エレGY
CHAPTER 5-1『謎の封筒』
泉 和良 Illustration/huke
「最前線」のフィクションズ。破天荒に加速する“運命の恋”を天性のリズム感で瑞々しく描ききった泉和良の記念碑的デビュー作が、hukeの絵筆による唯一無二の色彩とともに「最前線」に堂々登場! 「最前線」のフィクションズページにて“期間無制限”で“完全公開中”!
CHAPTER 5
1『謎の封筒』
僕はアンディー・メンテのサイトを復活させ、ブログや通信販売も再開させるに至った。
作りかけだったゲームは全て消えてしまったが、僕の胸の中では、もう一度かつてのような輝きを放つ作品を作りたいという欲求が戻りつつあった。
もう媚びた物を作る気はない。
純粋な衝動によってのみ作られるべき物を、作りたかった。
しかしそれでは、今までのようにハイペースで作品を制作していく事はできなくなる。
一度閉鎖までしてしまった上、作風はマジョリティを無視した物に戻り、更に公開頻度も下がるとなれば、以前ほどのファン数は到底期待できないだろう。
だが、それでもゼロじゃない。その事を喜ぶオールドファンだっている。
生活は困窮するかもしれないが、それを上回って優る価値を、僕は知っている。
それに、マイノリティでも集まれば力となる。
光強まればそのうち、エキセントリックな瞬きに寄せられて、物好きが大勢集まる事だってあるかもしれない。
そしたら全員、ジスカルドの魔法に掛けて混乱させてやろう。
別にもう、どう思われても関係ないんだ。
今の僕には強い指針、目指すべき光射す方向がある。
エレGYが自信に満ちた笑顔で真っ直ぐ指差す先、かつての僕が夢見た果ての先。
魂の命ずるところをなそう。
好きなことを好きなだけ……
それがありのままの僕だ。
×
大井町のマクドナルド前での激闘から二日。
僕らは互いにメールを出し合った。
エレGYの元へすぐにでも会いに行きたかったが、意外にも彼女の方から、少しだけ待ってと言われた。
何やら準備があるらしい。
コンビニに夕飯を買いに行き帰宅すると、ポストに挟まった封筒を発見した。
封筒はピンクの星模様で、宛先の住所は水色のペンで手書き。裏面の封の部分には猫のシールが貼られている。
督促状でも請求書でもない事は明らかだ。
部屋に入って、カッターで慎重に封を切る。
中からは、「しょおたいじょお!!」と筆ペンで狂ったように書かれた便箋が一枚出てきた。
墨が乾き切らぬうちに入れようとしたのか、便箋の各所が黒く擦れた跡で汚れていた。
なんだこの封筒の外見と中身とのギャップは……
便箋の裏にも何か書かれてある。
今日はもう二十三日、イヴの前日だった。
チキンラーメンが食べたくなった。