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ローマ人の物語 (3) ― ハンニバル戦記(上)塩野七生
「ヨーロッパ」を構想したのがカエサルならば、その前提となった「地中海世界」を構想したのはハンニバルだと僕は考える。ただし、その構想を実現したのは彼の宿敵、ローマだった。ハンニバルは、ただ勝利のためだけに世界を必要としたから敗れ去った。ローマは、勝利した後の世界を必要としたからこそ勝利した。しかし、だからこそ、ハンニバルは純粋で美しい。
ナポレオン獅子の時代長谷川哲也
世界史上究極の“成り上がり”の一人、ナポレオン。なぜ僕は彼のことをこんなにも好きなのだろうか……。この『ナポレオン 獅子の時代』の作者、長谷川哲也さんもきっと同じ思いに違いない。アウステルリッツの三帝会戦も、マレンゴの戦いも、ワーテルローも、ナポレオンの戦争は、彼の戦争である前に彼のドラマであり、彼の芸術すぎるのだ。
国盗り物語〈1〉斎藤道三〈前編〉司馬遼太郎
『国盗り物語』は、斎藤道三と織田信長の物語だ。そして、彼らの関係を師弟関係として描いた作品は、過去には全く類例がなかった。歴史とは事実ではなく、歴史家によってつくられるものなのだ。さて、編集者から見たこの『国盗り物語』の白眉はこの第一巻にある。十分な史料が存在しないなかで、それでも描かれる歴史小説の完璧な姿がここにある。冒頭からの数十ページには、きっとどんな編集者でも微塵も直しを入れられない。まさに完璧な小説です。
アレクサンドロス大王東征記〈上〉―付インド誌フラウィオス・アッリアノス
俺も“果て”まで行ってみたい。
地獄の季節ランボオ
すべての詩業を捨て去り、灼熱の砂漠に失踪……。詩人として完璧なエンディング。思うに、人はただ詩を書いているあいだは、ただ詩を書いている人にすぎないのであって、存在そのものを詩に純化していくことによってしか“詩人”にはなれないのでないだろうか。その意味で、彼の死に様には一流の詩人はこうでなければならないと深く思わされる。さすがすぎる、ランボオ。