2018年冬 星海社FICTIONS新人賞 編集者座談会

2018年1月25日(木)@星海社会議室

祝W受賞!! ついに完結したあの問題作にして話題作&彗星のごとく現れた初投稿作!期待作が揃い踏み!!

嵐の予感

櫻井 (そわそわ

平林 どうしたの? 座談会前に武者震い?

櫻井 そうなんですよ! 今回は皆さんの推薦作品がいつにも増して多かったですし、どれも面白かったですよね!?

岡村 確かに激戦の予感しかしない。

"あの"作品も、ついに完結しましたからね〜!

丸茂 僕と櫻井さんが星海社に合流する前から話題になっていた"アレ"ですね

太田 結果は蓋をあけてみるまでわからない! ちなみに今回の応募は52作品でした。本当にありがとうございます。さて、気合い入れてみていきましょう!

タイムリープにご用心

平林 まずは、林さん担当の『からむ量子のアモルアメリカ~恋愛力学~』からいこうか。

これはですね、今流行りのタイムリープものです!

平林 流行ってない時がない気がするけどね。

現世ではダメダメな男の主人公が人生をやり直したいと神社でお祈りしたら、夢が叶って高校時代に戻るんです。だけど、何故か自分は女子高生になっていて!? というストーリーです。

岡村 もしかして、入れ替わってる?

入れ替わってはいないですね! 家族などはそのままで、主人公の性別だけが入れ替わっています。

岡村 そっかー。

設定に新味がないとか、データも添付してくださいとか、色々言いたいことはありますが。一番まずいと思ったのが、主人公の名前が「時生翔(ときをかける)」ということです。これを見た時点でパロディ小説なんだな、という見方しかできなくなるので非常にもったいないと思います。

平林 タイムリープものの難しさって、それによって起こる諸問題をどう処理するのかという点にあるでしょ。そういう問題の処理に本気で取り組むとSFになるけど、文章の技巧で乗り切ることもできるんだよね。たとえばぶき けいさんの『スノウラビット』は後者だね。他にも色々なやり方があると思うけど、この作品は、そういうことをあまり考えてなさそうだね。

パロディとしてはすごく中途半端だし、じゃあ、本歌取りとして後から大逆転があるのかというと、そんなこともない。デビュー作になる作品なんだから、もう少しオリジナリティを見せてほしいですね。

ルビの功罪!?

丸茂 次は僕が担当した『Lost eDeN』なんですが、これは文章が文章ですね、ちょっと原稿を見てもらえますか?

一同 (原稿をのぞきこんで)うわーー!! 読ませルビだらけ!!

平林 「長距離」にまで「ディスタンス」ってルビがふってある。これでは他人に読ませる気がないと思われても仕方がない。

丸茂 なにしろこんな感じでほぼすべての漢字に読ませルビがふってあるんですよ! 目がチカチカしてくるし、ルビが気になって内容が全く頭に入ってこない!

櫻井 ルビ地獄、誰モ幸セニシナイ

紙面でどう見せるかということに対する情熱は感じるけど、できればそこじゃないところに熱意を注いでほしいですね。2番目にがんばるべきところにステータス全フリって感じですね。

丸茂 内容としては『九十九十九』のようなメタ的なオチがつくファンタジー作品で、この読ませルビの乱舞はきっと舞城さんのようなドライブ感ある文体を目指してのものだと思うんですけど失敗です。

平林 『九十九十九』も、読むのにめちゃくちゃ労力が必要な文章だと思うけど、それはちゃんと払う意味のあるコストなんだよね。それ以上の対価が得られるから成立してる。だけど、これはそうじゃなかったということだね。

丸茂 労作ではあるんですけどね。ルビふるの大変だったと思います。

誤解してほしくないのは、読ませルビが多いからダメだと言っているわけじゃないってことです。例えば、うろぶちげんさんの『鬼哭街』はほぼ総ルビなんですけど、設定や世界観に合っているので、「あのルビがないとダメ!」と思える。ルビを振っても作品が良くなるなら、何の問題もありません!

自分の強みを自覚する難しさ

岡村 今回僕の担当に入っていた『校舎の片隅で見た夢』は、前の投稿作を改稿したものです。前回の座談会で、平林さんがすごく推していた人ですね。

平林 うん。でも、ぶっちゃけ僕は改稿前のほうがよかったと思う。

岡村 平林さんは主人公のドSっぷりがいいって言っていたわけですけど、残念ながら今回はそれがなくなってしまったんですよね

櫻井 マイルドになっているということですか?

平林 そう、ラストシーンが敬語じゃなくなったんだよ!

石川 それはダメですね! あそこでゾクッてするのがよかったのに。

岡村 ある種の狂気がなくなってしまったんですよね。作者はそこを狙って書いていたわけじゃないのかもしれないけど、読む側からすると、魅力が薄まってしまった感が否めない。

平林 この方には、ぜひ新しい作品で勝負しにきてほしいですね。その作品がよかったら僕は推しますよ!

これがゼロ年代の残滓か

石川 この『元カノが白血病でくたばる話』については、特に推したいわけではなく、僕も持て余してしまって皆さんの感想を聞きたかったので、とりあえず冒頭を読んでもらったのですが

一同 うーん

丸茂 この作者は他社でデビュー済みなんですよね。デビュー作、僕も読みましたよそれと印象は変わらなかったです。

石川 この人は、作品を経るごとにどんどん良くない方向に進んでしまっている感じなんですよね。もう少し他人に向けて作品を書いてほしいと思います。デビュー作も、以前の投稿作も、今作も、主人公のみが感じているそら寒いリアリティとノリだけがあって、物語がないというところが共通しているんです。文体もずっと同じ。雰囲気だけは、ゼロ年代に僕たちが好きだったものに近いんですけど。

平林 これに限らないけど、うちには「遅れてきたゼロ年代」みたいな作品がたくさん送られてくるよね。様々なものをパッチワークしてメタフィクションを書くことが先端的な営為であったゼロ年代──の作品をパッチワークしました、みたいな作品。でも、それは縮小再生産っていうんだよ!

石川 前作にはたしか、「ゼロ年代の残り香をゼリーで固めている」ってコメントしましたね。受け取り手がいてはじめて「作品」として成立することを、もっと意識していただけるといいのですが。

平林 少なくとも、この方向は今やってもあんまり意味がないんじゃないかな。自分の中に何か問題意識があるんだったら、別の表現方法を模索したほうがいいと思います。

インパクト勝ちのタイトルにもチャンスはある

櫻井 次は、平林さんが担当した『新撰組イスラム血風録』ですね。これはタイトルの思い切りがすごい!

平林 ひじかたとしぞう以下、数人の新撰組が、タイムスリップをして中東に行ってしまって、ISのような奴らと戦うっていうストーリーです。言ってしまえば、『戦国自衛隊』の逆バージョンだね。新撰組なんだけど、けっこう序盤で刀を捨てて、銃に持ち替えてドローンなんかと戦うんだよ。

櫻井 武士道とは

太田 僕はこの作品、面白いと思ったよ!

石川 イスラムの描写はちゃんとしてるんですか?

平林 いや、そのへんにコストを払った形跡はないかな。だからこれをこのまま世に出したら色々マズいと思う。

『サトコとナダ』の担当としては見過ごせないですね。イスラム教徒の方には「創作物なのでイスラム描写を改変しました」は通じませんからね。

平林 正直、この作品はタイトルが一番面白かったんだけど、この「イスラム」のところには、他の任意の単語を入れても結構面白くなると思うんだよね。

大喜利みたいなものですね。

平林 そう。だとしたら、他にもっと現実的で面白い作品が作れるはずなんだ。例えば『新撰組フランス革命血風録』とか。

櫻井 うわ、それ読んでみたいです! 

平林 だたし、タイトルだけじゃなくて、それを超えるアイディアや魅力も必要なんだけどね。

エンターテインメントを極めよ!

石川 『石英ガラスの高次幻争録メタ・ファンタジア』は、今回僕が読んだ中では2番目に面白かった作品です。一番よかった作品にはちょっと及ばなかったので上げなかったのですが、個人的には上がっている作品とも遜色ないレベルだと思います。魔法と魔獣の出て来るファンタジーだけど、テクノロジーはSF的に整っているという世界観です。作中の現代では、魔法が科学的に解明されていて、人間には「人工頭脳」の相棒がいます。戦闘のたびに人工頭脳から能力や武器をダウンロードして戦うんです。でも、主人公が属しているパーティーは序盤で壊滅してしまい、主人公だけが太古の「旧世界」に転位する。そこは現代と歴史的・文化的に断絶していて、より素朴な魔王と勇者のいるファンタジー世界です。ただし、魔王側の方が明らかに勢力が強くて倫理的にも正しくて、反対に勇者は魔王を倒すためなら手段を選ばない悪役として描かれている。主人公はそこで、魔王側の傭兵を務めることになります。ちなみに、今の代の魔王は少女です。

岡村 なるほどね。でもさ、確かに勇者ってテロリストみたいなものだよね。軍とか率いるわけじゃなくて、すごく戦闘能力の高い個人が魔王を殺しに来るわけだし。怖い。

石川 まさにそうなんです。この世界では、辞書で「勇者」を引くと、2番目に「暗殺者。テロリスト」って書いてあるんです。

「魔王は本当は良い奴だった」っていうのと同じで、視点の入れ替えの問題ですね。

石川 現代よりもさらに先の未来のテクノロジーがほのめかされていたりと、設定も全体的によく練られているし、ラストにかけての盛り上がりも悪くなかった。ラスボスが魔王側でも勇者側でもない「第三国」というのは引っかからないでもなかったんですが、その第三国のトップには、主人公たちと同じく現代からやってきた人工頭脳がブレーンになっていて、自分の目的のために魔王を滅ぼそうとします。だから最後は、人工頭脳対人工頭脳のつばり合いになります。さしずめ、チェインバー対キュゥべえという感じですね。

丸茂 「チェインバー対キュゥべえ」は熱いですね!

石川 じゃあどこが足りなかったのかというと、まず文章。整ってはいるんですが、例えば戦闘中に起こっている化学反応を逐一書いてしまうとか、読んでいてつまずきになる部分は見直す必要を感じました。もうひとつは、総合点があと一歩だけ足りないということです。点はバランスよく取れているので、武器になる部分を尖らせて上積みしてほしいです。実力は間違いない方だと思いますので、次作はぜひ受賞を狙って書いてきてください!

魔法の筋繊維は一刀両断!

次は、『筋肉少女まりあ★マッスル 全力全開マックス・パワー』ですが、皆さんお察しの通り魔法少女ものです!

櫻井 いや、タイトルの雰囲気で流されそうになりましたが、よく見ると色々おかしいですね!?

ふつう魔法少女って、変身したらかわいくなるじゃないですか!? この作品では、筋骨隆々のマッチョになります!!

岡村 そうきたか。似ているかわからないけど、『魔法少女 俺』っていう漫画があったよね。

櫻井 変身すると男の子になっちゃうやつですね。

こちらは女の子のままムキムキになります。

丸茂 魔法少女(物理)なわけですね

心意気やよし! と言いたいところなのですが、この作品はタイトル以上のことが起こらないんですよね。かわいい魔法少女vs.マッチョ魔法少女という展開になったりしますが、基本的に全部腕力で解決します。Testosteroneさんの筋トレ精神論のような説得力はないし、『キン肉マン』みたいに勢いで押しきるテクニックもないので、さすがにもうちょっとひねりがほしかったですね

平林 説得力云々は、現実の筋トレと「魔法少女になれば筋肉が得られる」っていう設定が隔絶しているせいじゃない? 筋トレでついた筋肉は毎日の努力の結晶だけど、魔法で筋肉がつくなら努力なんか必要ないからね。

その通りなんです! 魔法なしで雄々しく美しい肉体を手に入れるために筋トレはじめます。トレーニーの爆誕です。

平林 でもそれじゃあ魔法少女の意味がなくならない?

最終的には、魔法でなく己の力で成功を勝ち取るという物語なんでしょうけど、ゴールまでの行程がシンプルすぎましたね。マッスル・リベンジお願いします!

新人賞に無難さはいらない!

平林 櫻井さんが推した『黒の侯弟 白銀の祈り手』だけどさ、正直つまんなかった。

櫻井 ほんとすみません! 確かに、今回こんなに豊作だとわかっていたら、あえて推薦する必要はなかったかもしれません。でも、言わせてください! 私はこの作品が好きなんです!

太田 ほう。というと?

櫻井 ストーリーは、男の子2人が主人公の剣と魔法の王道ファンタジーです。幼い頃に出会って兄弟同然に育った2人が、政治的な思惑のために家を離れなければならなくなり他国に逃亡するんですが、国同士の争いに巻き込まれていくなかで、徐々に過去の秘密が明らかになっていく戦記ものでもあります。私が、他と比べてこの作品をいいなと思った理由はただひとつ、ヒロインがいないこと!

一同 ん!?

櫻井 まず断っておきますが、これはBL作品ではありません。しかし、兄弟のように育った男の子同士の関係の変化だったり、そこに深く関わってくる兄との確執やかいこうが、とても丁寧に描かれています! これはまさに、星海社では珍しい女の子向けファンタジー作品なんですよ!

太田 なんか熱くなっているけど、櫻井さんとの関係が最悪と言われている同期の丸茂さんはどう思いました?

一同 (すごいフリだ

丸茂 そうですねぇ、ストーリーが王道というのは聞こえがいいですが、要するに捻りがないということですよね。僕のBLセンサーには、いまいちひっかからなかったです。

岡村 丸茂くんて、BLセンサー持ってるんだ(笑)。

櫻井 BLではないけれどBL的にも読める作品は、むしろストーリーは王道のほうがいいんですよ!

丸茂 うーん、どのへんに萌えるのか僕にはわからなかったんですけど、櫻井さんはいったいどこがよかったんですか?

太田 煽るねえ(笑)。

櫻井 これは関係性に萌えるんですよ! 兄弟同然に育ったとはいえ、血の繋がっていない同い年の少年が、どちらが上なのかという子供じみた対抗心からはじまって、2人で色々な苦難を乗り越えたり、過去の秘密を知ったりするうちに、精神的に成長していく。年の離れた兄も、いい仕事をしていますよね。2人が絆を深めていくのがとにかく尊いんです!

丸茂 その絆を深める過程が、テンプレに感じましたけどね。編集部の皆さんはご存じですが、僕には弟が1人いまして、兄弟間の感情の機微についてはそれなりに理解があると思っているんですけど、この作品には僕が感じてきたこと以上のものがなくて

櫻井

太田 櫻井、言いたいことがあるなら言えよ! 「お前らみたいな不細工な兄弟の話なんかしてねーんだよ!」って、顔に出てるぞ!

丸茂 僕は不細工でも、弟はわりとイケメンですから! かわいい感じの!

一同 (苦笑)

櫻井 BLはファンタジーですから(乾いた笑い)。

太田 石川さんもなんか言ってあげて!

石川 僕は、これはそもそも演技構成点が低く設定されている作品なので、各要素をいくら上げても65点くらいにしかならないかな、と思いましたね。

櫻井 確かに、この作品は「プロローグ」で終わってしまっている感がありますね。主人公の幼少期はもっとコンパクトでいいので、この先のドラマが読みたかったです。

太田 確かに、こんなに長く書く話ではなかったかもね。あの田中芳樹さんなら、このお話をエピソードとして8行くらいで書いちゃうと思う。「ええっ! 掘り下げたらめちゃくちゃ面白そうなのに!」っていう物語をあえてさらっと終わらせて、「これよりもっと面白い話があるの!?」って読者に思わせるテクニックなんだけど。『銀河英雄伝説』の冒頭の数ページとかそんな感じだよ。

平林 うーん、いや、でもやっぱりこれは新人賞として推せる作品じゃないですよ。

太田 おお、かなり厳しいですね!?

平林 確かにこれは減点法だと悪くない作品なんだけど、逆に加点するところがないんだよ。僕らは新人賞に、既存のジャンル、既存の世界観、既存のキャラクターを無難にまとめて「まあこれなら出せるよね」っていう作品を求めているわけじゃないでしょ。

太田 うーん。しびれるなあ。さすがは平林さんです!! 確かに新人賞というからには、僕たちがまだ見たことのない作品、新しい才能と出会いたいよね。

櫻井 返す言葉もありません。でも、筆力はある方なので、私はこの方の次の作品を待っています!

期待の原石、続々現る

太田 次は平林さんが推薦した『さよならのあとに、君は』ですね。

平林 これは、青少年たちが記憶がないまま田舎の一軒家で目覚めて共同生活をするところからはじまって、「なぜ記憶がないのか?」「なぜみんなここにいるのか?」という謎を解いていく話です。結論を言うと、それぞれ事情があってグループホームに預けられていた人たちなんだけど、そのグループホームの生活を破壊しようとする奴がいたから殺してしまって、その記憶を抹消するために全員で薬を飲んだってことなんです。

丸茂 記憶を消す薬って、かなり都合がいいですけどね。

平林 まあそうだね。それにこの結末自体は読んでいると容易に想像ができる。でもこの作品のキモはそこじゃなくて、「なぜ自分たちは過去のことを忘れているのか」「1人だけ記憶がある奴がいるようだけど、それは誰なのか」というのを当てていく過程にあると思うんだよね。その過程こそがキモになるべき作品なので、そこに分量やコストをかけてほしい。それなのに、後半のその部分を、結構サクサクと進めてしまったせいで、全体が小粒になってしまったのが残念。登場人物たちが疑心暗鬼になっているところをもっとしっかり書いてほしかったです。

石川 乾いた感じの文章はとても好きです。でも、全体的にもうちょっとかなという印象でした。後半も、最初に期待したほどは盛り上がらなかったですね。おそらく、この人はマイナス方向に読者を揺さぶることができる書き手だと思うんですけど、もっと物議を醸すくらいに振り切れるといいですね。

平林 登場人物が多すぎて、処理しきれていないのも気になったかな。この人の今の実力なら、もう1〜2人減らした方がよかったと思う。

太田 キャラクターを増やせば増やすほど、相当な力量が必要になってきますからね。

平林 今回僕が読んだ中では、これが一番レベルが高かったです。とはいえ、まだ色々なパラメータが不足しているので、たくさん書いて、どんどんレベル上げしてほしいですね。伸び代もあると思います。

石川 今回が初投稿ですし、まだ若い方なので、期待できそうですね。

平林 ぜひ次回作もうちに送ってきてください!

これは読者を選ぶ小説だ

岡村 次は僕の担当の『青春ブラックサワー』です。高校が舞台なんですけど、「友達いない同盟」というものに入っている主人公たちの話です。「友達いない同盟」っていうのは、友達がいなくても不自由なく学校生活を送れるようにつくられたグループです。例えば体育で「2人組つくって」って言われたときにハブられると悲しいじゃないですか。友達じゃないけど、そういうときはお互い助け合おうねっていう同盟なんです。でもある日、「友達いない同盟」の女の子のひとりにつきまとっていた男子生徒が、屋上で死体として発見されてしまい、その謎を主人公が解き明かしていくというストーリーです。

丸茂 ミステリ作品なんですよね。ゼロ年代の空気を感じさせるような。

岡村 そうだね。でも僕がこれを推したのは、出てくるキャラが好きだからです。出てくるトリックが秀逸かどうかは、正直よくわからないんですけど、読んだ限り矛盾はしていないと思います。

丸茂 トリックはちゃんと成立していると思いますよ。ツッコまれそうなところもありますが。

岡村 その可能性はある。でも、小説に求めるものは人それぞれだと思っていて、僕の場合は、たとえ芸術的なトリックが出てきても、キャラクターが記憶に残らない小説は、次の作品を読みたいとは思わないんですよ。この作品はキャラがいいし、「友達いない同盟」という設定もこれまでありそうでなかったので、うまく使えばもっと面白くなるんじゃないかと思いました。

私は、主人公が頑なに友達を作りたくないって固執していることにのれませんでした。「友達いない同盟」のメンバーで話してる時はあいあいとしてるのに、同盟内の数人が放課後にご飯食べに行ったら協定違反だ!!って怒ったり。そこまでして友達を作っちゃいけない理由は何なのか? プライドやトラウマなのかもしれないですけど、理由がはっきり書かれてない。友達になる、ならないのボーダーというか、なにを理想としているのかがよくわからなかったです。

岡村 確かに、それに対して説得力のある説明はなかったかも。

「主人公の単なるワガママでは?」って思えてしまって、こうびしっと主人公のポリシーに憧れる! みたいなカリスマ性がない。

平林 僕は文体が苦手だったな。あと、キャラクターのテンプレ感というか、既視感も気になった。

岡村 確かに、今まで読んで好きだった小説のキャラクターに似ているキャラが多いのは否定できませんね。すごく雑に言っちゃうと、今のままではこれは「(西尾維新+米澤穂信)÷3」って感じの作品なんですよね。「÷2」じゃない。

平林 こういう作風の場合、キャラが似るのは避けられないよね。だけど、それでも文章を読ませる工夫とか、せめて見たことがないキャラを1人くらい入れてほしいと思う。

石川 僕がちょっとキツかったのは、彼らの感じている学校生活とか友達とかのリアリティが、高校生にしては幼すぎるところです。これが自意識形成途中の中学生という設定だったら、まだ読めたかもしれません。

物語の中で、友達がいないことで苦労したりいじめられているような描写はなかったですよね? この同盟が必要な理由がますますわからない。

丸茂 僕は、そのあたりの鷹揚さは気にせず読めました。主人公は教室内の関係に組み込まれたくない、だから浮いてる、それだけです。だからこそ、同盟のルールを頑なに守ろうとする動機がわからなかったですが。

石川 ミステリとして気になるところもありますね。一応警察が捜査しているってことになってるじゃないですか。だとしたら、屋上に出入りしている人間くらいはわかるんじゃないかと思うんですよね。

平林 それはそうだ。いや、もしかしたら神奈川県警の管轄なのかもしれないよ!?

一同 (笑)

石川 みんなが少しずつ思惑をもって行動していたから、結果として真相になかなかたどり着けないっていう構造は面白いと思うんですよね。だからこそ、もっと細部を作り込んでほしかったです。これ、現状だとほんのちょっとのことで破綻しそうなんですよね。例えば指紋の問題とか、ロッカーは絶対に内側から開けられないのかとか

平林 僕も高校時代に友達をロッカーに閉じ込めたりしてたけど、そんなことはなかったと思うんだよね。

平林さん、今のは自分はいじめていた側ですというアピールですか!?

一同 (笑)

私は、友達になることに対する葛藤レベルが低過ぎると思ったんですよね。「そんならもういっそ友達になったらええやん!」と思うんですけど。

太田 あのね、この話はね、プライドの高い人ほど理解できる話なんですよ。入ろうと思えば上位に入れなくもないスクールカーストに組み込まれること自体を頑なに拒否して、「お前達と馴れ合うくらいなら死んだほうがましだ!」っていう歪んだ思考と行動回路を思春期に経験したことがあると、この小説をリアルに感じられるんです!

櫻井 うーん、私、あんまりわかんないです

太田 えええええええ!!?? 櫻井さん東大なのに!?

櫻井 (東大は関係ないのでは?)スクールカーストは中高時代にはあったと思うんですけど、当時の感情とかは、全然覚えてませんね

太田 そんなわけないでしょ!?

岡村 まあまあ。でも、間違いなくこの作品は太田さんの影響を受けてますね。

太田 ええ!? 僕は小説書いてませんけど!?

岡村 それはそうなんですけどね、例えば西尾維新さんの『化物語』のくんなんかモロに「友達はいらない、人間強度が下がるから」とか言ってるじゃないですか。

太田 ああ、そういえば確かにそういう話ばっかりしてたなあ(遠い目)。とにかく、そういう意味でこれは読者を選びに選ぶタイプの小説なんです! 選ばれた人にとってはとても良い小説なんだよ。そして僕はいいと思ったんだけど、今までのみんなの意見を聞く限り、この人は次回作を待ったほうがいいのかもしれない。

岡村 スクールカーストっていう考え方はもう古いかもしれないですけど、それでも一周まわってまたこういう作品が求められる可能性はありますよね。作者もまだ若いので、これからもっと化けるかもしれません。僕はこの人が書くキャラクターに魅力を感じるし、好きなんですけど、だからこそこれをデビュー作にするのはもったいないと思うんですよね。

太田 そうそう、うちからデビューしてもらうのはまったくやぶさかではありません! むしろしていただきたい。課題はあるけれどミステリとしての水準はクリアしているし、センスもたいへんにあると思います。でも、この人には、もっと上へ行ってほしい!

岡村 もっと話題になるような、劇的な作品で世に送り出したい! 次回作、期待しています!

異世界でおっパブはじめました!!

太田 次の『PUFF -世界最古の職業を異世界で-』は石川さんの担当ですね。

石川 はい。ではまず、作者の略歴から紹介しますね。

平成◯◯年 童貞のまま友人と行ったセクキャバで、嬢となぜか付き合うことになる。彼女のメール営業等を手伝ううちに、これまたなぜか店長に気に入られる。店員にならないか誘われるが断る。半年後、嬢とは別れる。

一同 おおお

櫻井 いい経歴ですね。作品の評価には直接関係ありませんが、プロフィールの書き方でもセンスの良し悪しはわかりますよね。作家に自己プロデュース能力は不可欠ですし。

石川 では小説のあらすじにいきますね。主人公は歌舞伎町でセクキャバのキャッチをしている25歳の男性。とあるいさかいに巻き込まれた結果、異世界に飛ばされてしまいます。そこで助けられた2人の女性に恩返しをするためにせめて金を稼ごうとするんですけど、自分にできることは「呼び込み」しかなかった。しかも夜のお店の呼び込みです。だから、いわゆる「おっパブ」を異世界ではじめることになります。

平林 正直、僕は今回、これが一番よかった!

岡村 作者の方はもともと頭のいい人なんだと思うけど、作品の希少性と相まって、これを出版できる版元が限られているなか、こうしてうちに投稿してきたのは本当にセンスがあると思う。

石川 風俗経営って扱いが難しい題材なんですけど、主人公に対して嫌悪感よりも好感のほうが勝ったのは、作者にキャラ作りの力があるからだと思うんですよね。

平林 経営者として、金を稼いでくれる存在であるキャストとどういう距離を保つべきかとか、きちんと考えているのが良かったね。良いお店であろうとしているところに好感が持てる。

石川 それに加えて、物語の展開も押さえるべきところを押さえていて、一作としてまとまっているのに、続編の可能性もきちんと残しています。

平林 続編があるとしたら、この世界の産業構造なんかを、もっとしっかり考えたほうがいいかもね。

岡村 ディレクションはかなり重要ですね。編集者によってどこに力を入れるかが変わってくるところだと思います。僕だったら、至道流星さんの作品とかが好きだから、どうしたら儲かるか、儲からないかってことを、もっと徹底的に突き詰めて下さいっていうかな。でも、それだと主人公の設定を少し変える必要があるかもしれない。

櫻井 「呼び込みが上手い」っていうところに焦点を当てたら、話術の話になるかもしれないですね。

これ、イラストはどうするんですか? やっぱりエロ路線?

岡村 どうかなあ? もっと硬派でもいいんじゃない?

平林 このあたりも、編集の腕の見せ所だね。

太田 皆さん! もうこれを出版する話になっちゃってますけど、まあいいでしょう! これは天職を見つけた男の話ですね。編集者達がこれだけ矢継ぎ早にアイディアを出せる作品はそれだけで貴重です。これは満場一致で受賞ですね!!

一同 おめでとうございます!!

伝説の奇書、ついに完結!

太田 いよいよ真打ち登場です。林さん担当の『花園』!!

近年まれに見る「迷作」が、ついに完結しました! 最初に2016年夏の新人賞編集者座談会で取り上げてから、早1年半、その間にページ数も倍以上になりました。

丸茂 確かに長かったけど、読む手が止まらなかったです!

せやろ、せやろ〜! ストーリーは、ある日突然、宇宙人が「お前ら、ラグビーやろうぜ!」と地球にやってくるところから始まります。地球代表として日本が対戦相手に選ばれるんですけど、宇宙人から「細かいとこはお前んとこのルールでOK! 場所も花園でいいぜ! ただし、お前らが負けたらビームで完膚なきまでに日本を消滅させる!」と言われ、この絶対に負けられない戦いに挑むため、ラグビー日本代表チームが組織されます。

太田 説明が軽いな。いやしかしそうとしか言いようがない話なんだけど!

岡村 いやいやいや、テレビ朝日がサッカー日本代表によく言う「絶対に負けられない戦い」より遥かに重いですよ!

櫻井 負けたら来年がんばろう、とかありえないですからね! 国土をかけてますから!

で、最後まで読んだ感想なんですが、もう、めちゃくちゃ面白い! 面白いとしか言いようがない!! 初めて読んだときにも「何じゃこりゃ!?」と思ったんですけど、それがどんどん加速して、最後まで止まらない。この座談会の記事を読んでいる皆さん、先に言っておきますが、今のあなた達の予想は何ひとつ当たりません!!

太田 ていうかこんな展開、誰にも予想できるか!(怒)

平林 ネタバレにならないネタバレをすると、思っていたより試合のシーンが長い(笑)。

ラグビー小説ですからね! でも、ラグビーのルールが全くわからなくても読めるっていうのは、この作品の良い点のひとつです。

丸茂 ふつうは、こんなにトンデモな◯◯が出てきたりしたら、興ざめするはずなんですけど、全然そんなことないですよね。

石川 僕は◯◯な◯◯が出てきたとき、ちょっとうるっとさえしましたよ

一同 わかるーーー!!

岡村 もはやいわゆるリアリティラインなんてものはどっかいっちゃってるんだけど、とにかく読んでいて続きが気になる。そう思わせてしまう構成力がすごい。

太田 これは本当に奇書です。こんな変な小説はそう滅多には読めないでしょう。めちゃくちゃ叩かれると思う。

平林 ラグビー小説っていうよりSFだよ。ファーストコンタクトものであり、『日本沈没』的なパニック小説でもある。

スポーツものとしての熱い友情もありますよ!

石川 ◯◯をボールにのせて◯◯するところが素晴らしい。

櫻井 そこでラグビーという題材が活きてきて、感動すら覚えました!

敵の宇宙人がやることもむちゃくちゃなんですけど、もうそれさえイイ!!

太田 いやアレは許しちゃダメだろ!?

ラグビーのルールは守ってるからOKです!!

石川 とにかく飛び道具だらけのB級作品ですけど、途中からなぜか、すごく上等なものを楽しんでいるのではと思い始めてしまいました。

全体は長いけど、短いスパンでちゃんと続きを読みたくなる要素が入っているんですよね。アニメでたとえるなら、毎回続きが気になる終わりになってて、はやく来週も見たいな〜ってわくわくするやつです。

石川 アイディアの断片をちぎっては投げ、ちぎっては投げを繰り返していますよね。でもそれで破綻していないところがすごいです。

太田 でも、果たしてこれを「小説」と呼んでいいのか、僕は疑問だよ。以前の座談会でも言ったけど、この作品は「小説」ではなくて「読み物」にすぎないんじゃないかと思うわけ。「小説」にはテーマが必要なんだけど、この作品のテーマって何よ!?

石川 「交流」?

岡村 「種をかけた戦い」じゃないですか?

「ひとつの目的に向かって、多種多様な人間がみんなでがんばる」っていうのもありますよ。

太田 結構あるじゃねーか。いや、僕はやっぱりちょっと認めたくないぞ。

でも、こんな作品もう二度と現れないですよ!! 見過ごすのはもったいないです!!

太田 そうそう現れたら困るよ!! わかったよ僕、本当は受賞させたくなかったんだけどみんながそんなに言うなら受賞です!! ただし、どんなふうに売り出すかは編集部が一丸となってしっかり考えましょう!!

一同 はい! おめでとうございます!!

W受賞が決まって

岡村 久々に受賞作がでましたね。しかもW受賞。今からこの2作品を世に送り出すのが楽しみです。

太田 個人的には色々思うところがありますが、こういう『花園』のような作品も受け入れるチャレンジングな姿勢は星海社として常に持っていたいと思います!

丸茂 今回は惜しくも受賞を逃したけれど、期待できる作家さんがたくさんいましたね。

平林 『PUFF -世界最古の職業を異世界で-』の人も含めて、初投稿で見所のある人が何人もいたのは嬉しいね。

櫻井 新しい風が吹いてきている気がします! こんなにわくわくした座談会は初めてです!!

石川 これからもこういう出会いが続くといいですね。

太田 そのためには、まず僕たち編集部が日々のけんさんを怠ってはいけないんです。まずは、今回の受賞作の担当である林さんと石川さん、作家と二人三脚で、しっかりと作品を送り出してあげてください! では、気を緩めずに次もがんばりましょう! お疲れ様でした!

一同 お疲れ様でした!!

一行コメント

『ダウンタウンに勝ちたくて』

まさに「笑い」の解説になってしまっているのが残念です。物語のなかに自然な「おかしみ」が出せたら、良い青春ストーリーになったのではないでしょうか。(櫻井)

『白銀のドグマ』

説明の仕方をはじめ、全体的に文章がこなれておらず、誤字や副詞のミスが散見されるのも気になりました。(石川)

『北見工業大学ぷよぷよ研究会』

本題に入るまでが長く、キャラの魅力が出るまでに時間がかかっています。タイトルのインパクトはありますが、もう少し捻りが必要かと思います。(櫻井)

『アコール・アコルデ・アコルダン』

現実世界を舞台に追究できる題材だったかと。冒頭の人形=女性としての扱いを嫌悪する語り手の感覚は重要な部分かと思いますが、それが「剣の祝福から遠ざかる呪」という卑近ではない設定から説明されており、異世界を舞台にすることでおもしろみが演出できているようには感じませんでした。(丸茂)

『イップス』

自分が良く知っている業界や、書きやすい題材を選ぶのはいいのですが、ストーリーがドキュメンタリー調になってしまうというのが課題ではないでしょうか。予備知識が全くない読者に向けてエンタメ的な面白さを伝えるためには、誇張表現なども必要だと思います。(櫻井)

『煉獄のファムファタール』

内容に関しては読んでいてあまり続きが気になりませんでした。スッキリとしていてスラスラ読みやすい文体は好きです。(岡村)

『涼夏のいない夏』

設定をもう少し詰めて、なおかつそれをうまく読者にプレゼンする文章力が必要だと思います。(平林)

『浄罪蟲』

続きを読ませようとするグロ描写の「引き」や謎の提示はよいものの、振り返れば凡庸な人間ドラマに留まっていた印象です。蟲の設定を突き詰めればSF的な広がりを持たせられたのではと思います。(丸茂)

『ナナカミ』

改稿済みとのことですが、応募規定に従って、商業未発表作品をお送りくださるようお願いします。本編の長さに比して登場人物が多く、七福神の設定も消化しきれていないように思いました。設定資料がなくても成立する作品であってほしいです。(櫻井)

『異世界転生人生ゲームオンライン』

設定は壮大で、かなりおもしろいと思いました。ただ前半と後半で落差がありすぎて、ひとつの物語としては違和感を覚えてしまい、最後までは楽しめませんでした。 (岡村)

『その日、僕は妖狐に拾われた』

あらすじは、今回最もワクワクして読ませていただきました。一方で物語に対して筆力・テンポが追いついていない印象を受けました。10年後から物語をスタートさせてみては?(林)

『俺と言う名の箱』

あと何歩か頑張れば『世にも奇妙な物語』風の佳作になる可能性はあったと思います。が、「連作短編集」と言いつつエピソードが繋がって大きな物語になるわけでもないので、現状各話の薄さがそのまま全体の薄さになってしまっています。作品形式から要再考です。(石川)

『輪廻できない日の夜に』

非現実的なキャラクター、設定が都合良く使われすぎていて、ストーリーにのめりこむことができませんでした。(丸茂)

『植物少女』

前作に続き、花粉への強い思いが感じられてよかったです。執着があるのはいいことです。ただ内容的には、能力バトルものと聞いて想像する範疇を出ていないように思いました。(石川)

『史上最もシビアすぎるお笑い番組「戦え!ネ申勇者」』

なにからなにまで、本当にしんどい作品でした。(石川)

『機械仕掛けの探偵』

書くべき描写と省くべき描写の取捨選択ができていない印象を受けました。(石川)

『一兆円の埋蔵金』

坦々と話が進み、そのまま特に盛り上がりも感じず終わった、という印象でした。現実の歴史をベースにした架空の世界設定も、何を狙ってあえてそうしたのかがよくわからなかったです。(岡村)

『「ファイナンシャル・ドリーム」へようこそ!~ここは坂上町だぜ』

キャラクターのテンションの高さと、作品全体の軽薄なノリは好みが分かれると思います。僕には合いませんでした。(岡村)

『ヒーロー・ショーの果てに!』

僕自身が虫を食べる県の出身なので、ヒロインには親近感を覚えるものの、意外性を感じるまでに至りませんでした。村起こしという題材は可能性を感じますが、方法として選んだヒーロー・ショーがエンタメとしててきに地味、やや刺激不足だったかと。(丸茂)

『解放と束縛のSpectrum』

読みやすい文体で、設定もよく考えられていると思います。ただ、予想の範囲内で物語が完結するので、続きが気になるという気持ちにはなりませんでした。(林)

『未来を拾った日』

全体的に既視感が漂っていて、これといった特徴に乏しいという印象でした。なにか一箇所くらいはひねらないと、面白くなりようがないです。(平林)

『嘘憑き』

悪くはないのですが、これも加点方式だと点が伸びづらいタイプの作品だと思いました。(平林)

『ホージャの旅』

読んでいて、あえて今この時代を描くおもしろさ、というのは伝わってきませんでした。(岡村)

『夢くじらと果ての海』

ちょっとオフビートすぎて退屈でした。やりたいことはわからなくはないのですが、もう少し読み手のことを考えてほしいです。(平林)

『あなたがいれば』

すでにキャリアがおありなだけあって、よくまとまっていた佳品だったのですが、モチーフやネーミングなど、「現在」のテンションを感じられる作品ではないように思いました。(石川)

『mind of sinner』

異能、宇宙エレベーター、ウィルス、ぞれぞれに設定のつめが甘く、要素を持て余している印象を受けました。ただ、首輪爆弾の展開以降はぐんと面白くなるので、前半をもっと短くするか、設定をもっとシンプルにしてみては。(林)

『ヴェガの物語』

重厚な物語を目指す意思は感じるものの、描写が鈍重で瑞々しさが欠けてます。雰囲気へのこだわりが、エンタメとしての読みやすさを損なっているのでは。そしてキャラクターのネーミングセンスが悪い! おもしろい素材に手を伸ばしていらっしゃると思いましたが、それを使いこなせていないと感じました。(丸茂)

『ノン・フィクション』

古風な台詞回しは、軽妙というよりは回りくどいと感じました。ギャグもやや滑っている印象。メタ要素の導入は評価のハードルを上げるので、オススメしません。(丸茂)

『赤い音色のリジェクション』

キャラクターにもストーリーにも既視感があり、のめりこむような新しさがなかったと思います。女装に関する葛藤などは、キャラの核になると思うので、はじめのほうでもっと書きこみが必要かと思います。(櫻井)

『俤に立つ』

文体や時代背景等の表現が専門的すぎて、この小説をエンターテインメントとして楽しめる人はごく少数ではないかと思いました。歴史物を書く場合、その時代のことを何も知らない人でも読めるように工夫していただきたいです。(櫻井)

『ノーキング!』

キャラをコミカルに描く意識と、ミステリを描く意識が噛み合っていないと言いますか、謎解きの過程がキャラを魅せるためだけに用意されているようで、シリアスな場面が噓っぽく感じてしまいます。演出される感動の安っぽさが、それに拍車をかけているかと。あなたが切実に描けるテーマはなにか、ミステリというジャンルを選ぶならそれに相応しい謎はなにか、模索してみてください。(丸茂)

『いま、その翼を広げて』

今回の僕の担当では一番おもしろかったです。とくにキャラ描写が個性的で、会話も軽妙(寒いところもありますが)、文章もなかなか端正。そこで溜めたプラスを超マイナスにぶっちぎる「長さ」さえなければなぁと悔やまれます。感情移入を誘われるシーンもあるのですが、物語全体としては冗長で肩すかしでした。詰め込み過ぎず、次は1/3の長さにまとめてください。(丸茂)

『記者とメイド』

人類が宇宙にまで進出している世界なのに、生活レベルが低すぎませんか?『スター・ウォーズ』的なラインを目指しているのだと思いますがやや古風すぎる印象を受けました。(林)

『Flowers』

終始置いてけぼりな印象でした。表現したいものがあること、独自の文体をつくろうとしていることはわかるのですが、かといって、わけがわからなくても惹かれてしまうほど強烈な魅力というわけでもないので。もう少し「エンタメ」を取り入れる勇気を持てれば、その弱点も強みになりそうです。(石川)

『空の歌(スカイ・ソング)』

良く言えば、順序よく丁寧に描かれたファンタジー。悪く言えば、予定調和。台詞でも設定でも展開でもなんでもいいので、小さくまとまった王道を超えた、読んだ後に心に残る尖った何かがほしかったです。(岡村)

『アンドロイドは魔法使いと夢を見るか?』

作品としてのまとまりはいいものの、設定、キャラクター、物語展開等々、素材すべてが既視感があるもので構築されていた印象です。意外性を演出するには、なにか突出した長所をつくる必要があると思います。(丸茂)

『ペルソナ オブ ライズ』

萌え要素のパッチワークという印象です。設定やキャラも、どこかで読んだことのあるものの寄せ集めで、この作品の一番の売りがどこなのかがわかりませんでした。(櫻井)

『羽子の喝采』

ファンタジー的な世界観と、素朴で落ち着きを備えた文体。そのバランスはいいのですがすべてが素朴すぎたかなと。キャッチーな推せるポイントがほしいところです。(丸茂)

『波濤に踊れ』

盛り上がりに欠ける構成でした。どこを目指して、何をする話なのか、を冒頭に提示してほしいと思いました。(櫻井)

『潜在人間(ジャックマン)』

作中で出だしが一番読みづらい、というのは明らかにマイナスです。あと終盤のこちらへのメッセージのようなメタ展開は、読んでいて興ざめするので止めたほうが良いです。(岡村)