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DOO-BOPマイルス・デイビス
帝王、マイルス・デイビスの遺作。僕はなぜかこのアルバムが好きになってしまって折りに触れてよく聴いている。マイルスはこのアルバムを完成間近(とはいっても、「完成」までどの程度距離があったのかは当のマイルスしか知りえないが)までこぎ着けたところで亡くなってしまった。だから最終的なミックスは他人が行っている。アルバム自体も死後に発表された。そういう曰くもあってか、このアルバムから放たれるサウンドには、世界や、マイルスそのものからの奇妙な断絶感があって、そこがこのアルバムの魅力になっている。
Complete Village Vanguard Recording 1961ビル・エバンス
不世出のベーシスト、スコット・ラファロのラストレコーディング。二週間後、交通事故で帰らぬ人となる。このアルバムは、『Sunday At The Village Vanguard』『Walts For Debby』の二枚に再構成して収められたジャズ史上に燦然と輝く歴史的なライブの時間軸順の全記録。しかし、そこにいる観客の誰もが、まさにたった今、「歴史」が展開されていることをまるで気付いていない。遠慮なくかき鳴らされるナイフやフォークの音、女性客の歓声……。プレイヤーのビル・エヴァンス、スコット・ラファロ、ポール・モチアンの三人だけが、いずれ“たった今”が「歴史」となる自覚に貫かれながら、演奏を続けている。まさに奇跡のようなアルバム。
ハーモニー伊藤計劃
やっぱり、語るのはまだよそう。
デッド・トリック!華倫変
華倫変さんとは、一度もお目にかかることができずじまいだった。僕は彼の作品が大好きで、僕が編集長を務める文芸雑誌『ファウスト』の創刊号に、作品を掲載してもらいたかった。でも、創刊前だから当たり前なんだけど、金がなくってさ。華倫変さん、大阪にお住まいで…出張、できなかった。「最高の創刊号をつくって、お金をかせいで、二号でご登場をお願いしよう」って心に誓いながら編集していたっけ。あのころの太田克史に伝えたい。「おまえは華倫変さんと出会うことは今のままだと生涯、ない。おまえが『ファウスト』の創刊号を世に出した後、華倫変さんはこの世を去る。今すぐに大阪まで自費で駆けつけろ」と。
放熱への証尾崎豊
尾崎豊の遺作。あと10年生きた尾崎を見たかった。『放熱への証』はすべてのファンにそう思わせる出来ばえの作品だ。傑作中の傑作というわけでは決してない。でも、荒削りだけど、「尾崎豊」というアーティストの“未来”に対するアプローチに満ちている作品なんだ。だから、聴くたびに、ああ、彼にあともう少しだけ時間があったら…という気になってしまう。滅多なことでは聴けない一枚。