ひぐらしのなかせ方
第三回
竜騎士07が過去に受けてきた名インタビューに、当時の状況を知るKEIYAが解題を書き下ろし! 第一弾は、かつてとらのあなウェブサイト上で公開された「ひぐらしのなかせ方」。
本インタビューは最低限の表記統一などをのぞき、掲載当時のものをそのまま使用しております。新たにKEIYA氏による解題と注釈を加えていますが、※印の注釈は掲載当時のものです。とらのあな様のご厚意に深く感謝いたします。
文中表記(肩書きはすべて当時のものです)
[竜] 竜騎士07氏(サークル代表・シナリオ・原画)
[八] 八咫桜氏(スクリプト担当)
[B] BT氏(07th Expansion HP管理人)
[編] とらのあな編集
―― 07th Expansionインタビュー「ひぐらしのなかせ方」第3回ということで、当企画も遂に3回目となりまして、我々も含めて『ひぐらし』を扱ったインタビュー記事も沢山あるので、どんなことを聞こうかちょっと悩むんですが。
[竜] 虎通さんを読んでおられるような方々は事情通な方ばかりだと思うから、逆にやりやすい部分もあるかも。昨日今日秋葉原デビューした方がいきなり読む雑誌ではないでしょうし(笑)。
虎通
同人ショップとらのあなが発行している無料情報誌。店頭、通販、定期購読で入手できる。ただし成年向け作品の情報を含むため18禁。作家や作品の紹介だけでなく、このようなインタビューが掲載されることもある。【KEIYA】
―― とらのあなに来ないと手に入らないので、読むまでのハードルが変に高い…『ひぐらし』インタビューが載っている中で一番濃い媒体だと自負しております(笑)。それはさておき、毎回恒例ですが、また一つコミケを終えられました今のご感想はいかがでしょうか?
[竜] 何しろ夏が終わってから4ヶ月しかないので、もう、すぐ冬の準備に入らないとダメなんですね。今年の初めから大体の日程の予測はできてまして、何月ごろから着工しなきゃいけないと解っているんですが…本当はもう9月の後半ぐらいから相当実戦体制にはいらないといけないはずが…うーん(笑)。
(07th Expansionメンバー苦笑)
[竜] …そういうのを言い訳にしてはいけないんだけれど、今ドラマCDの収録が始まっていて、その日程が結構立て込んでまして、その絡みで…って、まあ時間は作るものですから、言い訳にはなりませんね(笑)。
ドラマCDの収録
株式会社WAYUTAが販売する『ひぐらし』ドラマCDシリーズ。鬼隠し編の3枚組に始まり、目明し編以降は6枚組(皆殺し編は前編6枚組、後編3枚組で合計9枚組)という大ボリューム。原作版と同じBGMを用いて原作を忠実に再現している。ジャケットは竜騎士07氏描き下ろし。話題になった豪華声優陣は、多くがその後放送されたテレビアニメ版にも出演した。【KEIYA】
参考リンク:ドラマCD『ひぐらしのなく頃に』公式サイト
―― コミケを含めて、今年の夏は皆さんいかがでしたでしょうか?
[竜] 今回は結構真面目にマスターアップ……。
(一同爆笑)
[竜] …しましたので、その後、割と時間が空いたんです。マスターアップしたのが7月の第四週ぐらい? それからコミックマーケットまで2週間開いてしまったので、非常に不思議な感じがしました。自分の中では修羅場が終わってなんかドンヨリしてしまって、ポケーっとした頃にコミックマーケットが始まった…今までは手焼きだったので、マスターアップしてから「あと48時間で200枚焼くぞ~」といった感じ。不眠不休の状態でそのままコミケに行く極道な生活を(笑)繰り返してきたので、真面目に入稿して時間が空くというのは、実は今回が初めてでした。前回は結構締め切りが押していたから、そうでもなかったもので、今回はなんか不思議な、でも普通の同人作家にとってはあたりまえな(笑)コミケでした。
マスターアップ
ゲームのマスター(マスターディスク)が完成したという意味。そのマスターを元にして製品版のディスクを量産する。CD-Rで頒布するなら基本的には手焼き、プレスCDで頒布するならプレス業者に提出することになる。頒布開始日までに量産や納品を終わらせる必要があるため、マスターアップはそれよりも前でなければならない。【KEIYA】
―― 前々回のインタビューで強烈に焼き付いたフレーズに「BTさんの7連スロットのデュプリケーター」というのがあるのですが(笑)。そのBTさん、いかがでしたか?
デュプリケーター
複製機。ここでは「ディスクのコピーを作成することに特化したPC」を指していると思われる。インタビューから判断するに、光学ドライブを7台搭載したフルタワーPCのようだ。『ひぐらし』はこの時すでにプレスCDでの頒布に切り替えていたため、スタッフによるディスクの手焼き作業は行われていない。【KEIYA】
[B] いやー、デュプリケーターは出番なかったですが……。
(一同笑)
[B] マスターアップ前のデバックで、八咫桜さんの所に泊まり込んで、いっしょにやらせてもらってました。
デバック
正しくは「デバッグ(debug)」。プログラムの誤り(バグ)を発見して修正する作業。バグは「虫」という意味であるため、デバッグのことを「虫取り」と呼ぶこともある。【KEIYA】
―― BTさんはデバッグも担当されるんですか?
[B] そうです。あとは音楽室の製作などですね。前回の目明し編の時は、後から修正パッチで追加だったのですが、今回はマスターアップと一緒に入れる形にしたので、マスターアップ前に私も泊り込んで音楽室も作成しました。その時に追加の曲が5、6曲だと聞いていて(笑)、5、6曲なんだなぁと思って行ったんですけれど、竜騎士さんや八咫桜さんに実際見せてもらったら、14曲ぐらいある(笑)。
[竜] それはつまり新曲の定義の問題ですよ(笑)。私にとってその新曲は執筆の最中ずっと聞いているので、新曲じゃなくて、『ひぐらし』の中のあたりまえの一曲というイメージなんです。だからBTさんに「新曲何曲あります?」と聞かれた時に、最近仕入れた曲が4、5曲だったので、まぁ4、5曲ぐらいじゃない?と答えた(笑)。私にとっては執筆の数ヶ月間ずっとその曲を聴きまくっているので、もう馴染んじゃってるんです。でも実は前回使っていない新曲がその中に山ほどあって、だからいざリストアップされて、14、5曲あるよと言われて「えーっ!!そんなにあった~?」(笑)みたいな事が起こる。
―― 執筆の最中はずっと『ひぐらし』の音楽を聴きながら書いてるんですか?
[竜] そうです。執筆の最中からそのシーンに合った曲をずっと聞いているので、だからクリンナップの段階で、すぐにどのシーンでどの曲かピッピッピと出てくるんです。
クリンナップ
インタビュー第1回でも登場した言葉。07th Expansion内部での呼び名であり、一般的な意味とは異なるようだ。竜騎士07氏による「クリンナップ」の定義は以下の通り。【KEIYA】
クリンナップというのは、仮組みした演出を調整して、最終的な演出にする工程です。(実際のゲーム会社さんではどう呼ぶんでしょうね。当サークルではこう呼んでいます)
(制作日記・2005年12月6日「クリンナップの話」より引用)
―― クリンナップの段階までいってから、曲を当てはめていくものだと思っていたのですが。
[竜] もちろんクリンナップの段階で、出たとこ勝負っぽい要素も少しはありますが、基本的にはそのシーンに合った曲を聞きながら書いてます。もちろん無音という事もたまにはありますが、はじめてのシーンで、ここは新曲がないと駄目だってわかると、仮曲であってもそのシーンに合った曲が見つからないと、執筆が進まないぐらいの感じです。
―― 我々ユーザーがゲームをしながらテキストを読んでいるのと同じ状態で、竜騎士さんは、同じ曲を聴きながら書いているということですね。
[竜] そうですね。だからずーっと蝉だけが一晩中鳴いていたりとか(笑)、同じMP3が一晩中ずーっと流れっぱなしということが、往往にしてあります。
―― 曲だけじゃなくて蝉も流れっぱなしですか(笑)。
[竜] 私にとっては蝉の声も曲の一部ですので、ずーっと一晩中蝉の声が流れていて、休みの日なんか明け方まで蝉が鳴いていたりとか(笑)、そういうこともあります。
―― 確かに音楽室に蝉の声がちゃんと曲として入ってますね。
[竜] 『ひぐらし』ではあれはもはや曲なんですよ。
[B] の声はどうしても音楽室に入れたかったので、そのままポーンと入ってます。
―― あのひぐらしの声は、どういったものなんですか?
[竜] 最初はロイヤリティフリーの素材だったんですが、途中からご縁のある音楽家の方が、地元で素晴らしい音源を収録して下さったものを使ってます。“.wav”ファイルは、ロイヤリティーフリーのバージョンで、“.mp3”のファイルは音楽家の方が録ってくれた、よりクリアなバージョンです。だからヘッドホンでよく聴いてもらうと、蝉.wavと、蝉.mp3は、だいぶクオリティが違うと思います。
―― それは今回からですか?
[B] いえ、目明し編からですね。
[竜] Nscriptの機能上の都合で、mp3は二重で重ね合わせられないんですけど、mp3とwavは重ねられるので、蝉を曲として流すときはmp3で流しているんですが、音楽を流しながら途中で蝉が鳴き始めたり、というシーンではwavファイルじゃないとダメなんです。そのせいで蝉だけmp3とwavと2つファイルがあるんです。昔は蝉.wavだけで音楽も回していたんですが、せっかくよりクオリティの高いmp3が上がってきたので、今は二刀流でやっています。
―― 今Nscriptの話もでましたが、八咫桜さんの今年の夏はいかがでしたか?
[八] デバックの最後のほうは取れる休みもなくなっちゃったので、仕事中に制服のまま帰ってきてカタカタやってました。
取れる休みもなくなっちゃったので
本業の合間に『ひぐらし』の制作を行っているということ。社会人にとって同人サークルと仕事の両立は大きな課題である。【KEIYA】
[竜] 勤務中の昼休み、というか外回りのときに、たまたま近くを通りかかったので、サッとよってきて「…どう? 問題ない?」(一同笑)って。最終段階はそんなものですよね。
―― 実はわれわれが最初にインタビューさせて頂いたのが、ちょうど一年前の夏なのですが。
(一同) ああ~。(ため息)
[竜] そんなになりますか。長いような短いような、おかげさまで一年間やってこられました。
―― というわけで、この一年間を振り返ってみていかがでしたでしょうか。激動の一年間だったと思うんですが。
[竜] 例えばアニメやコンシューマーという今大きく動いている話も、実際には去年から頂いていた話なんです。だから去年と今との違いは、お話だけだったものが実際に動き始めている。「本当かなぁ」「本当になるといいねぇ」「あ~実はこれは夢なのかも」とか…そんなレベルだったんですが。去年の9月ごろだと、ちょうどドラマCDがそういう状況でして「ドラマCDなんて嘘だよなぁ」、「冗談に決まっているよなぁ」と言っていたのが現実になってしまっている。一年前と今の究極の違いは、いろんなお話を頂いて、当時は半信半疑を通り越して、笑っていたような内容が、今年は実現してしまっているという点が、一番大きいかもしれません。仕事の忙しさは実はあんまり変わってないんです(笑)。より忙しくはなっているんですが、より時間の取り方に慣れてきたというのはあります。前はその…ぜんぜん日程に慣れていなかったんで、翻弄されていたんですけど、忙しくなってきた分、日程の整理が出来るようになっているので、そのへんはトントンで、昔より大変ですという事はないんです。要するに慣れたっていう事ですね。
[編] ドラマCDに関しては、最初のインタビューでちらっとお話を伺ったことがありましたが、あれからもう一年たつんですね。
[竜] 懐かしいですね。本当に。
―― もう「懐かしい」という感じですか?
[竜] 私にとってこの一年というのはついこの間の事のような…体感の時間では、ほんの2ヶ月ぐらい前のことのような、本当にあっという間という感じです。『ひぐらしのなく頃に』という作品が連載物だという事で、変に季節感がないというのもあるんですが、目明し編を作ったのもついこの間という気がするし、罪滅し編は実際ついこの間なんだけれど、ずいぶん昔のような気がします。
―― なるほど。
[竜] でも、いざ次の執筆に入ると、昨日のように記憶が蘇って繋がっちゃう感じですが。
―― 八咫桜さんは、いかがでしょうか?
[八] 色々あったけど、気が付いたら次々にマスターアップが迫っている(笑)、そんな感じで、走って走って(笑)走りまくっていました。
―― やっぱり走り続けた一年間ですね。BTさんはいかがでしたか?
[B] すごく色々変化して、周りも変化していきましたね。
―― HPの運営をなさっていると結構色々な事が起こったと思うんですが。
[B] そうですね。人の流れもぜんぜん違ってきてますし、コミック化が始まってからは中高生ぐらいの方がHPにいらっしゃっているようです。掲示板も盛り上がってきて、やっぱりだんだん変わっているというのが実感としてありました。
コミック化
原作の目明し編発表後、スクウェア・エニックスと角川書店の各誌で連載が開始された。【KEIYA】
―― 参加なさっている方の影響で、HP自体も雰囲気が変わってきたという事もありますか?
[B] そうですね。はい。
[編] サイトも様変わりしましたね。中央にメインコンテンツがあって、最初に下にコンテンツが伸びて、下がいっぱいになって、次に上にコンテンツが伸びていって(笑)。
[B] 一番初めは一画面で収めるという方式でデザインされていたんですが、情報が段々増えていって、あんまり載せすぎると、今度はBBSとかにすぐ行けなくなってしまう…色々整頓して今のような形式に(笑)。
[竜] ある程度落ち着いてしまったら後は変に変えないほうがいいのかなと。皆さん馴染まれてますし。
[B] どんどん告知を追加してゆくので、うかうかしていると、どんどんページが伸びしまいます(笑)。
―― さて、ちょっと気の早い話なのですが、折り入ってお願いがありまして、本誌「虎通」の記事という事で『ひぐらしのなく頃に』がパッケージになりましてからずっとインタビューをさせて頂いてますが、残り2本、『ひぐらし』完結までこの記事に是非おつき合いをお願いしたいのですが。
[竜] 本当にありがとうございます。でもそれなら、もっといっぱい面白い話をしなくちゃいけませんね(笑)。
―― すべてが完結した後の活動のお話というのも、すごく伺ってみたいなぁと思うのですが。
[竜] それは全然考えてないことなので、正直現時点では白紙としかいいようがない、ただ一つだけ言えるとしたら、『ひぐらしのなく頃に』という作品が終わったからそれで情熱が潰えるものではない。次にもまた何かを作ると思うのですが、でもそれが何かというのはとても予告できる状況にない。何でも作ってみたいと思うし、その時の、やっぱり情熱次第ですよね。一番の現実路線だと、次もサウンドノベルを作るのが一番楽だと思います。ノウハウがある程度確立していますし少なくとも「07thExpansionの第二弾は対戦格闘だ!!」(笑)というよりは、よっぽど現実味のある話かな。
次にもまた何かを作ると思うのですが
『ひぐらし』完結後に制作されたのは『うみねこのなく頃に』。『ひぐらし』と同じくノベルゲーム。【KEIYA】
―― 本当にそうなったらそれはそれで面白いんですが。
[竜] まぁ、それは冗談として…結局うちは、ある意味プログラマーなきサークルなんですよ。
[八] ですよねぇ。
[竜] でもBTさんと、八咫桜さんが共にスクリプトやってもらってるので、ある意味プログラマーという括りに入るのかな? う~ん、プログラマーというのがよくわからなくて、スクリプターと同じものだという認識なんだけど、どうだろう? うちで何かゲーム作ろうってなったら出来るのかな?
[B] いやー、本当に出来るかって聞かれたらぜんぜん出来ないですねぇ。日曜大工程度なので。
[竜] だからうちのサークルで作れないものは作れない、仮に私が熱を吹いて「○ァイナル○ァンタジーを吹き飛ばすような、RPGを作りたい!」と息巻いても…。
[八] ダメにゃり~。(一同笑)
[竜] ごめんなさい、僕が悪かったです。っていうしかないですよね。
[B] じゃあその時は、RPGツクールで。
(一同爆笑)
[竜] …だから、その時作れるものを作ろうって事になりますね。やっぱり一番現実的なのがノベルじゃないかなと思うんです。ノウハウを今日まで蓄積してきたし、そのちゃぶ台をひっくり返す事はないんだし。ただ、その時何が作りたいかによるんです。私も最近暇なときに、『ひぐらし』が終わったら何を作ろうかなって考えることもあるんですけれど、いやー全然わかんない(笑)。大体最近見た映画やゲームの影響を受けてるだけで。
―― その辺の今後の展開も踏まえつつの『ひぐらしのなかせ方』という事で、当企画を続けさせていただければと思っておりまして、じゃあ一年前からアポイントをお願いしてしまえと(一同笑)。という事でよろしくお願いいたします。
―― では、改めて本編のお話をお伺いしたいのですが、オープニングでオルゴールの曲から始まりましたが。
[竜] あれは「セレスタ」でしたっけ? ん~………BTさん、いま曲名出てきます?
[B] あー、ちょっと出て来ないです。
[竜] MP3ファイル名だと“03セレスタ”だったと思うんですが…すみません、実は曲名よりファイル名のほうが先に出てくるようになってしまいまして(笑)。でもそうですね、レナの回想から始まるというオープニングは、割と後付なんです。シナリオの6、7割ぐらいが出来た後に、オープニングとして追加したんです。だから、最初は水鉄砲からスタートだった。目明し編から、第何話というオープニングっぽいものを作っているんですが、実はオープニングは、わりと最後の方に作っているんですよ。今回も水鉄砲からテキストを打ち始めまして、ちょうど中盤あたりでレナの回想というか、みんなへの告白のシーンを作るときに、倒置法的にオープニングのところで、出だしを兼ねた演出を思いついて作ったんです。あれはあくまで今回の見せ方という事で、私はシナリオのたびに毎回違う演出になったらなぁと思って作ってますので。
03セレスタ
正確なファイル名は「03_CELE.MP3」。音楽室で表示される曲名は「daily passing by(celesta)」。作曲者はzts氏。ドラムなどが入っている「daily_passing_by」の別バージョン。【KEIYA】
―― 前回「祭りシステム」という音楽のお話がありましたが、今回の音楽は?
[竜] 今回も同じで、mixi上の掲示板に投稿された音楽の中から使わせていただきました。あと、daiさんから使わせてもらった曲は、daiさんマニアの方ならご存知だと思うのですが、daiさんが既に過去に作っていた曲を入れさせていただいているという…厳密に新曲ではなかったかもしれないのかな?むしろ、今回「thanks/you」のCDを聞いて、この曲を本編に使いたいなぁと。
(一同笑)
[竜] 「thanks/you」の曲を使わせてもらえないかという事をdaiさんにお願いしようかと(笑)。
―― その「thanks/you」も、とらのあなでCDを販売させていただきまして…。
[竜] 初作品とは思えない素晴らしい人気だったとか。
―― …あっと言う間に売切れてしまって、私も欲しかったんですが手に入りませんでした。
[竜] daiさんは、まだ非常にお若いクリエイターさんなんですが、だからこそご自身の素直な感情をそのまま音楽に出されるんじゃないかなと、それ故に素晴らしい音楽ができるんじゃないかと思います。もちろんdaiさんに限らず、他の音楽を作成してくださっている方も本当に素晴らしくて、今回もdaiさん以外の方の音楽もたくさん入ってます。
―― 音楽室の曲を一通り聞いていきますと、daiさんはピアノの曲が多くて…。
[竜] いいですよね。
―― 個人的には『ひぐらし』の音楽というと、daiさんの楽曲のイメージになってしまっているんですがちょっとセンチメンタルな感じのピアノの曲。
[竜] そうですね。目明し編でオープニング・エンディングを完全にdaiさんの「thanks/you」で統一したこともありまして、特に「解」は、ピアノ曲というイメージが非常に強いですね。「目明し編」が悲劇的な幕切れだったことも考えると、そういう印象が強いのかもしれません。そういう意味で、今回は裏切ってやろうと思って「ZERO」のような激しめの…。
ZERO
音楽室で表示される曲名は「Z・E・R・O」。作曲者は煉獄小僧氏。エレキギターやドラムが入ったロックテイストの曲。圭一の勝利宣言後に流れるスタッフロールで使用された。【KEIYA】
―― そう! それをお伺いしたかったんです。「thanks/you」のイメージでずっと来て、最後の最後、エンディングで音楽がいきなりひっくりかえりまして…疾走感というか、突き抜けるような幕切れというか、『ひぐらし』らしからぬというか、かなり意表を突かれましたが…あれはやはり「やってやった! やってやった!」みたいな感じですか?
[竜] そうですね。前回はああいった形でしんみりと、生意気な表現をすると、泣き系で攻めたので、今度は泣きじゃない系で攻めようと。多分前回のインタビューで言っていると思うんですが「次回のラストは全然違います。アクションです」と。
―― そのフレーズは実は今月号(虎通10月号)の「罪滅し編」告知に使わせていただきましたが、実際に「罪滅し編」をやってみて「ほんとにアクションだったなあ」と。
[竜] あの前回のインタビューの時点で私は、お話しながら、夜の校舎の上で殴り合って戦う二人の姿が既にイメージの中にあったんですよ。
―― 前回ちょっと伺いましたが、今回はレナ編ということでよろしいんですか?
[竜] そうですね。レナについて話しているんですが、実際はレナ・圭一編というのが正しいですよね。今回でだいぶ圭一が主人公らしくなったと思うんです。主人公というのは正しくないかな…ヒーローらしくなったというほうが正しいかな。
―― レナは前作までわりと正体不明。で、今作を見てみて非常に「普通の女の子」という感じがしたのですが。ちょっとずるいような部分も含めて、もしかしたら『ひぐらし』の女性キャラで一番普通の女の子っぽいかもと感じたんですけれど。
[竜] 生々しい普通の女の子ですね。
―― ある意味でリアルですよね。「女の子はみんなに好かれなきゃならない」みたいなセリフもありましたし、「ふわふわ系でちょっと抜けたキャラクター」というのが、実は自分自身を元気付けるためのフェイクだった…。
[竜] うーん、フェイクというか、「なりたい自分」ですよね。演じているというよりは、そういう自分になりたいから、がんばってそう振舞っている。フェイクっていうと嘘をつくために騙している、騙すのが目的になるけれど、あのレナはそうじゃなくて、そうなりたいと思う自分になるためにがんばっているんですよね。
―― 非常に謎の多かった人物がじつは驚くほど「普通」の人だった…今回もそうでしたが、そのギャップが非常に面白いなと思うのですが。
[竜] それは皆殺し編の冒頭でも書かれてくると思うんですけど、今までは園崎家がすべての陰謀の中心であると思っていれば、それで決着が着いたんですよ。つまり「謎だけど多分園崎家が暗躍しているだろう」で決着をつけてきたことも、目明し編や罪滅し編のラストまで来ると、園崎家って実は暗躍していない、偉そうに振舞っているわりに案外何にもしていない。出題編の中で多くの方がブラックボックスだと思っていた部分が、開けてみたら何も入っていなかった。レナもそれに近い所があるんです。「解」と銘打ってますから、怪しげな要素が一つ一つ消えていく過程の途中ですので。だからかつてはレナには何かが乗り移っているとか、二重人格で竜宮レナの他に、もう一人オヤシロさま的な人格が存在するって言う推理もあったのですが、今回のレナは普通の女の子だった、というのはそれに対する一つの答えかもしれませんね。あくまで「解」は4話合わせて回答編なので、今回をもってファイナルアンサーというわけではないんです。全部読み終わって初めて本当に終わるように出来ているので。
[編] 今回で終わりか、次で終わりかとやきもきしている方も大勢いそうですが。
―― もしくはこのままでいくのか、それとも第二、第三のちゃぶ台返しが待っているのか、まだ疑心暗鬼。
[竜] 皆さんは一話単位でのファイナルアンサーを期待されてしまうのですが(笑)、あくまで連載作品なので。
―― 前回も同じ話がでましたが、やっぱり、答えを、早く答えを!という感じですか(笑)。
[竜] ですね~。今回をもって鬼隠し編のファイナルアンサーですね? というメールは結構来ました。いやそんな事はないですよ。そもそも、目明し編だって綿流し編の裏ではありますけれど、別に綿流し編の完全なファイナルアンサーではないんです。あくまで世界観の一つに過ぎないわけで、目明し編では「園崎家は実は暗躍していないのでは?」という答えを示しただけで、綿流し編の全部を説明しきったわけではないですし、だから連載だと思って続きをお楽しみいただければと思っております。でも、多くの方が期待しているようなレベルの多くの謎は、次回の「皆殺し編」でほとんど出てきます。7割方? 8割方? 9割かな?
[八] そうですね。そのくらい出ちゃうだろうな。
―― では今回でなんとなく納得した感じに傾くのは、まだ早とちりですか?
[B] 雛見沢大災害とかは、あのへんまだ出ていませんしね。
[竜] 解けていない部分はまだ山のようにありますからね。
[編] 襲い来る精神的恐怖と、友達への疑心と、不可解な主人公の死。そんな鬼隠し編の謎は、今作品の中で、主人公の勘違いだったのかもしれないという答えとして語られてしまった。とすると鬼隠し編というシナリオで、罪滅しを通してすら見えなかった『ひぐらし』の他の謎の答えはいったいどこにあるのだろうと。『ひぐらし』の謎とは一体なんなのだろうか?という最大の疑問が残ります。
[竜] それはですね、つい最近他の場所で答えたかもしれませんが、次回の皆殺し編は、もういきなり冒頭で、かなり大きな謎がすとんと解けちゃいます。それこそ『ひぐらしのなく頃に』というタイトル画面が出る前から、種明かしが始まっちゃうので、推理の対象として作品を楽しんで下さっている方々は、皆殺し編を見てからではなく、見る前に答えをメモか何かに書いておいたほうがいいかも知れません。もう即、始まって5分ででっかい答えが出てしまうので。というか、いきなりこの作品世界の構造式の説明から始まってしまうので。
他の場所
『虎通』以外の媒体で行われたインタビューという意味。【KEIYA】
―― 私は今までプレイしてきて、今回のシナリオで『ひぐらしのなく頃に』というのは、人の心の闇のようなものを描く話なのかなぁと、個人的な結論に達してしまったのですが。
[竜] 罪滅し編の後の感想としては至極的を得ているものだと思うのですが、でも目明し編を終えられた頃には、悲しいすれ違いの悲哀の物語なんですね、という評価もありましたので、多分次のシナリオが終わればまた違った評価になるかと(笑)。
―― まだ結論の感想を出すには早い、という事ですね。
[竜] ただ、各シナリオには明確なテーマがありますので、今の時点ではそれは何も間違ったことではありませんよ。
―― ちなみに今回初めて出たと思うんですけれども、窓際で雲を眺めている女性。あの方は…。
窓際で雲を眺めている女性
TIPS「雨雲の予感」に出てくる謎の人物のこと。このシークエンスは彼女の一人称で書かれている。甘党で騒がしい何者かが同席しているようだが、その人物の正体も不明。【KEIYA】
(07th Expansionメンバー一斉に含み笑い)
[竜] あれは、ぶっちゃけて言うと……(考える)……あ~その言い方だとぶっちゃけすぎか。
―― ぶっちゃけたお答えだと、掲載時は自動的に伏字になるんですが…。
[竜] あれは~。
―― やっぱり聞かないほうがいいな。止めます。
(一同笑)
──楽しみが減ってしまいますし、前回の「ひぐらのなかせ方 再」は「フセ字多すぎ!!」というお叱りがありまして……。え~と、一応、梨花ちゃんに絡む話なのですか?
[竜] そうですね。梨花に絡むエピソードです。次は梨花編とまでは言いませんが、かなり梨花について触れるシーンが増えまして、彼女の周りとか、普段の生活とか、何を考えて、何が面白くて生きているのかというところを語れると思います。今回がレナについて解析した話だとすれば、次回は梨花についてもかなり触れられる。梨花が主人公かといわれると、必ずしもそうではないのですけれども、大分、というか相当梨花に踏み込んだ話ですね。
―― 魅音→沙都子→レナ、で梨花と。これはこの順番で核心人物に近づいているのかなと。
[竜] 基本的にはすごく狭い世界の物語で、結局は圭一を中心とした仲良し5人組のお話なんです。今回の話で、レナと圭一の暗い話も明かされましたので、あと、完全に明かされていないミッシングリンクは、最初は割とどうでもいいと思われていた梨花だけが残っている。その梨花が明かされることで、『ひぐらしのなく頃に』という小世界の謎は、まずは解けるのではないかと。
最初は割とどうでもいいと思われていた梨花
鬼隠し編~祟殺し編の時期を指しているものと思われる。出題編ラストの暇潰し編を読めば、誰もが「梨花には大きな秘密がある」と考えるはずだからだ。【KEIYA】
[編] 最初の頃の梨花のポジションはどちらかと言うと「お人形さん」でした。
[竜] ですね。非常に存在感が無い、ちょこんといるだけのマスコットみたいな存在。魅音やレナは何を考えているのか、例えば、レナはそのミステリアスさで一体何者なのかとずいぶん注目が集まりましたし、魅音は園崎家がらみでどんどん注目されて蓋が開いてきましたが…蓋を開けてみると意外とヘタレだった(笑)。レナは想像したよりもずっと普通の子だった、沙都子は普段強がっているよりもかわいそうな子だった。じゃあ、普段ただ笑っているだけの、お人形さんのような梨花はどうなのか、と振るとまた楽しそうですよね(笑)。レナについての紹介が終わった後、残っているのは梨花だけ、その梨花はどんな人なのか、というのが全8話中の7話目としては妥当なラインだと思います。これが第8話だと、じゃあ梨花が黒幕かということになっちゃいますよね。
(一同笑)
―― では次回はある意味エンディング直近のクライマックスな展開に。
[竜] そうですね。今回は結構、後半好きなんだけれどな(笑)。
―― 今回というのは?
[竜] 皆殺し編ですね。結構ラストのほうは、好きで。
―― 罪滅し編は目明し編のような「裏」ではないということでしたが、ある意味で鬼隠し編の人物の役割を入れ替えたような展開ですよね?
[竜] 鬼隠しの展開に、祟殺し的な雰囲気ということで、鬼隠しと祟殺しを混ぜてごっちゃにして、主人公を変えました、という雰囲気なのかなぁ?だから、綿流しと目明しほどがっちりと表裏一体というものではないですね。
―― 圭一とレナは、結果的に同じ人物を殺していますが。
同じ人物
北条鉄平のこと。レナは間宮リナ(律子)も殺している。なお、リナは祟殺し編だと冒頭で腐乱死体になっているが、その犯人は明示されていない。【KEIYA】
[竜] これまで圭一が殺す側の主観で視ていたのですが、今回の圭一はかなり客観側から見ている。そうすると色々とレナの誤解なんかが見えて、レナの考え方は非常に滑稽だったと思うんです。だからわからない時はミステリーだったんだけど、分かってしまうと何て馬鹿馬鹿しい、そういう意味を含めて今回は「喜劇だ。」というキャッチフレーズになるんじゃないかと思うんです。
「喜劇だ。」というキャッチフレーズ
原作版罪滅し編の裏ジャケット(バックインレイ)には「惨劇を踊れ。それは喜劇」というキャッチフレーズが印刷されていた。ちなみに、ジャケットイラストは大斧を持ち、オイルライターを宙に舞わせたレナ。罪滅し編の読者ならどのシーンかはすぐに分かるはずだ。【KEIYA】
―― 圭一が北条鉄平を殺す時は非常にテンションの高いシーンでしたけれど、レナは、あっさりとやってしまうのですが。
[竜] 圭一とレナの考え方の違いですね。圭一は沙都子のために、鉄平を殺さなくてはとあそこまで思っていても、自分をアドレナリンで鼓舞しないと、やっぱり人を殺すという所まで到達できない。でもレナという女の子は違っていて、必死に必死に考えて、ああ殺すしかないと結論したなら、あっさり実行できてしまう。鉄平の時は落ち着いていましたが、もうそれしか方法がないんだからと、思い切ってしまったらあっさりと、でしたね。
―― 偏見かもしれませんが、私はああいう女性の描き方はすごくリアリティがあるなと思っているのですが。
[竜] レナは頭の良い子ですね。気も利きますし、見てみぬふりもできる。
―― 一番初めのシナリオ(鬼隠し編)で、レナが圭一の家の中に入ろうとして、指がはさまったドアを無理矢理閉めるシーンがありましたが、もし『ひぐらし』に選択肢があったなら、レナに殺されてゲームオーバーでいいからドアを開けてしまいたい、「なんでこのゲームは選択肢が無いんだ!」みたいな感じだったんです。あ、脱線しますが、前回竜騎士さんに、彼女にするなら、あるいは嫁にするなら誰?と伺って「彼女→魅音」「嫁→沙都子」のお答えでしたが、私は断然レナ派なもので。
指がはさまったドアを無理矢理閉めるシーン
ドアを閉めるのは圭一。その時、ドアのチェーンにかかっていたレナの指を挟み込んでしまう。【KEIYA】
[竜] だから、結論から言えば、あそこでドアを開ければレナのおいしい食事が食べられて、圭一は満腹になって、自分がどんなにくだらない思い違いをしていたのかを、あっさり気づいたのかもしれませんね。
―― あの雨のシーンは「彼女がかわいそうでドアを開けてあげたい。でも俺を騙そうとしてるんだ。演技なんだ。」みたいな、葛藤が圧力みたいにのしかかってくる、感情的に凄く揺さぶられたシーンですね。
[竜] 今だからこそ、あのシーンを良く思いついたなぁ。と思います。
―― でも「ドアを開ければレナのおいしい食事だった」というのは、罪滅し編まで読んだ後だと、なおさら悲しく響くフレーズですね…。
―― 少しお話は変わりますが、鷹野さんの薀蓄が今回は重要なキーというか、読者はかき回されたというか…。作中の、特にTIPSで民俗学や心理学関係のお話が出てきますが、ああいったネタはどうやって仕込んでこられるのですか?
[竜] 私は本格的に民俗学をやったことはないので、夏休みの宿題的な感じです。実際に郷土の残酷な昔話に興味があったらこういう調べ方をするだろう、という程度の調べ方をしてます。本当に民俗学をやってらっしゃる方から見たら、なんてメチャメチャなと思われてしまうでしょうけど。
―― かなり資料などに当たられるんですか?
[竜] 最近はインターネットが普及していますから、雰囲気だけならいくらでも調べられますよね。心理学については、個人的に興味があって本なども割と読んでいたので、すんなり書き上げることが出来ました。だから、あれはその方面の先生方が読んでも、一部単語の使い方が間違っているかも知れないけれども、大きな誤りは無いのではないかと思います。
―― 先ほどちょっと作品のテーマというお話をしたのですが、『ひぐらし』全体のテーマ、メッセージ性というのは意識なさってますか?
[竜] それは最初からあります。8話構成に決まった段階から、「これはこういう物語なんだ」という事は決まっていますね。現時点で言ってしまうと、かなり7話8話の傾向が見えてきてしまうので、ちょっといえないんですけれど。多分、皆さんが今いくつかキーワードを上げられたら、その中にはきっと混じっているのではないかと、おぼろげながらも物語のテーマは出始めているはずです。
―― 作品は、やっていて面白い・楽しいという部分を追求するものと、物語を通じて何か伝わってくるものがある、という2つの面があると思いますが、『ひぐらし』では前者と後者の比重をどのようにお考えですか? エンターテイメントとしての作品か、メッセージとしての作品か。
[竜] やっぱりエンターテイメントありきです。少なくとも『ひぐらし』は娯楽作品であって、別に文部省推薦とかの作品ではないので。だから楽しんでもらってナンボです。ですが、楽んでもらっている中から、私が申し上げたいテーマが一つでも伝わるなら、それは望外の喜びという事ですね。基本はエンターテイメント。「戦場の狼」をやりながら、戦争の悲惨さを学んだりすることもアリですし(笑)。
―― 逆に言うと100%エンターテイメントというわけでもなくて、底辺に流れるテーマも。
[竜] あります。私はそろそろ自分の作品のジャンルを「ミステリーやホラー」という縛り方からは逃れたいなぁと思っているんです。これは最初から決まっていたことなんですけれども、『ひぐらし』は最初からエンターテイメントなんです。エンターテイメントの中にミステリーやホラーの要素が入っているだけであって、ミステリーやホラーしかやりませんというわけではありませんので。部活のシーンが単純に楽しいだけのシーンであるように、喜怒哀楽、全部の感情が楽しめる作品であるべきだと思って、作っているんです。たまにご感想の中で、「目明し編」以降あんまり怖くありません、というのを頂くのですが、そもそも『ひぐらし』って怖いだけの話じゃないんですよ、という事なんです。
―― 最初の方のシナリオはエンターテイメントの比重が大きいのに対して、今作あたりからテーマ的なものが浮上してきている気がするんですが?
[竜] やっぱりテーマ性が解の特徴ですね。前半の方に重いテーマ性を持たせているのではなく、もちろん背面には隠してあるのですが、娯楽性が優先で、怖い・謎というのが優先されていますけれども、解に入ってからは、テーマを少しずつ訴えていくほうになってきたので、目明し以降は、大分そういったメッセージ性を強く感じていただけるようになってきているかと思います。全部終わったときに、それが尚感じていただけるなら素晴らしい事だと思います。
[竜] よく「ひぐらしの何が正解ですか?」と聞かれるんですが、これは…すごく誤解というわけではないですけれど、犯人は誰で、犯行現場は何処で、凶器は何で、というのを当てるのが『ひぐらしのなく頃に』の正しい推理では無いんです。もちろんそれが推理できるならば、それも素晴らしいのですが、それだけではない。『ひぐらしのなく頃に』というのは、複数のシナリオがいっぱいある作品じゃないですか、それを重ねてみることでしか解らない真実というものがあるはずなんですよ。これは前にもお話したかもしれませんが、この世界と言うのはゲーム板の世界なんです。色々なマスがあって、役割を振ったコマが動きまわって織り成している世界。だからゲーム板のルール、法則を見つけ出すのが実は正しいんです。例えば富竹さんの死因とかは、主人公が普通の学生である以上解るはずがない。もしもそれを推理するのが作品の目的だったならば、主人公は警察や鑑識の誰かに設定するべきなんですよ。でも、主人公は学生で、富竹さんの死因に関しては全然データが明かされない。という事は、そこをそれ以上、推理するのは非常に困難なんです。なので死因追求という方向に踏み込むのではなく、もっと世界の根本たるルール…ここまで6本の話を重ねてきているわけなので、この世界の共通ルールが見えてきているはずなんです。その共通ルールを暴く、それで『ひぐらしのなく頃に』のゴールって何?という事に気づく。というのが私がこの作品で真にやりたかった事です。『ひぐらしのなく頃に』という物語はゴールに辿り着く物語なんです。たまたま私たちは、全8話で終わると予告していますから、皆さん8話で終わる事を知っておられますが、もし予告していなかったら、多くの人たちにとってはいつ完結するかわからない物語なんですよね。鬼隠し・綿流し・崇殺し…とありますけれど、極論ですが他にもいくらでもあの惨劇の世界は大量生産できます。RPGのようなゲーム板の世界ですからね。ところが8話で終わるということは、この世界は何かの理由で終わる…終焉もしくはゴールが存在するんですよ。では何で8話目で終わるの?というと、8という数字に意味があるわけではなく、あの世界には終わりがあるって事なんです。あの世界が終わる条件っていうのが何なのかという事が見えてきたときに、『ひぐらしのなく頃に』というゲーム板の法則性を、今発表されているシナリオ全部を重ねて、その法則性を見出した時に、この世界をゴールに導くことを妨害している要素が幾つか見えてくるはずなんですね。そうすると…うーん…これ以上話すと皆殺し編の世界に入ってきてしまいますが。
[八] そうだねぇ。
[竜] うーん、ヒント………それを言ってしまうと即答えになってしまうなぁ。
―― 即答えは無しでお願いします(笑)。
[竜] ぼかして言うと、それに気づく物語なんですよ。よく一般的な推理小説にあるように、犯人・トリック・アリバイを暴く作品ではないんです。暴くべきはあのシナリオを全部重ね合わせてみる事、ボードゲームの戦艦ゲームで、見えない相手の戦艦に魚雷を当てるように、このシナリオにある、このシナリオにない、と言うように一個一個当てていくのが解答への近づき方なんです。そうすると、一般的な推理小説の探偵たちには絶対に推理できないことが『ひぐらし』の世界では推理可能になったりします。身近な例をあげると、ここにある女の子がいて、主人公の男の子がデートに誘おうとする。「今度の日曜日映画でも見に行かない?」と誘ったら、「ごめんなさい。今度の日曜日は仕事があるの」とやんわり断られた。この時点で主人公は、彼女は日曜日に仕事があるから仕方が無いなと思っていますよね。これが最初のシナリオ。次のシナリオで「今度の日曜日食事にいかない?」と聞いたら、同じく仕事があると断られた。ところがさらに次のシナリオで、その子に「今度の日曜日水族館にいかない?」と聞いたら、「いいよ」と言われたとする。その世界での主人公は、デートに誘えてラッキーと思っているだけかもしれないけれど、このシナリオを全部見てきた観測者の目線では、「この女の子は、本当は日曜日に仕事はないんじゃないの?」という答えが推理できますよね。『ひぐらし』というのは、こういう推理を可能にしてくれる世界なんです。そして、この子のシナリオをよくよく調べていくと、この子は基本的にこの男の子のことをあんまり好きではないんだけれど、水族館には目が無い女の子なんだ、という背景が浮上してくる。本当は日曜日に仕事が無くって、日曜日の仕事というのは、デートを断る方便なんだなと。水族館を天秤にかけるとデートに行っても良いかなという方向に傾く、でもとりあえずこの女の子の日曜日に予定はない。もし彼女がなにかの容疑者だとしたら、日曜日の彼女にアリバイは無い、という解が導き出せますよね。これが『ひぐらし』という多層構造世界ならではの推理で、いわゆる名探偵では出来ない推理なんです。もし一般的な推理小説の探偵が、女の子に日曜日の用事が無い事を確認しようと思ったら、彼女の手帳を盗み見たりとか、彼女の日曜日の足取りを尾行しなくてはなりませんよね。でも、多層世界の『ひぐらし』のプレイヤーは、世界のズレの中から推理が出来るんです。だから、この男の子と女の子の世界に存在する探偵ならば、彼女は日曜日は仕事があったから、犯行現場にいたはずがありませんよと言うでしょう。ところが、プレイヤーだけは「いや嘘だ、彼女は水族館に誘われたときに、コロッと来たから、日曜日にはアリバイは無いはず。」…今回罪滅し編のなかで、梨花が神の目線的な事柄に言及しますが、これは多層世界的の観測者である、プレイヤーの方々にしか導き出せない、シナリオを重ね合わせた神の目線から真相を探ってくださいという、ヒントだったんです。だから、ひとつのシナリオだけをじっとみて解らないことが多いのは、実は当たり前なんです。『ひぐらし』は、シナリオ単品だけを見て答えが出せるようには作っていないのですから。こうやって推理して考えていくと、圭一が殺人鬼ではないことがあっさりわかりますよね。鬼隠し編では確かに疑心暗鬼に捕らわれて殺しましたけど、それが必然ならば圭一はほかのシナリオ全部でも仲間殺しをしていなければいけない。でも、現に圭一は鬼隠し編でしか仲間殺しをしていない。レナも同じですよね。罪滅し編でしか仲間を襲わない。詩音だって綿流し編と目明し編以外では暴走しない、ごく普通の学生をやっている。つまり、必然性がない。そうやって考えてくると、色々と要素が見えてくる事があると思うんです。にも関わらず、何編になっても必ず殺される富竹の存在は一体どういうことのか…という事あたりから、この世界を支配するルールが見えてくるはずなんです。
犯人・トリック・アリバイを暴く作品ではない
主題になっているのが『ひぐらし』全体の謎解きであることに注意。綿流し編のように犯人・トリック・アリバイをすべて解き明かせる(解き明かすべき)物語もあるし、細部の謎を考えることで全体の謎に迫りやすくなる箇所もある。竜騎士07氏の発言は「犯人・トリック・アリバイだけに固執していると核心部分の謎は解けない」と解釈するのが妥当である。【KEIYA】
―― そういった構造が8本終わったところで全て見える形になるんでしょうか?
[竜] 8本終わったところじゃなくて、7本目ぐらいで(笑)。
―― それで、次回作の冒頭でドーンと。
[竜] 崇殺し編が終わった時点でそういう見方ができているといいと思うんですよ。出題編が終わっていますから、目明し編以降は本当は重ねる必要は無いんです。目明し以降は解答編がはじまっているので、スペシャルヒント、セーブできないスペシャルアイテム(笑)。やはり「解」ですから。なので、重ね合わせた矛盾を探すミステリーは、出題編、つまり暇潰し編までの4話を重ねてやって頂きたいのですが、残念ながらその時点では、重ね合わせて推理するという事を思いつかれた方はほとんどいらっしゃらなかったですね。それに気付いただけでもある意味、正解性は高いと思います。
[編] やはり、一つ一つのシナリオに関する言及が多い?
[竜] そうですね。皆様一つ一つが別の話だと思っておられる方が少なくない。だから私は取材などで、全部同じ世界なんですよと申し上げるようにしています。というのも、今までのサウンドノベルでは選択肢を一つ選ぶと、世界の設定自体が変わってしまうようなものって多くなかったですか?
―― あーなるほど。
[竜] そういうノベルの印象が根強く根底に残っていて、『ひぐらし』も綿流しと鬼隠しの世界では、全然世界の設定が違うんじゃないか、と。そういう思い込みがあると、『ひぐらし』の世界はややこしいかもしれません。
―― 一番初めのインタビューで、「構造と法則の話です」とおっしゃったような。
[竜] まさにそれです。一番初めに答えを言っています(笑)。
―― 今回は今までに比べたらかなりハッピーなエンディングと思ったら、またどんでん返し(悪魔の脚本)がありましたが、やはり次は雛見沢大災害に関するお話なのですか?
悪魔の脚本
本編終了後に読めるようになる追加TIPS。すっかりベテランになった赤坂衛が、30年近い時を経て再び雛見沢を訪れる。ハッピーエンドで終わったはずの罪滅し編だが、実はその翌日、雛見沢大災害によって住民が全滅していたことが明かされる。
原作では隠しTIPSになっており、「悪魔の脚本」の存在に気づかないプレイヤーが続出。そのため、「罪滅し編はハッピーエンドでよかった!」と喜んでいるプレイヤーに対して「TIPSに追加されている悪魔の脚本を読め」と返すのが定番のやりとりになっていた。その内容を知ったプレイヤーたちが次々に打ちひしがれていったことは言うまでもない。【KEIYA】
[竜] も、あります。
―― 「も」あるんですね(笑)。
[竜] もちろん雛見沢大災害だけの話ではないんですが、今度は雛見沢大災害のあの日、何があったのか…結局、雛見沢大災害っていつも“After”な話で描かれているんです。崇殺し編の圭一ですら、全部終わった後にのこのこと目が覚めて村に戻ってきている。今度は、雛見沢大災害の当夜、まさにその瞬間を描く予定です。…って言い切っちゃっていいのかな?(笑)
―― 恐らく「悪魔の脚本」まで読んだ方は、今その辺が非常に気になっていると思うんですが。
[竜] だから「悪魔の脚本」というのは、いよいよ次で雛見沢大災害について触れますよという予告と思って頂いても良いですし、かつ、結局疑心暗鬼に打ち勝っても雛見沢大災害に勝てない限り、あの世界に幸せは無いんだというひとつの、……ああ、なんか答えを言いまくっているなぁ。この辺りの「構造」に気付いた方は、だいぶ正解に近い。…うーん、だいぶぼかした言い方してます。
―― なかなか難しいですね。
[竜] かもしれないですね。案外あっさりと、この世界で皆が幸せになるには、皆が仲良く疑心暗鬼に陥らず、そして雛見沢大災害に陥る前に村人みんなで逃げ出したらハッピーエンドですね~♪と全然深く考え込まないで言われてる方のほうが、ある意味でかなり正解に近いこともある。この世界の法則性に気付き、この世界の終わるゴールについて言及されているわけですからね。この世界は今はバッドエンドだけが続いていますけれど、ということは、グッドエンドになるまで終わらない世界ということになりますよね。ってだいぶヒントを言ってしまったんですが。
―― 先ほどもありましたが、次の皆殺し編は冒頭でいきなりすごいことに。
[竜] 実はですね、悩んでいるんです。毎回発表前に各社さんから紹介用に一枚でも画像をとお願いされるんですが、今回は…。
[八] ヤバくて本当に出せない。
(一同笑)
[竜] 出せる画面もあるんですけれど、主要人物がいない全然つまらない画面だったり…本当に解答編なので、袋とじをハサミで開いてから見てね、という感じです(苦笑)。
[編] 第7話(皆殺し編)でほぼ7割の部分がオープンになるということですが、最後まで語られない残り3割部分というのは、どういったものになりますか?というのをお答えできる範囲で教えていただけますか?
[竜] その3割は補足になるのかもしれません…例えば、犯人がこいつですというのが、はっきり第7話でわかったとしたら、第8話では、犯人がどうしてその事件を起こすに至ったのかという胸中が語られるものになると思います。だから、誰もが知りたい単純なキーワードは第7話でほとんど解ります。例えば、犯人が山田太郎さんだったら、犯人が山田太郎だという事は、第7話で出ますけれども、第8話で山田太郎という人がいかにして生まれ、如何にして人を殺すまでに追い詰められてきたのか、ということが語れるのではないかと。
[編] これだけ広がったお話になりますと、最後に竜騎士さんが何を語られるのか、それがやはり気になってしまいます。
[竜] それはもう決まっている事なので、私は淡々と最後まで書ききるということだけですね。
―― さて、もはや恒例の設問なのですが、前回のインタビューで、罪滅し編はどういったお話ですか?と伺った際は「アクションです。」というお答えでした。では、次回作「皆殺し編」をひとこと、ふたことで象徴するならば、何でしょうか?
[竜] うーん、なんて言えばいいんだろう…。
―― これにお答えいただかないと当インタビューは終われません(笑)。
[竜] うーん、ガツンと味わいのあるキーワードを出したいんですが、うーん…………………………………「ピンチ梨花ちゃん8位転落?」とか。
(八咫桜・BT両氏爆笑)
[八・B] そうきたかー(笑)
[竜] いやぁ最近、梨花ちゃんの人気が低迷してて。すみません、今の無し(笑)。
―― え? え?
[竜] 今のは無し。いや~7位は知恵先生が居座っているので、6位を落ちるということは、8位になるということなんですよ(笑)。知恵先生の7位の重力はすさまじくって、かの悟史くんですら7位に入れなかったという…。
7位は知恵先生が居座っている
ご存じ、圭一たちの担当教師・知恵留美子のこと。元ネタはTYPE-MOONの同人ビジュアルノベル『月姫』の登場人物・シエル。『月姫』では各種エンディングを迎えた後に「教えて!! 知得留先生」というおまけコーナーを閲覧でき、そこではシエルが「知得留先生」という名でプレイヤーに情報を与えてくれる。『ひぐらし』の知恵先生はここから来ており、カレー好きという特長だけでなく、途中から実装された立ち絵の容姿もシエルそっくりである。
『月姫』ファンだった竜騎士07氏が、彼女を二次創作的に『ひぐらし』に登場させたのがすべての始まり(同人の世界では好きな作品をモチーフにした二次創作が盛んである)。その後の経緯は公式サイトの制作日記、2006年8月22日のエントリー「二次創作の公認について」で触れられている。
知恵先生が人気投票で7位の座を堅持していたのは、元ネタのシエルが「第七聖典」という概念武装を有していることや、所属する「埋葬機関」において第七位の序列であることに由来する。07th Expansion作品の人気投票では、そのキャラクターに関係のある順位を狙って票を投じるファンが非常に多いのである。もちろん7位狙いの投票者は熱心な『月姫』ファンでもあったはずだ。
当初ネタキャラと受け止められていた知恵先生が、その後レギュラーになり、他メディアの『ひぐらし』にも登場することになるとは一体誰が予想しただろうか。【KEIYA】
[B] それ、何気にやばい発言ですよ。
[八] 一人誰かがランク外から割り込んでくるという可能性がある。
[竜] でも今回梨花ちゃん人気あったみたいだから、TOP3は無理でも、TOP5ぐらいには入れると思うんだけど。
[B] もしかすると詩音がポーンと8位に転落するとか。
―― なんかとっても微妙なお話を聞いているようですが…。
[竜] 実は、意図的に詩音の出番を減らしている傾向にあるんです。目明し編であまりに人気が出すぎてしまったので、園崎姉妹に「お前ら出すぎ」って出番を控えさせているんですよ(苦笑)。
―― 前半と逆ですね。以前はどんどんプッシュプッシュと。
[竜] そうなんですよ、最初園崎姉妹に人気がないと思っていたので、プッシュしたんです。そして目明し編でプッシュプッシュとやってるうちにバーッと人気が上がっちゃって、オンリーイベントで園崎姉妹限定のものが開かれたりして。全ヒロインが等しく愛されるべきなのに~。
―― では今の園崎姉妹はこんな感じ?(両手で頭をグイグイ沈めるポーズ)
[竜] いや、他も出て来い、みんな出てこい!特に詩音お前だ!!と(笑)詩音も次回結構出てきますし、次は詩音に限らず色んな人が出てきます。できれば、脇役の立ち絵も増やしたいなぁと思ってます。圭一のお父さんみたいに前からずっといたのに絵が無かった人、亀田くんとか。
[八] 出したいね(笑)。
[竜] そういう脇役の人も増やしたいと思っているんですよ、なにせ、鉄平やリナに立ち絵があるぐらいですからね。そういうことをやれたらやりたいです。全部自分の時間の配分なんですが(笑)。…だから次回のキーワードは………一言で言うと、なんだろう? 全然思いつかないな。はっきりいっちゃうと「この世界の答え全部」かな。
[八] 舞台裏とか、楽屋裏とか?
[竜] 舞台裏、ではないよ。あれは舞台そのものだもの。言うならば「皆さんの期待される解答編」かなぁ。
―― ただの「解答編」じゃないところが、なんか意味深ですね。
[竜] だから、解答性は相当高いです。
―― タイトルがすごく気になるんですが。「罪滅し編」のエンドはかなりポジティブな方に振れてきて、前回は伏せ字にしましたが、最終作の「祭囃し編」に繋がるのであれば、一直線に繋がる気がしますが、間にポーンと「皆殺し」が挟まっているにのは、何かあるんだろうなぁと。
[竜] 以前はタイトルを公開しても、誰も何も言わなかったのですが、罪滅し編がこういう終わり方をしたせいで、皆殺し編のタイトルが議論になっているみたいなんですよね。
―― そうですね。
[竜] 殺しますよ~。気持ちよく殺しますよ~。そりゃ「皆殺し編」ですから(不敵な笑い)。
―― 「殺しますよ」にしましょうか? 次作のキーワード(笑)。
[竜] いや(笑)、もっといいキーワードで…う~ん………雛見沢大災害を描きますよって単純に言ってしまって、「また村が滅んでエンドなのね」と思われてしまうのもなんだし……。
[編] 先ほどの「皆さんの期待される解答編」が一番ぴったり来ますか?
[竜] そうですね。多くの方が期待しておられる犯人・現場・アリバイなどがほとんど出ます。ただし、『ひぐらし』の世界で本当に探るべきなのはそこではないんです。本当は、犯人は探りようの無い部分で、そこは“推理困難な部分”なんですよ。そういった事も含めて、推理可能なことと、推理不能な事がほとんど出揃う。まあ、完全に全部じゃなくて、肝心な部分が幾つか残って8話に持ち越しになるんですが。だから、目明しや罪滅し編をやって、全然「解」になってないじゃないか、というご意見の方には、第7話はこれでもか!っていうくらい「解」になるんじゃないかと思うんです。
―― 「皆さんの期待する解答編」っていうのは非常に含みがあるんですが、あえてそういう言い回しということは、真の『ひぐらし』の解答というのは、また別なんですね。
[竜] 先ほども言ったとおり、この世界が終わる法則・終わるゴールがあるはずなんですよ。つまり、犯人が解るのが第7話、最終話ではないという事は、この世界は、犯人が解っても終わらないという事なんです。犯人の名前がわかるという事は、この世界の本当のゴールにとって、そんなに重要なファクターではない。もっと素朴な所にゴールがあるんです。それは多分皆さんもう知っている、感づいているはずなんですけれども、本編で実際に書くまでは認識できない方もいらっしゃるかもしれませんね。
―― その辺も含めて、2006年夏の「祭囃し編」で完結となるわけですね。
[竜] 「祭囃し」を出した後次が冬コミで、さすがに4ヶ月で新作準備は不可能なので、もしかしするとオマケ編を出すかもしれません。いわゆるプラスディスクのようなものを。新作を作るとすると、全部またゼロから作らなくてはいけないので、仮にまたノベルを作るとしてシナリオは除いたとしても、背景・立ち絵・音楽を全く一新して考えなくてはいけない。すぐには無理なので。冬はプラスディスクとして、一度終わった『ひぐらし』の世界をもう一回描いて、この物語にお別れをして、そして次に繋いでいくのかなと思っています。…とか言って『帰ってきたひぐらし』とか『13日のひぐらし』とか『続ひぐらし』『真ひぐらし』になったりして。
(一同笑)
―― 『ひぐらしのなく頃に』のフィナーレまで、「ひぐらしのなかせ方」はお付き合いさせて頂こうと思ってますので、「祭囃し編」公開後に今後のお話などもじっくりお伺いするつもりですが、さしあたり次の「皆殺し編」は、「皆さんの期待する解答編」で「いっぱい殺すよ」(笑)という事でよろしいですか?
[竜] なにせタイトルが皆殺しなんで(笑)。
―― (笑)。どうもありがとうございました。
(取材日2005年9月)