2013年秋 星海社FICTIONS新人賞 編集者座談会

2013年9月4日@星海社会議室

STOP! 賞金総取り! 4人目の受賞者が登場だ!

史上3作目の星海社FICTIONS新人賞受賞作品『ロジック・ロック・フェスティバル 〜Logic Lock Festival〜 探偵殺しのパラドックス』ついに発売!!

太田 座談会の前に大発表です! 2013年夏の星海社FICTIONS新人賞受賞者、「中村なかむらあき」さんがついに来月11月に『ロジック・ロック・フェスティバル 〜Logic Lock Festival〜 探偵殺しのパラドックス』でデビューするぜ!! よろしくな!

一同 あきさん、おめでとうございます!

太田 星海社ウェブサイト『最前線』で冒頭パートから順次公開を開始しておりますので読者の皆さん、ぜひとも読んでください。僕がミステリ編集者として、「まだあった〝新本格〟推理小説!」とわくわくしながら編集した本格学園青春ミステリです。そしてこの作品はイラストを何とCLAMPさんに描いていただきました! この『ロジック・ロック・フェスティバル』に僕がどれくらい〝本気〟か、わかっていただけるのではないでしょうか?

山中 新人のデビューとしてはまさに破格の待遇たいぐうですね。

今井 イラストレーターがCLAMPさんだってわかったとき、あきさん驚愕きょうがくしたんじゃないですか?

太田 うーん、変なプレッシャーになっても困るから、あきさんにはあえてギリギリまで誰がイラストを担当するのかを黙っていたんですよ。で、ある晩、彼を突然編集部に呼び出して「これがイラスト」ってラフを何も言わずに渡したんだけどあきさん、イラストを見た瞬間からガチで震えてるんだよね。手が小刻こきざみに震えているの。

これって人の悪い太田さんが内緒にしているわけだから、まあ当然の話ではあるんですけど、はじめはそのイラストがCLAMPさんのイラストだって認識できなかったんですよね。でも、ラフを一見したあきさんは「僕の頭のなかにあったぼんやりしたイメージが、このイラストで一瞬でシャープになりました」っておっしゃってくださって。とにかくすごいイラストだということを全身で感じているという佇まいでしたね。

太田 そう! 美しかった。僕、その台詞せりふを聞いたとき「中村あき、センスあるわー」って思ったね! その後、「そのイラストのラフ、描いたのはあのCLAMPさんだよ」ってばらしたら、震えを通り越して固まっちゃったけどね(笑)。

山中 人は圧倒的に想像を超えた現実を受け入れられないんですね。それにしても太田さんは本当に性格が悪いですよ。

太田 (山中のdisを例によって当然のごとく耳に入れず)いやー、CLAMPの大川おおかわさんは大のミステリマニアで、いつか本格ミステリを一緒に作りましょうね、って話を以前からしていたんだよね。で、今回、この『ロジック・ロック・フェスティバル』という作品に編集者として絶対の自信があったからこそ折り入ってCLAMPさんにイラストをお願いしたわけなんだけど、こんな前代未聞ぜんだいみもんで無茶な話を受けてくれたCLAMPさんって超かっこいいよね! だって、相手は新人なんだぜ!?

平林 ありえない話ですよねー。

太田 まさに「さすがCLAMP、おれたちにできない事を平然とやってのけるッ! そこにシビれる! あこがれるゥ!」だよなあ。本当に心からあこがれます。

岡村 中村さんはもう絶対に中途半端な原稿は上げられないね。

太田 ですね。というわけでぜひみなさん、『ロジック・ロック・フェスティバル』を読んでください。綾辻行人あやつじゆきとさんや法月綸太郎のりづきりんたろうさん、有栖川有栖ありすがわありすさんたち、かつての「新本格」推理小説ムーブメントは終わっていなかった、それが見事に証明される一作です。学園祭の密室の妙に酔いな

一同 よろしくお願いします!

太田 さて、ついに今年最後の座談会です。つまり今回の座談会には、多額の賞金の行方ゆくえがかかっているということです。

星海社FICTIONS新人賞は、レーベルの売り上げの1%を賞金額に充てています。その年で受賞した人の人数で賞金総額を割るので、今日の座談会で新たに新人賞が出なければ、中村あきさんの総取そうどりとなりますね。

今井 そういう意味では、あきさんが今一番ドキドキしてるはず(笑)。

太田 総取りだったら総額で400万近くになるんじゃないかな?

山中 キャリーオーバーで積みあがってるんでしたっけ?

岡村 400万かうらやましくてムカつきますね、普通に(真顔)。

えー、岡村さん怖いです。さすがは六本木仕込みですね。ちなみに前回の座談会で、受賞候補者が何人かいらっしゃいましたけど、その後はいかがでしょうか?

太田 そうだよ! そのあたりどうなったの? 緑萌もえぎさんがけっこう預かってたはずだけど。

平林 すみません! まだ原稿を直しているところです

山中 それが間に合えばよかったんでしょうけどね。これはあきさんの総取りが見えてきたのか

太田 中村あき、すごいよね。「超高校級ちょうこうこうきゅう幸運こううん」みたいな感じじゃん? デビュー作にCLAMPさんのイラストは付くわ、400万はもらえるわ

平林 猛然もうぜんと)いやいやいやいや、今回の投稿作って、決して不作ってわけじゃないし、もしかしたらもう1人くらい受賞者が出る可能性は十分にありますよ。っていうか僕にはぜひともしたい原稿があるんです。

太田 おっ、そうなの? 急にこの座談会が楽しみになってきた!

いざ、座談会! でもその前に

太田 さて、(悲しい顔をして)座談会に入る前に先生からひとつ悲しいお知らせがあります。

平林 シニアエディターの柿内かきうちさんが、星海社新書の編集長を卒業することになりました。

太田 まあ、編集者としては留年なんですけどね(笑)。これからの柿内さんは「フェロー」という肩書きで星海社新書を支えてくれることになっています。柿内さんの新しい挑戦、応援していきましょう。でもね、星海社にはまだまだヤバイことがあるでしょう?

今井 え? 何ですか?

太田 (激怒して)何言ってんの!? 今月末で護国寺ごこくじのマクドナルドが閉店しちゃうことだよ! これは未曾有みぞうの大問題だよ!! 国難こくなんならぬ社難しゃなんだよ!

山中 たしかにあのマックは長年、僕たちの胃袋を支えてくれてましたからね。

太田 護国寺のマックがなくなるのと、柿内さんが編集長から卒業しちゃうのと。星海社にとっては大打撃だよ。

今井 星海社を支えてきた2つのものを僕らは

山中 同時に失うことになる。

岡村 でもどちらかと言うと僕はマックのほうがダメージでかいですね。

平林 ちょっと! 柿内さんは僕の大事な釣り仲間なんだから悪く言わないでよ!

よりハイレベルな作品集結す

太田 じゃあ、いよいよ始めましょう! 今回の応募は76作品! 皆さんの話を事前に聞いていると、興味を引く作品がちょこちょこあったって感じですよね。全体的にレベルがあがってきた感じがするなあ。

今井 初投稿の人でも、全然読めない作品はだいぶ減ったんじゃないですか。

ぜひまた出して欲しいなって人はすごい増えました。

太田 いい感じだねー。よーし! 座談会、バリバリ行きましょうや!! トップバッターは『ヘリオトロープ』。担当は岡村さん。

今井 これ、岡村さんの担当作品ですけど、僕、今までの新人賞の中で一番好きな作品でした。

平林 マジで? ということは、今井くんはビッチが好きなのか! 

岡村 この作品は、文体も構成も上手くて、すごい才能あると思うんですけど、僕としてはそこまで好きな題材じゃないんですよね。

太田 わはは。岡村さんもアンチ・ビッチか! これは半分冗談だけど、岡村さんみたいなラノベ好きな人はビッチなヒロインってきっと好きじゃないよね。他人とキスしたら、もうダメなんでしょ? 戯言ざれごとだけどね(笑)。

一同 (笑)

岡村 HAHAHA。甘いですね。ビッチ呼ばわりされるサブヒロインが、人気ではメインヒロインを上回るなんて作品も普通にありますから。ビッチヒロインの前途ぜんとは明るいですよ!

太田 まあビッチヒロインの前途はいといて、これは実に読ませる作品なんですよね。舞台は新宿歌舞伎町。主人公はゴールデンがいでバイトする男子高校生。ワキをつとめるのはちょっとかげのあるバーのマスター。そして店を訪れる同級生の少女。青春ハードボイルドの典型、お手本といってもいい道具立てです。今井さんはこの作品のどういうところが良かったんですか?

今井 やるべきことを全部やってる感じがいいんですよね。ベタもあるし、主張もある。この作品って、最初っからお話の焦点がカッチリ合っていて、キャラクターが3人とも立ってるじゃないですか。小説としてはたしかによくある形だと思うんですけど、キャラの力でわかりやすくエンタメとして成立させているのが本当に素晴らしいなと思って。こんなに先が読みたいなって思って読めた作品は初めてだったんで。

岡村 そういってもらえると一行じゃなくて座談会の議題に挙げた甲斐かいがありましたね。

太田 この人は本当に筆力ひつりょくある人ですよ。今回で3回目の投稿みたいだけど、何でこれまでスルーされちゃったんだろう。前回、前々回にこの人を落とした人は猛烈もうれつに反省してください。

山中 でもこの作品、リアリティの部分で詰めが甘くないですか? たとえば登場するヤクザの言動がウソくさすぎるんですよ。あと、普通の学生が、いくら場所を知ってたからってヤクザの女のマンションにこんなにも簡単に入れるはずがないですよね。

太田 たしかに舞台の歌舞伎町も、雰囲気ふんいきで書いちゃってる感じがするよね。同じく歌舞伎町が舞台の『不夜城ふやじょう』とかに比べると、リアリティがない。

平林 そう。ゴールデン街にこんな感じの飲み屋はないでしょ! みたいな(笑)。

太田 まあはせさんは実際にゴールデン街のバーにつとめてたわけだから比べるのはちょっと可哀想かわいそうだけどね。ただし、池袋とか新宿とか、現実の土地に深く根ざしたものをやるんだったらさ、やっぱり最低限の現地取材はせなアカンで。とくにリアル路線で攻めるならなおのこと。僕と犬村小六いぬむらころくさんなんてさ、オネェ言葉の取材のためだけに新宿二丁目のゲイバーどころかゲイサウナにまで突撃取材したんだぜ? で、最終的には2人で一緒に仲良くゲイサウナのシャワーまでびたわけですよ! そういう地べたをいずるような地道な取材をこの人はちゃんとやるべきだと思いますよ。

平林 でもこの作品って、別に本になっても違和感のないクオリティですよ。

山中 僕もそう思います。だけど「違和感がない」で終わっちゃう気がする。新人らしいフレッシュさみたいなのとかないじゃないですか。「良くできてるけど、見たことある気がする」みたいな感じになっちゃう気がするんだよね。

太田 そこなんだよね。この作品は「読める」以上のなにものかにはなってるんだけど、これでデビューするにあたっての、新人ならば持っていなければならないギラッてするものがないんだよね。そして今井さん! 今井さんはこの作品が今まで読んだ中で一番よいと感じたんだったら、もっと熱くならなきゃ編集者としてダメ。俺は悲しいよと、いうわけで、筆者はぜひとも次回も応募してください!

アンチ!『風立かぜたちぬ』

太田 はい次、『銀翼のイカロス 中島飛行機物語』。

平林 これはすごいですよ! なんと、中島知久平なかじまちくへいと、その元につどった男たちの物語です。

今井 なんすかそれ?

平林 戦前、東洋一の巨大飛行機メーカーでだった中島飛行機製作所という会社がありました。その創業者が中島知久平です。でもって、この人は「俺のドリームの中の中島」ではなく、実相じっそうせまろうという意志を持っているらしい。つまり、どういうことかというと、この作品は『風立ちぬ』へのアンチテーゼなんですよ。

一同 おお!

平林 『風立ちぬ』の影響で、今、堀越次郎ほりこしじろうに注目が集まっていますが、もちろん飛行機は零戦ぜろせんだけじゃないし、技術者も堀越次郎だけじゃない。そして、製作した会社も三菱みつびしだけではないわけです。筆者は群馬出身で、郷土きょうど英雄えいゆうの話を書きたいんだっていう熱い思いが伝わってくる。巻末の参考文献リストを見ると、大変よく資料も集めているみたいだし。なによりも、このタイミングでこの作品が送られてきたっていうのは、世の中にうべきなんじゃないかっていう気がちょっとするんです。ただ大きな欠点が2つあって、まず日本語が非常に下手。グンマーはやはり日本じゃないのか!

山中 ひどい!(笑)

平林 あとは視点の移動が下手だから、それぞれのエピソードは面白くても、その時々の登場人物の気持ちに踏み込んでいけない。だから、どこまで行っても小説ではなくて史伝なんです。ノンフィクションとも言えない、この微妙な感じ。

山中 歴史小説をあんまり読まない僕ですが、この作品はかなり楽しく読めましたよ。何より技術者視点で見てて熱いなにかがあるんですよね。先の話にもあったようにちょうど『風立ちぬ』や、あと『かんこれ』なんかが流行はやってるこのタイミングで原稿が編集部に来て、歴史好きの緑萌さんが推すんだったら、もう受賞してもいいんじゃないかって思ったんですけど。

平林 そこまでか! 僕はさっき言ったような欠点がすごく大きいので、やっぱり慎重なんだけど、それでもカウンターとして、こういうものが今1冊くらい存在してもいいんじゃないかっていう気はするんだよね。『風立ちぬ』って、人殺しの兵器を軍から発注されて作ってるわけじゃん。なのにさ、「俺たちはただ美しい飛行機が作りたいだけなんだ」みたいな話にしてさ、ものすごい欺瞞ぎまんがあの映画のロジックの中にあると思うんだよね。

山中 そういう意味では、これは真逆のアプローチをとってますよね。

平林 当たり前の話なんだけど、「俺たちが作ってるのは人殺しの兵器だ」って技術者たちがちゃんと認識してるのね。だけど、国益のためには、我々が生き残るためには、性能のいい飛行機を作っていかなきゃいけないんだって、こっちのほうが明らかにロジックは通ってるんだよ。

太田 この作品と『風立ちぬ』の両方を通じて、いろいろ考えるってのはすごくいいと思いますよ。議論のポイントが多岐たきにわたってあるよね。創作に対する姿勢とかね。どっちがいい悪いじゃなくてね。ただ、受ける受けないってことに関して言うと、きっとこの作品は『風立ちぬ』のようには受けないと思う。

平林 そう、そうなんですよ!

太田 でも、受けないからこれがダメかって言うと、もちろんダメじゃないんですよ。逆に、受けているからといってそれが無条件にいいものってわけでもない。これは大事なことです。

平林 ですね。僕はこれを改稿するとしたら、飛行機に命をけた技術者のドラマにしたい。

太田 『プロジェクトX』にするってことだね。でも、ちょっと難しいんじゃないかな?

平林 そうなんですよ、流石さすがに今の水準から改稿して出版レベルの日本語に持って行くのは難しいと思うんですよ。筆者の日本語が、本当に不自由だし、小説の書き方が分かっていないので。小説としての良さがあと5点ぐらいあれば、もっと強力に推すんだけどなぁ。あ、あと最後に言っておきますけど、僕は『風立ちぬ』はめちゃくちゃ好きです。

その設定に意味はあるか?

太田 じゃあ次、『モスキート』。岡村さんだね。

岡村 みなさん、モスキートって何だと思われます?

一同 でしょ?

岡村 うんそう。特にひねりもなく蚊なんですけどこれ、蚊をモチーフにした怪物と戦う、『テラフォーマーズ』と『進撃しんげき巨人きょじん』を足したような話なんです!

太田 俄然がぜん盛り上がって)それすごいじゃん! うーん、3千万部くらい売れそう!! これはビルが建っちゃうぜ!! 今すぐ社長に電話だ!!

岡村 そう思うでしょう!? でも、その2作品の面白さが÷10000されています!!

一同 (笑)

山中 希釈きしゃくされすぎてもう何も残ってないよそれ

平林 『テラフォーマーズ』と『進撃の巨人』ってことは、何? 巨大なゴキブリが襲ってくるってこと?

岡村 いえ、でかい蚊なんです。全体の世界観は『テラフォーマーズ』で、人類の敵として、蚊の進化体「モスキル」っていう血を吸い取る人型の怪物がいるんです。主人公はその「モスキル」に両親を殺されていて、生き残った妹を助けるために「モスキル」を狩る組織に入隊するんですけどネーミングセンスが秀逸しゅういつで、この組織が「殺虫隊」。

太田 いーや、全然秀逸じゃないんだけど(泣)。

岡村 秀逸ですよ! 他にも、某商品をもじったと思われる「相須アイスジェット」さんっていうキャラクターが登場するんですよ!

アイスジェット? ああ、アースジェット!

平林 いいねぇいや、よくない!

岡村 この相須ジェットさんってのが、戦闘能力は申し分のない問題児ばかりを集めた特別班を率いる班長でまんま『進撃の巨人』のリヴァイ兵長でした(笑)。

太田 わかりやすいなオイ!

平林 (遠い目で)きっとちょっと独特なコーヒーの飲み方したりするんだね

岡村 こんな感じの話で、物語はきれいに終わっているんですけど、なぜ敵が蚊の怪物「モスキル」なのか? この設定にする意味がまったくわからない。たとえば、『テラフォーマーズ』だったら、敵がゴキブリで、だから味方は全員が昆虫こんちゅう化する手術をしたっていう設定なりロジックがあるじゃないですか。『進撃の巨人』はまだ完結してないから断言はできないけど、そもそもあの巨人のビジュアルと性質が「人類の圧倒的な脅威きょうい」っていう感じがバリバリしますよね。でもこの作品だと、これ別に蚊じゃなくて吸血鬼でも一緒じゃんっていうことになっちゃうんですよ。必然性がないのが問題だなと思いました。

太田 そう考えると、『進撃の巨人』って偉大な作品だよね。ちなみに僕、『進撃の巨人』は連載の第1回目から読んでますから! 僕、初めて読んだときから「すごい作品が始まったな」と思ってましたから!!(得意げに)

今井 その頃からこの作品は大ヒットすると思ってたんですか?

太田 まじめな話、すごい熱量があるとは思った。ただ、この作品は僕は大好きだけれど一般受けはしない作品だよなって思ったんだよね。それがまさかこんなに大ヒットするとはねー。某漫画雑誌ぼうまんがざっしの編集者が持ち込み作品としての『進撃の巨人』を落としたっていう根があるんだか葉があるんだかわからない無責任なうわさがあるけど、笑えないよね。

山中 『モスキート』もよそで出版されて、2千万部オーバーの大ヒットをすれば、「あのときの星海社の編集者は見る目なかったよね〜」って言われるんじゃない?

岡村 そうなったとしても、一片のい無し!

太田 ならばよし! 編集者は、それぞれが信念を持ってそれぞれの正しい方向に行けばいいんです! では次の作品、『狂蹴フリューゲル』、今井さん。

今井 これ、何を題材にした作品だと思います?

山中 サッカーじゃないの?

平林 サッカーだろ?

今井 (ドヤ顔で)これはね、格闘技かくとうぎの話。

平林 サッカーだろどう考えても! これってタイトル詐欺さぎでしょ。

今井 『グラップラー刃牙バキ』みたいな話なんですよ。でもこれも、刃牙の面白さが500倍くらいに希釈されてます。

山中 刃牙って濃すぎるくらい濃いから、1/500でも面白さがまだけっこう残ってるんじゃないの?

今井 うーん、格闘シーンの書き方は上手で臨場感りんじょうかんがあるんですけど、ストーリーやキャラクターが刃牙に似すぎているんです。とくに主人公がジャック・ハンマーと設定がそっくりなんですよ。本人は「偶然似た」と書いているんですが、それにしてもあまりにそっくりで。自身をモデルにして書いているらしいです。

一同 (爆笑)

太田 それはヤバイね。戦慄せんりつするね

今井 小学校の時に全国チャンピオンで、身長が伸びないことから中学では惜敗せきはいが続き、しかし勝負の世界をあきらめきれない切実せつじつな思いから、骨延長手術を受けるっていう。どこまでがホントなのか

岡村 (真顔で)僕はこの人は絶対担当したくない。怖い。

今井 そもそも、小説で本格的な格闘技を描くのは難しいと思うんです。有名な格闘技小説ってありますか?

山中 ありますよ! 金字塔きんじとう的な作品には『餓狼伝がろうでん』があるし、講談社ノベルスにもメフィスト賞の受賞作品に『フルコンタクト・ゲーム』っていうのがあってね。この作品、星海社に入る前から読んでたんだけど、太田さんが新人のときに担当した作品だって知ってすごく驚いたんだよな。マジ面白いから今井くんも読んでみたらいいと思う。

太田 僕が君たちとほぼ同じ年の頃に担当した作品ですよ。格闘ノベルの怪作なので、ぜひ読んでみてください。

山中 ほんとに面白いよ。高校の中で人殺しが発生するから(笑)。

太田 人殺しっていうか、人斬りね(笑)。あそこの異次元感がすごいんだよね。覚醒剤かくせいざい中毒の剣道部員がいきなり真剣で斬りかかってきてねえ胴体が真っ二つに。あれは何回読んでもなんでそうなるんだかまったくわけがわかんないけど引き込まれるんだよなー。まさに怪作だったね。

岡村 (ウェブで調べて)太田さんが書いた内容紹介もすごいですね。「一読必殺! ジェットコースター格闘ロマンの傑作!!」

一同 (失笑)

平林 ジェットコースター格闘ロマンそんなジャンル、存在したんだ。

太田 いやー、全然変わってないなあ、俺。まさにブレてない。ちなみにこの作品の続編で僕は林田球はやしだきゅうさんにイラストをお願いして、それがひとつのきっかけになって後の傑作、あの『ドロヘドロ』に繫がっていくんだよね。いやー、太田克史かつしは偉大だなあ。さーて、気を取り直して次にいこうか。『Theボディビルディング!!!!』。

筋肉崇拝者すうはいしゃの林としてはキターーーって感じでした。

山中 筋肉崇拝者だったのかよ!

筋肉は素晴らしいですよ! 星海社の先輩方もぜひ頑張ってトレーニングしてくださいよ!! で、どんな話かって言うとですね、主人公が筋肉好きのヒロインの気を引くために、かつて学園にあったボディビル部を復活させようと友人と共に奮闘ふんとうする物語です。このヒロインっていうのが、ゴッリゴリの岩の様なマッチョじゃないと筋肉とは認めない! ってくらいの筋肉崇拝者なんです。

岡村 (いい笑顔で)わかるわかる。美少女だけど残念な趣味を持ってる。もはや王道設定。

太田 うーん、なんというラノベ脳(笑)。

『コナン・ザ・バーバリアン』に出演していた時のシュワルツェネッガーくらいのマッチョにならないと、ヒロインは振り向いてくれないわけですよ!

山中 僕、そのたとえがわかんないんだけど。

えっ? かつて「オーストリアン・オーク」の異名いみょうを持ち、世界大会六連覇していたときのシュワちゃんですよ?

一同 知らねーよ!!

まぁ筋肉は措いといても、この作品は主人公と友人がキャッキャしながら部活を作っていく過程がすごく楽しく読めました。森見登見彦もりみとみひこさんの『新訳 走れメロス』に出てくる大学生みたいな、楽しくバカやってる姿がたいへん微笑ほほえましくてですね。部室にするために倉庫を掃除してるだけでも、いちいち大騒ぎして楽しそうなんですよ。まさにキャッキャウフフ。

岡村 部活では何してるの?

ボディビル大会に向けてひたすら筋トレばっかりしてます。でも一朝一夕いっちょういっせきでマッチョになれるわけもなく、大会で大恥おおはじかいちゃって。その悔しさをバネに、ヒロインに好かれるための手段でしかなかったボディビルに真剣に取り組むようになるという結末なのですがこのプロット、『水曜どうでしょう』の「マッスルボディは傷つかない」っていうドラマと同じなんですよ。そこがちょっとマイナスですね。

平林 ちょっとマイナスっていうかパクリなんじゃないの?

今井 今のだけ聞くと、さっきの『モスキート』と一緒で、ボディビル部じゃなくても話が成立してしまう気が。

岡村 でも、ヒロインを射止いとめるためにアクションを起こすってパターンは王道かつ流動性がすごいくと思いますね。ボディビルディングのいいところは、あれって才能とかは関係無く、鍛錬たんれんすれば絶対にある程度はマッチョになれるんだよ。努力が確実に報われるという面白さをきちんと書けてれば、読者の興味は引けると思う。

そうなんです、そこは弱いんですよ。筋トレが身になる楽しさとか、筋肉がつくことで価値観が変わるみたいな変化の描写がないんです。ラストの大会までに主人公がボディビルを通して一切成長しないのが大きな欠点だと思いました。たとえば他の運動部の人たちに「お前そんな無駄な筋肉つけても意味ねぇよ!」ってバカにされて反論するとか、心が揺れ動く描写が欲しかったですね。遊びで始めたのに、本気になっちゃったよドキドキみたいな。

岡村 さすが筋肉についてだけはするどい指摘が!

太田 いやー、美しい。林さんが編集者っぽい! これは林さんが読むってことになって、幸せな作品かもしれないね。とはいえどデビューにはいささか弱いって感じかな。うーん、残念!

「好きなだけ」から抜けだそう

太田 おっ、歴史ものだね。『森家の書』。

平林 この「森家」って森可成もりよしなりの一族のことなんですけどハイ! 森可成知ってる人!

(今井のみ手を挙げる)

太田 僕が知ってるのは当然として、3人かよ、お前ら本当に教養きょうようないな!

平林 林さん、滋賀県の大学に通ってたのに森可成を知らないとかおかしいんじゃないの?

太田 そうそう、森可成は知ってないと日本人として恥ずかしいレベルですよ。

今井 森可成は『センゴク』に登場していますよね?

平林 信長のぶなが協奏曲コンツェルト』にだって出てくるくらい有名だよ! でも、森可成のことを知りたければそっちを読みゃあいいやって話で、この作品自体は非常につまんなかった。以上。

一同 (笑)

平林 そもそも歴史ものはなんとなく僕が担当ってことになっていて、これまでにいいものも悪いものもそうそう、新人賞第一回目に、『新最上記』っていう、最上義光もがみよしあきについて段ボール1箱分書かれた原稿を読んだことがあったじゃん?

山中 あったあった。なつかしい。

平林 あれはバカみたいに長くて、その時点でダメな作品ではあるんだけど、とにかく最上義光が好きで、義光のキャラクター造形も今までとは違う解釈を見せてやる、コイツについて書き切りたいっていう筆者の熱意が伝わってきたの。でもこの作品にはそれがない。

岡村 読んでいて、「この人、すっごく資料を読み込んで勉強してる!」というのが伝わる原稿ってありますよね。

平林 この作品は「森可成が好きだー!」ってのは伝わってくるんだけど、ただそれだけなんだよね。その人をどういう風に書きたいのかとか、どこをどう書きたいのかが伝わってこなくて。自分が好きだからその世界に耽溺たんできしてるのだけが伝わってくるような感じだった。これではダメです。

エロゲと小説の意外な関係性

太田 これタイトルよくないねぇ。今井さんの『Close Cradle City』。

平林 これ、つまんないって訳ではないよね。

山中 僕最後まで読んだはずなのに、何も憶えていない

今井 あらら(笑)。念のため、あらすじもう1回説明しますね。ある閉鎖空間が舞台で、そこを管理している「エイダム」というコンピューターというか、アンドロイドみたいなやつがいるんですね。そのエイダムが、何を思ったか自分の身体からだをバラバラにして、住民にくばってしまった。配ると言っても新聞みたいに配るんじゃなくて、事故にあった人間なんかを治療するときに勝手に埋め込んじゃうんです。結果として、その人間たちは配られた部位に応じて超人的な能力を持つようになりました。未来が予測できる目だったり、驚異的な脚力を持つ足だったり。そんな主人公を含む「持ち主」たちと、エイダムがバラバラのままだと困る人たちとの闘いが描かれた作品ですね。『2999年のゲーム・キッズ』にもちょっと似ているなと思って、興味を持ちました。

平林 僕『ラーゼフォン』みたいだと思った。閉鎖された空間で主人公は暮らしていたけど、外の世界があることを知って自分の世界の小ささに気づく、みたいな。

太田 今井さんの好きな『天元突破てんげんとっぱグレンラガン』も同じ世界観だから琴線きんせんに触れたのかもね。でもこの話はだるいよ! 何か、ギュッと心を締め付ける何かがない!!

今井 そうですか単純に、今回担当した中では、一番書ける人だと思ったんです。台詞が上手だと思ったし、物語を進めたいだけじゃなくて、何か伝えたいことがあって小説を書いているなあって感じがしたんですよ。次も応募してくれたら僕が担当したいと思っているくらいです。

太田 あらそう。どうかなー。さて、次の『少女回顧録:アルカナの塔』も似たような閉鎖空間ものだったよね。こっちはどうなの?

今井 同じく舞台は閉鎖空間で、必要最低限の配給を受けながら暮らしている人たちの話ですね。そのなかのひとりに過ぎなかった主人公の少女が「外の世界はどうなってるんだろう?」と興味を持つところからはじまります。主人公は閉鎖空間の外に出る試験を無事通過し、「塔」と呼ばれる場所に行くのですが、この「塔」には人間が生活できるフロアと機械に支配されているフロアとがあり、人間が暮らしていくためには機械を倒して陣地を広げていかないといけません。主人公は、その機械と闘う才能があると見込まれてというお話です。

山中 閉鎖空間はこっちの方がよく書けてたよね。ただ、外の世界に出てからが残念な感じになってる。

平林 今井くんが挙げた2作品とか、自分がこれから挙げる作品とかもそうなんだけど、 これエロゲでも違和感のなさそうな設定だよね。

今井 ああ、確かに。ということは、自分の書きたいものをゲームじゃなくて小説にしたいって人が増えてるんですかね?

平林 どうなんだろう。かつてゲームのシナリオライターを目指した才能たちが、また小説の世界に戻ってきてくれているような気がする。まあ、単なる感覚なんだけどね。

太田 今ってすごい文化の激動期だからね。『マジンガーZ』のおたく第一世代、僕の大好きな『機動戦士きどうせんしガンダム』のおたく第二世代、平林さんたちの『新世紀しんせいきエヴァンゲリオン』の第三世代があってさ。第三世代は美少女ゲームブームでもあったから、美少女ゲームを作っているライターは当時は流行のまさに最先端で、ぶっちゃけ超モテたわけですよ。しかし今現在、つまり第四世代の中核にはニコ動があって、ボカロPが今一番かっこいい存在として扱われているわけじゃん。そうなった時におたく第三世代の人が何か使ってものを表現しようとするにあたって、ゲームじゃなくて、ある種の先祖返せんぞがえりをして、小説という普遍的ふへんてきな世界に本格的に回帰かいきしてきているのかもね。

君のオリジナリティを見せてくれ!

あ、次は私の担当ですね。『バット→バット→エンド←バット←バット』。この作品の最初の印象は、舞城王太郎まいじょうおうたろうmeets『エンジェル ウォーズ』でした。夢の中で起きてることが現実にリンクしていて、主人公は夢の奥へ奥へ潜ることで自己の深層心理と直面し、それを探る一方、現実世界では無意識に身体が動いていて、意識が現実と夢を行ったり来たりしてしまいます。舞城さんリスペクトの文体や独特の言い回しで読んでいてあきないけれど、物語の時間軸が一方通行じゃなくて何度も回想が挿入されるから、全体の流れを悪くしているのが最大の欠点です。

平林 こういう文体って、実は書くこと自体はそんなに難しくないと思うんだよね。で、どうにでも都合のよくなる夢の論理みたいなマジカルなもので繫がっていく話を、しかもその、こんな感じの「いかにも」な文体を使えば、なんとなくそれらしく見えてしまうというつまりはけっこうなゲタをかせられるんだよね。で、この作品にそのゲタ以上の何かがあるかって言われると疑問符ぎもんふだねえ。少なくとも舞城さんと並ぶものを書かなきゃいけないわけじゃない。この人にそれできるかなぁ。

ゲタをいだときに残るものがオリジナリティだと思うんですけど、確かにちょっとそこは薄いとは思いますよね。

太田 これ、冒頭20ページぐらいまで読んだんだけど、ダメだなって思ったのね。なぜならば、結局、「なんかすごいことが起こってます」っていうだけのことを表現するだけでもうその20ページぐらいを使っちゃってるのよ。

平林 そうそうそう。そうなんですよ。

太田 だから僕は、ちょっと評価できないですね。やっぱり出だしからストーリーにスピード感がないのはダメですよ。いいときの舞城さんって文体だけじゃなくて物語的にも凄まじいスピード感があって、凡百ぼんびゃくの小説家が10ページかけて書くものを、1行で書けちゃうってところにその天才性があったんだけど、この作品は逆に、舞城王太郎が1行で書くところを10ページ以上使って書いているからね。

美味おいしいウィスキーを水で薄めちゃったって感じですね。

太田 そういう感じだよね。コンビニで売ってる缶チューハイを飲むような感じなんだよね。甘ったるくて飲めたもんじゃねえよな、みたいな。でも、チューハイは本当にちゃんと作ったら美味いはずなんですよ。だからこの作品の筆者さんには「あなたは本当のところ、どうやってあなた自身の小説を書きたいの?」っていてみたいところがあるよね。まだ21歳だし、応援したいなと思うんだけど。「お前が本当に書きたいものを自分の言葉で書いてくれ!」って言いたいね。

山中 この人は今やりたいことをやって満足してる部分から脱却できてないんじゃないかなあっていう気がしますね。

太田 他人をコピーしてもしょうがないからね。そういう意味では第1回目の星海社FICTIONS新人賞の小泉陽一朗こいずみよういちろうさんはすごかったよね。あの人は舞城リスペクトがありつつも、自分だけの語り口がしっかりとあるんですよ。もちろん、書きたいものもちゃんとあるしね。この筆者の人には小泉さんの作品を読み込んでほしいな。なにしろ21歳で学生なんだから、十分すぎるくらいの時間はあるわけで、ここはひとつがんばってほしいです。

真の天才は多くを語らず

太田 次、『絶界領域』。

山中 座談会では必ず登場する〝財閥ざいばつ〟のお嬢様ものです(笑)。

平林 きたか

山中 かつて読心の超能力を持っていたお嬢様が、超能力を取り戻せるかもしれないという小さな可能性のために、その財力にものをいわせて超能力の研究室を訪れるんだけど、そこで殺人事件に巻き込まれるというお話です。そしてお嬢様と一緒に研究室を訪問する主人公はなりゆきから探偵として事件を解決しようとするんだけど、なぜ彼が探偵役としてバリバリ活動できるのか論理的説明がほとんどない。あと、これまた王道の、いわゆる〝天才〟が登場するんですけど、天才って無駄にしゃべりすぎちゃダメなんだなと。たとえば『すべてがFになる』の真賀田四季まがたしきって、饒舌じょうぜつではないのに、ちょっとした会話のやりとりや行動のすべてで天才性を表していますよね。読者が小説を読み終わったときに、「ああ、これが本物の天才なんだ」みたいな感じに錯覚するのが物語においての天才なんだと思うんです。そういう風に感じさせるべき天才性を逐一ちくいち言葉で説明しようとしてるんですよ。さらに言えばミステリ的にもかなりベタで、首が切られた死体が入れ替わるトリックっていう

岡村 それはすごいですね。

山中 まあこの人には書きたいことはあるんです。ただ、自分がやろうとしてることに対して、想像力が追いついてなくて、上手く書けてないんだなっていう感じですね。やっぱり財閥のお嬢様って難しいですね。

今井 お金持ちっていう設定は、出会いをはぶける幼なじみと並んで、二大便利設定ですよね。

岡村 便利。だってお金があればたいていの問題は解決するじゃん。

今井 『こちかめ』も、麗子れいこ中川なかがわがいなかったらと思うと、ゾッとしますもんね。

平林 そうそう、でもあれはさ、下町出身で庶民的な両津との対比のためのキャラクターだよね。

山中 天才も財閥のお嬢様も、書くのは難しいですよ。なのにそういった突飛とっぴなキャラクター設定だけで物語を引っ張ろうとしていて、しかも最後に超能力まで出てきて、二重三重に苦しいことやってるなっていう。読んでるときはそれなりに読めたんですけど、最後のオチまで含めて「まあ、ないな」っていう感じでしたね。

日常系とスポ根の食い合わせの悪さ

太田 おっと、これはいいタイトルだね。『青春くろーび』。

青春学園ものです。これ、京アニ作品のノベライズだと思って読めば面白いです。

今井 それはキャラが可愛かわいいってこと?

そうですね。主人公の女の子はとても素直ないい子なんですよ。彼女を取り巻くクラスメイトや先輩も、きちんとキャラが書き分けられていてとても愛嬌あいきょうがある。バカがつくほど柔道が好きな主人公が、かつて存在した柔道部を復活させるために部員を集めるというお話ですけど、主人公の女の子にはキメ台詞があって、いいタイミングでこの台詞を使って啖呵たんかをきったり、キャラの見せ方が非常にアニメっぽくてわかりやすかったです。

岡村 『けいおん!』を少し熱くしたような感じなの?

いわば『Free!』の女子版ですね。部活内のコミュニケーションを楽しむというよりは、ちゃんと勝った負けたの勝負を書いてます。

山中 でも『Free!』の女子版ってスゲェいっぱいあるんじゃないの? 要は女子校部活ものでしょ?

そうなんです! ウェルメイドなんだけど、話が地味なんですよ。『柔道一直線じゅうどういっちょくせん』みたいなトンデモ技が展開されると面白くなるかもしれないけど、たぶんこれ書いた人はその方向は望んでいない気がします。

平林 柔道ものは名作がいっぱいあるからさ。『帯をギュッとね!』より面白くないなら読む気にはなれないな。

岡村 となると桜子を超えるヒロインが必要無理だな。

それ、ラインが厳しすぎますよ! あとこの作品は、柔道の勝負で一番盛り上がりをつくらないといけないのに、日常系なテイストが邪魔してる印象をうけました。あと、「こんなの知らなかった!」っていう柔道の玄人くろうとっぽい知識が披露されなかったのも残念でしたね。

時が止まったオカルト

太田 次は緑萌さん。『アマト物語 神話創世編』。オカルトものなら緑萌さんだからね!

平林 この方、経歴が非常にユニーク。地元で就職されているのですが、UFOを作るために数年で退職。現在は実家で農業をしながらUFO研究も継続しているそうです。

山中 へぇ。

平林 UFO研究の過程で超古代文明の実在に気付いたらしく、その論文をまとめたサイトがすごくてね。もう小説はどうでもいいんですけど。(原稿を迷いなく投げ捨てる)

山中 捨てたーーー!?

平林 「新しい世界を作るためにUFOへの道」、「アトランティスが実在した証拠があった!」等々。超古代文明ものの妄想みたいなのがいっぱい書いてあります。いやぁ、素晴らしいですね。

岡村 平林さんは『オカルト超入門』っていう本を編集してるわけじゃないですか。その見識から見て、どういう感じの小説だったんですか?

平林 非常につまらない! オカルトって、社会をうつす鏡なんですよ。でもこの人の好きなオカルトっていうのは、現在の社会を映してるものじゃない。要するにオカルトとして古い。UFOが冷戦時代に多数目撃されたのは偶然じゃないんですよ。そういう意味においてはやはり、今を生きている人が必要としているオカルトじゃない、とも言える。というわけで、やっぱり小説も非常につまらない。超古代文明と、『古事記』とかの神話を結びつけたようなものなんですが、そういうものを読むんだったら、諸星大二郎もろほしだいじろうさんの作品を読んでいれば、きっと死ぬまで楽しめちゃう。まあそれとは別の話ですが、この人は一度『オカルト超入門』読んで欲しいな。アトランティスとか、超古代文明は実在しないと思いますし

今井 「UFOへの道」っていう特集を更新できてない理由が面白いですね。「近く更新します、と書きましたが、ストーンヘンジに手がかかっているため多少遅れそうです。年内中にできるように頑張りますorz」

岡村 これはヤバイね

太田 オカルトは人生をあやまらせるよね。言ってみたらオウムの人とかは典型的にそうなわけじゃん。あれだけ高学歴で頭のいい人たちもハマってしまうほどに、というか、頭のいい人たちほどにハマってしまう危険なオカルトには魅力があるんですよ

設定は面白いが

太田 おっ、中二的ないいタイトルだね。『無限人格少女』。

山中 この「無限人格少女」ってどういうことかというと、犯人も探偵もヒロインも、全部1人の女の子なんですよ。主人公がある日ヒロインの「犯人」の人格に誘拐されるところから始まるんです。主人公はあえてそれを世間には黙っててあげるんだけど、その多重人格のヒロインはころころ人格を変えながら、次々に事件を起こしていくのね。

今井 それは別の人格が活動していても、ヒロインの意識は生きていて、すべて憶えてるんですか?

山中 そうそう。それで躊躇ちゅうちょなく人も殺しちゃうからヒロインがそれを苦にして表に出てこなくなるのね。で、主人公はその犯行をなんとか止めようとするんだけど、ヒロインの人格にも善側と悪側があって、1回悪側に転んじゃうと善側になかなか戻れないから、とにかく各人格とコミュニケーションを取りながら試行錯誤しこうさくごするんだけどうまくコントロールできない。そのうちにカウンセラーの医者が出てきてヒロインが相談し始めたり、探偵役の人格が出てきて事件を解決しようとしたり、混沌としてくる。さらに探偵役は「事件が起こらないと事件が解決できないから」って言って、勝手に犯人の人格に切り替わったりしちゃうんですよ。こういう設定の妙がすごく良くて。人格の変わるペースも早くて、2ページのうちに4回くらい変わったり。でも、この「犯人」役の人格がなぜ犯罪を犯すのかに具体性がとぼしいんですよ。あと台詞もチープだったり。だから、設定は面白いけど小説としては雑ですね。この人は才能はあると思うので、もうちょっと文章を書く練習をしたり、脚本を組み立てる勉強をしたり、そっち側にベクトルを向けていったほうがいいかなという気はしましたね。

太田 長えよ! 編集者ならもっと端的たんてきにまとめろよ! しかしこの作品は繰り返しになるけど、タイトルがいいよね。

山中 僕も最初タイトルではっとして読み始めたら、やはり面白かったという感じですね。ただ、漫画家の人格が無限の人格を持つ少女の漫画を描き始めたり、爆弾を製造できる人格が犯人の人格のために爆弾を作ったり、と、頭の中にいるそれぞれの人格が特殊技能を持っていて、そういう設定のうまさには才能を感じるんですが、なぜそれだけの才能がヒロインに備わったのかという論理的な説明の部分が実に弱い。オチを言うと、それは「可能性のすべて」みたいな話で、『××の××××』というライトノベルがあったじゃないですか。あれに少し近いのかなと。

今井 あやうい存在のヒーローとして、使えそうな設定ですけどね。

山中 そうなんですよね。『多重人格探偵サイコ』と『××の××××』を悪魔合体させたみたいな作品で、設定の妙っていう意味ではすごいよかったんですけど、小説としては稚拙ちせつすぎたかなと思って。次に期待かなっていう感じはありました。

でるか、受賞作!?

太田 じゃあ、いよいよラストの作品に行きましょう。『Exeption 機巧アリスに口付けを』。これは平林さんですね。

平林 「アリス」と呼称こしょうされるアンドロイドが実用化されてる近未来っていう、まあ非常によくあるネタで、もうこれまで反吐へどが出るほど似たような原稿を読んでるので、最初の30ページ読んで面白くなかったらやめようと思って読み始めたんですね。しかし30ページだとこの話の本筋が始まらないにもかかわらず、「これはちょっと最後まで読まないといけない作品だな」と感じて最後まで読んでみたら非常に良かった。まず、主人公が、「調律師」と称される、アンドロイドの性格をカスタマイズする仕事をしている。これってつまりはシステムエンジニアなんですよね。エンジニアの仕事。この仕事は、アンドロイド的なものとの関わり方として、今までの作品で、あまりないと言っていいんじゃないかと。しかもそれが、きわめて現代的なアレンジになっていると思うんですよね。

太田 いやいや、そこは類例があるけどね。有名どころだと『ファイブスター物語』のファティママイト。だけどこの作品はアンドロイドとの関わり方で彼女たちの「キャラクター」に焦点をギュっと絞っているところが新しいんだよね。

平林 ですね。僕はシステムエンジニアっていう仕事がこれだけ定着したからこそ、こういうものが書けるんじゃないかと思ったんですよ。あとはですね、アリスがみんな可愛いんですよね。非常に女の子たちが良く出来ている。ミスリードというか、ちょっとした引っ掛けが非常にうまい。この人今までどこに投稿してたんだろう? っていうぐらい。

岡村 僕、競馬が好きなんですけど、この作品の主人公は競馬で言ったら調教師のポジションなんですよね。彼らはオーナーから馬を預かって、その馬を調教する特殊技能の持ち主じゃないですか。だから、調教師はオーナーの言うことはもちろん聞くんですけど、実はオーナー以上のことも出来るんだよね。あとはある意味、彼らは今で言うところのボカロPじゃないですか。「調律師」というポジションは時代にあってると思いますけどね。

平林 アリスたちの性格がソースコードだっていうのが、すごくいいと思った。

岡村 「印象値」とかね(笑)。

平林 作中でもキャラクターは「ソースコードだ」って言い切っちゃってるわけだけど、それでもそのソースコードが産み出してる、ちょっとした会話とかさ、身振りとかにさ、読みながら僕らは心うごかされるわけじゃん。

山中 ツンデレをアルゴリズムとして説明するところとか上手いですよね(笑)。

岡村 上手い。〝例外処理〟の描写ですね。

太田 あれよかったよね! ただ、理系的なハッタリがもうちょっとだけあってもいいと思うのよ。そこが弱いから、よくあるラノベっぽい感じになっちゃってるのね。そこはちょっとした弱点かな。

山中 システムは考えてあるんだけど、書ききれてないっていう感じだと思う。

平林 いや、僕はあんまりやりすぎないほうがいいんじゃないかと思うんですけどね。

太田 ちょっとだけ! 理系要素が欲しいの。ちょっとだけ欲しいんだよ。5センチくらい。

岡村 基本的に僕は、理系に興味も資質もないんで、もうこのくらいで十分だなって思っちゃうんですけど。

平林 これ以上理系っぽくしちゃうと、ハヤカワJAかなって。

一同 JA! うーん、なるほどねえ(笑)。

平林 まあでも修正を加えるとしたらそれくらいじゃないかなあ。それにしてもこの人、10年前だったらエロゲのシナリオライターになってんじゃないかなっていう。

太田 確かにこれルートがどこで分かれるのかが頭に浮かぶよね! っていうかこの人はいままでにそういった仕事に手を染めていてもおかしくはないと思う。

山中 最後にエロゲー的な描写があって、僕、テンプレキターって思ったんですよ(笑)。

平林 いやでもね、やっぱベタじゃないといけないのよ。ベタは偉大!

山中 やっぱりきっとエロゲの文化から来てる人なんでしょうね。

平林 そういう匂いがあるよね。だからこそ、この作品を出すんだったら絵は「大槍葦人おおやりあしと」さんしかいないんですよ。

太田 合ってる、合ってる! ぴったりだよね、大槍さんの絵は!! ちょっと今、受賞させてもいいかなって感じになってきた!!

平林 (身を乗り出して)でしょ?

太田 そうだね。大槍さんならこの作品を正しい方向にエンハンスしてくれるはず。今、抜けてたピースがスコーンって埋まったぜって感じがした。うーん、それじゃあこの人は、平林さんが大槍さんの絵を取って来れたらデビューってことにしようよ!

一同 すげえ条件だな!

山中 それ本人関係ないじゃないですか!

平林 でもね、正直、これ今出したら新鮮だと思います。ぐるっと一周回って新しいんですよ。今の10代ってこういう作品を知らないんじゃないかと思うんですよ。

岡村 僕が変えたほうが良いと思ったのは、この作品ではアンドロイド・アリスを一社が独占して製作してる、というところですね。あんなのは数社に競合させたほうが面白いに決まってるじゃないですか。

平林 それ、僕も思った。

岡村 「○○製はここが優れてる」ってやつですよ。『パトレイバー』の篠原重工しのはらじゅうこうとシャフトとか、バイクの四大メーカーみたいな感じに。

太田 その通りだ。「男KAWASAKI」みたいな(笑)。

岡村 そういうのがあると面白いなと思います。

太田 ちょっと変態チックなSUZUKIとかね。優等生なHONDA。ああ、バイクに乗りたくなってきたぜーーーーーーーッツ!! ドッギャーーーーーーーン!!!

岡村 (アクセル全開の太田を放置して)すごい端的に言うと、この作品ってある意味おたくの夢そのものだと思うんですよ。だから、そこをストレートにアピールするのは、いいと思います。

平林 たぶん大槍さん、この作品好きだと思うんだよなあ

太田 そう思う! 描いてくれるんじゃないかなあ。描いてくれたらいいなあ。描いてくれれば。描いてくれるはず。描いてくれよーーー!!! ハッ、想いのあまり編集者の願望五段活用をしてしまった。まあ僕、それくらい大槍さんの大ファンなんだよ! 緑萌さん、さっそく「今日」、「たった今」、大槍さんとコンタクトを取ってくれたまえ。

平林 わかりました! 行きます。行きますよ!(と、編集部から颯爽さっそうと出発していく)

岡村 うーん、これってある意味、大槍さんにしたら脅迫きょうはくみたいなものですよね。

一同 星海社らしい(笑)。

太田 いやー、それにしても緑萌さんがうらやましい。僕、大槍さん大好きだから、いつか一緒に仕事したいと思っていたの。

山中 受賞者より先に大槍さんに連絡取らないといけないなんて

今井 まあ、まだ受賞じゃないですからね(笑)。

岡村 決定法が斬新すぎる。

(数日後)

平林 (『走れメロス』のごとく編集部にけ込んできて)大槍さん、快諾かいだくいただけました! 原稿もたいへん気に入ってくださったようです。

太田 でかしたーーーーーーーッツ! さすがは緑萌さん。さて、これでめでたく4人目の星海社FICTIONS新人賞受賞者の誕生ですね。いや〜、星海社FICTIONS、いよいよ面白くなってきたぜ!!! 次回は「あなた」の投稿を待っていますよ!!

一行コメント

『THE MONSTERS』

既視感がつよく、新鮮味がまるで感じられません。(山中)

『魔物喰い』

どこかで見たことのあるような物語でした。特にゾンビを題材にするなら、まだ誰も思いついていないような斬新なアイディアが不可欠だと思います。(林)

『腐界の』

物語のカロリーに対してページの分量が多すぎます。(林)

『ブランクトスペース』

冒頭のメタフィクション的描写がすべてを台無しにしている。(山中)

『変な人と普通の怪物』

日常の描写と、商店街の怪物が地方大型ショッピングモールで暴れるというアイディアは素晴らしいと思いました。ただ、起承転結の起と結の要素しかないのは問題です。(林)

『ルサンチマンファンタジー』

文体・キャラクター共に面白みがない。ファンタジー世界の設定も然り。(平林)

『改作者〜レアリテを超えて〜』

平凡すぎる。こんな展開で面白いですか?(平林)

『星海社』

最後まで読んでも、さっぱり理解できませんでした。(岡村)

『努々夢見る狼少女』

とにかく分量が多すぎる。どこを読ませたいのか分からない。(平林)

『グリザイユの箱庭』

前置きが長く、話が始まらないのは良くないと思います。あと、タイトルが某PCゲームと似ているのも良くないです(笑)。(平林)

『Green Shoes』

必ずデータを添付してください。お願いします。お話は読み進めるための好奇心が持続しませんでした。(林)

『終末のジハード』

語り部分での過剰な自分ツッコミがつらかったです。また、大怪我して帰宅したり、夜帰ってこなかったりする娘に、母親が全く突っ込まないなんてことはあり得ないと思います。(今井)

『ネコ達の首に鈴をつけろ!』

リアルとファンタジーがうまく嚙み合っていない印象を受けました。(林)

『不死甲斐』

冒頭から中盤で突然異能バトル作品に展開していくのはあまりに唐突でしょう。(山中)

『春の融点/雪の密度』

謎はあるんだけどそれが先を読みたくなるような動機にならない。(山中)

『アグリーバニーは眠らない〜犬山 廻衣子の遠回しな青春〜』

あちこち展開が唐突です。狙ったものだとしたら失敗しているので、まずは丁寧な話運びを心がけてみて下さい。(平林)

『あだるとチルドレンの潜思』

おもしろく読ませてもらいました。キャラクターのバランスもよく、それぞれに魅力もありますし、世相を反映したストーリーにも引き込まれました。プロットに新鮮味があり、後半駆け足にならなければまだまだ可能性があると思います。タイトル要改善。(今井)

『デジャブ』

だれに向けて書かれた作品なのかがわかりません。(山中)

『鳳仙花とこぼれ種』

箇条書きが連続しているようでした。(林)

『茫内茫』

ドラマも設定も、読ませようとするための武器があまりに足りなすぎます。(山中)

『オーディナリー・オーディナリー』

序盤は面白いが、中盤以降が尻すぼみ。次回はメタフィクションじゃないものを読んでみたい。(岡村)

『DIFFERENT GEAR』

とにかく矛盾が多すぎて物語に集中できませんでした。設定を整理してから書き始めてください。(林)

『死ねない死体のための葬送曲』

この語り口で延々と続くのはしんどいですね。(平林)

『奇人都市の神は孤独か?』

語りが過剰すぎて物語全体からスピードが失われています。(今井)

『スガヲノ忍者』

いろんな方向に書き散らされていて、何を楽しめばよいのかわかりません。(岡村)

『星屑の見える監獄』

設定がありきたりすぎます。ありきたりなら、ありきたりなりの工夫を。(今井)

『たそがれ雑貨店』

雑貨店を中心に事件が起こっていくさまは興味をひきましたが、長すぎました。(今井)

『オーヴァード・ビースト』

『ほしのこえ』のような情緒がなく、『パシフィック・リム』のような派手さもなく。主題が希薄で非常にパンチに欠ける印象でした。(今井)

『キッズふる』

まず脚本の勉強をした方がよいと思います。(山中)

『猫頭と喜多見一家』

対象も文章も全体に幼すぎて、読者を選びすぎる印象です。(山中)

『風が吹く丘』

時間の行き来が激しく、物語についていくのが精一杯になってしまいました。また、長すぎます。(今井)

『ゆめのファブリカ』

キャラクターの行動原理に共感できないため、読みすすめるのが辛かったです。(林)

『海はめざめる』

核やミサイルを使うのはいいですが、あまりに簡単に使いすぎです。登場人物全員の頭が足りなさすぎます。(林)

『万象尽ク渺渺タル夢現ノ随ニ』

設定を書きたかっただけ、という印象です。小説を書いて欲しいです。(山中)

『(ゴールド・ラッシュ・ライク・ア)ピクニック』

設定が中途半端なせいか、何が起きているのか分かりにくいものになっています。(平林)

『The anti-evil baddy Form a justice party』

物語の展開が稚拙です。(山中)

『息の根にうるおいを。』

物語を短く分けすぎてテンポが損なわれてます。(林)

『魔々』

稚拙でした(岡村)

『くだんの見た夢』

↑このタイトルで「ドリーム・オブ・フューチャー」と読ませるのは無理があります。(今井)

『僕が紅に染まる前に』

荒唐無稽なお話でもいいのですが、荒唐無稽なお話の中での論理というのを、きちんと組んで頂きたいと思いました。(今井)

『夢と現世変わらぬ日常

他の作品の設定をつぎはぎしている印象を受けました。(林)

『人魚姫のパラドクス』

タイトルはいいと思いました。ただ、いくらなんでもご都合展開すぎるでしょう。(山中)

『the escort』

話の題材は面白いですが、その題材とキャラクターのテンプレ具合が合っておらず、リアリティがごっそり損なわれています。(岡村)

『さんりゅー』

設定についていけませんでした。(今井)

『互い咎の処方』

キャラクター、展開共に非常に楽しく読めましたが、ページ数100以下はあまりにも足りなさすぎです。次は応募規定を満たした原稿を読みたいです。(林)

『幽鬼よろしく闇の爪』

どこかで見たような設定、どこかで見たようなキャラクター、どこかで見たような展開。(平林)

『ボーン・コレクトウィッチ』

主人公たちに感情移入できませんでした。なぜその判断なのかに、納得できませんでした。(今井)

『Final Calling』

「フィクションの中でのリアリティ」がありませんでした。(今井)

『投資家と少女のデスゲーム』

事件が起きてから解決するまで謎を放置して他のことをしすぎです。参考文献を付けてくださいましたが、勉強すべき点はそこではないと思いました。(林)

『神霊幽明通信』

怪異の謎解きもの、という激戦区ジャンルを勝ち抜くレベルには到底達していません。(岡村)

『人類の夢終わりました〜The Real Persons〜』

設定もキャラクターも薄っぺらい。もっと同じジャンルの作品を読んで勉強してください。(岡村)

『KILIN-V CHAIN SCENE MASSACRE』

労作だと思いますし、矛盾もなくできています。でもこの設定をつかって、偉大な先行作品らとは違ったどういう面白さを伝えたいのかが、読んでもわかりませんでした。(岡村)

『RANK E』

人の生き死にやヤクザの言動など、様々な点でリアリティが感じられない。(山中)

『シャルダンという名の男』

割に読ませる。しかし、全体的に華がないというか、地味なのが勿体ない。(平林)

『闇を覗く、ということ』

世界観を説明するのに筆が追いついていない印象を受けました。キャラクターも記号的です。(林)

『らりるれロメ夫の残虐夢想探偵奇譚①』

独特のノリを持っている作品ですが、おもしろいと思えませんでした。(岡村)

『旅するトカゲ』

これだと『キノの旅』を読めばいいということになってしまうので、明確なオリジナリティを見つけた方がいいと思います。(山中)

『ブラインドスクラッチ』

読み終えて「だから何?」という気持ちになりました。(岡村)

『憑代の鏡』

幽霊も、幽霊が見える人間も淡々としすぎなのでは? あえて設定しているなら、あまり上手く機能していません。(林)

『チェリー・オブ・4』

突飛な設定に説得力がなく、またその必要性を感じることができませんでした。(林)

『真実ブレイカー』

あまりに幼すぎます。(山中)

『少女趣味な引き金で打ち出された僕』

リボルバー銃にオートマの弾丸は絶対に使えません! リアリティを大切にしてください。(林)