ひぐらしのなかせ方
第二回
竜騎士07が過去に受けてきた名インタビューに、当時の状況を知るKEIYAが解題を書き下ろし! 第一弾は、かつてとらのあなウェブサイト上で公開された「ひぐらしのなかせ方」。
本インタビューは最低限の表記統一などをのぞき、掲載当時のものをそのまま使用しております。新たにKEIYA氏による解題と注釈を加えていますが、※印の注釈は掲載当時のものです。とらのあな様のご厚意に深く感謝いたします。
文中表記(肩書きはすべて当時のものです)
[竜] 竜騎士07氏(サークル代表・シナリオ担当)
[編] とらのあな編集者
2005年 新春、再び東京秋葉原 某所にて。
―― 『ひぐらし解』に合わせて当「なかせ方」も第2弾をお送りしたいと思います。改めて宜しくお願いします。さて、前回我々がインタビューさせて頂いた後も色々と取材はあったと思いますが、取材慣れしてきたりはしませんか?
[竜] いや、慣れないですね。
―― 前回のインタビューもコミケのお話を最初に伺ったので、今回もこちらから伺いたいのですが、前回は「いままで参加してきたコミケとは少し違った」というお話でした。今回コミケ(2004冬コミ)はさらに全然違うコミケになったと思うんですが?
[竜] 今回いわゆる“シャッター前”(※1)だったんですけど、これまでとは別の世界で、戸惑いました。うちは一品目しかなかったので、頒布自体は割とスムーズにできたんですけど、いやーもう…(少し絶句)…今回はウチに来るために皆さん並んでおられるんですよね。
―― はい、そうですね。
[竜] 事実上お渡しするだけなんです。今までは島中(※2)の中の一人で、もちろん、うちに並ぶ方などいない。通り過ぎるお客さんを呼び止めて「いかがですか? こんな作品ですよ」ってPRして、場合によっては車のショールームみたいにアピールして、お客さんから「どうなの?」とか「こういう絵だけど本当に怖いの?」とか「100円だけど完成してんの?」とか、色々やりとりしながら納得して買ってもらう中にコミュニケーションがあったんです。でも今回はそういうのがなかったので、…私の中のイベントでは一番異質でした。
お客さん
インタビューでは便宜上、一般参加者を指して「客」という言葉を用いているようだ。
前提となる大切な理念として「コミケに客は存在しない」というものがある。コミケの来場者は、作品を頒布する「サークル参加者」、作品の受け手である「一般参加者」、場の用意を行う「スタッフ参加者」に大別される。全員が「協力してコミケを作り上げる参加者」であり、「客」は誰一人として存在しないのである。
近年、この理念を知らない一般参加者が「客としてコミケに来てやったのに云々」といった発言を行い、他の参加者が眉をひそめるというエピソードが聞かれるようになってきた。これからコミケに参加する人は、こうした「お客様根性」を持ち込まないよう注意していただきたい。
ちなみに、コミケでは「売る」ではなく「頒布する」という表現を用いることが多々あるが(私も「頒布」を基本としている)、これについてはショップやサークルによってばらつきが見られるようである。【KEIYA】
―― 制作日記の中で「終わってから少し寂しくなった」というような事を書いておられましたが?
[竜] 一種の燃え尽き症候群みたいで。いつもイベントが終わってから最初の1週間ぐらいは死に体になるのですが、今回はさらにコミケの後にも色々ありまして。
―― スペースの中にいらっしゃって、目の前にズラーっとお客さんが並んでるような状況ですよね? それを最初に見た時はいかがでした?
[竜] 「嘘だ」…と思いました。
(一同笑)
[竜] 実感なかったです。開場前はシャッターで隔てられてるじゃないですか。それがジャコンジャコンと開いていくと、ブワーっと前に人がいる…。これまでに経験したことのない別の世界でしたね。
―― スペースの運営とかも苦労されたのかなと思うんですが。
[竜] 品目が一つだったし、今回単価が1,000円という事でおおむねお釣りが発生しなかったので、頒布形態としては一番楽な形です。いままでは100円だったり、カードを作っていた時は500円、700円という単価で非常に釣り銭のやりとりが複雑だったので、そういう意味では頒布そのものは楽でした。
―― 竜騎士さんご本人は売ってらっしゃったんですか?それともスケッチブックとか、ご挨拶に来られた方も凄く多かったと思うんですが。
[竜] 当日は何人体制だったかな?1…4…5…6、6人体制か。サイト管理人のBTさん(※3)が列の管理をやっておりまして、他になるせ椿さんと前川さんのイベント(※4)で司会をやってくれた女の子と、それから個人的なご縁で来てくれたフィギュアの造形師の方が2人応援に来て頂いて、「ワンフェス(※5)とコミケ、ジャンルは違えどイベントは同じ、慣れている」と(笑)。
―― いい話ですね、それは(笑)。
[竜] という訳でフロントにその3人、もう1人が中堅で装填手。
―― 装填手(笑)
[竜] 箱からどんどん出していって、たまにお釣りが発生したら千円札を用意してという感じ。私がさらにその後ろで、段ボールをつぶしたり、お金を整理したりというポジションにおりました。
―― 『ひぐらし』のジャンルで描いてるサークルさんも増えているので、そういう方々もたくさんいらっしゃったんじゃないですか?
[竜] そうですね。サークルさんもたくさんいらっしゃいました。残念だったのは今回ブースを離れられなかった事ですね。今回『ひぐらし』の本がいっぱい出てるって噂は聞いてるのに、自分で回れないのが悔しくて。
―― 後で伺おうと思ってたんですが、『ひぐらし』のオンリーイベントがとらのあなを含めてありまして、竜騎士さんもいらっしゃってましたが、いかがでした?
オンリーイベント
あらゆるジャンルの作品が並ぶコミケとは違い、特定のジャンル、特定の作品などをテーマに行われる同人誌即売会のこと。よく「オンリー」と略称される。同人作品の頒布が行われるイベントはコミケだけではないのである。【KEIYA】
[竜] 凄く楽しかったです。私は今まで一番小さいイベントでも50spぐらいしか経験なかったんです。その半分以下なので、盛り上がりはどんなもんなんだろ?と最初は不安だったんですよ。閑古鳥だったら主催者さんに申し訳ないな…とか。でも、入れ替え制になるくらい沢山の方がいらっしゃって。夏コミ後から知名度が上がった『ひぐらし』を、冬コミ前のあの時期に本を作って参加されるサークルさんって、皆さん熱意のある方ですよね。
50sp
「50サークルスペース」の略。作品を頒布するサークルのスペースが50個あるという意味。サークル参加者は与えられたスペース(通常、長机とパイプ椅子が用意される)に自分の作品を並べて頒布を行う。【KEIYA】
熱意のある方
8月中旬の夏コミと12月末の冬コミに合わせて本を制作するサークルは多い。『ひぐらし』オンリーイベントが行われたのは、冬コミ向けの作品作りで忙しい時期である。その中で時間を捻出してオンリー用の本を制作したサークル参加者は、非常に熱意がある方々と言える。【KEIYA】
―― そうですね。凄い勢いで本を作ってらっしゃった方もいますから。「ひぐらし」オンリーイベントなのでご自分の作品の本がたくさん並んでる訳ですが、ご覧になった感想はいかがでしたか?
ご自分の作品の本
ひぐらしファンが制作したひぐらしの二次創作。圭一を始めとした登場人物を題材に、原作のひぐらしとは違うエピソードを描いたりする。シリアスからギャグまで、その表現は多彩である。【KEIYA】
[竜] 凄く驚く事であり、嬉しい事であり…本当に感動するより先に驚きですよね。起きると夢だったとか…そろそろ夢が終わる頃かなーとか思ったりも(笑)。今だから言えるんですけど、多くの方に心配して頂いた通り、あの時は執筆が非常にヤバくてかなり追い込まれてる時期だったんです。執筆以外にも色々ありましたし。でも時間を割いてイベントに行ってみた事でモチベーションが得られた、時間的にはヤバかったんですが、あの3つに出たおかげでやる気が充足したというのがあったので、出てよかったなと思います。
―― オンリーイベントも含めて『ひぐらし』の本がだいぶ出てますが、お読みになってますか?
[竜] 頂いたり、買ったりしたものは全部読んでます。どのキャラがどういう見られ方をしてるのかなっていう感触を、そういう所からくみ取ってる所が多いんですよ。私にとって、仮にレナが格好いいキャラクターであったとしても、他の方から見れば「変な女」みたいな(笑)。だから皆さんがキャラクターをどんな風に見て、どういう風に感じてるのかなというリサーチ的な意味でも凄く役に立ちます。もちろん、そんなの抜きにしても充分読んでて面白いんですが。魅音が多ければ「おおー今魅音が強い」。沙都子が多ければ「あ、沙都子強い」「あ、梨花ちゃんが少ない」とか(笑)
―― 今、巷の人気はどうなんでしょうね?
[横にいたとらのあな同人担当] やっぱりレナが多いですよね。レナと魅音?
[竜] いや、沙都子も強いです。
―― 他所でもお話が出てましたが、竜騎士さんご本人の好みのキャラクターってどの娘なんでしょうか?
[竜] その時は園崎姉妹と答えたのかな?
―― ちょっとぼかしたお答えでしたけど、そうですね。
[竜] 私は当初から園崎姉妹プッシュ気味なんです。その究極の理由はキャラクター設定を全部並べた時に「あ〜あ、この娘一番人気出ないだろうな」と思ったから。4人並べた時に魅音がいちばん辛い役だなと思ったんですよ。ナンバー2で1じゃない、だから1位だけ投票という投票形式だったら魅音には1票も入らないと思ったんです。レナとか沙都子とか…企画の段階で「祟殺し編」はある程度固まってたので、沙都子は「祟殺し編」まで来ればプッシュが入ると。当初「綿流し編」は魅音プッシュの話じゃなかったんです。でも設定を詰めながら「鬼隠し編」を進めてるうちに、「あ、魅音…辛い、弱い」(笑)。嫌いなキャラではないだろうけど、1番支持されるキャラにはならないだろうと気づいて。それで話の骨格はそのままに、魅音をプッシュする話に詰めていって、彼女にスポットが当たる演出に差し替えたんです。あと「鬼隠し編」の感想の中に「気の強い魅音が泣いているのが萌えた」というのが割とあって、…みんな魅音が泣く(※6)と喜ぶんだ(笑)と気付かされたり。レナは「鬼隠し編」のインパクトが強くて、一般的なギャルゲーのヒロイン像+刃物ということで、かわいいかどうかは別にしてもかなりキャラとして“立った”ようですね。
―― レナの鉈は既に『ひぐらし』の象徴アイテムかもしれないですね。ウチのお店でもそんな感じで(※7)使わせて頂きましたが。
[竜] あれももそうでしたけど、本物の鉈って先が丸いんですよね。作中のは先端が尖って突きだしてるタイプなんですけど、そういうタイプ、実在しなかったかなぁ…。
―― テキストだと「斧」って書いてありますから、鉈は間違いかな?とは思ったんですが。でも、さすがに本物の斧は準備できませんし(笑)。
テキストだと「斧」って書いてありますから
星海社文庫版ではすべて「鉈」になっているが、原作の鬼隠し編でレナが持っていたのは「斧」だった。序盤における工事現場の宝探し、終盤における圭一追跡、どちらも斧である。【KEIYA】
[竜] レナは今後、本当に鉈を持って登場する予定ですので。
―― それは楽しみですね。…すいません。ちょっと脱線しました。キャラクターのお話に戻りたいんですが。
[竜] レナの次に魅音が確立して、沙都子が確立して、そしたら「あれ、梨花ちゃんの出番がないよ」というのが今の状況。「暇潰し編」は梨花ちゃんの話というよりは、赤坂の話だろという感じだし。あまり大きい声では言えませんが…梨花ちゃんにもちゃんとスポットライトはあたるんですが、なかなか…暗部に踏み込んだキャラクターなので。彼女にスポットライトを当てる事はすなわち…………なので。
―― 今、目明し編までシナリオが進んで、梨花ちゃん…黒くなっちゃったんですけど(笑)。
[竜] そうですね(笑)。梨花ちゃん人気が変な所で上がってるようで「梨花ちゃん格好いい」とか「雛見沢頂上対決は“ひぐらしレナ”VS“ひぐらし梨花”に違いない」とか。
“ひぐらしレナ”VS“ひぐらし梨花”
鬼隠し編におけるレナの豹変を「ひぐらしモード」と呼ぶことがあった。それに関連して、大人びた言動をする奇妙な梨花を「ひぐらしモードの梨花」と表現したものである。【KEIYA】
―― キャラに関してはそういうバランスをお考えになるんですか?
[竜] 幸い半年に一回という発表形式なので、その間に感想とか評価があるじゃないですか。
―― はい。
[竜] それに合わせて「調整」をかけてる面はあります。「調整」というのは設定を変えるという意味ではなくて、演出を変えていくという事です。…たとえば魅音の魅力を前面に押し出すのであれば、「綿流し」の前半の魅音に関連するイベントを増強するとか、そんな感じで皆さんの反響を聞きながら調整をかけてます。これは連載形式の強みだと思いますね。
―― 作者としての客観を離れて、主観としてどのキャラが好みというのはないですか?
[竜] 主観…。
―― 彼女にするならどの娘!みたいな。
[竜] ああー、それは…。
―― もしくはヨメにもらうならこの娘!とか。
[竜] それだと色々変わってくるなぁ(笑)。
―― あ、なるほど(笑)。では別々に。まず彼女からいきましょうか?
[竜] 彼女…彼女だから…、彼女かぁ(しばし黙考)。え〜と、やっぱり魅音が一番いいかな。
―― なるほど。ではヨメにするなら?
[竜] 嫁…。長〜くつきあうなら……………沙都子もいいかなぁ(笑)
―― 沙都子“も”?
[竜] 今レナと言いかけたんですが、…どっちの方が面白いかなと考えました(笑)。レナと一緒も面白そうなんだけど。
―― それは各キャラの奥底まで含めて、全てを考えた上で…。
[竜] そう、奥底まで全部含めて(笑)。レナだと嘘がつけない関係が厳しい。
(一同爆笑)
[竜] 沙都子だと騙されてくれるんで可愛いかもしれないし、沙都子がつく嘘も「あ、嘘だな」と分かるので「まあ騙されてやるか」で済みそうだし(笑)。
―― 彼女なら魅音、ヨメなら沙都子。
[竜] という感じもいいかなーと。
―― 脱線しますが、その魅音は我々が今まで魅音と呼んでた方の魅音でいいんですか?
[竜] ああ、そうです。キャラクター紹介での魅音の方です。
―― 「目明し編」以後、呼び方をどう区別するか少し悩んだんですが。
[竜] それは入れ墨のON/OFFでつけていただいて(笑)。入れ墨ONの方が魅音。最初に魅音だと思った方が魅音でよろしいんでないかと思います。
―― 「目明し編」で明らかになりますが、あの双子が際限なく入れ替わっていくトリックは最初からああいう形で…。
[竜] ネタバレ的な言い方になりますが、鬼隠し編そのものでやりたい謎か
けというのは、もっと他の所に謎があるので…(ネタバレのため原文空白)。「綿流し編」のトリックを作る時に……(ネタバレのため原文空白)。あ、ついでに「魅音強化月間」とも重なりましたし(笑)。それで…なんか話せば話すほどバサバサ文章を切らなきゃならない箇所が増えますね(笑)。「鬼隠し編」の感想が来たときに(ネタバレのため原文空白)です。…という事は詩音という存在は(ネタバレのため原文空白)。詩音はまあ、それは目明し編を見て頂ければ分かる通りです。
[編] 今回の目明し編の詩音は、竜騎士さんはどんな風にとらえてらっしゃるんですか?
[竜] 詩音は…なんていうんですかね? 純情というか、恋は盲目というか、猪突猛進になるタイプで、それに加えて雛見沢の、というか『ひぐらし』にある悲劇性が重なって暴走するキャラなんです。これは当然「綿流し編」が出来た時に用意されたシナリオで、「綿流し編」が進行する裏で、詩音が悟史くんの失踪の謎を御三家の暗躍によるものだと判断して、復讐をしていく復讐劇。その過程で圭一を利用している訳です。それが圭一目線の「綿流し編」では、彼があたかも命を狙われているような感じがする、まったく別の話に仕上げてあります。それが「綿流し編」のキャッチフレーズの“難易度は劣りますが非常に悪質です”という文章につながる。このシナリオに限れば難易度は低いはずなんです。誰が見ても双子の娘がどこかで入れ替わってるから、1/2の確率で犯人が当たる。魅音が犯人/詩音が犯人、どちらかで当たりです。ところが、プレイした方々…登録して頂くと無料でソフトをお送りする、その代わり感想を送って下さい、という感じのテストプレイヤーの方が当時50人から100人ぐらいいらっしゃったんですが、その方たちがほとんど推理を放棄してしまった。
「綿流し編」のキャッチフレーズ
原作にはシナリオセレクト時に表示される序文があった。その最終行を抜粋する。
・鬼隠し編「難易度は非常に高いですが、その手応えをお楽しみ下さい。」
・綿流し編「難易度は鬼隠し編に劣りますが、非常に悪質です。」
・祟殺し編「難易度は最悪。多分あなたは推理するにすら至りますまい。」
・暇潰し編「推理不能。あなたはこの物語を拒否する権利があります。」
ただしこの一文は出題編当時のものである。解答編の情報を元に再読すれば推理可能なシーンは増えていく。【KEIYA】
―― はー。
[竜] 誰も勘ぐってくれなかった。「魅音かわいそうですね」で終わってしまって、私は「あれー?」と思っちゃって(汗)ある意味ショックを受けたんです。私としては「どこから入れ替わったんだろうね」とか…例えば「綿流し編」の中だけの、あの祭具殿の侵犯が村の懲罰対象になっている設定が出たら、お魎が殺されているのは明らかに筋違いなんですよ。といった部分があるのにも関わらず、誰もお魎の死を疑わしく思ってくれない。私の方から「お魎死んでますよね」と振ったぐらいで。ある意味お疲れさま会でのミスリードが効きすぎちゃって、みんなそれで納得してしまった。だから今のシナリオセレクト画面で、4つ並んでいる形式は「祟殺し編」以降のスタイルなんですが、その中で「非常に悪質」の一文を入れることにしました。
お疲れさま会でのミスリード
原作では各編を読み終わった後に「お疲れ様会」というおまけが出現する。登場人物たちが物語を振り返り、各自の感想や推理を語るといった内容。本編とは完全に切り離されており、楽屋トークのようなノリである。
綿流し編のお疲れ様会では沙都子の発言を皮切りに、多くの登場人物が「犯人は魅音、黒幕は園崎家」という持論を語る。大石は「前回のシナリオ(KEIYA注・鬼隠し編のこと)をプレイされた方の予想の、大多数と合致するんじゃないでしょうかねぇ。」とも。魅音と鷹野はこれに異議を唱えるのだが、綿流し編終盤における魅音(実際は詩音)の自供を前提にした会話が多いため、流されてしまうプレイヤーが多かったようだ。【KEIYA】
―― やはり「綿流し編」と「目明し編」はほぼ同時にできた感じですか?
[竜] だからネタは完全に同じです。「綿流し編」をつくっている時に詩音というキャラがいて、悟史くんの失踪に絡んで暗躍している、というストーリーができていた。ただ演出、見せ方に関しては両方で似てる部分もあったので、その後の演出が微細に変わったりはしてますが、おおむね表裏で同じ話です。
―― だんだん核心に入ってきましたね。
[竜] (笑)。
[編] 「目明し編」は「綿流し編」の裏側で、でも『ひぐらし』の根底にある何かは、まだ分からないまま、というのが私の理解なんですが、
[竜] そうですね。
―― 次のシナリオで…。
[竜] ええと、「罪滅し編」ですね。
―― 「罪滅し編」では、またいずれかのシナリオの「裏」になる形式でやられるんですか?
[竜] いえ、過去の事件をなぞっていく形は今回だけです。次はまた新規に話がありまして、事実上他の2シナリオ…シナリオというか『ひぐらしのなく頃に』の全編に関わる大きな謎が解けると思います。ただ、もちろん連載で続く話なので、次作をもって謎が全部すっきり解けました、という事にはなりませんが。そうそう、今回の感想の中で、「目明し編」でほとんど謎が解ける、もしくは完結すると思ってた方々がいらっしゃって。謎が解けるかと思ったらまったく解けていない!っと怒られました(汗)。
―― せっかちな方は早く何とかどうにかしてくれ!という感じなんでしょうね(笑)。「目明し編」が終わって、次の夏まで待てないという声がちらほらと…。
[竜] でも、第一話からプレイして下さってる方々は既に2年間待って頂いてますから(笑)。
―― 前半3編と後半3編で合わせ鏡になるような構成ではないんですね。
[竜] そうです。次は「鬼隠し編」や「祟殺し編」の裏という事ではないです。
[編] もう一つ、前回のインタビューで時間軸は同じで、パラレルな形であると伺ったんですが、「目明し編」の詩音の行動は他シナリオの裏側でも行われているという事になるんですか?
[竜] いえ、それは違います。「目明し編」でもチラリとふれているんですが、詩音は悟史の一件でずっと心に鬱屈を抱えてる。ただ1年で疲れ切っちゃって…1年も空白があれば誰でも感情は落ち着きますから…でも、心に淀んでる部分がある。だから詩音が頭にくる、キレるキーワードがあるんです。「悟史が転校した」とか、悟史くんの存在を否定する話題ですね。あとは心の奥底にある魅音に対するねたみとか、そんなキーワードがいくつかあって、自分にとっての悟史、魅音にとっての圭一、に関する痴話絡みの泣き言を聞いているうちに…。
[編] ありましたね。
[竜] あれがある種の「起爆のキーワード」なんです。だから、他の話でも詩音は心の鬱積、爆弾を抱えているんですが、ただ起爆はしなかった。「祟殺し編」の中でも入江と野球チームの話をしてますが、あの時も悟史の事を心の中に抱えてる。ただ入江だけはそんな過去を知っているので、優しい話し方で接するんですよ。でも圭一は「転校した」と聞いた事を丸飲みしてるので「転校したんじゃねーの?」とサラっと言ってしまって、詩音がカチーンとくる、という場面があります。
[編] なるほどー。
[竜] 今回の「目明し編」以降の詩音は………………、言いにくいなぁ(笑)。
―― (笑)。ですよね。詩音ファンには、次作以降もお楽しみがありますよ、ぐらいで書いておきましょう。目明し編のお話に戻りますが、今までは謎を提示する形、今回からは「解」ということで謎を解いていく形ですけど、書いてらっしゃって違いってありますか? 気分的な違いとか。
[竜] 気分的な違いはあります。今までは演出的に、飛行機でいえば離陸していく…どこまでもどこまでも自由にという感じなんですけど、今度は着陸態勢に入るので、機体を水平に保たなきゃならない、機首を向けなきゃならない、そういう感じになってきました。せっかく楽しくなってきた物語を、徐々に高度を下げて行かなきゃならない…一抹の寂しさはありますね。
―― 前作までは前半が楽しい学園生活で、後半からドカーン、という落差がありましたが、今回は少し違うのかなと思ったんですが?
[竜] 今回は楽しいシーンがほとんどなくて、今までで言う所の「綿流し以後」(※8)っていうのかな? いきなり後半スタートという感じですね。その辺はいままでのいろんな演出を見てみて、そろそろ答えの知りたい方々が多いだろうということで、情報性の高い物を多く入れました。それに感想の多くも「もう部活はいっぱい見てきたから」(一同笑)「答えを教えてくれよ!」というのが非常に多かったんです。だから客観的に見て頂くと分かるんですが、「鬼隠し編」以降シナリオが進むにつれて楽しい部分がどんどん減ってきてる。
―― ええ。
[竜] ついに今回背中とおなかがくっついた状態になった。…と思ったら今度は逆に「部活シーン欲しい」「お疲れさま会欲しい」というご意見が(汗)。
―― 音楽室の要望も多いようですが、こちらは?
[竜] 音楽室追加バッチはそう遠くないうちに。
音楽室追加バッチ
正しくは「パッチ(patch)」。ここでは機能を追加するためのデータを指す。同人ゲームでは不具合修正や機能拡張の追加パッチを出すことが珍しくない。【KEIYA】
―― お疲れさま会と音楽室バッチ(※9)が出るんですか?
[竜] いや、音楽室が先です。お疲れさま会も希望があるので、機会があったら作りたいです。…今回は時間が相当押してたので…実際は一夜、作れる時間があったんですが。
―― 一夜…。
(一同笑)
[竜] あまりにテンパってて、話が思いつかなくて作れなかった。
―― 一夜というのが凄くシビアですね。それは…。
[竜] 八咫桜さん(※10)がスクリプトをガリガリ更新してる横で、彼の作業が終わらないと私が動けないという状況が一晩発生しまして、その時に作れたんですよ。それでだいぶキーボードとにらめっこしたんですが、頭が疲れちゃって全然出てこない。とにかく困ったのが登場人物が多い。
(一同笑)
[竜] 昔は人数少なくて楽だったんですが。私はポリシーとして「お疲れさま会」では各キャラ同じ数だけ喋らせてるんです。最初は5人しかいないので「はい、喋って喋って喋って喋って」と「正」の字をつけていったんですが…今では10人越えちゃったのでもう収拾がつかない(笑)。
―― 今回はお疲れさま会のかわりに、エンディングに挿入されたシーンがありましたが?
[竜] かわりという意味も少しはあるかな?あれを夢ととるか、未来と見るか、それとも選択肢の向こう側と見るかは、読み手の皆さんに委ねたいと思います。
エンディングに挿入されたシーン
「選択肢の先の未来」のこと(星海社文庫版『目明し編(下)』339ページ)。ちなみに、大石が遺品のノートについて語る「幸せのノート」、詩音が母の茜と語り合う「チャンバラで勘当」は、原作だと隠れTIPS扱い。クリア後にひっそりと追加されるため、長らく存在に気づかないプレイヤーもいた。【KEIYA】
―― 「解」になって音楽が変わりまして、スタッフロールにGMLさん(※11)の名前がありましたが?
[竜] 今回音楽を作るにあたってGMLの大将さんにご相談申し上げた事がありました。今まではロイヤリティフリーの曲をずっと使ってきて、凄くいい曲だし評判もよかったんですが、音質とかの問題…もとがMIDIデータなのでそれを加工する関係で、どうしてもしかるべき方がしかるべき形で作られた曲に比べると音質があまりよくなかった。あとロイヤリティフリーというのが災いして、「他のゲームで使われている曲を転用していますね」という指摘を多く受けたり。
音質があまりよくなかった。
ひぐらし出題編の音割れ問題は有名。シーンによっては、音割れした曲を長時間聴き続けなければならなかった。ただしこれはインタビュー中にある通り、元の楽曲データが悪いのではなく、ひぐらしの製作工程上(データの加工段階)の問題。
竜騎士07氏は『ひぐらしのなく頃に ビジュアルコンプリートガイド』(壽屋)において、〈選曲に関してはすごく自信がありました。ところが私は音楽の知識がない人間なものでして、各曲のボリュームがバラバラなのを無理に調整したところ、音がバリバリに割れてしまったんです。〉と語っている。【KEIYA】
ロイヤリティフリーというのが災いして
インターネットには、使用条件の範囲内で自由に使える音楽データをアップしている人たちがいる。中でも使用料を支払う必要がない「ロイヤリティフリー」の音楽データは、ゲームや動画を自主制作する人にとって大きな助けとなっている。
使用条件に違反しない限り誰でも利用できるため、異なる作品で同じ音楽を耳にすることもある。この辺りの事情を知らないプレイヤーが、無断転用と勘違いして憤るケースがあったようだ。【KEIYA】
―― はぁ…。
[竜] 逆に「あなたの作品の曲を他の○○が盗用しています」とか。その度に「いや、ロイヤリティフリーなんです。」と説明するのも(笑)…ちょっと。正直なところ実際問題として他のゲームで先に聞いてた人にとっては、ウチのゲームで同じ曲を聴いたら前のゲームのシーンしか思い浮かばないと思うんです。先入観がありますから。だからロイヤリティフリーではイメージ上限界があるなと判断しまして。
―― それで今回からオリジナルに。
[竜] GMLの大将さんに発起人になって頂いて、mixi(※12)の中に同人音楽作家さんのサイトがあるんですが、そこで「ひぐらしの音楽の差し替えをやってみませんか?」というスレッドが立ってるんです。よく「お絵かき掲示板」とかありますよね。そんな感覚で同人音楽作家さんたちが銘々自分の曲を作って「これはあの曲の代わりで作りました」というのをドンドン上げて下さる。わたしが「こういう曲を作って下さい」とお願いするのではなくて、皆さん自分の得意なジャンルで作って上げて頂いてます。最初のうちは2、3曲ぐらい拝借しようかな、と思っていたんですが、そのうち色んなジャンルの曲が上がってきて「あれ? ほとんどのシーン新曲でいけるんじゃないか?」となりまして、今回全面的に採用する形となりました。
同人音楽作家さんのサイト
恐らく「コミュニティ」のことだと思われる。コミュニティ参加者は、内部で互いに交流を持つことができる。【KEIYA】
―― 通常、ゲームですと「発注」という形を取ると思うんですが、そうではなく…。
[竜] 発注ではなく、有志の方に自由な形式でやって頂きました。スタッフロールを見ると分かるんですが、音楽の方は8人いらっしゃるんです。それは8人に依頼したという意味ではなくたまたま上がった中から私が使わせて頂いた曲の作者が8人というだけでしかない。大将さんはこれを「祭り形式」と呼んでます。あの素晴らしい音楽は、そういう自由な空気の中で生まれたものですね。
―― それは、斬新というか、今まであまりないアプローチだと思うんですが。
[竜] 私も当初は音楽のイメージを合わせる意味でも、1人では大変だとして、2人ぐらいの方にお願いすればいいんじゃないですか?という発注的な考えで大将さんに相談したんです。そしたら、「いや、それよりもっと面白いやり方があるよ」と、今回の方法を提案してくれたんです。ただ、全部まとめた最終的なマスタリングができなくて、今回は各音楽作家さん個別に作ったデータをそのまま使用している。曲によって強弱があったり音圧が違ったりするのはそのせいです。これは各音楽作家さんの名誉の為にぜひ補足させて下さい。
曲によって強弱があったり音圧が違ったりするのはそのせいです。
通常は聞き心地を良くするために、各曲の音量や音質などを調整する「マスタリング(プリマスタリング)」という作業が入る。原作の目明し編では何らかの事情でマスタリングを行うことができず、提出時の曲データをそのまま収録したようだ。よって、聴感上の不統一があってもそれは音楽スタッフたちの責任ではない。【KEIYA】
―― 次作でまた音楽が変わる可能性もあるんですか?
[竜] 作曲者の方々からの感想で「うわー今聞くと作り直したい」という声もありますし(笑)。でも素敵な曲が多かったら、なにも共通の音楽を使う必要はない。今までだったら「怖い曲A」「同B」で統一してきましたけど、やっぱり新曲の破壊力って大きいですから。『ひぐらし』本編でやってきた手口なんですけど、初めてかかる曲は大きいシーンにぶつけてますし、ワンシーンでしかかからない限定曲もあります。私は曲に関して結構貪欲なので、ウチの作品は規模からすると市販のノベルとは比べ物にならないくらい曲数は多いと思います。
―― では次作でも“祭り形式”で音楽がどんどん進化していくという可能性は…。
[竜] かもしれませんね。
[編] 曲名は竜騎士さんがつけてるんですか?
[竜] いえ、MP3のフォルダの中(※13)にあるのは曲を頂いた時のファイル名そのままです。だから中には「DEMO48」とか「t1」「t2」とか、とても事務的な…(笑)。曲名に関しても作曲家さん達の思い入れがあるので、正式な名前をつけてもらえるように手配してます。中には曲ありきで、まだ曲名をつけてない方もいらっしゃるので、正式な曲名を揃えてから音楽室バッチにしようと思ってます。
[編] 私は個人的に「You」という曲が凄く好きなのですが。
[竜] あれは「dai」さんという方が作曲なさったんですが、この方は感想のメールを送ってきて、感想ののっけから「まず、ぶっちゃけ音質が悪いです」と一撃。
(一同爆笑)
[竜] 「ロイヤリティフリーという噂は聞いてますが、あまりにひどい」(笑)。「私にデータを投げて頂ければもっとノイズを減らす調整をしてみせます。ご一考下さい。なんでしたら曲も…云々」というメールが来まして。それで一応「力作が出来ましたら何曲か聞かせて下さい」という返事を出しました。似たようなメールはたまに来るんですが、その後、音楽を送ってくれた方はいなかったんです。ところがこの方は本当に曲を作ってきて「HPを作りました。DLして下さい」と。それで聞いてみたら、これがなかなか…。それで大将さんに連絡を取って「この方をmixiに推薦してもらえませんか?」(笑)。最終的に素晴らしい曲を仕上げてくださったので、メインテーマとエンディングテーマで統一させて頂きました。
「dai」さん
サークルM.Graveyard代表。目明し編のエピローグで流れる「you」は、物語と相まって非常に切なく印象深い、人気の高い曲である。後に同サークルからヴォーカルバージョンも発表された。「あなたは今どこで何をしていますか?」という歌詞に聞き覚えがある方も多いのではないだろうか。どちらもリンク先で視聴可能である。【KEIYA】
mixiに推薦
現在は会員登録すれば誰でもアクセスできるが、当時のmixiは招待制。既存会員の招待を受けない限り、会員登録ができなかった。あるいは「mixi内にある作曲家コミュニティへの推薦」という意味かもしれない。【KEIYA】
―― ほとんど飛び入りのような感じですね。
[竜] 作られたdaiさんのコメントによると「祟殺し」のエンディングスタッフロールの曲をだいぶ意識されたらしいです。
―― 「目明し編」は音楽の評判も高いようですが
[竜] そうですね。特に怖いシーンはアンビエント系(※14)がだいぶ強くなったので、そういうシーンがいい感じで揃いました(笑)。これは他の作曲者さんによるものですが、どれも絶妙な音楽ですね。
―― 金属音がなんともたまらない感じです(笑)。
[竜] 爪を剥がす拷問のシーンなんかは、BGMや効果音じゃない。もう音楽なんですよ。聞いてすぐ「これ使いたいなぁー」(笑)と。
―― 爪をはがすシーンの話ですが、前回まではその手の残酷系のシーンは最後までは踏み込まなかったんですけど、今回踏み込んでられますね。「綿流し編」では釘を指に打ち込まれる寸前で止まってますが、今回はそのシーンまで書かれてる。これは何故ですか?
[竜] 『ひぐらしのなく頃に』では色んな事をやりたいんです。そっち系の演出はまだやってなかったので、今回やってみました。本当は「綿流し編」も、ストーリーは別として当初の演出ではもっとグロかったんですけど。牢に閉じこめられた圭一の前で魅音が詩音の指をぶつ切りにする様なシーンを見せつけられるとか、そんなイメージもありました。最終的に親指の欠けた魅音/欠けてない魅音で、「親指のないのは詩音…じゃ…なかったっけ…(怖)」そんな双子の入れ替え・識別ネタをやろうと思ったんですが、でもテキストを打っているうちに、魅音が過去を贖罪する、しっとり系のネタで行く流れになっちゃったので、残酷シーンはお蔵入りになったんです。当初の「綿流し」はもっと残酷な話でした。
―― あのー、ぶっちゃけお伺いしますけど、そういうシーンを書かれるの…お好きなんですか?
[竜] 別に好きじゃないですよ。誓ってノーマルです(苦笑)。
―― (笑)。失礼致しました。
[竜] 書いてる時はあまり深く考えないですけど、『ひぐらし』は今まで「ひたひたと」とか「背後に何かいる」とか、なにか…オシャレな怖さばっかりだったんですが、もうちょっとドロドロとした綺麗じゃない怖さがあってもいいんじゃないかという事でやってみた演出の一つです。別に、これから『ひぐらし』がグロになるという事ではありません(笑)。
―― 前にお話を伺った時に「次は“痛い”話です。」とおっしゃってましたね。
[竜] 拷問シーンの事ですね。沙都子を拷問するシーンがあったので、公由やお魎を拷問するシーンはお蔵入りになりました。あの時点の設定では全員拷問する予定でしたけど(笑)、でも全員みっちりやると沙都子が死ぬシーンであまり残酷さが出ないなと思って、他はあっさり死んで、沙都子に限ってネッチリ殺そうと(笑)。
―― 従来なかった演出を盛り込むっていう意図なんですね。
[竜] そういう事で今回「痛い系」を意識してやってみました。色んな見せ方があると思うし、『ひぐらし』はそれを試せるキャパシティのある舞台ですので。残念ながら残りの話数がだんだん少なくなってますが、でもまだまだ血沸き肉踊る(笑)展開を。「うおー!」という展開をやってみたいですね(笑)。
―― これも前回少し出たお話ですが、「あの“目”がよく話題になるけど、そればかり話題になるのは少し不本意」的なお話を伺いまして。で、竜騎士さんご本人のこれまでの『ひぐらし』でお気に入りのシーン、演出上気に入っているシーンをいくつか挙げて頂きたいんですが? 例えば圭一が大石と電話をしてる最中に、レナが後ろに立っていた、というくだりが気に入っていると、ちらっと伺いましたが?
[竜] あれは私の中で凄く綺麗にまとまったな、というシーンです。好きなシーンですね。他には、あのレナの目が「嘘だ!」に変わる所。
―― あの強烈な一発目ですね。
[竜] あともう一つ挙げるとしたら…「祟殺し編」の叔父を殺すシーンは結構気に入ってます。北条鉄平を追っかけて行って殴り倒す一連のシーン。厳密に言うとちょっと長いんですが、叔父を殺す犯行当日のシーンが好きで。
―― 朝起きてから。
[竜] そう、色々準備してから犯行に及んで、穴を掘ったりする所に至るまで。あれは普通の一人の男の子が、不退転の決意で人を殺そうと考えた場合に実行できる限界点のような、生臭い、いい話になったと思います。賛否両論で、感情移入できたという方と「幼稚だな、バカだな」と2派いるんです。実際の人殺しなんて小説みたいに簡単にできないと思っているのですが。世間の半分くらいの方は、冷静にやり遂げられるのかなぁ(苦笑)。
―― プレイヤーが主観で、人殺しの段取りを考えていくというあのシーンは、私なんかはかなり重苦しいものがあったんですが。
[竜] こういう誰にも相談出来ない状況で、かつ圭一が独りで問題を抱え込んでる。それで人間一人殺そうとしたら、どんな努力があるかなと考えて。自分が本当にこれから犯罪を実行するように、頭に浮かんだ構想をそのまま書いていきましたね。だから叔父を追っかけて殺すシーンまでいくと凄く興奮しちゃって、アドレナリンが出過ぎて頭痛がするぐらい、あまりの興奮だったので、その日を記録しようと思ってわざわざ日記に書きました。
―― では、あのシーンを書かれる時はかなり感情移入…。
[竜] もう!「ぶっ殺してやるー!!!」(笑)。
―― (笑)。本編のあのシーンもBGMが変わってから一気に動的になりますね。
[竜] あのBGMのタイミングも微調整したいですね(笑)。圭一が「殺してやる!」っていうあのあたり、殺害の場面も気にいってます。もっと細かくいうと叔父の頭にトドメを加えた時に雷鳴が鳴る所。あれは八咫桜さんが入れてくれたんですが、「してやったり!」という感じの凄くいい音になりました。
―― 先ほどの、圭一が電話してる後ろにレナがいた。という場面は割と静かな、ジワジワと怖くなるシーンですが?
[竜] あれは綺麗にできたというか、ホラーの中でも一番上品な部類の怖さですよね。怖さって色々あるじゃないですか?『13日の金曜日』(※15)みたいな乱暴な怖さと、『番町皿屋敷』(※16)みたいな文学になっちゃうような怖さと。あのシーンはお上品系ですね。
―― もう一つのレナの「嘘だ!」は?
[竜] あれは乱暴な部類に入るかな? ビジュアルノベルは絵があってこそ、と思いますのでビジュアルノベルの特性を生かした怖さですね。スティーブン・キング(※17)が小説家である限りあの表現はできない。もちろんスティーブン・キングは凄い作家ですが。でもあれはサウンドノベルでしかできない。しかもああいう絵でしかできない(苦笑)。
―― 既にあちこちで話に出てますが、例の「ひぐらし目」(※18)は八咫桜さんが?
[竜] 八咫桜さんが始めたもので、私は指示してないです。彼もphotoshopが少々使えるんですが、編集程度で絵は描けないんです。ところが知らない間に、目を水色に塗り潰したカットを差し込んでいて、私がテストで「ふんふんふん♪」とか鼻歌まじりでやってたら、いきなりあの目が出てきてのけぞった(笑)。…で「いいねコレ! どうしたの? 使おう使おう! 俺ちゃんとこの目描くよ!」という事で「ひぐらし目」が出来たんです。ところが、私が丁寧に描いた「ひぐらし目」よりも八咫桜さんがエアブラシツールかなんかで適当に塗った最初の「ひぐらし目」の方が怖い(笑)。
―― じゃあ竜騎士さんがあの目を最初に見たときは普通のプレーヤーと同じようにビクっと?
[竜] いやあ「うわ! 怖!!」(笑)。私はもちろんシナリオを全て知ってるので、普通は怖くもなんともない、だからデバックの時は非常に退屈なんですが、あそこだけは「うわ!」。
(一同笑)
[竜] …だってこんな怖い事はないですよ。人の作ったゲームで驚くのは当たり前ですけど、自分の作ったゲームで驚いたんですから(笑)。そんな仕掛けは用意してないんだし。
―― そりゃそうですね。
[竜] あ、でも『ひぐらし』開発ではさらに怖い話があって…
中略(※あまりにも怖いため、とてもここで書くことができません。)
[竜] …そういう上品なホラーもあるし乱暴なホラーもあるので、いろんな表現を遊んでみたいんです。
―― 「上品なホラー」「ビジュアルノベルならではの表現」それから…。
[竜] “痛い”スプラッター的な表現。他にもし、まだやっていない表現があるとすれば「視覚的なグロテスクさ」。
―― う゛あ〜…個人的に血に弱いので、それは…。
[竜] 梨花ちゃんがおなか裂かれてるシーンがありましたが、あれを絵としてやってしまう。でも、それはそろそろ倫理の問題も入ってくるでしょうし、生理的に嫌悪感がある人もいらっしゃるので、実際にそこまでは踏み込みませんが、ただ表現の可能性を単純に列挙していけば、そういう方法も残ってはいます。
―― 悟史くんが今回多く登場してますが、圭一と悟史。登場する時間軸はずれてますよね?
[竜] 1年ずれてます。
―― 彼ら2人のイメージがかぶってくる描写も劇中にはありましたが、2人は同じ役割を持った、連続したキャラクターのような感じなんでしょうか?
[竜] キャラクターとしては全然違います。圭一と悟史が並んで立っていれば全然違う個性です。「鬼隠し編」で悟史が金属バットを持っていた云々という部分は…この次の話が関わってくるんですが、悟史も圭一と同じように なんです。それを知った圭一が何故自分と同じ行動をとってるのか不審がる。でも、それは(ネタバレのため原文空白) です。「目明し編」の悟史は単に詩音の目線で見た悟史でしかない。悟史が凄く薄っぺらに書いてあるんです。仮にですが、悟史本人の目線やレナの目線で悟史が描かれるシーンがあれば、悟史という人間のもっと幅広い面が出てくる。あるいは、それはこれまでの悟史とは全然別の人物像かもしれない。今回の悟史はあくまで「詩音の見た悟史」でしかないんです。
―― 今回の圭一はかわいそうというか、「綿流し編」を裏側から見たら、女の子に単に利用されただけだったという…。
[竜] ただのピエロ役なんです。でも「綿流し編」では彼がさも渦中にある人物のように見える。1本のストーリーでも全然違う物語が2つ存在した、というのが「綿流し編」「目明し編」のキモだった。だからさっき話した、推理を放棄されちゃった感想を頂くのが凄く悔しくて、「こういうシナリオがあるんだよ〜気付いてくれ〜!」(泣)と、思ったんですが。ただその間にも別のシナリオが入ってるし、「綿流し」の公開から「目明し」の公開まで…1年半?時間が空いたので、「目明し編」はとにかく早く書きたかった話ですね。
―― キャラクター的には、あの悟史が悟史の全部ではない、と。
[竜] そうですね。例えば、沙都子と姉妹でいる時の悟史はまだほとんど描かれてない。少しありましたけど、あれは鉄火場でしたから。部活の時、彼がどんな風に振る舞っていたかは分からない。実際、今回は前半部を短くはしょっちゃったので、悟史くんのいる平穏な日常がちょっと足りなかったかな。もう少し描きようがあったかなとは思ってます。――─彼は今後かなり深い関わり方をしてくる人物ではあるんですか?
[竜] 関わってきますね。レナ・悟史・圭一というラインがあるんです。レナは(ネタバレのため原文空白)です。悟史と「鬼隠し」の圭一の2人は(ネタバレのため原文空白)です。どうしてレナは(ネタバレのため原文空白)? これは「鬼隠し」でも少しふれたんですが、次の「罪滅し編」で描き始めると思います。
―― 一方女性キャラクターは、今が全てではないにしろ「こういう人物では?」という憶測が成り立つ程度の材料は出てると思うんです。ところがレナ1人だけ、いまだに割と正体不明ですよね?
[竜] よく「鬼隠し編」がレナ編だと言われるんですが、あれは圭一編なんです。本当の意味でのレナ編は今後登場します。
―― 次回作がレナ目線の「レナ編」という可能性もあるわけですか?
[竜] 見せ方は今、迷ってるところですね。誰の目線で描くか、あるいは複数の目線を導入する方法もやってみたいとか…。
―― ザッピング(※19)というやつですね。
[竜] う〜ん、こういう所は「見せ方」ですよね。事件やプロットは既にあるので、それを誰の目線で語るかも含めて「演出」なので、そこで迷ってる。どうやったらより面白く見せられるか?できたら「目明し編」とは違ったアプローチをやってみたいです。
―― レナは最初に怪しい所が出て、その後のシナリオでは「優しい子、頼れる子」できているので、「謎が深まるばかり」の1番手かなと思うんですが。
[竜] レナは一番最初に「かわいい」で出して、「鬼隠し編」でいきなり壊しにきてますから。彼女の存在が謎めいたものになっていく事で、『ひぐらしのなく頃に』を象徴するキャラクターになってきたと思います。梨花ちゃんはある意味登場の時から怪しいので、今回それがいよいよ牙を剥いた(笑)。レナについての掘り下げは、次あたりからやっていこうかな、と考えてます。ただ基本的に主人公は圭一なので、圭一以外の目線を混ぜるか否か、ですね。例えば悟史がいた昭和57年の回想シーンのみレナ目線にするとか、あるいは魅音に語らせてもいいし、TIPS的な見せ方もある。
―― じゃあ主人公は圭一に戻ってくる?
[竜] そうです。圭一は次はもうちょっと立派になって戻ってきます(笑)。いろんな試練を経て段々進化してる。
―― さて本編も「解」がスタートした所で、お手元にも感想や推理が沢山来ていると思いますが、ズバリその中でいい線いってるものってありますか?
[竜] えーっと、あります。結構あります。
―― 結構ある!
[竜] 個別のギミックの仕掛けについては、結構いいのが出てる。中には「…そのものだよ。」というものある。ただ惜しむらくは、連載形式ですので、まだファイナルアンサーが提示されていない。…ので正解であっても「それ正解!」とは言えない(笑)。過程で色々議論して頂くのが楽しみの一つですから。
―― 前回インタビューで今後のタイトルを「目明し編」「罪滅し編」「皆殺し編」と伺いましたが、残り1つ、『ひぐらし』最終作(※20)のタイトルは決まっているんですか?
[竜] う〜ん、まだ未定なんですが、「(原文空白)」というのが近い。語呂がいいので、やっぱり「○○し編」の形じゃないとダメなんですよ。今の所これになる可能が高いです。
―― 作品タイトルに戻って「日暮し編」じゃないの? という予想もありますが?
[竜] あ、それはないです。
―― あ、ないんですか?
[竜] “日で暮らす”ってそれじゃ「その日暮らし」ですよ(笑)
(一同笑)
[竜] 「その日暮らしで泣く頃に」…リストラみたいで暗い話だな(笑)。最後の話は頭の中でストーリーは出来てるんですが、文字通り「(原文空白)」と呼ぶにふさわしい話だろうと。だから「(原文空白)」でいいんじゃないかな?
―― 作品に関して最後に、お答えできる範囲でかまわないんですが。前回、目明し編は“痛い”話と伺いました。さて次作「罪滅し編」を一言か二言で象徴するとすれば、どんな話でしょう?
[竜] ラストに限っていえば“アクション”。割と大立ち回りな…『ひぐらし』本編でいままでやっていないのが、格闘というかアクションというか、ノベルなので動きの激しいシーンがあまり無いんです。人が話し合ってるシーンが多い。だから次は“アクション”。それがポジティブなものかネガティブなものかは…置いておきます。
―― 活劇調…ですか。
[竜] 金属バットとかで、こう…(笑)。
―― 「目明し編」は詩音が復讐に突き進んで、最後は哀しい結末を迎えるという話ですが、本編後のスタッフルームで「人を殺す事に同意できるか、否か」という問いかけをなさってて、ご自身のお答えは「さあ、どうでしょう?」とぼかして終わってる訳ですが、その辺は?
スタッフルーム
スタッフによるあとがき。目明し編では竜騎士07氏のコメントが読める。祟殺し編の圭一や、綿流し編・目明し編の詩音が犯した殺人について問いかける内容である。【KEIYA】
[竜] 私自身は…人殺しって「ごめんなさい」で済まない、最終判断じゃないですか? 取り返しのつかない事ですよね。本当はどうあっても、人は殺すべきじゃない、誰かを殺せば必ずその余波がある。「復讐はなにも生まない」ってよく言うじゃないですか。
―― ええ。
[竜] 復讐や殺人は当事者にとってのけじめでしかないんです。だから詩音の暴走は本当は許されない事で、「殺してやる」と思った時点で…彼女は何かを踏み外した、とは…私は思います。でも、時にはそうするしかない、殺人を犯さざる得ない、というのもまた人間の真実の一面であり、そこに悲劇性があるんだと思います。
―― では最後に用意した質問です。ちょっと突飛かもしれませんが。えー、私が今から単語を申し上げますので、とっさに頭に浮かんだ事をお答え頂きたいんですが…カウンセリングテクニックとか心理分析とかでやるやつですね。
[竜] ああ、はいはい(笑)。
―― 「自由連想法」(※21)だったかな?いくつか単語を申し上げますので、パッと思いついた事をお答え下さい。では1つ目“人間”。
[竜] 人間………だめだ、「人形」とか思いついちゃった(笑)。
―― “人間”といえば「人形」?
[竜] ぱっと「人形」が浮かびました。「ひとのかたちをした物」…人間の定義なんていうのはその程度でしかない。私はコレ(自分の体を指す)が人間かどうか怪しいと思うんですよ。なんて言えばいいのかな…、「ネット人格」ってあるじゃないですか?
―― ええ。
[竜] 現実では全然優しくない人がネット上では異様に優しかったり、現実で控えめな人がネット上では異様にワイルドだったり…あれってやっぱり本当に別人だと思うんです。だから人間の定義って人格のような、触れないものだと思うんです。考えなければ人間はただの肉の塊でしかない。だから私は本当の人間は魂のような、描きにくいものだと思います。インターネット上にしか登場しない…仮に「タロウ」という人格がいたら、その「タロウ」さんは実在する、でも現実の本人とは関係ない存在。
―― バーチャルと言っているものは、実はバーチャルではない?
[竜] 私は“疑似人格”というのは本当の意味で存在すると思う。どちらかといえば“多重人格”(※22)という言葉の方が近いんですが。……あーすみません、脱線しまくりです。
―― なるほどー。この回答で色々と分析できるかもしれませんね。
[竜] (ちょっと苦笑気味)。
―― あ、もちろん私は素人ですので大丈夫です。では2つ目……この質問、嫌ですか?(笑)結構反則技かもしれませんが。
[竜] この答えを見て、ベテランや専門家に分析されたりしたら怖いですね(笑)。
―― では、2つ目“善悪”。
[竜] 善悪………イメージしにくいな……最初に天秤を思いつきましたね。…ようするに数字で示せるもの。理解できるし理解できないし、という曖昧な物じゃなくて、単純明快に数値で示せるもの。「ああ、普段からイジメがあったんですね=+5」とか数値化できるもの。
―― 3つ目“罪”。
[竜] 罪………「考えること」? …罪の最初って考える事から始まるんじゃないのかな。『羊たちの沈黙(※23)』でしたっけ? 「欲望は見ることから生まれる」。
―― ドクター・ハンニバル・レクターですね。
[竜] そう。例えばジャングルで暮らしている“ナントカ族”みたいな人達がなぜ都市の生活に憧れないかといえば、そういう物を知らないから。欲求は見なければ始まらない。罪も考えなければ始まらない。だからお酒っていいと思うんです。飲めば何も考えずにすむ。
―― (笑)。
[竜] 人間たまには頭をカラッポにする事は必要だと思います。
―― お酒は人間を罪から遠ざけるんでしょうか?(笑)。
[竜] そのかわり考える事を失って自堕落になる(笑)。罪を犯さないと言うことは、戦う気を無くす事で、いてもいなくてもいい存在だという事だし…難しいですね(笑)。
―― では4つ目。“罪”とくれば…“罰”。
[竜] ………やっぱり天秤…というか、私の中では「対価」というイメージ…罪に対する対価。天秤の片方に罪が乗っていて、その反対に釣り合うだけの分銅が乗っている。だからこれも数値化できるもの。
―― では次。“社会”。
[竜] 社会………イメージからすると社会って人の輪だと思うんです。人間と人間が手を繋いでいるのが「社会」。で、人によって社会って大きさが違うんですよ。「家族が大事です」という人は自分の輪っかが家族でできている。「恋人さえいればいい」という人は、恋人だけで輪っかができている。「俺は日本を変える!」と頑張る人は日本中の人を手を繋いで輪になっている。でも輪が大きいほど、途中で手を放す人がいるかもしれない、繋がってないかもしれない。人間って輪ができて初めて安心する、輪が無いと落ち着かない。だから恋人だけと輪を組んでる人の片方の手が外れたら、急にその人の全世界が吹っ飛ぶ。…だからそれしか考えられなくなって「殺す、殺さない」の世界になる。
―― ああ…。
[竜] 輪が大きくて、ちゃんと結んでいる人は中の1人がくしゃみしてもどうって事はない。大勢の中の一人だから。だから人間が円満に生活する条件は2つ。「輪になってなければならない。そして輪は大きいほどいい。」
―― …ではラスト、“家族”。
[竜] 家族………イメージしか浮かばないですけど…「あけすけな関係」というか…飾らなくていい、気楽さ…うん「気楽さ」ですかね。パンツ1丁でウロウロしてもどってことないような、そんな感じ。安心感。気安さ。
―― なるほど。『ひぐらし』本編とは直接関係ありませんが、なかなか興味深いお答えが頂けたような気がします。邪推の余地も色々ありそうですが…。ではでは、最後に定番ですが「目明し編」をやった方、そして夏の新作を期待している『ひぐらし』プレイヤーの皆様に一言お願い致します。
[竜] 「目明し編」をお楽しみ頂きまして、ありがとうございます。次は「罪滅し編」になるんですが、また違うアプローチで『ひぐらしのなく頃に』のテーマを幾つか…「謎」というより「テーマ」ですか…それを明かしていけるような話になると思います。次の話は「目明し編」のように過去の話をなぞり返すのではなく、また新しい、新規の話になると思います。今までとは別の楽しみ方が見つけられるようなシナリオになるよう頑張りますので、楽しみにして頂ければ幸いです。
―― ありがとうございました。
(取材日2005年1月)
(※1)シャッター前 ^
いわゆる「壁」。ないし「外周」。スペースに訪れる人数の多さを考慮して、会場内外に列を取り回すスペースを確保する為の位置取り。混雑時は待機列が入り乱れて、どの列がどのスペースのものか、全然解らない程ぐるんぐるんである。
(※2)島中 ^
「外周」に対する「内周」。どうしても販売がメインにならざるをえない外周に対して、趣向をこらしたデコレーションやデモ、はたまた呼び込みなど、「販売」以外のコミュニケーションなにかと楽しいゾーン。そのあたりは文中の竜騎士氏の発言にある通り。ただし部分的に、あるいは午後になって人が流れてくると通路が埋まって窒息しそうになる事も…。
シャッター前/島中
若干補足しておくと、人気サークルが配置される「壁」(建物内の外周部を意味する)の中でも、「シャッター前」に配置されるのは特に混雑が予想される大人気サークル。建物の外にある広い空間に一般参加者の長い列を形成できるためである。
大多数のサークルが配置される「島中」は、「壁」と違ってサークルスペースが密集しており、通路も狭い。そのため、混雑すると(※2)にあるように満員電車めいた状況に陥ることがある。コミケに不慣れな一般参加者は、あまり混んでいない通路からゆっくり見て回るのが無難。【KEIYA】
(※3)サイト管理人のBTさん。 ^
オフィシャルHP “07th Storming party” 管理人。前回「なかせ方」(2004年11月号)にご登場頂いた。
(※4)前川さんのイベント ^
2004年11月に行われた「雛見沢村綿流し祭」シリーズの事。前川氏は準備会代表。即売会の後の部活&罰ゲームなどなどイベントを盛り上げる仕掛けが色々飛び出している。
(※5)ワンフェス ^
ワンダーフェスティバル。ホビー系では最大規模を誇るイベント。夏冬の年2回開催でまさに「もうひとつのコミケ」。とは言え同人誌のイベントとはやはり毛色がかなり違っているので、未体験の方はぜひ一度のぞいてみる事をおすすめします。
コスプレを超越した「造形物を着たヒト」が普通に会場を回っていたりと、買い物抜きでもかなり楽しい。
(※6)魅音が泣く ^
正確にカウントしている訳では全然ないが、どうも『ひぐらし』中では圧倒的に泣くシーンが多い様な気がするのは気のせいか? 他のキャラクターと比較して一番“女の子らしい”性格と思われる(対抗:沙都子?)。目明し編ではその本領を余すところなく発揮。好きな男の命乞いに泣き叫ぶ彼女を見て感涙にむせんだ人多数?どうも“尽くすタイプ”らしい。
(※7)ウチのお店でもそんな感じで ^
とらのあな秋葉原1号店店頭では11月28日のイベント「雛見沢村綿流し祭0.5B」当日から「ひぐらし」のデコレーションを展開開始。材料は秋葉原1号店店長(秋田出身)のおじいちゃんが山で実際に使っている年期の入った本物の鉈+水彩絵具(ホルベイン#G509ピュアレッド)。若干物騒である。「万世橋○察署に注意されたらどうしようかと心配でした」とは担当者談。
(※8)綿流し以後 ^
「目明し編」以前のシナリオではちょうど全体の半分。お祭りの夜に最初の殺人が起きてからの一気の展開は皆様もうおなじみ。最初の犠牲者はカメラマン富竹氏のケースが多かった為、「お疲れさま会」で「富竹さんが殺されるのが合図」「時報」「鐘みたいなもの」とかなんとか。ひどい事を言われていた。
(※9)音楽室バッチ ^
2005年2月中旬から公式HPで配布が始まっている。
(※10)八咫桜さん ^
演出・スクリプト担当。この方と竜騎士氏のコンビで『ひぐらし』は作り出されている。前回インタビューを見る限り創作のエゴとエゴをぶつけあう“アツい”制作現場らしい。BT氏と同様に前回「なかせ方」(2004年11月号)にご登場頂いた。
(※11)GMLさん ^
サークル“GameMusicLibrary”代表大将氏。自サークルの活動以外でもいろんな所で名前を拝見する事が多い音系サークル界の重鎮。現在は「後進向けにTIPSを書く日々」らしい。
ウェブサイト:【GMLの廃墟】 ※現在は閲覧不能【最前線編集部】
(※12)mixi ^
ミクシィ。話題のソーシャルネットワーキングのサイトの一つ。住人になっている人から招待してもらわないと中に入れない。最近人気と影響力が急上昇中であり、今後「外の世界」との関係がどうなるか気になる所。
(※13)MP3フォルダの中 ^
『ひぐらし』は直接フォルダの中の楽曲データを見ることができる。
(※14)アンビエント系 ^
ブライアン・イーノにより提唱された。「意識して聴くこともできるが、また無視することもできる音楽」。狭義では「邪魔にならない静かな音楽」で“環境音楽”の概念に近い。ただし用法が拡大傾向にありその語義は現在若干アバウト。本文中ではかなり広めの意味で使っている。
(※15)13日の金曜日 ^
1980年(米)。当時一世を風靡したスプラッタムービー。殺人鬼ジェイソンの名前はかなり有名になった。しかしPart2以降では、どんどん過激さを追求するあまり、ギャグ映画と紙一重まで行ってしまう。いかにも「アメリカだなぁ」という感じのホラーである。笑いと恐怖は同根のものなのかもしれない。
(※16)番町皿屋敷 ^
「いちま〜い、にま〜い」が有名な怪談。1700年代から歌舞伎・狂言などで語られ、その後芝居、映画と形を変えつつ存続している非常に古いルーツを持つ話。よって話の細部で色々と異なったバージョンがある。オリジナルの作者は当然不詳。
ちなみに主人公は「お菊」。混同されがちな「お岩」は“四谷怪談”である。
(※17)スティーブン・キング ^
あまりにも有名過ぎるモダン・ホラー小説の大家。映画化作品が非常に多いことも知名度に一役かっている。作家になる前の修行時代に何かの工場で働いており、機械に人間が酷使される、その環境が彼の描く「恐怖」の根底にある。との話がどこかで出ていた。真偽のほどは不明。
(※18)ひぐらし目 ^
「人格の豹変」かはたまた「憑依」か?いろんなキャラがこの目になるが、この目の「問い詰めレナ」が文句無しで一番怖いと思う。どのくらい怖いかというと、生みの親の竜騎士氏に「嘘がつけない関係が厳しい(爆笑)」と言われるぐらい怖い。彼女と結婚したら会社で食べた昼食のメニューから、帰りに寄り道した飲み屋の名前まで全部お見通しである。…怖い。
(※19)ザッピング ^
Zapping。どうも元々はアメリカのTV業界界隈で生まれたマーケティング用語らしい。「チャンネルを変えてテレビコマーシャルを見ないようにすること」の意。リモコンの普及でチャンネルを簡単に切り替えられる状況が背景にある。「チャンネルはそのまま」「この後もまだまだ続きます」等、乱発されるTVテロップはザッピング対策である。転じて複数視点を導入して語り手を随時切り替えながら進むゲームの演出形式(主にADV)を指す。
(※20)ひぐらし最終作 ^
ひぐらしは年2回、夏冬コミケで発表されていく。予定通りにいけば
2004年 冬「目明し編」
2005年 夏「罪滅し編」
2005年 冬「皆殺し編」
のリリースで、最終作は2006年夏のコミケで発表。この時点で、一応『ひぐらしのなく頃に』完結となる。
(※21)自由連想法 ^
精神分析の中心技法。被分析者は頭に思い浮かぶ言葉をそのまま口にする。しかし、抵抗が生じてなかなか自由に連想を語ることは難しい。本当の分析の場合は、実は答えそのものではなく、口ごもったり、言い間違えたりした“抵抗”の部分の方が重要でそこに焦点を当てる。フロイト派・ユング派の違いを始め、方法は様々ある。…という解説とはまるで関係なく、もちろん今回は単なる質疑応答であり、厳密な意味での自由連想法では全くありませんので、その旨ご了承下さい。
(※22)多重人格 ^
『24人のビリーミリガン』で一躍有名になった単語。「心的な抑圧を受けた人間が現実適応の為に別の人格を生み出す防衛機能の一種なのでは?」との推測もされているが、その実体はまだまだ未解明。症例は圧倒的に北米が多いらしい。“単一人物の中に複数人格が同時に存在している”というモデルが大変興味を引くため、マンガやドラマ等、フィクションの題材に多く取り上げられる。現状では“障害”として認識されるが、文中の竜騎士氏は別の文脈で使っている。
(※23)羊たちの沈黙 ^
1991年(米)。ミステリの大家トマス・ハリス原作、サイコ・スリラーの極北を極めたアカデミー受賞作。女性捜査官候補生と連続猟奇殺人犯の追跡劇だが、サブキャストの天才的頭脳の持主にして食人鬼、Dr.ハンニバル・レクターがあまりに強烈。主演のジョディ・フォスターが霞んでしまった…ハロー、クラリース。単なる恐怖映画ではなく不思議な上品さと知的さが漂う「心理劇」の傑作。『ハンニバル』『レッド・ドラゴン』と合わせて3部作となっている。