
一同 あー。
太田 「理系」がアイデンティティになるのがそもそも変だと思うんだよ。
岡村 よくわかんないんだけど、理系のほうが文系より優れてるの?
太田 理系である、文系であるということにアイデンティティを持ってる人が多いのは明らかに理系のほうだと思う。
大里 (声を荒らげて)学生時代に遊べなかった恨みですよそれは!
太田 なるほど。だからこそ、価値があるものと思いたがるんだろうね。
今井 学生時代を捧げたから。
太田 文系はそんなこと思ってないじゃん。
岡村 文系だってことにはプライドまったくないですね。
平林 そもそも論なんだけど、文系って括れないでしょ。僕も文系学部出身だけど、「俺たち文系!」みたいな意識がそもそもない。
太田 そうなんだよ! 経済学部と文学部と法学部は学ぶものが違いすぎるくらい違うでしょ、専攻領域以前の問題で。理系もそうなはずじゃん! だから、理系だからああだこうだなんて雑な話をする人に、僕は反知性主義的な何かを感じるんですよ。
大里 り、理系には文系の大学生っていう仮想敵がいるんですよ。
太田 それが間違ってるんだよ!
岡村 数学できない人はバカ、みたいなね。
太田 それはそう思うね。でもそれだったらさ、「数学できないやつはバカ」って言えばいいじゃん。それが正確。なんでそこで「理系」を持ち上げたり、「文系」って括りで貶したりしなきゃいけないの。バカなの?
林 えー、ちなみに原稿はどの辺が理系っぽかったんですか?
今井 冒頭で砂浜で幽霊の少女と会うんですけど。
平林 おー、理系だねえ(なげやりに)。
太田 本当かよ(笑)。
今井 少女の胸のあたりが真っ赤なんですね。嫌な予感がしたんですけど、次のページをめくると……。
一同 あー。
太田 うん、これはいわゆる「理系」的なものではまったくないよね。
今井 デザインするのホントやめてほしいですよね。
岡村 彼にとってはそれが新しいんだよ。でもウチはもう『ひぐらし』で2色刷りとかやってますからね。
平林 『ひぐらし』の場合は仕掛けがあってやってるので、これとは全然違う……。
今井 こういうところを頑張るなら、原稿を頑張ってほしいですね。
平林 デザイン的な部分はこっちが頑張るから。
今井 そうそう。
林 「理系」だったらちゃんとデータつけて応募してほしいな……。
太田 あいたたた……。
静岡県民の怒り
太田 じゃあ石川さん、『ブレイク・スカイ』。
石川 内容的には一行なんですけど、静岡要素があるんですよ……!
一同 ほー。
石川 ざっとあらすじを説明すると、テロ組織が遺伝子改変で化け物を生み出して、世界中を蹂躙している。それに立ち向かえるのは、同じ遺伝子を組み込まれた人間だけ。その人間は男女のペアなんですね。女の子が前線に出て戦って、男の子が後方からエネルギーを送ると。最近の作品でイメージが近いのは『ブラック・ブレット』ですね。舞台が静岡なんですけど、なんでかというと、東から日本がだんだん侵略されていっていて、今ちょうど糸魚川静岡構造線のあたりで防衛線が張られているから。
岡村 ちなみに山梨はどうなってんの?
一同 (笑)
石川 山梨は陥落してるんじゃないですかね……。
岡村 !?
石川 これなんで静岡にしたのかな……。まあ作中の理屈でいえばわかるんですけど、この人滋賀県出身で、今も滋賀在住なんですよね。で、静岡って横に長いんですけど。
岡村 本ッ当長いよね静岡。高速とか走ってるとお前どんだけだと。
石川 舞台は静岡でも静岡市なんですね。僕の出身でもあるんですけど。それで、バイクに乗ってデートをするシーンがあるんです。イチゴ狩りをしてから陶芸体験に行くんですけど、静岡市でできるところがどこか考えると、イチゴ狩りは「久能街道」っていう石垣イチゴで有名なところがあるのでたぶんそこじゃないかと。別に静岡は陶芸とか有名じゃないんですけど、静岡市の山のほうにある「駿府匠宿」ってところでできるはず。まあその2箇所は行けるんですね、バイクでも1時間くらいで。で、その次に「恋人岬」に行くんですよ。
一同 (ポカーン)
石川 恋人岬っていうのがどこにあるかっていうと、伊豆半島なんですよ。
平林 ああ……って、それめちゃくちゃ遠いな!(嫁が静岡出身)
石川 そうなんです。バイクで2箇所回った後に伊豆半島の恋人岬に行って戻ってくることは、1日では不可能です! まず、そういう齟齬がめちゃくちゃ気になる。
太田 静岡愛がない!
石川 知らないものを書くべきではないですよね。
平林 実は、途中で新幹線に乗ったんじゃない?
石川 いや、もう世界が終わりかけてますからね。たぶんそういうインフラはないかと。
平林 走ってないのか……。
石川 舞台設定も中途半端で、一応近未来の日本なんですけど、「静岡県小田原市」とか出てくるんですよ。小田原って神奈川じゃないですか。神奈川がどうなってるかというと「横浜県」になってて、だけどその数年前には「神奈川県」って書いてあるんですね。どういう統治機構になって、ということをもっと練って書くべきだなと。まあ作品としても面白くないんですけど、最低限検索すればわかることを調べるくらいはしてほしかったです。
林 その手間ひとつかけるかけないは大きいです。
石川 まあ僕に当たったのが運悪かったのかもしれないですけど。
岡村 少なくとも山梨県民には売れないよ、それ。
今回のバカ大賞
今井 次は林さんか、『蹴鞠転生』。
林 キター! 今回一番推したいですね。今回のバカ大賞です。これね、『ヒカルの碁』のサッカー版なんですよ!
今井 それ、サッカーにする必要ないだろ。
林 これ誰が憑くと思います? ヒントは蹴鞠の名手です!
平林 蹴鞠? 藤原成通とか、飛鳥井家の人とか?
林 なんと、今川氏真が憑くんですよ!! ファンタジスタ氏真のお話なんです!
岡村 かの有名な。
平林 氏真は本当に名手だったのかな?
林 本当のこと話すと、私氏真をよく知らなかったので……『信長の野望』のwiki見て調べました!
太田 おいおいおい、氏真知らなかったの? 本当に常識ないなー。
林 へへ……すいません。で、どの資料みても氏真はかなり残念な感じに書かれてるんですね。『信長の野望』でも「煮ても焼いても使えない」みたいな説明されてて笑いました。
平林 『信長の野望』では、斯波義銀などと並んで能力値が低いことに定評があるね。ちなみに、後方の城にもひとりだけ武将を置いとかないといけないから、僕はいつも氏真をそういう役割で重宝してるんだよ。早死にもしないし。
一同 (笑)
林 そんな氏真が活躍する作品のキャッチコピーがこれです。
「行くでおじゃるー! スポ根オレTSUEE!」。
岡村 うーん。
平林 不安だねー。でもそれサッカーなんだよね? 現代でサッカーなんだよね? 蹴鞠は玉を落とさない遊びだけど、蹴鞠の技が役に立つの?
林 その点に関しては、「神の業のような右足を持っている」というひとことで終わっちゃってる。
平林 やっぱねー、蹴鞠の歴史とか蹴鞠の技術をちゃんと調べないとダメよ。
岡村 しかもそれ、直で現代の主人公に取り憑いてんの?
林 そうなんですよ。
岡村 それはよくないねー。『ヒカ碁』の佐為だってさ、江戸で本因坊に憑いたわけでしょ。
平林 そもそも、あれは碁盤に宿ってるわけだから。
今井 主人公にはなんで宿ったの?
林 これも爆笑ポイントのひとつで、「あーサッカー上手くなりてえな」って願ったら憑いたという(笑)。
岡村 ………。
林 『ヒカ碁』のいいところって、はじめ碁に興味なかったヒカルがのめり込んでいくところじゃないですか。この作品の場合、最後まで主人公に意識の転換が起こらない。ラッキーでスキルを得ただけだから、話がツイストしていかないんですよ。
岡村 これどうやって終わるの?
林 氏真が成仏して終わります。
平林 氏真、成仏してなかったの!?
林 ここも雑で、氏真の魂は現代にいたはずなのに、「おれは夢を見ていたのか……」みたいな感じで戦国時代に戻ります。これ、明らかにおかしいですよね。
平林 おかしい。どういうこっちゃ。
林 いろいろ杜撰だけど、設定では一番笑えたし、インパクトあった。
太田 ちょっと無責任なんだけど、氏真はすげーかっこよく書くべきだよね。
林 そうそう。現代だと氏真は残念な扱いを受けてるじゃないですか。逆にかっこよく書いてギャップを狙うべき。
今井 完全に本田圭佑のキャラにするとか。
林 「蹴鞠じゃサッカー無理だろ」っていうのを上手く裏切ってくれるとワクワクしたのに。
平林 今川氏真を使いながら、蹴鞠を別のスポーツとして解釈しちゃうとかね。
太田 志茂田景樹先生の『戦国の長嶋巨人軍』を読むべきです!
岡村 なんで編集部一同で、氏真を活かす方向で考えてるんだ……。
林 いやぁ、改めて『ヒカ碁』ってめっちゃ考えられてるなって思いましたね! この人は初投稿なんですが、ギャグセンスはあると思うのでまた応募してくれたら嬉しいですね。
平林 ぜひしっかり調べて、氏真でまた書いてください! 氏真に愛を!!
ヤバい書き手とは
太田 ここからはみなさんが上げた作品ですね。まずは『カクリヨヒメサマ』!
平林 岡村くんの上げたやつ(笑)。
岡村 ああ、もういいです! すみませんでした!!
太田 いや、やろうぜ!(笑)
……思い至るやもぎ離し悍馬(かんば)の如く生彩な翠緑(すいりょく)の造化(ぞうか)へと目を戻す。
天(あま)の原(はら)より降り注ぐ昼光(ちゅうこう)は相も変わらず此岸(しがん)を讃え、得(え)も云われない眩耀(げんよう)が地を満たす。
そうやって晴信が浩蕩(こうとう)として目も綾(あや)な、俗界(ぞっかい)を離れたる景観を見詰めていると、其の矢先ゆくりなく擦れ違い走り去らんとする物が端(はじ)に映った。
博物館を詣でなければ見(まみ)える事がないような時代が付いた自動車の後姿で、今日は能(よ)く能(よ)く珍らかな場景を、其れも一風(いっぷう)古惚(ふるぼ)けて煤(すす)けたような物ばかり見る日だと可笑しく思う。
打ち過ぎる自動車を目で追えば後部座席に隣り合う若い身空の男女(なんにょ)が見えた。
両人は肩を寄せ合い、実以(じつもっ)て心弛(こころゆる)びをしているような、宛(さなが)ら長(なが)の旅路より今しも戻り、気が抜けた如きであった。
だが見る内に自分が甚(いた)く草臥(くたび)れているのかと不安になった。
何故ならば遠ざかる男性の後姿が何(なん)の某(なにがし)なのかまで判らぬが何処(どこ)か肝胆相照(かんたんあいて)らす相手だと思われたからだった。……
平林 ……読めない。
太田 読めないよなー。
平林 読むのに時間がかかって、ストーリーどころじゃないよね。
太田 あのね、ルビを括弧の中に入れてこれだけたくさん出すってことは、「読むな」って言ってるに等しいよ。もちろん括弧の中に入れてルビを振る人はいるけれども、それは読むのを妨げない程度の量だから許される。この量のルビを括弧の中に入れて平文で打っちゃうのって、まずセンスがないし、人に見せるってことを考えてないと思う。この原稿、ルビなんて1個もないほうがまだ読めるよね。
岡村 ぶっちゃけおっしゃるとおりです。
太田 投稿作のプリントアウトはこっちで負担してデータだけ送ってもらえばって言うけど、こういうところで出るんですよ、著者としての心構えみたいなものが。全員が京極夏彦さんみたいにInDesignで書けとは言わないけど、原稿を読んでもらいたいと思ってるかどうかは、プリントアウトしてもらえば絶対わかる。プリントアウトが綺麗で作品がダメな人ってそう滅多にいないからね。
平林 そしてこれ、話自体は大したことないよね。
岡村 地味ですね。というか、たぶん読んでも意味がわかんなかったっていう人が大半ですよね?
石川 何が起こってるかはわかりました。
林 文字を追うのに一生懸命で、読んでも読んでも読んだそばから状況を忘れちゃう。でもこれを書ききったのはすごい。
太田 この人はこういう文体は自分がはじめてでどうこうって言ってますけど、この手の原稿は過去に先行例があるんですよ。15年くらい前にメフィスト賞に、すべての文章を五・七・五で書いてきた人がいたんです。「警察だ。今すぐここを、開けなさい」みたいな感じで(笑)。
一同 (笑)
今井 標語感ありますね。
太田 「ぜんぶ五・七・五なわけないじゃん、噓つけ!」って思ってパッと読んでみたら「警察だ。今すぐここを、開けなさい」。もう爆笑でさあ(笑)。しばらくさ、新聞とか見てても「ウルグアイ」とか五文字の言葉が目についてしょうがなかった。ほんとに最後の1文まですべて五・七・五だったし。
今井 彼のためにストックしてあげようみたいな。
太田 そこから考えると、この作品はそこまで偏執的ではないね。
岡村 まあ過去にも新人賞ありましたからね、全部ひよこのやつ。
太田 (嬉しそうに)あったあった!!!!! すごい気持ち悪かった……。だから変態度合いでいってもこの人はまだまだ。「こんなのはじめてだろ」とかってドヤ顔で言ってるうちは常識人なんです。ナチュラルにヤバいことやっちゃうのがヤバい人なんですよ。
平林 本当に人に読んでもらいたいと思ってるんだったら、わかりやすいんだけど美意識のあるものを目指すべきだと思う。たとえば長野まゆみさんの『雨更紗』くらいのバランスが、読者を獲得できて雰囲気もある文体ではないかと。この人の趣味とも近いはず。ただし、この人は難しい言葉を使ってるだけで他の能力はないので、厳しいハードルかな。現時点では文体が全然作れてない。
頭がいいのか悪いのか
太田 続いて石川さんの上げた『ゴースト・リリーの同盟』。ざっくりあらすじお願いします!
石川 まず前提として、「少女性可憐欠乏症」通称「GCD」という病気が10代少女に蔓延している世界です。GCDに罹患すると、少女の「かわいさ」なるものを摂取しないと発作を起こして死んでしまう。かわいさを摂取する方法は人によって違っていて、触覚経由だったり視覚経由だったり聴覚経由だったりします。たとえば、キスをすると治まるとか、触ると治まるとか、声を聞くと治まるとか、そういうことですね。
平林 (真顔で)『アイカツ!』をすると治るっていうのはないんだよね〜。
石川 直に、が大事なので。バーチャルはダメです。
平林 大変な病気だ……(愕然)。
石川 舞台となる女子校では、GCD患者の生徒がすぐにかわいさを摂取できるように「姉妹同盟」という互助会が結成されていて、学校を牛耳っています。それとは別に「百合蓮」というアングラな同盟もあって、主人公はこちらに所属することになる。「百合蓮」は女生徒同士のキスや愛撫を撮影して売って金を儲けてるんですが、真の目的はメンバーが各々望みを叶えて死んでいくことにあったわけです。で、主人公はそれを止めたい。最終的には死んだっていうのは全部偽りで、一旦社会的に死んだことにして新天地でみんなで生きていこうよ、と。劇的に面白いってわけじゃないんですけど、僕は会話が魅力的だなと思って読みました。
平林 この人、文章は上手だと思うよ。
太田 うん、悪くないね。
石川 この方は某国立大の院で生物学をやられてます。それはおいておいても、文章は端正だし会話もいいと思いました。フィクションとして小気味よく、少なくとも不快感を催さない程度には女子高生の会話として成立しているのかな、と。
林 百合嫌いの林としてはですね。一番気になったのは、どのくらい百合百合しないと死ぬのかっていうのがはじめに説明されないこと。
太田 林さん、今ちょっと頭いい感じがした! ルールの設定ね。
林 そうなんですよ。
平林 でも、それも人によるんだよね、たぶん。摂取の方法が違うんだったら数値化もできないってことでしょ?
石川 読む限りだと、ゲージが溜まっていったらセーフではなく、摂取した瞬間にセーフだったと思います。
平林 あー、なるほどね。
林 手が震えはじめたらヤバいとか、わかりやすい描写がなくて全部自己申告だから、「やばい死んじゃう!」っていうドキドキがなかった。
石川 一応、発作が起こると身体が震えて冷や汗をかいて普通に歩くこともままならない、みたいな描写はあります。ただ、そこまでいってしまうとマズいので、予防のためにも日常的に摂取してるのかと。「胸が渇く」と危険信号。
林 もっと序盤でそれを説明してほしかったな。それから、ヤバいと思ったらそこにいる人といきなりチューしてもOKって世界なんでしょ? 絶対もっと奇天烈なトラブルが起こる気がするんですよね。
太田 ちょっと林さんが別人のようにキレッキレだな。たしかにそのとおりとしか言いようがない。
林 そこは説明してくれないのね? っていうのは結構早い段階で思ったかな。あとは世界規模の病気なんだから政府が対策考えるはず、とか。学費が払えない主人公に対して少女同盟に入ったらお金を出してくれるっていうのも現実感がない。どういう資金源なのそれ、とか。
石川 資金源は一応ビデオってことになってますね。
林 ビデオっていっても、女子高生がいちゃいちゃしてるの撮ってるだけのビデオがそんなに儲かるか? と思ったんですよ。
太田 それは思ったね。
石川 たしかに、200万回も再生されないですよね……。
林 もっと過激なことしないと金持ちユーチューバーにはなれないよ!
太田 脱いだらYouTubeは18歳以上の指定動画になってしまうはずだし、ただ脱ぐくらいじゃ200万回も再生されないよ。XVideosの再生数見てみろよって感じだよね。
石川 僕が思った問題点はふたつあって、ひとつは「夢」を便利に使いすぎってことです。主人公は軽い記憶喪失なんですね。夢の中で真実を知ることが多々あるんですけど、少しそれに頼りすぎるきらいがあります。もうひとつは、作品のターニングポイントである同盟間抗争のきっかけが、「生徒会予算の不正流用」とどうにも盛り上がりに欠けること。
太田 頭のいいところと頭の悪いところがごっちゃになってるんだよね、この人。ひとりの人が書いた小説だとはちょっと思えなかったんですよ。ここすごい上手いなってところとまったく考えられてないところが、なんでこんなに次々出てくるんだろうと思って。筆力が安定しないんだよね。凡ミスとかではないんだよ。これ、なんでなんだろうね? 僕はよくわからなかった。
石川 はじめて書いたから? 略歴を見る限りでは投稿歴もないですし。
太田 そっか、それもあるのかな。この人、頭は全然悪くないと思う。
石川 この作品、いわゆる「百合」的な描写が「病気」の結果として出てくるんですよね。そうすると読者も安易に百合描写を消費できない。僕はそこに著者の批評性とか百合ものに対するメタ視点を感じました。
太田 そうなんだよね。実際石川さんがおっしゃるとおりで、周到に書いてるような気がする。でもダメなんだよ。なんでなんだろう……。あとは長い。500枚書くような話じゃまったくないんですよ。半分でいいと思う。書きたいことをもうちょっと絞ったほうがいいような気がするね。
林 でも、百合嫌いの林でも全然楽しく読めました!
石川 僕もこの人の作品ならまた読みたいです。
太田 そうだね。また応募してほしいよね。ちょっと待ちますか、この人は! ……というわけで、またよろしくね!
今回のベスト! 受賞作、出るか!?
太田 これがラストかな?
石川 ぶっちゃけ『ゴースト・リリー』のほうを僕は推してました。
太田 あ、そうなの?
林 ではタイトルをお願いします!
石川 『紅紅櫻と狂騒言語』です。このタイトルがうーんって思ったんですけど。
平林 タイトルは微妙。
石川 ペンネームもあんまり……。
太田 そうねー。
平林 でも話は良かったよ。
石川 話としては、舞台となる街では「紅紅櫻」という桜が1年中血の色のような花を咲かせていて、次々に異変が起こっていると。で、群像劇的になっているんですが、これはどうまとめたらいいんだ……。
平林 えっと、①透明人間の男子高校生が自分や友人に起こっている異変を追っていて、②飢え死にしかけている探偵が、盗まれた銃を使った事件を追っていて、③小学生が虐待されている女の子を助けようとしている。④また別の高校生は、自分の彼女を撃ち殺してしまう、っていう複数視点の話だよね。
太田 緑萌さん頭いいねー!
平林 いや、整理しながらじゃないとわからなかったんで。
太田 そうなんだよ。
平林 複雑すぎる。あと、ちょっと長い。
太田 長いね。
平林 一番面白くなるべきところ、そろそろクライマックスが来て終わるかなってところから100ページくらいあるんですよ。それがキツい。話が進むごとに解決した要素を退場させて、どんどん削ぎ落としていくべき。
石川 今、平林さんに端的にまとめていただいたとおりなんですけども、小学生のひとりが成長して透明人間の高校生になったりするように時系列もシャッフルされていて、途中でループも発生します。異変を引き起こしていた元凶が3重のレイヤーになっていることも話をさらに複雑にしている。①街自体が異変の起こりうる土地であり、②街が虐待されている女の子の能力を活性化させたことで大量死が起こり、③彼女を撃ち殺してしまう男子高校生は実は女子高校生の夢で、その夢が具現化している、ですね。この方は過去に2回上げられてるんですよね。
太田 上げられてても全然おかしくないよ。
平林 2012年夏と2013年の秋だね。
林 そのときもザッピング形式をとってますね。「3人の登場人物の視点が切り替わりながら進むお話」って書いてます。
太田 こういうのが好きなんだね。
平林 前読んだ感じを思い出したけど、そのときはあんまり面白くなかった。でも、今回は面白かったと思う。
太田 いいと思いますよ。今回読んだ中ではこれがベストだね。が、「これでは売れない!」って感じがするんですよね。
岡村 決定的ですね。
太田 なぜ売れないかっていうと、やっぱり複雑すぎるんですよ。
岡村 たしかに、一番端的にまとめた説明が平林さんのあれなんでしょ?
太田 そうなんだよ!
岡村 かなりキツいよ(笑)。
平林 このくらいの重層的なものは、普通の人には楽しく読めないと思う。僕も相当つらい。
太田 僕もそうだね。この人、あれくらいでいいんじゃない? ブラッド・ピットがやってたさ……。
今井 『Mr.&Mrs. スミス』?
太田 あーそうそう! そういうのを書いてみたらって思うんですよ。
林 えー!? この人、絶対ノーランとかのほうが好きですよ。これ『インセプション』っぽいですし。
太田 ただ、それだと売れないんじゃないかな。『Mr.&Mrs. スミス』ってバカバカしい映画なんですけど、あのくらいの密度でいいと思うよ。
今井 あのくらいに振ったつもりで、この人はちょうどよくなる。
太田 そう。本当にバカバカしい。本当にバカバカしい愛すべき映画なんだよ……(10回ほど繰り返す)。
林 でも、彼はザッピングで書きたい人だと思うんですよね。
太田 だから2軸くらいでいいと思う。3軸・4軸はね、大変なんです。3軸・4軸にするんだったら、コンテキストを落とすべきなんですよ。誰が見てもわかる話にしないといけないんだけど、この人はそれぞれにすごい濃い味付けするじゃん。1個1個がさ、ボルヘスっぽい短編を長編にしました、みたいなさ(笑)。
岡村 無理無理無理無理(笑)。
太田 ボルヘスは短編だけでも「うーん、今日は1篇読んだからもうお腹いっぱいだな」みたいな感じがするじゃない? でも、この人はそれをこうやって長編にしてしかも500枚とかあるわけじゃん。やりすぎなんですよ。音符が多すぎるんだよね、小説の中に。本人は超絶技巧で弾いてるつもりでも、遠くから聴くと騒音にしか聴こえないんですよ。ちゃんと聴くとメロディがあるんだけど、ちゃんと聴くと疲れちゃうっていう。なので、どこかで減らすか絞るかしないといけない気がするんだけど、だから構造をもっとバカっぽくするっていうのがひとつの手かなって思ったんですよね。あとは上遠野浩平さんの『ブギーポップ』じゃないけど、書いてることを柔らかくする。5軸くらいでいきたいんだったらそのくらいにするって話だよね。
石川 この人、過去と現在を混ぜ込むことがエモさを生み出してると思うんですけど。
太田 エモさね。でもこれをエモいって感じるまでにはものすごい登山をしないといけないのよ。上遠野さんなら高尾山に行く気軽さでエモいなって思わせてしまうわけだから。「こんなふたりの未来に星間戦争があるんだ!」みたいな。
岡村 僕は上遠野さん作品を読んでてつっかえたことないですね。
太田 上遠野さんはやってることはすごくハイブロウなんですよ。ハイブロウなんだけど、フラットだから古びないし誰が読んでもわかるじゃん。この人はそっちの方向をあんまり推しても仕方ないって気はするんだけど……。でも読んだほうがいいと思うよ。こういう人もいるんだなくらいの感じで。
石川 あと、これは修正可能だと思うんですけど、途中で能力が変わってるんですよね。たとえば探偵は眼を見ることによってその眼が見たものを覗けるって話だったのに、途中から残留思念を読み取れることになってて。血痕からとか。
平林 あー、そうそうそう。ゴミからとかね。
岡村 サイコメトリー的な。
平林 ちょっと異能の扱いは処理しきれてないかな。登場人物については上手く捌ききったなと思うけど。
石川 探偵とかかなり好きですね。
平林 ただね、かわいい女の子がひとりも出てこないんだよね……。
林 たしかに……。
平林 誰でも愛せる子をひとり出さないと。キャラクター的には一番取っつきやすい探偵助手が……。
今井 ぽっちゃり。
一同 (笑)
太田 この人ね、頭は絶対にいいんですよ。こまごまとした比喩表現も上手いんだよね。
岡村 上手いですよね。それは思いました。
太田 唸らせる何かがある、本当に。
平林 上手くなったんじゃないかと思うんですよ。前つらかったから。
太田 まだ若いもんね。ただ、1作書くのにコストをかけすぎてるんじゃないかって気がするんだよね。普段は逆のことを言うんだけど、「しっかり書け」って(笑)。
岡村 そうですよね(笑)。
太田 この人に関しては2軸・3軸くらいのものを3ヶ月、4ヶ月で書きましょうよって思うんですよね。どのみち2年に1作だと、原尞先生くらい売れないと専業の商業作家としてやっていくのはほぼ不可能なので。若いんだから馬力もあると思うけど、会社に通いながらになると思うから、そこはどうでしょう。
平林 僕、これは出してもいいかなと思いましたけどね。
太田 僕もちらっと思ったんですよ。ただ、売れる感じはまったくしないよね。
平林 しないです。昨夜、「これを推したいな」と思って考えたんですよ。でも、これでデビューしても幸せになれなさそうというか、自分の中で推す根拠を固めるには、ちょっと原稿が重すぎた。
太田 そこで躊躇しちゃうんだよね。この人、もっといいものが書ける気がするんだよ。じゃあこれでデビューしないほうがいいんじゃない? って思っちゃうんだよね。
岡村 とすると、次の座談会までには厳しいかもしれないけど。
平林 冬までには。
太田 そうだね。健闘を祈ります!!!
座談会を終えて
林 これにて全作品終了です!
太田 ……ってことは、今回も受賞作なし?
岡村 ですね、残念ながら。
平林 ということは、次回出なかったら2年間受賞者が出てないことになりますね。
太田 そうか、伊吹さんからもうそんなになるのね。……次回こそ出したいね!
平林 ちなみに……次回、受賞者がひとりだった場合、賞金が確実に200万を超えます。
太田 マジで!
岡村 200万貰えんの!?
今井 じゃあ、ちょっと会社を休んで書こうと思います。
平林 おい! 仕事しろよ!
林 みんな、チャンスやで!
太田 次こそ無理やりにでも出す!? 一番よかったのを。
一同 (そんな無責任な……)
太田 まあそれは冗談として、前回あと一歩だった人たちも含め、渾身の1作の投稿をお待ちしています。みんな、よろしくだぜ!!
林 応募要項はこちら!
一行コメント
『メイ』
ツッコミどころ満載で読み進められません。(岡村)
『眠り姫のカスバ』
どういう面白さを狙っているか、読んでもよくわかりません。(岡村)
『南条翔は其の狐の如く』
ありがちなキャラクター。ありがちなお話でした。(林)
『イデアリストが呼んでいる』
文章がたどたどしく、内容的にも新味がない。(平林)
『僕と君のインビジブル・デスペアー』
設定を詰め込みすぎで、うまく処理し切れていません。長すぎるのも、問題です。(今井)
『七角柱の走馬燈は少々毀たれても止まらない』
よくある〝バトロワ〟もの。新味は特になく、ひたすら長い分つらい。(平林)
『心霊文芸部員・葛城椿』
キャクターの説明を地の文で解説したり、セリフでずらずら説明するのはかっこよくないです。(林)
『終わりの都市のクロニクル』
世界観の作り込みや描写のレベルは高いですが、設定とキャラに新味を感じられませんでした。(林)
『キルケゴール-Blood Absorbed-』
全体的にまだまだ力不足な感があります。資料読みも必要です。長い。(平林)
『淑花の世界』
テンポ感が悪く、ネタも凡庸です。(林)
『アクア・マリア』
「純文学的」な技巧を凝らそうとしているのはわかりますが、技量が追いついていません。(石川)
『オール・イズ・ヴァニティー』
メタフィクション性や狂気の描写がちゃちです。勉強した文学的な知識をそのまま文字にしている感じがするので、自家薬籠中のものにした上でエンターテインメントへと落とし込んでください。(石川)
『劉と明』
設定の作り込みが甘すぎます。「異世界」は何をやってもいいという免罪符ではありません。(石川)
『となりの美夕貴さん』
会話や固有名詞がことごとく古いです。(石川)
『世界の裏側で彼は死んだ』
異世界要素を出す必要はあったんでしょうか? 投稿ペースは素晴らしいです。(石川)
『ライフ・フリークス』
破綻はなく読めるのですが、低いところで安定している感じでした。固有名詞のセンスはちょっとヤバい。(平林)
『ストラディヴァリの背中』
描きたいことは伝わってくるのですが、内容に密度がないです。(岡村)
『《七英雄》の人類選択』
設定も語り口もあまりに稚拙。固有名詞のセンスも壊滅的です。(石川)
『馬霊鶴御玉』
「誘拐された母を捜す」というゴールから脱線しすぎです。あっちこっちに話の軸がブレるのでとても読み続けられない。(林)
『幻想リアリスト』
この作品のアピールポイントが、最後まで読んでもわかりませんでした。(岡村)
『灰色の女神様』
あらゆる語の用法が間違っていて読めません。(石川)
『春秋千里の旋回舞曲』
日本語が壊滅的で読めません。また、同じ原稿を何度も投稿しないで下さい。(平林)
『首ナシ娘ノカタルシス』
登場人物の数を意図的に抑えている印象を受けました。話が整理され読みやすかったです。ただ、キャラもナゾも、まだ弱い。次回作は、何かを尖らせてもらえるとうれしいです。(今井)
『名も無き傷に幸運を』
連絡よろしくお願いします。(太田)
『サイレント・ドッペル 沈黙の代理人』
話の内容以前に、誤字脱字や日本語としておかしな文章が多すぎます。きちんと推敲してから投稿してください。(岡村)
『蜜蜂と揚羽蝶』
悪い小説ではないのですが、何か特別なものがあるかと言われれば特になかったのが残念。(平林)
『キッチュソウルズ』
不必要な状況描写が多く、読むのが辛かったです。主人公の覗きシーン、ちっともドキドキしませんでした。(林)
『アンクロシングワールド』
B級映画は好きですが、このベタすぎる出だしには全くのれませんでした。(林)
『Love machinegun』
会話やキャラクター、ボンクラ感、要所要所の描写がよく、面白く読みました。が、いまひとつ整理されていない印象が拭いきれません。タイトルやペンネームも微妙です。次回作を期待してます!(石川)
『転生お嬢様奮闘記』
アイディア、文章、キャラクターすべてが薄くて雑。稚拙でした。(林)
『少女特攻カミカゼ』
キャラクターがどんどん死んでいきますが、緊張感も絶望感もカタルシスも全く湧いてきませんでした。(岡村)
『魔法少女も愚痴りたい』
読んでいて苦痛しかなかった。(平林)
『放課後バーダー!』
野鳥が人になるアイディアは悪くないが、キャラが安直すぎる。ラストは予想外でしたが、この結末は誰も嬉しくないのでは?(林)
『星村くじらの優しい傷跡』
副詞の使い方が適切ではなく、読む人のことを考えた文章ではありませんでした。(今井)
『戯曲・パラノイド』
読みづらくはないがフックを欠く文章で、キャラクターも万人受けしそうですが類例多数です。少なくとも、枚数不足・プリントアウト原稿なしであるにもかかわらず「どうしても読んで欲しかった」と送ってくるレベルのものではありません。(石川)