
2026年春 星海社FICTIONS新人賞 編集者座談会
2026年5月@星海社会議室
白熱する議論の果てにまたもや受賞作が決定! 新人ラッシュの勢いはまだまだ続く!
受賞の気運高まる!&新メンバー加入!
榎本 さあ、座談会の始まりです。前回の受賞作出現からの良い流れを繋いでいきたいですね。今回の座談会からは八木さんが加わります。
八木 八木です。商社で働いていました。半沢直樹のような世界で働いてきましたので、その経験を今回の座談会に活かしたいです!
丸茂 八木さんはすでに星海社新書で投資関係の本を何冊か出しています。
太田 商社と言えばブライトな日本男児の最前線です。僕の編集者としての師匠でもあった宇山日出臣さんも、講談社に入る前までは商社マンでした。バリバリ働いていた経験をいかして、今回の座談会でも新しい風を吹かしてほしいですね。
謎にはインパクトがもっと欲しい
丸茂 それでは第一作。『パレイドリアモンタージュ』は漫画家の主人公がVTuberのイラストを描いたことをきっかけに、失った記憶の謎を探していくミステリです。ただ、とっても惜しいんですよ……。書き手は20代の方で、すごく若い。これまでも何度も投稿してくださってます。
榎本 若くして常連さんなんですね。
丸茂 そうなんです。いつも元気いいなぁって思いながら読ませていただいています。それに今回の作品は青春ミステリなので、いままさに僕たちが求めている作品だとも思いました。だけれど、惜しくも推し切れなかったんです。
岩間 どのあたりが惜しかったんですか?
丸茂 謎がツカミとしてちょっと弱い、そこがいちばんの惜しかったポイントです。文字情報だけをもとにVTuberのキャラクターを描いていたのだが、実はそのVTuberの××が想像と違ってい……、という話がメインストーリーの骨格で、そのVTuberの過去にはとある事件があって……という感じで展開していく。
前田 ネットで知り合った人に実際に会ってみたらイメージと違った、みたいな「あるある話」を超えていくところにもっと意外性が欲しかったというところでしょうか?
太田 謎がどれだけ面白いかは、ミステリの一つの肝だよね。
丸茂 はい、もちろん謎の設定だけでなく、物語の展開や解決が面白いのがベストなのですが、グッと読みたくなる謎はツカミとして欲しいですね。
元・商社マンが読みたい企業小説とは!?
榎本 今回、初の座談会参加となる八木さんは、どういう小説がお好きなんですか?
八木 私はやはり前職経験もありますから、ハードな企業小説が読みたいなと思いますね。
太田 池井戸潤さんの『半沢直樹シリーズ』みたいなハイテンションな企業小説、いいですね! 誰か応募してきてくれないかしら。
片倉 経済小説でいうと、新庄耕さんの『地面師たち』もドラマ化で大ヒットしましたね。
八木 『半沢直樹』や『地面師たち』みたいなこと、前職では普通にありましたから……(遠い目)
岩間 ……そんな八木さんをも納得させるハードな企業小説・経済小説ならば売れそうです!
八木 そこで、私が一つ紹介させていただく投稿作品は『悪党の資本論』という作品です。サスペンスもので、ストーリー自体は70年代の東映映画のテイストにも近いと思います。刑事ものではなく、悪いことをする側が主人公。『蘇える金狼』を彷彿とさせる犯罪小説です。
太田 『蘇える金狼』、良いですねえ。松田優作主演。
片倉 (話が長くなりそうなのを察して横から)ハードボイルドな話なのでしょうか?
八木 そうですね、小気味よいリズムで書かれていて、パッと読みやすいエンタメ性が光っていたので、ぜひ取り上げようと思いました。
持丸 とはいえ、あの頃の70年代の東映映画のテイストのまま、現代に通用するものを仕上げるのは大変そうですが、どうでしたか?
八木 はい、新興宗教などをテーマに取り入れて今風にしてあるんですけど、それでもちょっと古いんですよね。でも、70年代だったらシリーズの中の一作に入りそうな、そんな手触りでした。
片倉 1巻の小説としては少し線が弱かったのかな。タイトルに冠した「資本論」の要素はあったんですか?
八木 お金の話はいっぱい出てくるんです。主人公の幼少期が貧しいという背景がありますしね。本質的には「事業小説」なのかもしれないですが、マネーロンダリングなども出てきましたから、やっぱり犯罪小説ですね。
岡村 本作を候補作に挙げなかったのは、どのあたりがあと一歩だと感じたからですか?
八木 主人公がいまいちかっこよく感じられなかったのが惜しいんですよ。そこが一番気にかかりましたね。
前田 うーん、確かにクサいくらいかっこよい主人公が欲しいジャンルかもしれませんね。『半沢直樹』はその点すごく上手いと思います。この流れの中で、私からもうひとつの作品、『沼に魔物が住む』を紹介します。こちらも経済小説なんですよ。商社の鉄鋼部門のリアルさを売りにしている作品。主人公は経理部門で、帳簿にめちゃくちゃ強い。決算書とか帳簿、あるいは組織の構造の話がよく描かれている作品です。ただ、この作品も、エンタメ小説としてはキャラが弱いと思います。もっと強いインパクトのある敵キャラが欲しいと感じました。お金の話は、登場する人々の人生を左右する暗い話に繋がっている。だからこそ、敵キャラへのヘイトコントロールこそが重要だと思うんです。
榎本 八木さんもこの作品をお読みになりましたか?
八木 はい、商社の仕事のリアリティは感じました。だけど1点だけ。元・商社マンとして「決裁」と「決済」を誤用している箇所がどうしても気になりました。タイプミスだとは思うのですが、細かいところが命取りな世界なので。
前田 その一文字が気になるんですね! ただ、それくらいディテールが気になるほど、よく作り込まれている作品だとも思いました。しかし、逆にいうと、ディテールに凝りすぎて、小さい悪を描きすぎているようにも感じられたんです。
太田 とんでもない理不尽な経営者とか、とんでもなく鬱陶しい銀行マンに出て欲しいなあ。
前田 そう、やはりうちの新人賞はエンタメ小説の新人賞ではあるので、わかりやすさは重視して拝読しています。ただ、巨悪ばかりが企業小説ではないと思うので、そこで参考にしていただきたい作品は、速水螺旋人さんのまんが作品『大砲とスタンプ』です。戦争という分かりやすい世界観設定があり、怪しげなバックグラウンドのキャラクターたちがうまく配置されているので、ものすごい巨悪の敵キャラが出てくるわけではないのに、たとえば帳簿の小さいネタ一つでも面白くなる作品構造を持っていると思います。
太田 『大砲とスタンプ』、第1話からの流れが素晴らしかったですね。しかしこれらの作品も、調査や経験をもとに細かなディテールが描けているのは素晴らしいと思います。またぜひ投稿してほしいですね。
素敵な内容と気になる点
榎本 私からは『午後五時同盟』を紹介します。ある出来事をきっかけに高校生がYouTubeの登録者数3万人超えを目標にアイドルを結成するサクセスストーリーです。
持丸 アイドルもの、いいですね。どのあたりが魅力的な作品ですか?
榎本 ライブを通してバンドでのし上がっていく、音楽ものの王道の楽しさがあるんですよ。主人公が想いを込めて歌う姿は熱いものを感じました。中盤が本当に良かったです。
丸茂 ただ、「3万人超え」という微妙な数字が気になるな。どういう設定なのですか?
榎本 あるインフルエンサーが、主人公たちの同級生のラブレターを公開すると言い出すんです。それを止める条件が「登録者数3万人超え」だったんです。
片倉 YouTubeの登録者数3万って、今どれくらいすごいんですかね。
前田 最近、とある面白い企画を立てたYouTuberさんが動画2本だけで「銀の盾」に到達したという話を聞きました。
丸茂 銀の盾というのはチャンネル登録者数10万人の褒賞のことですね。3万人というのが、物語を動かす高いハードルなのか気になってしまいますね。
榎本 私も、この数字には少し引っかかりました。せっかくの大きな夢に向かう話なのですが、小さく見えてしまった気がします。それに中盤以降の物語の落とし所に向かうには、友人への思いなのか、バンドとして成功することなのかテーマがブレてしまったかもしれないです。
丸茂 次回は、ぜひ小さな「一騎打ち」を描くだけで収まらない大きな夢のある作品をお願いします!
「戦後×VTuber」の意欲作! ただし要素盛りすぎ?
岩間 私は『焼け跡の夏、君と届ける夜明け』を最終候補に挙げました。架空の戦後日本を舞台にした少女小説です。学徒出陣の壮行会に出席する医学生の視点から始まって、「敗戦」「焼け野原」「復員」という王道の舞台設定が始まります。そこに彼の元恋人が戦意高揚を担う人気VTuberとして登場する。SNS炎上、人目を盗んだデートなどを経て、二人が再び寄り添っていくという物語です。今の空気を鮮やかに切り取っていて、掴まれました。
太田 大きな戦争の後の架空日本という設定だけれど、時代はいつ頃なのかしら。
榎本 2020年代の近未来という設定です。架空世界の戦後といえども、その中でのコスメの描写などが細かくて、現代を生きる女性の心の機微が細やかに描かれていると感じました。
前田 とはいえ、そこは本作品特有の違和感にも繋がっていますね。戦後を描く昭和の純文学的な言葉と、「推ししか勝たん」的な現代語が、ひとつの文体の中で混ざっちゃってしまい、ちょっと読み味が安定しない感覚がありました。
岡村 僕は正直、あまり楽しめませんでした。設定が派手なこと自体は良いのですが、そこにリアリティが伴っていないので、御都合主義に感じてしまったのが正直なところです。
丸茂 著者の趣味だと思うので、僕はそこまで気にしませんでした。ただ、VTuberという概念そのものに読者が興奮するわけじゃないんですよ。僕らが好きなのは「VTuber」という範疇じゃなくて、VTuberの誰々さんという具体的な誰かなんです。
前田 「アイドル」というテーマは、それだけで引きになる強さがありますよね。アイドルをテーマにした作品には枚挙にいとまがありませんが「VTuber」の場合にはまだ王道のストーリーが発見されていないのでは。もちろん山下清悟監督の『超かぐや姫』などは時代を捉えていると思いますが、仮想空間性を売りにしているから現実のVTuber体験とも少し違う。
丸茂 そして、この方は愛の成就を書きたい人なんだと思う。だったら『わたしの幸せな結婚』のように、メロドラマに足場を一本に絞ってしまうのが一番美しいのではないか、と思います。
岩間 足し算で盛るんじゃなくて、引き算で絞るということですね。設定への思い入れは強く伝わってくるので、書きたいことを絞った作品をお待ちしています。
魅力的な「館」、しかし噛み合わない三つの謎
榎本 片倉さんからの候補作は、『エーテル館の殺人』です。
片倉 今回読んで一番面白かった作品です。かつての大学サークルの仲間たちが、火・水・土・風の四元素に準えていにしえの錬金術師が建てた「エーテル館」に閉じ込められる館もの。謎めいた館の秘密、亡き友が残した暗号、そして起こる連続殺人。この設定だけでワクワクしますよね。
丸茂 つかみは満場一致で良かった。でも、キャラが十分に立ってないのが惜しい。
榎本 誰かが殺されてもあまり関心が向かなかったというのが正直なところです。
片倉 そう、主要キャラ以外の人物造型が薄味でいまいち印象に残らないから、連続殺人が起きたところで衝撃が今一つ弱いんです。綾辻行人さんの『十角館の殺人』には登場人物のキャラ付けを一気に行うギミックがありましたが、それくらい明快なキャラ付けを追加したい。この作品を読んでいてそう感じました。
太田 謎は三つ用意されてるよね。なぜ館に呼ばれたのか、なぜ殺人が起きるのか、そして暗号。ところが、これらが噛み合いそうで噛み合わない。複雑な連立方程式だけが続いて、しかも解決の推理が、伏線の積み上げじゃなくて思いつきで一気に氷解しちゃう。
岡村 この方は、前にも別の館もので候補にあがってますよね。広げ方そのものはやっぱり上手いんですよ。ただ謎の解決や物語の回収に、納得感や面白さを出すところではあともう一歩かもしれないですね。
太田 まずひとつは、殺人を一つに絞って、その一つについて意外な真相を、納得のいく筋として一本通すこと。そこがだいじなんじゃないかしら。館で一人しか死なないのかという物足りなさは残るかもしれないけど、まずは基礎を固めるべきかもしれませんね。
前田 あるいは、いっそ抽象に振り切るのはいかがでしょうか。「エーテル」という語には衒学的な色気がありますが、しかし私は、この方はミニマルでシャープなミステリを志向しているのではないか、それで「火・水・土・風の四元素」をギミックとして採用しているのではないかと感じました。そのミニマルさをもっととことん詰めてみたらどんな作品になるのだろうと想像しました。
片倉 ポテンシャルがある方なのは本作を読めば一目瞭然でした。ただ、この作者さんが今の方向を突き詰めていった先に傑作があるかというと難しいところです。皆さんの反応を見ていると、残念ながら本作は受賞ならずですね。
太田 賞のことをいったん忘れて、一件の殺人について納得のいく推理を一本組み立てる、その基礎からしっかりやってほしい。この方の作品は冒頭はいつも最高なんです。読みやすさは美点だから、次こそ基礎を固めた渾身の一作をお願いします!
期待の新人、あるいはゼロ年代シーラカンスの幼魚!?
持丸 『マジョノクラフト』を推薦します。催眠アプリを手にした高校生・零が、魔女の少女・桜と組んで学校を支配する敵に挑む、能力バトル風の青春小説です。驚くのは投稿者の方のご年齢で、なんと17歳なんですよ。
太田 若い! 若い人が挑戦してくれるのは、やっぱりうれしいね。
丸茂 そして作品に登場する造語などのセンスからしても、ゼロ年代の重力――2000年代前半のライトノベルが帯びていた、あの独特の空気をまるごと吸い込んでるとしか思えない。だけれど、その空気をリアルタイムで浴びているはずはない世代という驚きがあります。だってまだ生まれていない若さですからね。
岡村 あまりの懐かしさに、読んでて少し恥ずかしくなるくらいです。
前田 親御さんの本棚を経由してゼロ年代作品を摂取した世代が、もう高校生になっていておかしくないんです……。
太田 本当にそうだとしたら「シーラカンスが生きていた」というより「シーラカンスの幼魚が泳いでいた!」という驚きだよね。
前田 もちろん書店や図書館など、ご本人がゼロ年代作品を掘っていってこの境地に達した可能性もありますけれど。
丸茂 過去の模倣作ならば、昔の作品を読めばいいんです。でも、その古臭さの中で最後まで読まされてしまう力が、確かにある。
太田 この子の才能をここで止めたくない、と言いたくなる。そしてこれぐらいの作品を書けるなら、普通は「投稿サイト」に投稿するはずなんですよ。それなのに、あえて弊社の新人賞に送ってくる。自分の作品がちゃんと評価される場所がどこかをわかっている。頭が良い方なんだと思う。
持丸 見せかけのライトさと裏腹な、技巧を感じさせる文体です。言葉が強い(いいフレーズがいっぱいありました)。読ませる。なんといっても17歳の作者による、本物の自意識、初期衝動、嘘のなさが魅力でした。後半のギアの上げ方も「小説の格好を分かってる」なと感心しました。
太田 ひとつだけ注文をつけるなら、主人公だね。魅力的な脇役を配する力はもうある。でも、いちばん面白くなきゃいけないのは主人公その人なんだよ。『少年ジャンプ』の成功作はそこを外さない。脇のキャラを次々に立てるより、「この人の物語の先を見たい」と読者に思わせる主人公を、一人、確実に立てること。それはやはり大事なことなんです。
岡村 それができれば、少年漫画を小説で書ける希少な書き手になれるかもしれないですね。
太田 2026年はまだ半分残ってるからね! 叶うことなら次回新人賞までに新作を書いてきてほしい。令和の17歳が新人賞に正面から投げ込んできた。この驚きを、星海社も真正面から受け止めますので、次もあっと驚く作品をお待ちしております!!
ハイファンタジーの力作、今回は受賞なるか!?
岡村 『徒花の魔女と百年の夜』です。本作は以前にも候補作に挙がった『紙面の月』の改稿で、満を持しての投稿です。世に出して全く恥ずかしくない面白さだと思います。超能力がある世界での「戦記もの」であり、世界の危機を救うハイファンタジーです。
榎本 前回の議題になったのが、果たしてハイファンタジーというジャンルをどう読者の方に届けるかということでした。クオリティがある、というだけでは売ることが難しいジャンルにおいて、いかにフックを作るか。そして、前回は文字数が多すぎることが問題となり受賞を逃しました。
岡村 今回は前回から文字数を大幅に削減し、ストーリー展開を入れ替えて冒頭からアクセルを踏んだ内容に変わっています。
前田 私はかなり「本作推し」です。世界構造が明晰で、驚きがある。ネタバレになってしまうのでこの場で本作の設定を語り尽くせないのですが、たとえていうならば三宅乱丈さんの『イムリ』や吉浦康裕監督の『さかさまのパテマ』、弐瓶勉さんの『大雪海のカイナ』に通じるスケールの大きさがあります。加えて、言葉のセンスが素晴らしいです。言葉の響き自体に、世界観がある。だからアニメ作品の『シムーン』など、ファンタジーが好きな人には必ず刺さると思います。
榎本 前回の座談会にはまだ出席していなかった八木さんにとっては、今回が本作を初めて読む機会だったと思うのですが、いかがでした?
八木 実は最初の設定が結構複雑で、没入するのに苦労したというのが正直なところです。
片倉 ファンタジーは読み慣れていないと、最初に作品世界へ没入するまでが大変ですよね。
太田 とてもよく出来ている作品なんだけれど、もっと改稿して上手い導入にすることはできると思う。読み始めてすぐに「こういう世界なんだな」って伝えるための工夫は凝らせるはずだし、実は文章じたいももっと良くできると思う。たとえば冒頭のこのあたりがそうなように、接続詞や指示代名詞が連続する癖がある方だから、それらを編集者が指摘して改稿するだけでもずいぶん変わるんじゃないかな。
片倉 しかし加点か減点かという考え方でいうと、大きな減点要素がとても少ない。そつのない上手な作品だと思います。
太田 総合評価でいえば、もう受賞だね。
岡村 受賞!
太田 世の読者の皆さんに問うてみましょう。ただ「受賞」というだけで、読者の方が本を手に取ってくれるわけではないですから。この作品のどこが新しいのか、そこを見極めて、さあどう売るか、が考えどころです。皆さん、受賞でよろしいですね!?
一同 いいと思います!!
太田 おめでとうございます! 受賞です!!
岡村 ありがとうございます! 今回の改稿で受賞に値する作品になりましたが、まだまだ良く出来る余地がありますので、さらにブラッシュアップしてもらって世に刊行します。
まだ賞金は貰えます(ストレート)!
岡村 前回の雪辱を果たしました!
太田 いやーよかった! これで今年度の受賞作は4作品。
榎本 今回も受賞作が出て本当に今年は凄いですね。
太田 何を気の抜けたことを言ってるんだい! 今年はまだ終わってないぞ!
片倉 星海社FICTIONS新人賞はその年の受賞者で賞金を山分けするというルールなので、2026年分は次回がラストチャンスです!
八木 元・商社マンの編集者もいるので、経済小説も大募集中です! 星海社のFICTIONS新人賞は多彩なジャンルの作品でもOKです。
太田 出さずに後悔より、出して後悔! 受賞への千里の道も一作品からなので、ぜひご応募お願い申し上げます。
一同 皆さんの傑作をお待ちしています!
1行コメント
『エルフエナジー 赤黒い瞳の王国』
ファンタジーSFで緊張感がありました。ただファンタジーという設定は必要だったのかと感じられたことと、物語としては未完の印象が強く、1つのまとまりのある作品が読みたかったです。(榎本)
『死せよ吸血鬼』
怪奇物のメジャーな怪物が多々出てくるので、キャラのイメージはしやすかったです。反面、あまり驚きがなかったのと、描写というより説明になっている個所が多々見られ、文章量が過剰になってしまっている印象でした。(岡村)
『露の微光』
主人公の設定が魅力的でした。それ故に、受け身でストーリーが動いていくところが盛り上がりに欠けると思いました。韓国に類似した題材の先行作品がいくつかあり、それを超えられるかというと、そうではなかった印象です。(榎本)
『黄睡』
とても不思議で優しい空気感に引き込まれました。断片が繋がって世界観が立ち上がっていくような構成が面白い反面、わかりにくくもありました。作中作を効果的に見せる工夫をさらに期待です。(前田)
『エルフエナジー(2)エルフ・バリア塔編』
続編ということで、前回と同じ印象です。登場人物をもっと絞ると良いのかもしれません。(榎本)
『Ghostope』
設定自体は惹かれるところもあったのですが、世界の根幹の話を処理しきれてなかった印象。ゴーストバスターものにしたほうがまとまりは出たと思います。(丸茂)
『ファイトオーバー』
バスケットボールの試合の描写が素人にはイメージしづらかった点と、ファンタジーっぽいラストがあっさりしていた点が気になりました。(八木)
『ようこそ終末世界へ。人類の八割がウイルスにより死滅した彼の地にて、サバイバーはアンデッドワールドの救世主となる。』
饒舌体で設定モリモリの文体に脳がアジャストして、言葉のリズムにノれてくると楽しく読めました……が、段落長いです! 迫力すごいですけれど、ちょっと読みにくい。そして商業作品としてのリクエストとしては、あえてベタな導入をしているとはいえ、先行作品との一番の違い、あるいは作品の一番のウリが冒頭からわかる構成を練っていただきたいです!(前田)
『ヒロイン探し』
エピソードを厳選してテンポを上げ、主人公に分かりやすい『読者が惚れる理由』を付け加えることができると、より作品の魅力が伝わりやすくなったはず。(岩間)
『岳沢湿原の幻影』
冒頭の説明が長くて、もっと早く読者を作品の世界に引っ張り込んでほしかった。(八木)
『君と深海で呼吸する』
登場人物が抱える痛みや孤独が丁寧に描かれています。文章の完成度や作品を貫く思想は魅力的です。それだけに、しばしば登場人物が作者の思想の代弁者になるのが惜しかったです(高校生の独白に見えなくなる)。登場人物に完璧な思想を「語らせる」のではなく、等身大の割り切れない行動や感情の揺れを描いてほしいと思います。物語は深く読者の心に届くと思います。(女の子は息をしている感じがあってよかったです)。(持丸)
『いい子じゃなければ空子じゃない』
ストーカーっぽいのに喧嘩が強い主人公等、設定の意外性を意識されているのを感じましたが、もっと驚かせてほしかった。(八木)
『岬ノ村の因習』
派手な出来事とキャラクターたちが次々と繰り出されていくテンポの速さは良かったです。一方、物語全体を通しての驚きや、小説として読んでいて良い意味で心を動かされた個所はありませんでした。(岡村)
『帰還者』
異世界転生が当たり前になった世界で、異世界から戻ってきた「帰還者」たちをめぐる物語。この設定自体には面白くなるポテンシャルを感じましたが、設定の妙を活かしきれていないストーリー展開になってしまっているのが残念です。(片倉)
『君の一秒先で、君だけを愛してる』
詩集として拝読しました。真摯さを表現するために削ぎ落として行った先にこのような形式に辿り着かれたのだと思います。素敵な作品をありがとうございます。私の場合は、『軽口』『ハイキングに行こうよ』のように、読む人を少し驚かせるような作品が良かったです。そして読む人ごとにその人の感想があることでしょう。このように印象的なシーンの断片を沢山書き溜めてから、一編の小説として編む書き方もあると聞きますから、小説という形にまとまった時にはぜひまたご応募いただけたら嬉しいです。(前田)
『弱男鉄血奇譚』
設定のユニークさが素晴らしかったです。
その面白さをより際立たせるような見せ方を意識すると、
さらに魅力が伝わりやすくなったはず。(岩間)
『白花ノ剣 -三毒の魔女と蒼き欲望-』
似たような展開が繰り返しになっていましたので、各章毎に読者を飽きさせないような展開が欲しいと思いました。(榎本)
『問題物件、解錠します』
心霊能力×ミステリーは魅力的ですが、霊能力が解決の決定打になりすぎています。そのため推理の面白さが弱まったのでは。特殊能力は真相への手がかりに留め、最後は探偵自身の行動とロジックで真実に到達すべきです。さらに能力ゆえの苦悩を掘り下げれば、人物の説得力も格段に高まったのではないでしょうか。(持丸)
『俺は非科学的なモノをすべて否定する』
作品コンセプトが明確なのがいいですね。優れたエンタメ作品は、主人公を応援したくなるもの。そのためのキャラ造形や演出があと一歩だと思います。この主人公は、今はちょっと我が強い感じで感情移入しにくい。でもよくよく考えてみると、実はかなり愛すべき人物ですよね。いい意味での「滑稽味」とか「人間味」がもっと描けると、感情移入しやすい名作になるのではと思います。(前田)
『ギフトオブ・魔技』
伝奇とミステリを組み合わせた物語で、やりたいことはわかりました。ただリアリティラインがうまくつかめず、ご都合的に感じてしまう部分もあったのが正直なところです。(岡村)
『指切りの船』
ソリッドシチュエーションの設定には、「船上で悪魔に追われる」からもっとキャッチーさがほしいところです。(丸茂)
『ポルフィリンに映る空白を埋める時』
とても専門的なものを題材にしており新しいと思いました。それを、いかに一般の読者にも興味を持ってもらうようにするかが、よりおもしろくなる鍵と思いました。(榎本)
『仮面姉弟』
文体はリズミカルで読みやすいです。ただ内容は登場人物同士の不和が延々と続き、読んでいてあまり良い感情は抱けませんでした。(岡村)
『KILLaRA SLAUGHTER』
「きらら系×八十年代スラッシャー映画」というコンセプトが首尾一貫した作品なのは一定程度評価できます。ただし、この組み合わせを一見して最初に想像する面白さを上回るものがありませんでした。(片倉)
『悪党の資本論』
題材は現代的ながら1970年代の東映映画を彷彿とさせる犯罪小説でテンポ良く読めましたが、主人公の格好良さ、魅力が足りないと感じました。(八木)
『眼球仕立ての殺人』
眼球にまつわるフェティッシュに満ち満ちた小説でした。作者さんのやりたいことが詰まった作品であることは評価したいですが、展開に納得感が薄く勢い任せに見えてしまうのは要改善点です。(片倉)
『犬と雅と恋』
設定やあらすじが魅力的でした。導入や会話のテンポを意識して整理することができれば、より読者に伝わりやすくなったように思います。(岩間)
『地球一周の船旅』
地球一周の船旅という舞台設定で、男女の二視点が交互にザッピングしながらドラマが展開します。キャラ強めの人物設定と推進力のある文章から、高い実力が窺えます。一方で展開が整いすぎており(度重なる偶然の多さ!)、人物が物語のコマに見えます。会話が現実の会話ではなくキャラの説明になっている点も気になりました。読者の心を動かすのはさまざまな属性の詰め合わせではなく、切実な動機ではないでしょうか。彼らの矛盾や弱さといった泥臭い部分にまで踏み込めば、作品の説得力は増したと思います。(持丸)
『視よ、白き馬ありて』
ミッションスクールの不祥事と密室殺人の謎を解くミステリ作品。建築にフォーカスした小説だけあって、建物のディテールにまつわる描写がひときわ魅力的でした。ひとつ残念なのは、これだけ緻密に描かれた建物が架空のものであることです。もし実在する建築についてこれだけのディテールで謎解きを書いていただけたら一層面白い作品になるに違いなく、自分はそういう作品をぜひ読んでみたいです。(片倉)
『灰化戦争』
ファンタジーアクションの力作をありがとうございます。スケールの大きい世界観設定に惹かれました。ただ戦闘シーンはもっと分かりやすくなるはず。小説でアクションをする場合は、ゲームや漫画と違ってヴィジュアルに頼れないですよね。敵方との読み合い、生存のための理性と理性のぶつかり合いといった読ませるべき折角の部分が、情報量の多さ故に埋もれてしまっている感ありです。分かりやすく整理されれば面白さがぐーんと伸びると思います。(前田)
『永世中立のアルレッティ』
敵味方を問わず「故郷の声」を届けるために戦場に立ち、攻撃を受けても反撃しない「家報連隊」。戦記ファンタジーとして設定の妙があり、これは即戦力の推薦作と期待が高まりました。 しかし、物語はかなり早い段階から特殊な少女の成長譚へと重心を移していきました。設定の発想と訴求力がよかったのに、その設定が内包するテーマの重厚さ(戦争の中で人間性をどう守るか)に対して、ストーリーが甘く、着地が軽くなってしまったのが悔やまれました。(持丸)
『天使に触れた』
ジャンルとしてはハードボイルドに近く、冒頭に事件を持ってきてテンポも速かったのは良かったです。ただクライマックスの種明かしは、驚きよりも腑に落ちない印象が上回りました。(岡村)
『俺は心に不死鳥を飼っている』
音楽もののラノベと言ったときに想像しうる要素を過不足なく満たした作品でした。その反面、類型からはみ出たこの小説ならではの魅力を見出すことが難しかったです。(片倉)
『日ノ本民の生き方術――こうして空気と同調圧力は生まれる――』
小説で展開する意味を感じることができませんでした。(丸茂)
『哲学的ゾンビの白黒映画(モノクロキネマ)』
おもしろいかつまらないかで言えば、ちゃんとおもしろかったです。ただあえて厳しい言い方をさせていただくとよくあるおもしろさで、作品の真相についても「さすがにそれはいろいろと無理があるのでは」と粗さを感じてしまいました。前の投稿作と本作から「読ませる文体」はお持ちの人なので、何を描くか、それを「読む前に興味を持ってもらう」にはどうすればよいか、というのをより考えていただけると嬉しいです。(岡村)