WORLD

ふたつの大国の、冷戦によって形作られる世界

世界は、ふたつの国家の膠着が形作っている。七竜のうち三柱と契約し、一度は世界を征しながらも、衰退しつつある最大国家ドナティア。かつては遅れをとり、ドナティアに侵略されながらも、今旭日の極みにある黄爛。その睨み合いのただ中にニル・カムイと呼ばれる島国が存在した。

ニル・カムイ

物語の舞台死せる者が還る島

物語の舞台となる島。

もともと未開の部分が多い島で、開拓された土地については、ドナティアと黄爛の植民地および、地元民たちが運営する独立都市に三分されている。

多数の「魔素流」が複雑に絡み合っているため、気候は異常なまでに極端。魔物の数も極めて多く、都市とごく一部の街道を除いては、常に人々は魔物の牙に怯えて生活している。村落が魔物に壊滅させられることは珍しくなく、城壁を巡らせた都市でさえ、しばしば消滅する。

特殊な宗教形態で崇拝される「皇統種」。その正反対に被差別階級である「つながれもの」、「まじりもの」のような特異な人間(あるいは魔物)など、島の特徴は多岐にわたるが、もっとも特筆すべきは「還り人」と呼ばれる、死者が蘇生する現象であろう。魔素流と魂との関連から、この異常現象を解明しようとする研究者は、ドナティアや黄爛にも数多いが、いまだ手がかりを掴むにも至ってない。

かつて島中を荒廃させたドナティアと黄爛の戦争「七年戦争」を経て、今は緩衝国のような扱いだったが、ニル・カムイを縄張りとしている七竜の一柱〈赤の竜〉に異変が生じたことから、一気に緊張状態がふくれあがろうとしていた......。

ドナティア

〈黒の竜〉に祝福された、世界最強の軍事国家

ニル・カムイのはるか東方に位置する巨大国家。

アーデルバイド大陸の八割を支配下に収め、優れた魔法と科学技術、勇猛な騎士団によって拡大路線を続けてきた。特に二百数十年前、〈黒の竜〉を始めとする三柱の竜と契約して以来は破竹の快進撃を続けており、ニル・カムイはもちろん、海を隔てて黄爛の一部をも植民地にしている。もちろん、その最大戦力は〈黒の竜〉の恩寵を得る「黒竜騎士団」だ。

直接〈黒の竜〉と契約した黒竜騎士は三十人に足るかどうかといった数だが、文字通りに一騎当千たる能力と、絶大なカリスマをもって正騎士、従騎士たちを率い、全八団よりなる黒竜騎士団を導いている。

現在、ニル・カムイに逗留しているのは、この黒竜騎士団・第三団であり、かつては史上最年少の黒竜騎士として名を馳せたシメオン・ツァリコフが指揮している。同時に、国家全体の強さの一因は、人民が〈教会〉と呼ばれるひとつの宗教を奉じ、非常に高い団結力を持つことにある。

〈教会〉の信じる唯一神は正義を尊び、神の御心に沿って正しきことを成し遂げることを求める。正しさとは強さであり、強さとは社会を発展させることである。その彼らが膨張主義となるのはもはや必然だが、同時に彼らは、正義のために人々を文明化し、正しく導かねばならない、と本気で信じているのだ。

もっとも、この数十年は、黄爛が軍備を整備し反撃に転じていることに加え、広大すぎる領土と非効率な大貴族制度、教会と軍部の足の引っ張り合い、皇帝の後継者問題などが災いして領土は縮小傾向にある。

黄爛

経済とテクノロジーによって、新たに覇を唱える大国

魂を輪廻転生させ、永遠に生きるという「黄爛霊母」の統べる多民族国家。 そのモットーは平等であり、現世利益を何よりも重視する。軍事というよりは商業、魔術というよりは哲学の国。

個人修養に特化している道(タオ)と呼ばれる魔術体系を持ち、西の大国として君臨してきたが、集団戦に長けたドナティアにここ百年ほどは苦渋を嘗めさせられてきた。

しかし、「六傑」と呼ばれる万人長、およびマスケット銃や大砲を始めとするテクノロジーの集中運用によって編成された陸海軍が、失地回復を果たしつつある。強大な千人長を中心としたニル・カムイへの軍事介入も、彼らにとってはその一環に過ぎない。

一方で、貨幣経済においてもドナティアに一歩先んじている。いまだ貴族の勢力が強く貨幣を統一しきれないドナティアに対して、黄爛は霊母による中央集権が進んでいるため、貨幣を早く統一させられた。

このため経済の発展が著しく、単純な経済力だけを言えばドナティアの倍近くになっている。

黄爛には国教というものがなく、現時点では黄爛全ての民の母----「霊母」を崇拝する八爪会と、「霊母」は敬いつつも、より相互扶助を重視する天巫堂とが二大勢力となっている。

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